美人クラス委員長が俺の終わった高校生活を変えようとしてくる   作:Brahma

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第17話 わたしはしっかり握っていたものを手放すことにした。

白峰真白side

先に行っている班員たちがぼそぼそ話しながらこちらを見ている。

「真白かわいそう。」

「すこしくらい気をつかってあげてもいいのに」

「こんどは委員長ねらってんのかな。美人だし、まじめだし。」

わたしはそんな声が聞こえてあんまり気分が良くない。

七村に声をかける。

「七村くん、走るか」

「ああ」

わたしたち二人は班員のところまで走っていった。

 

いけすにいるたこは、予想通りぬめっとしていた。女子たちはぎゃあぎゃあ言っている。

男子たちも顔をしかめている。ときどき吸盤がすいついたりして

「いってえ。」とか言っていた。

つかんだたこは、料理人の手にかかって、たこやきやてんぷら、刺身になる。

「たこ三昧御膳だよ」と料理人が声をかけてくれる。

「いただきます。」

「おいしい、おいしい」と食べている。

「つぎは釣り体験だけど、お土産をみていこう。」

佐川君の声がかかって土産物屋をのぞく。

さすがこの近所有数の漁港だ。干物やつくだ煮、塩辛などがずらりと並んでいて壮観だ。

班員たちは、奥のほうのキーホルダーやテナント、絵葉書、お菓子などを眺めている。

「エビ、タコ、のどぐろ、イカいろいろあるね。」

「このキーホルダーかわいい。」

「このエビの菓子うまいんだぜ。オヤジに買ってきてくれと言われてる。」

「絵葉書きれいだね。」

という声が聞こえてくる一方で

「真白、まだ入り口にいるよ。」

「責任感強いね。」

「でもさ、もし仮に七村とつきあうなんて考えられない。」

「そうだな委員長は白峰が適任だもんな。」

「やめてもらうわけにはいかないよ。誰がなるんだよ。」

「柊とか坂戸とかありえないだろ。」

「それは同感。白峰さんみたいにクラス全体気遣えないもんね。」

七村がなにか決心したような顔でわたしに話しかけてくる。

「白峰ちょっといいか?」

「どうしたんだい?」

七村は班員からは見えない死角でわたしに顔をよせ小声でささやいてくる。

「俺はここで離脱する。あとは上手くやってくれ」

「はあ、君は一体何を言い出すんだ」

わたしは驚きで瞳孔が開くのを自覚したくらいだった。

七村はわたしの口を人差し指で押さえてきた。

「さっきから白峰が話しかけてくれて、とても助かっている。ぼっちだという現実を少しだけ忘れられた。」

「それはよかった。」

わたしの表情筋がゆるむ。

「だけどあまり快く思っていない連中もいるってことだ。」

「それは、そうかもしれないけど...。」

「いいかげん潮時だろ」

恐れていたことが来た。しかしわたしは納得できなかった。彼の人柄を知っているから。しかし例の件は今はだまっていなければならない。わたしは首を横に振った。

「確かに彼らと君は仲がいいとは言えない。しかしこの遠足の間になんとか...」

「白峰なら俺とあいつらの間を上手く取りもてるかもしれない。しかしその過程で白峰のほうに不満がたまりかねない。」

ああ、ほんとうにいいやつだな。君は。だからそんな君が苦しむのを看過できないんだ。

「白峰への不満がたまらないようにするには、白峰が俺にかかわらないのが一番だが、白峰自身としては嫌だろ。」

「確かにそうだ。」

「それなら俺が班から抜けて単独行動すればいい。元からぼっちだし、一人で時間つぶしするのは慣れてる。」

ついに来たか...わたしは自分の無力さを感じる。

「君が班から離脱するというのは、班長として見過ごせないな。」

わたしの責任を果たさせてくれと訴える。

「集合時間まで戻ってくるから心配するな。」

「そういう問題じゃないよ。」

「俺は、白峰に感謝している。今日ここまで班でやれたのは白峰のおかげだ。バーベキューも食えたし、たこもつかめた。だからこそ白峰の遠足を俺が台無しにするわけにいかないんだよ。」

「いきなり消えると皆も困るだろうから、白峰のほうからうまいこと伝えておいてくれ。別に失踪するわけじゃない。ちょっと別行動をとるってだけだ。」

七村は土産物屋を出ようとする。わたしは彼のうでをつかんだ。

「わからないのか?私にとって遠足の成功は君も一緒に楽しむことなんだよ。」

「そう白峰が言ってくれるだけで十分だ。そうそう念押しするまでもないけど、俺のために星ヶ崎のこと話すなよ。」

「それは約束する。」

「持つべきものは、話の分かる委員長だな。史記だかに書いてあったか。管鮑(かんぽう)の交わりとか。」

「君のために首を斬られるほどの覚悟まではないからな。てか適当すぎないか?」

「その話が出てくるあたりさすが委員長だな。俺は小説家志望だから適当なことをいうのは得意なんだ。」

 

「君は小説家に何か偏見があるようだな。それはともかく君の自分が割を食えばあとは、まるくおさまるって考え方は賛同できないな。」

「実際丸く収まるんだからそれでいい。」

「それじゃあ君はどうなる?わたしは嫌だ。」

「あ…。」

「七村君、こういう言葉がある。」

わたしは、聖句のかかれたカードを取り出す。

「あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ」(レビ記19:18)

「君にあげるよ。これは隣人を愛するためにまず君自身を愛することが重要だということだ。熟考してほしい。君自身を愛せないなら隣人をきちんと愛せない。」

「だからそういう面倒なのは嫌なんだよ。しょうがないだろ。こういうやり方が一番まるくおさまるし、俺自身も慣れてるし、気楽なんだ。後は頼んだぜ。班長。」

彼はわたしの手を払う。

「君は、そう言いつつも何か間違ってることに気が付いているはずだ。わたしは君のぼっち行動を看過できない。だけど君が何か間違っているという感覚から学ぶことを期待している。」

わたしは、しっかり握っているもの-七村を一人ぼっちにさせないという執着-を手放した。あれだけ祈ったのにという感覚があるが、これはわたしのわがままなのだろう。先生の言うとおり、私自身が遠足を楽しめているだろうかと問い直される。神様、まだ時ではないのでしょう。彼自身が間違いに気が付くことを祈ってゆだねます。

 

 

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