艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第90話

クリスが川内と合流していたその頃、アリゲーターガーは工廠へと来ていた。

 

 

「此処も裏がありそうだな」

 

 

工廠からは何やら作業をしている様な騒がしい音が聞こえてくる。特に何か作戦を実行ている訳でもなく、艦娘達の出入りも一切無い。しかも警備が他の場所より一層厳重である事が益々怪しさを醸し出している。

調べようにも正面や裏手から工廠への侵入は難しいと判断したアリゲーターガーはクリスから預かった、シールズチームを使おうと判断した。

 

 

アリゲーターガーのコンバットシャツのポケットからシールズチームが出てくると、彼の前で整列する。

 

 

「すまん。あの工廠に侵入して中で何が起きてるのかを探ってきて欲しい」

 

「了解」

 

 

シールズチームはアリゲーターガーの指示通り、工廠へ向かった。

流石は高度に訓練を受けているシールズチームは人間よりも遥かに小さな体を生かし、気配も音も立てず、闇夜に溶け込む姿は死神の様に見える。

警備兵の死角となる角度を突きながら工廠の壁にたどり着くと、僅かに空いていた穴から中に入る。

 

 

「!?」

 

 

彼らの目に飛び込んで来たのは、大勢の人間が大掛かりな機械を使って何かを作っている様子だ。もう少し全体を見渡せる2階に移動した。

 

 

「これは……」

 

 

2階から見下ろした光景は大掛かりな機械を中心に金を精製している様子だった。

金の鉱石から金を精製して集めた金を金塊にして、それをインゴットに加工するまでが行われていた。

 

 

「金の密造工場か」

 

 

外でチームから送られる映像を見ていたアリゲーターガーは言葉が出なかった。

 

 

「倉庫の金塊は此処で作ってたんだな」

 

 

アリゲーターガーは無線を使ってクリスに報告する。

 

 

 

 

 

「分かった。それだけでも大きな証拠になるな」

 

『どうする?このまま証拠集めを続けるか?』

 

「こっちでも大きな収穫があった。それにもうひとつ知らせる事がある」

 

『なんだ?』

 

 

クリスは川内の事を話した。

 

 

 

『分かった。心強い味方が居て良かったな』

 

「あぁ。すまんが先に倉庫で待っててくれ」

 

『了解』

 

 

無線を切るとクリスは川内に目配せし部家を元通りにしてから、執務室を出た。

 

 

「ちょっと待って。少しだけ寄り道してもいい?」

 

「どうしたんだ?」

 

「実はさ、協力者が居るんだけど」

 

「協力者まで作ってたのか?」

 

「うん」

 

「分かった。アリーにも知らせておく」

 

 

そう言うとクリスはアリゲーターガーと再び無線を繋いで川内の協力者と接触する事を話し、一旦こちらと合流するように伝えて無線を切り、川内の案内で協力者が居る処へと向かう。

川内の案内で向かったのは艦娘達が寝泊まりしている宿舎だった。

 

 

 

「よう」

 

 

そこには先に待っていたアリゲーターガーが居た。

 

 

「ソイツが川内って奴か?」

 

「あぁ。川内、俺の友人のアリゲーターガーだ」

 

「川内型軽巡洋艦の川内だよ。よろしく」

 

「バージニア級SSN-812アリゲーターガーだ」

 

 

互いに自己紹介を済ませてから宿舎へ入り、駆逐艦達が居る駆逐艦寮へ入ると、ある部家へと向かう。

 

 

「第4駆逐隊か……」

 

 

表札に書かれた部隊名にクリスは京都へやってきた日に見た面々の事を思い出す。

川内が扉を一定のリズムで叩くと鍵が開く音が聞こえ、扉が開かれる。

 

 

「邪魔するよ」

 

 

そう言って中に入るとそこには、カーテンを閉めきった部家の中で火がついたローソクを囲む第4駆逐隊の面々が待っていた。

 

 

「川内さん、その方は?」

 

 

第4駆逐隊の一人である萩風がそう問い掛けてきた。

 

 

「この前話したクリスとアリゲーターガーって奴だよ」

 

「よろしくお願いします。萩風と言います」

 

「私は嵐ってんだ。よろしくな」

 

「自分は野分と申します」

 

「私は舞風って言うの」

 

「クリス・カイルだ。よろしく頼む」

 

「アリゲーターガーだ。クリス共々よろしくな」

 

 

軽く自己紹介を済ませるが、クリスは彼女らが窶れているにも関わらず気丈に振る舞っている事に何とも言えない感情を抱く。

 

 

「早速だけど皆、明後日には此処の運命が決まると思うよ」

 

「明後日ですか?」

 

「うん。とんでもない証拠を手に入れたからね」

 

 

川内は件の事を話した。

 

 

「成る程。それで私達はどうすれば?」

 

 

その質問に対しては、川内が既に作戦の草案を考えており、その内容を全てクリスと第4駆逐隊に話す。

 

 

「つまり明後日の提督達の取り引き現場を抑える訳ですね」

 

「そう。皆には例の取り引き現場までは何時も通りでお願い。現場についてから提督が金塊と金を受け取ったら合図を打って」

 

「合図ですか?」

 

「そう。クリス」

 

「あぁ」

 

 

クリスが1本のペンを手渡した。

 

 

「ペン?」

 

「そのペンは中にビーコンの発信器が入ってる。蓋を取ったらスイッチが入って特殊な電波が出て、こっちの受信機が電波を受信してそれが合図になる。提督が金塊と金を受け取った時点で蓋を外してくれればいい」

 

「分かりました。お預かりします」

 

 

萩風がペンを受け取る。

 

 

「あまり長居は出来ないね。そろそろ帰るね」

 

「はい。ではまた明後日」

 

 

名残惜しみつつもクリス、アリゲーターガー、川内の3人は部家を出ると、急ぎ足で寮から離れた。

 

 

「脱出路は?」

 

「例の倉庫から下水道に出る」

 

 

3人は走って倉庫に移動し、開いたままの窓から倉庫に入りマンホールに入って鎮守府から脱出した。

 

 

 

 

 

 

そして無事に鎮守府から脱出し、拠点の廃工場へ戻らず、近くの公衆電話に移動して長門に今回の事を話した。

 

 

『そうか。そんな事が』

 

「あぁ。明後日の取り引き現場を逃すと暫くチャンスは無い。やるなら早い方が良い」

 

『分かった。提督が尽力してくれたお陰で、そっちが提案した作戦は実行できそうだ』

 

「そうか。父親の代議士の方は?」

 

『心配するな。あの人は我々艦娘にもしっかり理解があるから敵に回すのは避けたい。提督に任せてくれればいい。それと既に陸軍には話をつけてあるから、明日には鎮守府の制圧を担当する陸軍部隊の編成が完了する予定だ』

 

「了解。そっちは任せる」

 

 

そう言って電話を切り、公衆電話から離れると廃工場へと戻った。

 

 

「さて、明後日までは此処で待機だな」

 

 

 

 

 

 

続く




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