美人クラス委員長が俺の終わった高校生活を変えようとしてくる 作:Brahma
白峰真白side
わたしは、七村と話した後、職員室へ行く。
「先生、今日のHRわたしにいただけますか?」
「ん、何するんだ?」
「文化祭実行委員の選出です。」
先生にプリントを見せる。
「なるほど、もうそんな時期になったか。」
「ええ…。」
「選ぶほうが大変だな。」
先生も苦笑する。
「そうです。頭の痛い話です。」
「わかった。HRはまかせる。あ、それから白峰、君の責任感が強いのは承知しているがなんでもかんでも引き受けるんじゃないぞ。勉強だってしたいだろう。」
「ありがとうございます。」
午後の予鈴が鳴り、わたしと先生は教室に入る。先生は、黒板わきの自席に座っている。小中学校でいうなら給食指導用の席だ。
わたしが教壇に立つ。
「え~と、今日は先生からHRの時間をいただきました。文化祭実行委員の選出を行いたいと思います。」
わたしがそう宣言するとクラス中がざわつきはじめた。
東谷高校の文化祭は10月だが、二学期が始まると早速動き出さないと間に合わない。基本的な企画は夏休み明けには決定していなければならない。時間がかかる企画があると、夏休み中から動かなければならない場合もある。そのために文化祭実行委員、文実が決まるのは、一学期の後半、期末テストの準備期間直前くらいになる。
しかし、文化祭実行委員というのは、文化祭全体の企画、運営、準備に関する仕事をするわけで、クラスの出し物をしたい、気心の知れた友人たちや自分たちの文化部の企画をやりたいという文化祭前向き勢にとっても、また塾や運動部などに力を入れたい生徒にとっても面倒ごとでしかない。そういう事情から文実の選出は難航するのがおきまりだった。
「それではまず生徒会が作った『文実募集のお知らせ』のプリントを配布します。後ろの席にまわしてください。」わたしは、クリアファイルからプリントを取り出し、前の席の生徒に数枚づつのたばに分けて手渡した。
プリントの上の部分には『文化祭実行委員(文実)募集のお知らせ』という太字のポップ体の見出しが躍っている。
「文化祭実行委員は、東谷高校文化祭を支える大事な仕事です!」
「はじめてでも大丈夫!文化祭の準備。運営には生徒会も協力します!」
「未経験者歓迎!アットホームで楽しい仲間たちがいっぱい!」
「いっしょに文化祭を盛り上げましょう!」
「やり遂げたときの達成感は格別です!後夜祭までの短期集中で内申点もUP!」
などの見出しも踊っているが、魅力を感じるのは内申点Upくらいだろう。
これでやる気になるのか果たして疑問だ。
『実行委員は模擬店の食事券兼商品用クーポン10枚配布します。』
『実行委員にはイベント優先パスを配布します。』
くらいの餌があってもいいような気がする。まあクラス委員長のわたしがこんなことを考えてると知ったら皆驚くだろうが。
教室はざわざわしていた。
「俺ら塾あるし~」
「わたし塾の夏季講習予約しているし~」
「中間良くなかったんだよな~」
「めんどくさ~」
「合宿あるし~」
「だる~」
「夏練あるし~」
などのつぶやき聞こえる。わたしは、数分間クラスをみわたしつつ、みんながひとしきり読み終わったころあいを判断して手をたたいた。
「みんなこちらを向いてください。これで文実の仕事の内容がわかったかと思います。質問や立候補受け付けます。」
と呼びかけた。一気に教室が静かになる。わたしは、腰に手を当てながら教室を見回した。
「立候補がないようなので、消去法でいきます。ひとまず、用事とか部活で文実をやれない人は申し出てください。」
「いいんちょー、うちら合宿があるので無理です。」
「うちの部活は、流星群観測の合宿の後、プラネタリウムを作らなきゃいけないので…。」
「文化祭に向けて立体地図を作らなければならないので…。」
「地質調査の後、模型作りが~」
「ごめんなさい。新チームで新人戦に向けての夏練があるのでちょっと無理です~」
「久野お前部活めんどくさがってたじゃん」
「ったってさあ、一回戦負けとかまずいじゃん。先輩たちの顔に泥ぬれねえよ」
「中間があぶなかったので、そういうのやるなって親から言われていて~」
「塾の夏期講習が~。ごめん委員長」
「水泳部の練習が~」
「文化祭の作品発表の絵コンテが~」
「秋の演奏会の練習が~」
「クラブチームの練習が~」
あれよ、あれよと言う間に文実ができない言い訳がどしどし寄せられる。
「はいはい~、メモとるから一人ひとりお願い」
この学校は、進学校だけあって好きなことを部活にして勉強と推薦をとろうということで文化部の合宿やら準備やらも盛んだ。運動部も夏練があるし、サッカーのできるやつは将来を見据えてクラブチームに入っている者もいる。
言い訳合戦が落ち着いてきた。
「さて、これである程度は絞れたかな。」
わたしは、教室を見回した。発言するのが苦手な生徒や文実を断る言い訳ができなかった生徒たちは、息を殺し、顔をふせて目立たないようにしているのがみえみえだった。
「立候補する人はいないかな…。それでは推薦は?」
ああ、やっぱりと言う感じで教室は静まり返っている。おそらく誰かを推薦したら自分もやられると思うから黙っているのだろう。しかしもうわたしの心の中は決定している。そんなにおびえなくてもいいよと思うが、当人たちとしては屠殺場の豚か牛に近い気分なのだろう。
「それでは、心苦しいがこっちから指名しようか。まず男子。」
わたしは、七村のほうをみた。本人も悟ったようだった。
「じゃあ、七村君、お願いできるかな?」
と私が声をかけると、一瞬、え…という空気が教室中に充満した。
「七村…ねえ」
「委員長。マジ?」
彼に対しての非好意的な空気が湧き出てくる。彼にとっては、これを生かして逃れることも可能だろうが、彼自身がそんなに器用でないことも織り込み済みだ。しょせんは無責任な空気でしかない。
「大丈夫だよ。こう見えても七村君は実はまじめで責任感が強い。中間はクラスで2位、学年でも5位以内に入っているしね。わたしも遠足で助けられた。」
すると
「よッ、にわとりくん」
遠足で同じ班だった佐川が笑いかける。
「よせよ。」
と七村はいうが、クラス全体の空気は、まあいいかという流れになっていく。
「俺にも夏に予定が…。」
と七村はあいまいな反論をしてくる。ああ、小説を書きなおしたいんだなと察した。
「七村君は、帰宅部で、塾にも通っていない。なんの予定があるんだい?わたしには心あたりあるけど、逆に文実をやったらいい経験になって生かせるんじゃないかな?」
彼が小説を書いていることは言えないが、逆にラノベに文実の経験が生かせるだろうと目で語りかけた。