艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第92話

舞鶴の提督とロシアンマフィアグループを一網打尽という華々しい成果を上げたクリス一行は、舞鶴鎮守府への帰路に就いていた。

 

ロシアンマフィアらは応援に駆け付けた海上保安庁に逮捕拘束され巡視船に収容されている。

クリスらは別の巡視船の船内に設けられた一室で、国防省から派遣されてきた国防海軍警務隊の警務官による事情聴取が行われていた。

 

 

「以上が事の経緯です」

 

「分かりました。これで事情聴取は終了します」

 

 

事情聴取が始まってからは順に嵐、萩風、野分の順に行われ、最後の番である萩風の聴取が今終了した。

 

 

「貴女方の処分については国防省から追って連絡が行くと思いますので、それまではこの船に待機と言う事でお願いします」

 

「はい」

 

 

どんな処分が下るのか萩風の表情と声色は非常に重い。それを察した取り調べ役の警務官は穏やかな表情で話し掛ける。

 

 

「私からは貴女方に何かを言える立場にはありませんが、そう深刻になる必要はありませんよ。貴女方の協力があり事件解決に至ったのですから」

 

「でも……………いえ、何もありません」

 

 

萩風は提督の悪事を解決できたのは命からがら鎮守府から逃亡した雪風と、自分たちに事件解決のチャンスを与えてくれたクリス達のお陰であり、自分たちは今まで何も出来ずに声も上げれなかった事を後悔している。

 

それは彼女だけではなく他の姉妹達も同様の事を考えているのは萩風から見ても分かっている。それだけに事件解決を素直に喜べないでいた。

だが少なくとも、あの屈辱に耐えるような地獄のような日々から解放された事は素直に安堵しており、警務官が退室すると同時に力が抜ける。

 

 

 

事情聴取を終えた萩風は取り調べ室から出ると、巡視船の甲板へと上がる。

 

 

「良い天気ね」

 

 

空を見上げると青空が広がる良い天気だ。久々に自由の中で感じるその青空に萩風は少ない解放感を感じる。

 

 

「よぅ」

 

 

そこへ萩風に声を掛けてきたのはアリゲーターガーだ。自身の名前と艦番号が刺繍されたキャップを被り、アメリカ海軍のタイプ3と呼ばれる緑系の迷彩服を着ている。

 

 

「事情聴取、どうだった?」

 

「はい。上から正式な処分が下るまではこの船で待ってろと言われました」

 

「そうか。まぁそんなに深刻に考えるなよ。上だって事件解決に貢献したお前らにキツい処分なんて下さねぇだろよ」

 

「何故、そう言いきれるのですか?」

 

「あの提督の親父の事を知ってるか?」

 

「提督のお父様なら遠目ではお見かけしましたが、どのような方までは……」

 

「なんでもよ、あの提督の親父はお前ら艦娘の事をとても大事に思ってる人情家らしくてな、今回の事に関しては自分の監督不行き届きとか1人の人間として息子にはケジメをつけさせるって息巻いてな、国防省に掛け合ってるんだってさ」

 

 

それを聞いた萩風は驚いた。

あの提督の親なら、父親も似たような性格なのかと思っていたら、そんな事はなく、むしろ自分達のために上へ掛け合ってると聞いて、抱いていた不安がゆっくりと消えていく。

 

 

「でも、何故そのような話を知っているので?」

 

「まぁ……何だ。今回の事件解決のために色々骨折ってくれた奴が居てな、ソイツから横須賀の長門を経由して俺達の耳にも入ってきてるんだ」

 

「そうだったのですか。それで、その色々としていただいた方と言うのは?」

 

「横須賀鎮守府の提督さ」

 

「横須賀の提督さんがですか?」

 

「あぁ。だが俺とクリスは残念ながら横須賀の提督とは一度も顔を合わせた事も話もした事は無いがな」

 

 

萩風はそれを聞いてまたもや驚いた。

艦娘とは配属されると、配属先の提督や指揮官との顔合わせや日常でも会話をするものであるが、自身と同じ存在である筈のクリスとアリゲーターガーが自身が所属している提督の顔も知らなければ話をした事も無いと聞けば誰でも驚く。

 

 

「そう言えばお前は知らねぇのか。横須賀の提督は今は北部戦線に居て、長門が提督の代行やってるんだってさ」

 

「あぁ…成る程」

 

「でも、今回の事件で提督を突き動かしたのは間違いなく雪風のお陰だな。アイツが機転を利かしてウチに流れ着いたお陰で、事件を知れたんだからな」

 

「雪風ちゃんが……………」

 

「あぁ。やっぱり、声を上げるってのは大事だな」

 

 

それは今の萩風には耳が痛い言葉だった。

 

 

「そう言えば、クリスさんはどちらに?」

 

「アイツなら今、下の船室で報告書書いてるぜ」

 

「それなら今終わったぞ」

 

 

 

アリゲーターガーの言うと同時に、クリスが甲板に上がってきた。

 

 

「こう言う時にパソコンが使えないのは不便だな」

 

 

クリスが居た世界では報告書や書類作成はタブレット端末やノートPCを使っているが、この世界ではタブレット端末やノートPCを使って作った報告書の作成と提出が不可能なため、紙にペンを走らせて手書きという旧来の方法で報告書を書いている。

 

 

「隣良いか?」

 

「はい」

 

 

 

萩風の隣に立つと、報告書を書いて疲れた体の筋肉を伸ばすため背伸びをする。

 

 

「お疲れ様ですクリスさん」

 

「あぁ。もう直ぐだな舞鶴へは」

 

「はい。ついこの前まであんなに帰るのが嫌だった舞鶴が、今は何だか帰ってこれて良かったって思っています」

 

「自分の帰るべき場所があるって理解している証拠だ」

 

「そうでしょうか?」

 

「あぁ。でなきゃ、帰ってこれて良かったとは思わないだろ?」

 

「………」

 

 

萩風は既に水平線上に見える舞鶴を見て物思いに耽る。

 

 

「これから舞鶴鎮守府はどうなるのでしょうね?」

 

「さぁな。それは俺達には分からんが、少なくとも前よりはかなりマシになるんじゃないか?あの提督さえ居なくなれば鎮守府は元に戻るだろ」

 

「そうだな。これで諸悪の根元は引っこ抜かれるし、新しい提督だってやって来るだろうから、ソイツがあの提督と同じ過ちさえ繰り返さなければな。そうさせないためにも俺らの提督には頑張って貰わんとな」

 

「えぇ………そうなる事を願います」

 

 

太陽の光に照らされながら、巡視船は舞鶴港へと入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

続く




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