美人クラス委員長が俺の終わった高校生活を変えようとしてくる 作:Brahma
柊は、ときどき星ヶ崎と俺との間の空間にだれもいないと、お前SPかよと思わんばかりに、その空間に割り込んで星ヶ崎を「守ろう」とする。
さて昼飯も終わったし、学校図書館に行くかと思って階段の踊り場で、その柊に声をかけられた。
「ちょっとあんた?」
「何の用だ?」
「話があんだけど」
「話ってなんだよ。気に食わないからってぶっとばそうってのか」
「はあ?意味わかんないこと言わないでくれる?」
「前に言ってたじゃん。ぶっ飛ばすって」
「あんた瑠璃にちょっかい出したわけ?」
「ああ、そういう話だったか。ぶっとばすって話だけ、頭にのこってた。」
実は、休日になんどか会っているのだが柊がどこまで知っているのかわからなかったのでさぐりを入れたのだ。
「ちょっかい出してるんじゃなきゃいいけど。」
この様子だと柊たちと星ヶ崎はうまくやれているようだし、よかった、よかった。
「もう用ないだろ、俺行くから」
「何言ってんの?まだ話し終わってないんだけど?」
「はあ、今度はカツアゲか?俺金持ってないから。」
「なんでそうなるんだよ。委員長助けたんだって?」
ここで柊に「お前を男にしたような奴」といってやりたかった。それに「お前星ヶ崎が困ってた時傍観してただろ、俺は放っておくこともできたんだぞ」といってやりたかったが、星ヶ崎と白峰の笑顔が浮かんだ。この二人が俺のために気を使ってしまうだろう。だからこらえて、そのまま事実を話した。
「ああ、革ジャン着て、こういう眼鏡で、こんな髪型した連中にからまれていたからな。」
リーゼント、革ジャン、黒い吊りあがったサングラス、パンチパーマを身振り手振りで表現する。
「どうせ瑠璃の次は委員長狙ってたんでしょ?」
「はあ、なんでそうなるんだよ。お前男子への偏見きつくないか?」
「男子じゃなくてお前だけだから」
「ああ、そうですか。」
「何その態度。お前にもすこしはいいところあるっていってやろうとしたのに。調子に乗って瑠璃に近づかないでよね。」
「はいはい。もう用は済んだか。俺は早く図書館行きたいんだけど。」
「だから、瑠璃から半径100m以内に近づかないでよね」
「ざけんなよ。俺が教室入れないだろ。」
「じゃあ、登校してこなきゃいいじゃん。」
悪態をついて、柊は立ち去った。
我慢した代わりにばっちり録音してやった。何かの機会に聞かせてやろう。まあ、使う機会がないにこしたことはないが、委員長狙ってたとか、お前だけだとか、100m以内に近づくなとか登校するなとかさすがに個人の名誉と権利の侵害だ。我慢し続けるのもくやしいし、いざとなったら裁判でつるしあげてやる。
「はあ~~~~」
深いため息が漏れる。星ヶ崎と坂戸のもめ事を解決しようとしたら、やべーやつ扱いされるし、白峰を助けたら下心あるみたいに言われるし、白峰と班員と俺との関係は、あのヤンキーのおかげでチャラになったと思いたいが、もしあのヤンキーが現れなかったらと思うとほんといろいろ考えてしまう。
星ヶ崎とは学校外でしか会えないし、それも柊にばれたら何言われるかわからない。
前途多難でまたため息が出てきた。
一週間後。梅雨の季節で、空はどんよりした雲がおおっている。
英語の授業の後半で眠くなったようだったが、空気が変わってみんなが移動していく話声と気配がして目が覚めた。もう少し教室の人口が減るのをまとうと寝たふりをする。
「七村くん、七村くん」
「ん、ん~」
「起きたか」
そこには美しく長い黒髪の少女が立っていた。
「しろ…みね?」
「次は移動教室だぞ」
「ああ、ありがとう。」
「あれ、星ヶ崎さんもいたのか。」
「あ。えへへ…。」
前回の高校生活でよく似た出来事はあった。しかしそのとき星ヶ崎はいなかった。
「どうしたんだ、星ヶ崎さん?」
「いえ、別に、それじゃあお先に」
もじもじしていた星ヶ崎は足早に教室を出ていく。
「しかし君もゆっくりだな。」
「ああ、皆と一緒に移動したくないんだ。へんに目立つ気がするから。」
「なんかどうでもいいことに頭使ってる気がするが…。」
「可能な限りぼっちでいたいと思っているんだ。」
「やっぱり君のその考えは理解しがたいな。まあ、いくぞ。」
白峰は俺の腕をつかんで移動教室へ引っ張っていった。
それ以降だった。星ヶ崎の様子がおかしい。
最初はすれ違い様に手を振ってきた。さすがに自分だとは思わなかったのでスルーした。
(ねえ、なんでスルーするの?)とLEINが来て、ようやく状況を把握する。
(あれ、別の友達じゃなかったのか?俺だとは思わなかった)
それからというものときどき、クチパクで「ナナムラ」といって、笑顔で手を振ってきた。おれも観念して軽く会釈したが、事情も事情、気が気ではない。
別の日は、適当な要件をでっちあげて話しかけてきた。
「この消しゴム、七村の?」
なんの変哲もない消しゴムだ。しかし、欠け具合,減り具合から自分のものでないことはわかった。
「いや。俺のじゃない。」
「そうなんだ…。」
次の休み時間に「↓おとしもの」というメモとともにマグネットで張り付けられていた。
教室の前方で話していた柊がいやに鋭い視線でにらみつけてきた。
あ~いやだいやだ。
その消しゴムはその次の休み時間にはなくなっていて、よく似た消しゴムが彼女の机の上あった。
翌日、また星ヶ崎が話しかけようとしてきた。
「あ、七…。」
俺は、休み時間になるや否やさあっと教室から出ていく。
「ねえ、瑠璃~」と柊の声が聞こえる。
「え~
俺は、同じ階のだれもいない空き教室にはいってひとしきりラノベを楽しんだ。
3分前にアラームをかけておいて教室に戻る。
しかしついに俺も逃げ切れなかった。俺が図書館の書庫で本を探していると、星ヶ崎が現れた。薄暗い書庫で隣の照明に金髪ツインテにイヤリングが浮かび上がる。
「七村、何読んでるの?」
すれ違うほど短い通路に入ってきて、俺の横に立って何食わぬ顔で話しかけてくる。
おい、柊にみつかったらどうすんだよ、と心の中でつぶやく。
しかも本の内容に興味あるというより、俺自身に話しかけるのが目的のようだ。
俺は小さくため息をついた。