艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第9話

歓迎会が終わり、自室に一足先に戻っていたクリスはベットの上で横になり、就寝時間前にも関わらず考えに耽っていた。

 

 

(……………)

 

 

歓迎会で皆に囲まれていたクリスの心中は、嬉しさと混乱が入り交じっている。

彼はこの世界に来るまでの記憶の殆どが抜け落ちており、覚えているのは自分がアメリカ生まれで、所属していた部隊、先に作られていた他のアーレイ・バーク級の事だけであり、どのような切っ掛けで自分が人間のように意思を持ち、人間のような見た目になったのかは彼自身にも分からない。

ましてや、大勢の人間に囲まれたり注目された事が無いクリスにとっては、どのような反応を示せば良いのか分からず、混乱していた。

 

 

(参ったな……)

 

 

1日のうちで色んな事が起きたため、クリスの体は疲れ果てていた。

 

 

「寝るか…」

 

 

就寝時間前だがクリスは眠りに就いた。

 

 

 

 

 

 

そして翌日………

 

 

「!!」

 

 

起床時間となり、鎮守府内に起床を知らせるラッパが鳴り響き、クリスはベットから飛び起きるとコンバットシャツ、ズボン、ブーツを履き部屋を飛び出した。

 

 

「あ」

 

 

その時、クリスは何処に集合するのか分からず足を止めた。

丁度その時、1人の艦娘が通り掛かりクリスはその娘を呼び止めた。

 

 

「すまない、朝は何処に集合するんだ?」

 

「え?………あ、そうか。僕に着いてきて」

 

「ありがとう!」

 

 

その艦娘と共に寮を駆け足で走り外に出て、寮前の広場に殆どの駆逐艦級の艦娘達が集まっていた。

 

 

「君は僕の後ろにいて」

 

「了解」

 

 

彼女に伴われての後ろに並ぶクリス。そして全員の点呼が行われる。

 

 

「各員点呼終了!欠員なし!」

 

「了解。これより本日の予定を伝える!」

 

 

点呼が終わると、今度は1日の予定が伝えられる。

 

 

「本日、艤装を使用した基礎訓練を実施する。訓練開始は0900。以上、解散!」

 

 

予定が伝えられると全員その場で解散する。

 

 

「ありがとう、昨日来たばかりだから此処での習慣がよく分からなくてな」

 

「良いよ。初めはそんなものさ」

 

「ところで名前を聞いてなかったな。知ってると思うが、俺の名はクリス・カイル。クリスとでも読んでくれ」

 

「僕は白露型駆逐艦2番艦『時雨』だよ。僕の事は何でも呼んでくれても構わないけど」

 

「時雨か……じゃあグレとでも呼ばせてもらうよ。よろしく」

 

「こちらこそ」

 

 

2人は握手を交わす。

 

 

「そうだグレ、朝食まだだよな?」

 

「うん」

 

「なにかの縁だ。一緒に食うか?」

 

「いいね。行こう」

 

 

時雨とクリスはそのまま朝食のため食堂へと走った。

 

 

「鳳翔、ホットドック2つとオレンジジュースを頼む」

 

「はい」

 

「僕も同じもので」

 

 

既に食堂のメニューにはクリスがリクエストしたホットドックやピザが早速入っており、クリスは迷わず注文を掛け、時雨も同じものを頼む。

そして次の瞬間にはホットドック2つとオレンジジュースが載せられたトレイが渡され、適当に空いている席へと座る。

 

 

 

「ねぇクリス、聞いても良いかな?」

 

「ん?」

 

「クリスって、アメリカから来たんだよね?」

 

「そうだが………どうしたんだ?」

 

「昨日の歓迎会で、アメリカでテスト艦だって言ってたでしょ?アレ……嘘だよね?」

 

 

 

いきなりの質問にクリスの体が反応する。

 

 

 

「嘘もなにも……昨日話した通りだ」

 

「最初の自己紹介の時と後の質問の時と全然声の大きさや目の動きが違うから直ぐに分かったよ」

 

 

クリスは時雨の洞察力の高さに驚き半分、恐れをなした。まさか全て見抜かれていたとは思っておらず、自分の出自に関しては機密で通すつもりだったのが早くも破綻しかけている。

 

 

「正直に話してくれないかな?君は気付いてないと思うけど、嘘つくの下手だよ。このまま皆に嘘を付き続けるても皆からは信用されなくなるよ」

 

「俺を脅してるのか?」

 

「飽くまで忠告さ。君の事をまだ信用していない娘達、まだ大勢居るからね」

 

「成る程………だが世の中には知らなくても良い事だってあるのを知らない訳じゃないだろ?」

 

「確かに。僕だけじゃなくても此処の娘達の中には好奇心が強い娘もいるよ?嘘を最後まで突き通せるなら、僕はもう何も言わないけどさ」

 

 

まさかの展開にクリスはどうするか考える。

 

 

(どうする?右も左も分からないこの世界で仲間や味方を大勢作っておくのは得かもはしれんが、俺の話をしたところで信用してくれる保証はない…………だが何れは分かる事だが………)

 

 

暫く考えてから結論を出した。

 

 

「分かった……グレ、君には話しておこう」

 

「良かった」

 

「実は……」

 

 

クリスはこの世界に来た時の状況、この世界へ来る前までの記憶の欠落、そして自分の知っている現実世界の歴史について掻い摘んで話す。

 

 

「とまぁ、こんな感じだ」

 

「成る程……じゃあ僕達が只の艦だった頃に辿った運命も」

 

「あぁ、知っている。細かい事は分からないが、コンピューターに入っている情報から此処にいる艦娘達がどんな運命を辿ったかは調べられるし、その後の歴史はどうなったかは知識として知っている。これで良いか?」

 

「うん、よく分かったよ。やっぱり只者じゃなかったのは確かだったみたいだね」

 

「聞きたいとは思わないのか?」

 

 

時雨にそう問い掛ける。

 

 

「何を?」

 

「グレ……自分自身が辿った運命のその後の事を」

 

「興味はあるさ。聞きたいと思うし、聞きたくないとも思う。でも今は聞きたいとは思わないね」

 

「どうして?」

 

「怖いのさ………その後の続きを聞いたら後悔しそうで」

 

「懸命な判断だ。前世は前世、今は今。今の自分で一生懸命生きる事が大事なんだ」

 

 

そう言うとホットドックを1口食べる。

 

 

「クリスは記憶を失う前の自分を知りたくはないの?」

 

「どうだろうな………知ったところで、何が変わるとは思えないからな」

 

「……………強いんだね」

 

「そうか?」

 

「うん。君みたいに強く生きれたらなって思うよ」

 

 

 

時雨の目は何処か哀愁を感じる。

 

 

「まぁ、そんなに急ぐ事はないさ。じっくり考えて結論を出せば良い」

 

 

あっという間にホットドックを食べ終えトレイを戻す。

 

 

「じゃあまた後でな」

 

 

そう言うとクリスは食堂を出ていった

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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