艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第93話

新年早々に他所の鎮守府の面倒事に巻き込まれたクリスとアリゲーターガーの2人は事件後に小笠原父島へと戻り、特に変わりない生活を続けていた。

 

大規模な反抗作戦や敵による反撃も無く、世界が一時的な平和を謳歌し、あっという間に新年から春へと季節が変わり始めた4月に入っても、父島鎮守府は変わらず付近一帯の警戒任務を行っている。

 

 

「本日も変わりなし。暇ね」

 

「姉さん、油断はしないでくれよ」

 

 

この日、アーレイ・バークとクリスの2人は何時もの哨戒ルートを回って警戒任務に就いていた。

 

 

「このところ、この辺りじゃ敵見てないわね」

 

「あぁ。敵の潜水艦どころか哨戒機も見てないな」

 

「もうこの辺に敵居ないんじゃない?」

 

「そんな筈は無い。オーストラリア方面やハワイ方面はまだ敵の手中にあるんだ。最前線に近い小笠原諸島方面に敵が居ないのはあり得ない」

 

「でも現に居ないじゃない」

 

「何処かで反撃の機会を伺ってるに違いないぞ」

 

 

 

クリスの心配に反して、付近一帯に敵の姿は見られず本当に静粛だ。それが逆にクリスの不安と警戒感を一層捲し立てる。

 

 

 

「そろそろ時間よ。戻りましょう」

 

「あぁ」

 

 

2人はその場で反転して父島へと戻る。

 

 

 

 

 

 

鎮守府へ戻ると、なにやら慌ただしい雰囲気が漂っていた。

 

 

 

「どうしたんだ?」

 

「只事じゃなさそうね」

 

 

2人は取りあえず報告のため伊勢の所へと向かう。執務室に入ると伊勢と日向とアイオワ、ホーネットがまるで待ち構えていたかのように2人を迎え入れる。

 

 

「お疲れ。報告は後で聞くから、ちょっといい?」

 

「あぁ」

 

 

伊勢は手にしていたファイルを2人に手渡す。

 

 

「これは……」

 

「うん。つい1時間前に本省から届いたの」

 

 

ファイルには小さな文字で『中部太平洋地域解放作戦』と書かれており、ハワイ諸島奪還を最大目的として中部太平洋全域を解放するための作戦が細かく書かれている。

 

 

「今回の作戦はアメリカ主導になるけど私達は前と同じ国連軍として参加する予定になってるの」

 

「そこにも書いてると思うが、ハワイ諸島をアメリカと我々が左右から挟み込む事になるが、我々はハワイ諸島北部を担当する事になっている。我々父島鎮守府を含めた小笠原に居る全艦娘たちは本土の部隊と共にミッドウェー島に移動する事になる」

 

 

伊勢と日向の説明にクリスとアーレイ・バークは作戦内容を頭に入れていく。

 

 

 

「成る程。此処を解放しないと中部太平洋地域の航路は不安定のままね」

 

「ハワイ島の奪還は合衆国が?」

 

「そうだ。向こうにも私達のような有力な艦娘は沢山居るからな」

 

「そうなると、アイオワとホーネットは向こうに戻るのか?」

 

「2人は引き続き我々と行動を共にする事になる」

 

「そうか」

 

 

2人の表情が曇り、それを見たアイオワが彼に何か不安があるのかと思い声を掛ける。

 

 

「どうしたのクリス?」

 

「あぁ。この世界の合衆国が私と姉さんとアリーに接触してこないかが心配でな」

 

「でもこの世界のアメリカもあなた達にとっても故郷じゃないの?」

 

「俺達にとってはこの世界の合衆国は他国に近い。今はアイオワや横須賀の提督のお陰で何とかなってるが、前の作戦で他国に自分達の事を見られてるからな」

 

「私が言うのもアレだけど、こう言う時の合衆国の鼻ってのは鋭いのよ。既に嗅ぎ付けられてるかも」

 

「この作戦を期に接触を図ってくるかもしれんし、下手したらそのままこの世界の合衆国に連行って事になりかねん。俺達の持つ技術はこの世界の全ての国家からすれば数十年先は行っている。それこそ喉から手が出る程に欲しい技術が詰まっている」

 

 

未来組3人からすれば、他国に持っている技術を全て引き渡せと言われている様なもので、到底納得出来る筈はない。

政治と強い繋がりがあるアイオワは合衆国の政治家がそう言う物を見たり知ったりすれば、必ず動き出す事は知っており、恐らく極一部のグループが強硬手段に出る可能性も考え、ため息を吐く。

 

 

「確かに、私の知ってる極一部の強硬派とかなら有り得ない話じゃないわね。もしその連中が上院や下院に変な入れ知恵でもして、それが大統領にでも伝わったら、ややこしくなるかも」

 

「悩み所だな。まぁ作戦中はそう言う事はしてこないかもはしれんが、作戦が終わった後からが大変だな」

 

 

懸念事項は残しつつも、向こうが接触をしてくるかどうかも分からない状況で対策の立てようが無いため、取りあえずは自分の身辺や行動に注意しながら作戦に参加すると言う事で、この場での決着は着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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