美人クラス委員長が俺の終わった高校生活を変えようとしてくる 作:Brahma
「星ヶ崎、お前、最近ちょっと変だぞ?」
「え?何が?」
「ときどき話しかけてきたり、手を振ったり。」
「あ~、そのこと。」
「ああ、コミュ障が友達必死に作ろうとしているみたいで、違和感バリバリだったぞ。自分の姿見せられてるみたいで俺のほうが恥ずかしかった。」
「ひど!?そんなに違和感あったがな…そりゃ少しは緊張したけど…。」
「緊張するくらいなら話しかけてくるなよ。」
「でも、わたしのせいで七村が孤立しているのは…。」
(あ~やっぱりそれか)
「お前のせいじゃないぞ。その前から俺はぼっちだったし、お前も知っての通り教室から消えてるだろ。」
「確かに…。」
「それに俺には、『クラス委員長兼七村係』の白峰がいるからな。」
「いつのまにか委員長が変な係に!?七村しかもそれ自分で言っちゃう!?」
「柊が勘ぐってただろ、あいつの視線感じて気がめいってんだよ。余計な心配させたくないからだまってたけどお前から100m以内に近づくなって言われてる。だから学校で話しかけるのはやめたほうがいいんじゃねえの?お前の気持ちはありがたいんだけどな。それに話したければLEINがあるだろ。わざわざ学校で直接話しかけるとかリスク大きすぎだろ」
「まあ、そうだけど」
星ヶ崎は、しばらくとまどったように考えてからぽつりとつぶやく。
「七村はさ、わたしの話しかけられたら迷惑?」
吊り目気味のギャルが思いつめたような表情で心細そうに上目遣いで見つめてくる。そのギャップにびくんと心臓がはねたのかとさえ感じた。
「迷惑なわけないだろう。ただお前にとってまずいだろうという話だ。」
「ふうん、そうなんだ。じゃあわたしさえよければ話しかけていいんだ。」
「確かにそういうことになるが…。」
俺は明確に拒否できなかった。星ヶ崎は、にかっと満足げに微笑んでいる。その瞳には妙なやる気がみなぎり生気がらんらんと感じられる。
「じゃーまたねえ」
「お、おう…。」
小さく笑って手を振る星ヶ崎に、俺はつられて気のない返事をして手を振るしかできなかった。
星ヶ崎と学校図書館で会った数日後の昼休み。
「七村君、ちょっといいかな。」
話しかけてきたのは長い黒髪が美しい少女、クラス委員長の白峰だ。
彼女は課題の取り立て以外、クラスの女子からの言伝もつたえてくる。俺もそういった女子たちも都合がいいのだが、律儀な白峰としては本音をいえば苦々しく思ってるに違いない。、
「今日は、誰の用件だ?それともなにか課題を出し忘れているのか?俺は?」
「今日は課題の取り立てじゃないよ。ああ、それからだれかの言伝でもない。」
「じゃあ何の用だ。」
「遠足の時は、ありがとう。でもあのようなことがなかったら、わたしがどういう気持ちでいたか知らなかったろう?『ああ、しまったな』『どこで間違えたかな』とそればっかりだった。君に悪いことをしたと思って後悔しきりだったんだ。」
「いや、白峰はなにか悪いことをしたわけじゃないじゃないか?」
「そうはいってもね、どこか心にとげのようにひっかかっていたよ。班員が全員そろっていなかったんだから。」
「そうか…。」
「まあきみには間違っていることに気が付いてほしいだの偉そうなことを言ったが、一方で、どこかで潮時だ、もう神様にゆだねるしかない、君を一人にしないことに執着するのをやめようと自分にいいきかせるしかなかったんだ。ただただ自分の無力さが悔しかった。」
「あのさ、白峰?」
「なんだ?」
「俺はあの日、俺が白峰を傷つけた、負担をかけたとばっかり考えていた。だから白峰がそんな気持ちになるとか考えたことなかった。本当にすまなかった。」
「ああ、その気持ちはうれしいよ。今度はわたしに徹底的につきあってもらうから。覚悟しておいてくれ。」
白峰は口角をあげて微笑む。
「あのさ、ヤンキーから助けたことでチャラにならないのか?」
「ん~、わたしが遠足で君を独占できなかった分、半独占するつもりだからチャラにはならないな。」
そして耳元で小声でつぶやく
「それに柊さんたちの視線から君を守る意味もあるし。」
といって俺の顔をみつめてくる。
「からかってるのか?」
「からかってないさ。」
「てか、覚悟とか言ったよな、なんの覚悟だ?」
「そのうちすぐにわかるさ。」
それには答えず、白峰は笑顔でひらひらと手を振って離れていく。
しかし、その「もくろみ」が、上手くいくことはないことがのちに明らかになる。
その日のHRは、先生ではなく、白峰が教壇に立った。先生は、黒板わきの自席に座っている。小中学校でいうなら給食指導用の席だ。
「それでは、今日は、文化祭実行委員の選出を行います。」
白峰がそう宣言するとクラス中がざわつく。
「それではまず、プリントを配布するので後ろの席にまわしてください。」
教室の中は、文実をしないいいわけのつぶやきで、がやがやとにぎゃかになったが、数分後手をたたく音がした。
それまでクラスの様子を見守っていた白峰が
「みんなこちらを向いてください。これで文実の仕事の内容がわかったかと思います。質問や立候補受け付けます。」
一気に教室が静かになる。しかたないなあといわんばかりにし白峰が腰に手を当てながら教室を見回す。
「立候補がないようなので、消去法でいきます。ひとまず、用事とか部活で文実をやれない人は申し出てください。」
あれよ、あれよと言う間に文実ができない言い訳がどしどし寄せられる。
俺も何か言い訳を考えていたが、発言したら「え?こいつしゃべれるんだ?」という反応されて、教室が「スン…。」と静まったら気まずいのでだまっていた。
言い訳合戦が落ち着いてきた。
「さて、これである程度は絞れたかな。」
白峰は教室を見回した。
発言するのが苦手な生徒や文実を断る言い訳ができなかった生徒たちは、息を殺し、顔をふせて目立たないようにする。おれもそのひとりだった。ぼっちの平常運転と言えばそうなのかもしれないが…
「立候補する人はいないかな…。それでは推薦は?」
これも自分がやりかえされたらいやだと沈黙につつまれる。
「それでは、心苦しいがこっちから指名しようか。まず男子。」
白峰が俺のほうをみて微笑んだ。俺は、覚悟とはそういうことだったかと悟った。
白峰真白side
「あなたの道を主にゆだねよ。主に信頼せよ。主が成し遂げてくださる。」
(詩篇37:6)
「あなたの重荷を主にゆだねよ。主は、あなたのことを心配してくださる。主は決して正しい者がゆるがされるようにはなさらない。」(詩篇55:22)
「あなたのしようとしていることを主にゆだねよ。そうすればあなたの計画は、ゆるがない。」(箴言16:3)
「先生。」
「なんでしょうか?白峰姉妹」
「例のクラスメートのことです。」
「にわとり兄弟のことですか?」
「そのあだ名は…。」
「個人のプライバシーがあるでしょう。本名でお呼びするわけにはいかないですし、姉妹に彼の名前をお聞きするわけにもいかない。」
「彼が、ラノベのことでかばったクラスメートの女子の友人にからまれているようなのです。休み時間に逃げるように教室を出ていきます。それなのでなんとかしたいと考えています。でも最近、デボーションの箇所が、ゆだねよ、ゆだねよ、ばかりで不安なのです。」
「その気持ちはわかります。姉妹が誠実にクラスの運営や彼自身のことを考えていることも。その後例のラノベの女の子はどうなのですか?」
「積極的に彼に話しかけているようなのです。でも彼女自身も秘密がばれると友人を失うかもしれない。」
「なにか神様が新しいことをなさろうとしているのかもしれません。ラノベの女の子は、遠足のときには、にわとり兄弟を班にさそわなかったのでしょう。でも今はもしかしたら彼女は自分自身を変えたいと願っているのかもしれません。姉妹が彼のことを何とか守りたいと考えていることもわかります。ラノベの女の子の友人もほうっておいたら、趣味の違いで彼女を切り捨てたでしょうから、あまりよい人とは思えませんね。でもその様子だとラノベの女の子もその友人と関係を続けたいと思っているようですね。」
「そのようです。」
「よく祈ってください。もしかしたら姉妹にとって望まない結果になるかもしれませんが、必ず脱出の道が供えられることを信じるしかありません。」
わたしは、七村に覚悟してくれと言ったが、それから2時間以内に自分が覚悟を迫られることになった。
※デボーション=直訳すると「ささげること」だが、日本語では「静思の時」と呼ばれている。