美人クラス委員長が俺の終わった高校生活を変えようとしてくる 作:Brahma
白峰真白side(続き)
わたしは七村に伝える。
「クラスの出し物には、参加しにくくなるけど当日頑張ってくれればいいよ。成績がいいうえに、内申点も増えるから鬼に金棒じゃないか。」
クラスの準備は空気的に参加しずらいだろうから実行委員のほうがましだろう、それに文実は一人だけじゃないし、未経験者は言われたことをしていればいい。
まあ彼からすれば、楽しくもないイベントのために働くことはがまんしてもらわないといけないが、わたしとしては、ぼっちを脱却してほしいのだ。
「わかりました。」
七村は、あきらめたように返事をした。
「じゃあ男子は七村君と言うことで。」
わたしは、男子という文字の下にチョークで「七村」と言う文字を書き込んだ。
さて女子の候補者だ。わたしはこれこそ楽勝だとおもっていた。どうせだれも立候補しない。遠足の班の女子だって七村への態度は、わたしを助けたことでようやくニュートラルになった程度だ。だれも立候補しないだろう。
「一応確認しておくけど、女子の立候補者はいるかな。」
わたしは、申し訳程度に教室を一瞬だけ見回して、
「じゃあ私が…」
とつぶやき、黒板に向かう。「白」の最初の「ノ」を書き始めたときだった。
椅子がガタタと後ろへ行く音がした。
「委員長!あの、わたしがやっちゃダメかな…。」
という声がした。
「え…。」
わたしは、一瞬きょとんとして教室を振り返ってしまう。クラスメートたちも声がしたほうを一斉に向く。そこには机に両手をついて前かがみに立った金髪ツインテ美少女の姿があった。
わたしは、驚きで自分の瞳孔が大きく開かれた感覚がすると同時に、血の気が引いてしまった。まさかここで…と言う感覚。一瞬柊さんをちらっと見る。
「星ヶ崎さんは、クラスの出し物を友達としたいんじゃないのか?大丈夫なのか」
と当の彼女に尋ねる。
「あ~ほら、委員長って、学級委員もやって文実をやるのってさすがに大変かな~って。わたしなら帰宅部だし、夏休み中ならバイトも融通効くし…。」
立候補優先である以上、受け入れざるを得ない。しかも彼女はわたしの退路までたってきたし、先生も嬉しそうにうなづいている。
「わかった。立候補は大歓迎だ。」
わたしは、顔がひきつるのを感じた。柊さんが黙っているはずはないが、立候補をひきさがらせるわけにはいかない。クラスのなかも困惑した空気に包まれている。例の坂戸さんと星ヶ崎さんのラノベ事件はそのままなのだ。七村は、単純にリュックを間違えただけだが、女子リュックにラノベをつっこんだということで変態と思われている。あんのじょう柊さんが、星ヶ崎さんに声をかけている。
「瑠璃、アンタどうしちゃったの?」
「どうもしないよ。私がやりたいとおもったからやってるだけ。」
「…。」
「優梨愛、ありがとう。だいじょうぶだから。」
「…あっそ…。」
柊さんは、その場は引き下がったがただではすまないだろう。
「じゃあ、女子は星ヶ崎さんと言うことで…。ありがとう。助かったよ。」
わたしは、書きかけの「ノ」を消し、女子の文字の下に「星ヶ崎」と書いた。
「七村くん、よろしくね。」
星ヶ崎さんは、七村に微笑んで声をかける。彼は、「ああ、よろしく」とだけ能面で絞り出すように返事をしていた。
七村穂高side
「わかった。立候補は大歓迎だ。」
星ヶ崎の立候補を受け入れたとき、あの冷静な白峰がぎこちない作り笑顔をしているように見えた。
クラスのなかも困惑した空気に包まれている。例の坂戸と星ヶ崎のラノベ事件はそのままで、俺は変態と思われている。しかも黙っていれば自分には被害が及ばなかったのに火中の栗を拾いに行ったのは俺自身で、それ以外の手段が思い浮かばなかったのだ。あんのじょう星ヶ崎に声をかけた人物がいる。柊だ。
二人がひとしきり言葉をかわして、星ヶ崎の
「優梨愛、ありがとう。だいじょうぶだから。」
のひとことで、柊は引き下がったが、これですむとはとても思えない。
女子の文字の下に「星ヶ崎」と書き込まれ、「七村くん、よろしくね。」
と当人に微笑みかけられる。俺は、ため息が出そうになったが、どんないいがかりがつけられるかわからないので、必死に押しとどめ、やっとのことで絞り出すように返事をした。
俺は白峰に声をかけた。
「気を使わせちゃったな。申し訳ない。」
白峰はちらりと一瞬柊を見る。
「君の力になれなかったのが心残りだ。」
「本当だ。班長に遠足の恩返しし損ねた。」
「その返事で納得したことにするよ。文実頑張ってくれ。」
「それはどうかなあ…白峰がいないんだし。」
「わたしがいなくても責任は果たしてくれ。」
とにっこり微笑み返してきた。
本当にクラス委員長というのは大変だと思った。
その日の放課後だった。覚悟はしていたが
「ねえ」
と女にしては低い声がした。
「なんだよ。柊」
「HRの件で話あんだけど」
「俺にはないんだが」
「私が話あるって言ってんだろ、ついてこいよ。」
「あ、ああ」
柊はあごをしゃくってくる。
俺が断るとか微塵も考えていない態度だ。
「どこへ行くんだ?」
「体育館裏」
うわあ、今回はちがうっぽいがカツアゲパターンだ。
体育館のそばを通過するとバスケットボールのドリブルの音、バレーボールのスパイクやサーブの音などが耳に入ってくる。また後輩たちの掛け声も。
しかし体育館裏は、ひとけがない。
「なんであんたはクラスLEINはいっていないわけ?連絡が面倒なんだけど?」
「単純にさそわれてねーんだよ。俺が悪いわけじゃない」
「あ、そ」と言って舌打ちする。
「とりあえず、アンタに聞きたいのは瑠璃のこと。あんなきもいことしたくせに一緒に文実するとかどういうつもり?」
「俺に聞かれても困るな。星ヶ崎が立候補したんだろう。」
「あんた、瑠璃の弱みでも握ってるわけ?」
目をキッと細めて凄んでくる。うわあ、こわいこわいその目やめろよ。
「なんでそうなるんだよ。」
「だってあんなことされたら全力であんたのこと避けるでしょ。なのに立候補するとか絶対おかしいし。それに今回の件だけじゃなくて、最近瑠璃結構あんたに話しかけてるし」
「俺だってわからないよ。クラスではどう見られているんだ?」
「皆は、瑠璃が七村と和解しようとしてるんだと言ってる」
「だったらそーなんじゃねえの?それからお前、聞く相手まちがってないか?」
「何を?」
「あの騒動には坂戸がかかわっていたよな。俺だって星ヶ崎の行動は理解不能なんだよ。しかも弱み握って喜んでいたのは坂戸だろ。それから星ヶ崎本人はどう言ってるんだよ?」
「瑠璃は特に意味はないとか、わたしがやりたいからとか、楽しそうだと思ったからと言ってるけど。」
坂戸の話は一切なかった。坂戸がなにかつかんで星ヶ崎を脅している線はないことが明らかになった。
「だったらそうなんだろ。正直おれだってわからないし、お前に絡まれるのが嫌だから逃げ回ってるんだけど」
「とにかく瑠璃にちょっかい出したら許さないから。」
「しねえよ。何かあったらぶっとばしてくれていいよ。」
柊は言いたいことだけ言うと足早に立ち去った。「わからないよ、ほんと…。」と小さくつぶやく声が聞こえた。