美人クラス委員長が俺の終わった高校生活を変えようとしてくる 作:Brahma
二人に読んでもらうほかに、予備で一束余計にもってきていたので花見辻にも渡す。
「へえ。結構なページ数あるのね。」
長さは四万字程度の中編で、内容は、ヒロインが複数出てくる学園ラブコメだ。
「このくらいだと1時間で読めるかな。」
「まあ気楽に読んでくれ。俺ドリンクバー取ってくるわ」
3人のカップを置くと、スマホをいじりはじめるがどうしても3人のようすが気になってしまう。あれ、自分の書いたものを読まれるってこんなに恥ずかしいものなのか、まるで羞恥プレイだ...とおもいつつもいや自信をもてと自分に言い聞かせる。
高校生離れしたウィット、文章力、構成力に賞賛の嵐がくるかもしれないぞ。
40分ほどで、白峰と花見辻は読み終わったようで、星ヶ崎は、
「終った~」と言って、紙の束から顔をあげた。1時間15分ほど経っていた。
俺の頭の中は、期待と妄想でぐるぐる回っているところへ、花見辻がゴトンとグラスを置く音が耳に入る。
「一応先に聞いておきたいんだけど...。」
「なんだ、執筆の背景とか、影響を受けた本とかサブタイトルの由来とかなんでも聞いてくれていいぞ。」
「七村くんはほんとうに私たちの感想を聞きたいの?」
「そりゃあそうだ。せっかく読んでもらったんだから、感想を聞く義務があると思っているが...。」
「だったらいわせてもらうけど、この華辻美宙(はなつじみう)って美少女キャラ、なんとなくわたしに似てるんだけど...。」
「ああ、まあな...。」
「この白羽真雪って、わたしそっくりだな。」
「まあ、白峰によく似たヒロインが、『アクセルデュエル2039』に出てくるんだ。黒髪ロングの美人な生徒会長。」
「あの星野スペングラー英璃花ってわたしに似てない??」
「ああ、『冴えジョ』の谷村英美梨や『彼女もヒロイン』の星野利香の名前とお前の容姿被ってるからな。」
「動物園イベントとかこないだのことみたいだし...ハンカチひろってとか、シャワー室から出てくる幼馴染ヒロインと風呂に入って鉢合わせるとか、偶然弟を助けてお礼を言ってくれた女の子が転校してきて同じクラスになるとか...。」
「どうだ、すばらしいだろう。」
「ベタネタのオンパレードね。それ以外に話にメリハリがない。」
「単なる日記って感じだな。なにを楽しめばいいんだ?」
「学園ラブコメだからな。どうしても日常的になるから起伏が少なくなる。セカイ系のように世界を救うとか裏組織と戦うとかあるわけじゃないからな。」
「漫画ならまだキャラ絵があるから読めるけど、小説は地の文だけだからね。作者の経験値の低さがそのまんま出てるかも。」
「うぐぐぐぐ....。」
「あと、登場キャラが多すぎだな。ぽっと出でいつのまにか消えていくキャラがかなりいたのも気になったな。これからどうなるの?伏線回収されるのとおもいきや、そのままフェードアウトとか。存在している意味あったのかと感じたな。」
「それについては続編で回収する予定で....。」
「って了って書いてあるけど」
「う...続くにしておくべきだったか。」
「そういう問題じゃないでしょ。どう考えてもこれで完結しているわけだし。続きがあってもあまり読む気にならない。まあ、わたしがこういうジャンルに理解がないだけかもしれないからそういう意味ではあまり気にしすぎなくてもいいかもしれないけど。」
「なるほど花見辻さんはファンタジー好みか...。」
星ヶ崎がうなづいている。
「真白とわたしは感想言ったから、次は星ヶ崎さんの番ね。」
「わたしも言ったほうがいい?」
「ああ、思ったことを言ってくれ。覚悟はできてる。」
「えっと、七村、先月出たGA文庫のラブコメ読んだ?」
「おい、いきなり話をはぐらかすなよ。」
「はぐらかすつもりはないんだけど...飲み物取ってくるね。」
立ち上がろうとする星ヶ崎の腕をぐっと花見辻が掴んで座らせる。
「星ヶ崎さん、せっかく苦痛を押し殺して完読したんだから言うべきことを言うべきだわ。」
「苦痛と言うほどでは...。」
「七村くんは本気で小説家をめざしているんだから、率直な感想を伝えることが彼の成長につながるの。だから遠慮してはだめ。」
「う~ん、たしかにおもしろいかどうかで言われたらおもしろくなかったかも。」
「そうか...俺って駄文製造機か,,,、」
「急に卑屈になってるし...大丈夫?」
「大丈夫だ。続けてくれ。」
「とにかく最後まで書き上げたのが凄いよ。話の流れも自然で違和感なかったし、高1でこれだけ書けるのは凄いと思うな。」
「そうか...確かに高1だな...」白峰がぽつりといい、俺に微笑みかける。
お前いいやつだなと改めて感じた。
「ところでなぜ七村くんは小説を書こうと思ったの?」
花見辻が訊いてきた。
「人が創作する理由なんてきまってるよ、空ちゃん。心に熱くたぎるものがあってそれを抑えられなくなった時にその想いをぶつけるものなんだよ。ね?七村?」
「星ヶ崎の意見はありがたいけど、普通に承認欲求だよな。認められたい、あと働きたくない。ビバ印税生活..だな」
「七村、ひどくない?わたしの熱い想いは?」
「いやそれは星ヶ崎の主観だろう。それを押し付けられてもなあ」
「ここまで正直な、ある意味即物的な回答が返ってくるとは思わなかったわ。ひとこと修行が足りないと言いたいわね。」
「でもさ、承認欲求のない作家って読者に認められたい、楽しませたいって動機がないわけだろ?そんな作家の書いている作品って面白いのか?」
「でもあとがき読むとそうは思えない人もいるけど...。」
「それは、嘘か見栄じゃないか?本当ならずるいから印税を分けてほしいくらいだな、」
「七村くん、せこくない?」
「器ちいさ、小さじ一杯?」
花見辻と星ヶ崎ははやしたてるけど、白峰は無言で微笑んでいるだけだ。
「花見辻、いかに本当でも言っていいことと悪いことがあるぞ。」
「器小さいのは否定しないんだ...。」
しかし俺は決心した。せっかく書き上げたけど小説サイトに投稿するのはやめようと。今日のみじめな想いがフラッシュバックするのには耐えられそうもないから。
そうしてついに遠足の班決めの日がやってきた。行先は投票で決められる。
かすかに残る記憶の通り同じ離島に決まった。
貸し切りバスの後、港からフェリーで20分ほどだという。
昼はあらかじめ用意された具材が支給されて、バーベキュー。その後は班ごとに島内散策、ひらたく言えば遊びだ。見事なまでにクラスの親睦を深めることに特化した行事である。
「男女それぞれで2~3人の組をつくってそれを二つ合併して一つの班にしてね。」
と担任教師が呼びかけていた。