美人クラス委員長が俺の終わった高校生活を変えようとしてくる 作:Brahma
遠足当日はみごとに快晴だった。台風でも来て中止になってくれればいいのにと思ったけど、さすがに台風が来る季節ではない。
「お兄ちゃん、今日は早いね。」
「行き先が離島だからな。家出るのが早くないと集合時間に間に合わないんだよ。親睦深めるなら動物園でもいいのにな。」
「そんなのいつでも行けるんだから、非日常な場所で親睦深める意味がないじゃん」
「そんなの必要かなぁ。俺には理解出来ない。」
「それにしてもお兄ちゃん、友達いないのに遠足行くんだ?勇気あるね。わたし半分くらいの確率で休むかと思ったよ。」
「まあ、休んでもよかったかなとも思わないでもないな。現地で使うお金母さんからもらってるからネカフェにこっそりいって帰り時間にもどってくるとか。」
「それ最低だよ。お母さんを騙すのはよくない。」
「冗談だ。もし休む場合は堂々と理由付けて心置きなく休むつもりだから。」
「ふうん...。」
皐月はにやつく。
「こないだ動物園に一緒に行った女子?」
「ああ、そうだな。クラス委員長の班に入った。」
「なるほど、お兄ちゃんらしいね。その人おにいちゃんのことよくわかってるよ。」
さすがに(彼女だと誤解されてもかまわない)という凄みのあるLEINメッセージのことは黙っておいた。クラス委員長と言っておけばたとえ事実であっても恋愛関連とはおもわれない。ほんとに便利だな。クラス委員長の肩書は。もっとも白峰と俺は恋愛関係にあるわけではないが。
集合場所のスポーツセンターに着いたのは、出発時間よりも20分も早かった。クラスメートが楽しそうに話しているのに対し、10数メートルほどの距離をとって、スマホで小説サイトの閲覧数を確認する。先日の小説を大幅に書き換えた。昨晩の投稿分の閲覧数は100を超えていた。まあまずまずだ、それからツイッターを眺める。こうして出発時間までの時間を何とか過ごした。次は乗り合いバスだ。周囲ではトランプやUNOがはじまる。マグネット式の将棋や囲碁をやっている連中もいる。女子は楽しそうにプロマイドの見せっこや芸能雑誌を回し読みしている。
俺は、イヤホンをつっこんで寝ているか、一冊だけ持ってきたラノベを読んだり、小説サイトを眺めて過ごした。フェリーの中でも同じだ。そうして11時半ごろに、目的地の離島に着いた。
バーベキューのもの運びは手伝ったが、鍋奉行ならぬ鉄板奉行は、佐川という男子が陣取っている。じゅうじゅうと肉などの食材の焼ける音が聞こえてくる。
「おーい、焼けたぞ。」
佐川が焼き加減を確認して、班員たちに声をかける。
班員たちは紙皿に焼きあがった食材をのせて、笑ったり、歓声をあげたり、おしゃべりをしている。同じ班で仲良くなり始めた男女もいるようだ。
俺は班員から数メートルな慣れた木陰に座って紙コップのお茶をちびりちびり呑む。
日差しが遮られ、人影が現れる。白峰だ。
白い大きめのロンTに黒いスキニーパンツ。アスレチックスのキャップをかぶっている。
「白峰、大リーグが好きなのか?」
「ああ、これか。家にあったのをもってきただけだ。ご希望ならほかのチームのキャップもあるぞ。まあ、それはともかく、佐川君が焼いてくれたぞ。」
白峰は自分の皿のほかにもうひとつ皿をもっている。俺の分を取り分けてくれたのだろう。
「ありがとう。」
俺は割りばしの食材をつまんで食べる。焼き加減はいい。それなりにおいしい。
「バーベキュー楽しんでるか?」
「ていうか鉄板奉行は佐川がやってるし、俺がやったら浮きそうだし。」
「そうか。地下鉄のベンチや私鉄の終電を逃して、うなだれているサラリーマンのように見えたからな」
「相当お疲れのやつだな。」
「違うのかい?」
「違うと言いたいところだが、正直つかれた。」
「ん?」
「どうした?白峰?」
白峰がスマホを覗き込んでくる。
「君が投稿しているのはそのサイトか」
「ああ、そうだが」
「昼の時点で今日の閲覧数120か、なかなかがんばってるじゃないか」
「ああ、ありがとう。」
白峰は空をながめる。
「しかしこの青空の下で辛気くさい顔してられるとはある意味才能だな。」
「白峰は、いいのか?こんな辛気臭い男のそばにいて。」
「ほうっておくわけにもいかないからね。鉄板から食べたいものをもっていくくらいだれも非難しないよ。佐川くんがすきでやってることだしね。遠慮しなくていい。」
「ありがとう。」
「ああ」
白峰がそれに手を振って、班員のところへ行く。班員たちの会話が聞こえてくる。
「委員長もたいへんだね。」
「いやわたしの性格だし、自己満足だ。彼自身にも気を使わしてるかもしれないからね。」
「もしかして七村のこと好きなの?」
「彼の性格は知ってるからね。委員長でなければありえたかもね。」
「ひゅーひゅー」
「何言ってんの?真白はまじめなんだからからかわないでよ。」
女子たちがひやかした男子をにらむ。
「わたし自身はかまわないが、あまりそういうのは感心しないな。」
「すみません...。」
調子に乗った男子が謝る低い声が聞こえた。
「真白、これおいしいよ。食べてみなよ。」
「うん、ありがとう。」
班員たちは白峰と仲良さそうに話している。男子は女子たちに話しかけるタイミングを見計らっている。班員たちとは事務的な会話はするものの、やはり白峰以外からは避けられている感がぬぐえない感じだ。
班員の視線が鉄板から離れるのを見計らって食べ物をもっていくものの、どうしても遠慮がちな気分になる。バーベキューが2時間ほどで終わると片付けと食器洗いは協力した。鉄板を洗ってすすで腕が黒くなる。町内会のゴミ拾いくらいと妹に言われたくらいで準備よりもあと片付けのほうがみんなめんどくさがるし、一人ですむ作業が多いから決して嫌いではない。
片付けが終わったら、佐川が「「たこつかみ大会」をやるぞ~」
「おーい、みんなこっち、こっち。」
思ったより日差し強いな。皐月に日焼け止めもらえばよかったか...
とそんなことを考えながら歩いていると、
「七村くんは、たこをつかんだことあるか?」
聞覚えのある女子の声がする。となりに白峰がいた。歩く速度を落としてくれたようだ。
「いや、さすがに正月に母さんの手伝いで切ることはあっても生きたものをつかんだことはない。」
「うむ。正直わたしもどきっとするよ。ぬるっとした感覚を想像すると。」
「あ~やっぱりぬるっとしてるだろうなあ。」
白峰も苦笑する。
「さっきからいろいろ悪いな。」
「いや、わたしのしたいようにしているだけだ。」
「ならいいけど」
と白峰に返事をしたが、実際には、班員の態度が不穏な感じだった。