美人クラス委員長が俺の終わった高校生活を変えようとしてくる 作:Brahma
「おお、じゃあ穂高、また話しよう。本当に楽しかった。」
「いや俺もです。」
紅也さんは、部屋から送り出してくれた。
俺と白峰は、星ヶ崎に玄関で送られた。
「じゃあ、委員長、七村、また学校で。」
「おう。」
「星ヶ崎さん、わたしまでありがとう。」
「いえいえ。」
西の空がオレンジ色に染まっている。すっかり夕方になっていた。
帰ってくると洗面台で妹の皐月と出くわす。
「お兄ちゃんおかえり。ここんところ学校の友達と遊ぶこと多くない?」
「そんなに多いかな?」
「動物園にいったことあったし、遠足のちょっと前に1回あったよね。それから三週間もしないうちにとか、しかも相手は女子の可能性高いとか….お兄ちゃんとしては快挙だよ。」
「なんか快挙のハードル低くないか?」
「なんといっても天下に名にしおうぼっち、七村穂高だからね。まあお兄ちゃんが人生を謳歌しているとは、妹としては感慨深いわけですよ。入学前に言ってたでしょ。」
「なんて言ってた?」
「高校デビューだ、今度こそ彼女作るとかはしゃいでいたのが本当に実現しそうじゃん。」
「文芸部が合わない、クラスのオタ友ができない時点で詰んだなと思ってたのにな。」
「おい皐月?」
「なあに?」
「兄貴って妹のことがいろいろ心配になるものなんだなあって、今日のクラスメートのところへ行って思ったよ。」
「え?まじ女子の家だったの?」
「話そらすなよ。」
「わたしはしっかりしたタイプだと思うけど?」
「どの口が!いつも俺が見るたびぐでっとしてるじゃないか?」
「自宅だからリラックスしてるだけだよ。」
「まあ皐月は俺と違って友達多いみたいだし、俺の見てないところではしっかりしてるのかもしれないけどな。何か悩みあったら言えよ」
「おお?わたし実の兄に口説かれてる?」
「んなわけあるか。」
「その気持ちにはこたえられませんごめんなさい。あ、ちなみに血縁とか関係ないから。」
「最後の要るか?なに『俺アリエン(俺にとって学園青春ラブコメはありえないはずだ)』の後輩あざとヒロインの色葉もみじみたいなこと言ってんだよ。」
「ちかごろ女子に誘われていい気になっているほっち兄貴がかんちがいしないように釘をさしただけ。」
「無駄なこと考えて兄貴追い詰めんな」
皐月は歯をむき出して笑っている。
皐月がいなくなって、紅也さんと星ヶ崎のことを考える。
兄というのは、多かれ少なかれ妹が心配になる生き物だ。
どこの馬の骨かわからなくても、妹を助けたことがわかる相手に対して礼をいわずにすまないくらいには。
中にはまったく無関心でただ腹が立つだけというドライな関係の兄妹もあるようだが、特にほかに兄弟がいないとか、一定以上仲のいい兄妹はについては。
紅也さんは、傷ついて不登校になった星ヶ崎をせいいっぱいサポートしたに違いない。東谷高校を退学したにせよ、俺は知らないが二年次に別クラスになったにせよ。星ヶ崎にあの人がいてよかったとづくづく思った。
俺が手を差し伸ばさなくても結果的に星ヶ崎は救われていたはずだ。あの人がいたのだから。しかし、そんな風に考えてしまった自分に自己嫌悪を感じてしまった。
今回星ヶ崎を助けることができた。なのにどうしてこんな後悔がうまれるのか…。
前回の高校生活と確実に何かが違っている。美少女と秘密を共有したり、美少女に話しかけられたり、動物園へ行ったり、しかも美少女の家にあがってしまったという単なるイベントが起こったにとどまらない変化が。
白峰と星ヶ崎は単なる美少女ゲームの美少女という記号ではない。俺は、おそらく前回は出会わなかった星ヶ崎瑠璃に出会って(邂逅して)しまった。また事務的な会話をしたことで印象に残ってはいても、祈られて3年前にタイムリープさせられ、復活させられたことで白峰真白ともおそらく「出会った(邂逅した)」ということなのだろう。
さて翌週になった。俺は、いつものとおり教室でおひとり様状態でラノベを読んでいた。
鋭い視線を感じ、おもむろに見てみると、星ヶ崎たちの陽キャグループリーダーの女子の柊という女子の視線だということがわかった。
鋭い目つきと気だるげな表情。校舎裏や屋上でたばこを吸っていたら絵になりそうなタイプといったらわかるだろうか。いかにも気の強そうで、おとなしい男子ならカツアゲの犠牲にされそうなタイプだ。