美人クラス委員長が俺の終わった高校生活を変えようとしてくる 作:Brahma
夕方、俺は白峰にデニャーズに呼び出された。
「またはじっこぐらしか。」
「ああ、本題はわかってるだろう。」
「まあな。あれ?なんで花見辻もいるんだ。」
「わたしも星ヶ崎さんのことは心配していたから。」
「ああ、星ヶ崎の件は...」
俺は動物園の出来事を簡潔に要点絞って話した。
「「そうか、柊さんも納得してくれたか(わかってくれたのね。)」」
「ああ、あいつも悪い奴ってわけじゃないからな。」
「星ヶ崎のことを大事に思ってるんだろう」
とつなげてから花見辻の顔をみる。
「肩の荷降りた感じね。」
「俺さ、角谷に呼び出されたんだ。」
それで、柊攻略のヒントが浮かんだことを二人に話した。
「七村君、しばらくすごい顔をしてたけどね。」
「そりゃあ、お前とお前のこと心配している角谷、紅也さんにもたのまれてたしな。当のだれかさんだってこないだまで角谷のことでなやんでいたようだし。」
「日向には言っておくわ。」
「結局すべて君に頼ることになってしまったな。」
「そうね…わたしは何もできなかったわ。」
「いや、それは違うな。」
「え…。」
「白峰、これ覚えているか?」
それは、レビ記19:18の一文が書かれたカードだ。
「あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ」
「ああ遠足の前にわたしたやつだな。小学生のころ教会学校でもらった暗唱聖句カードだ。」
「花見辻からいわれたんだ。『あなたとかかわろうとする星ヶ崎さんのことを信じて支えてあげて。そしてあなたとかかわりたいと思っている人がいるあなた自身を信じてあげて。』ってな。そう言われたらこのカードのことを思い出した。俺自身を信じ愛するということが少しかもしれないが分かったんだ。」
「昨日、花見辻と話していなかったら、俺は星ヶ崎とかかわっていなかったかもしれない。だから花見辻、お前も今日の結果にかかわっている。」
「ありがとう。そうなのかもしれないわね。」
花見辻はそうつぶやき、白峰と一緒に安心したような柔らかい表情でほほえんだ。
翌日、終業式が終わって、教室の中は、明日から夏休みと言う解放感につつまれざわざわしている。今日いつには、いくつか賑やかな集まりができていたが、柊たちのグループが目に入った。星ヶ崎を含め楽しそうに話している。
すると星ヶ崎が俺の方をむいてきた。
「七村!」
「え?」
柊グループ以外のクラスメイトにとっては、動物園での一件を知らないから当然軽い驚きの声があがる。
星ヶ崎は、柊のほうをむいて軽くうなづき、柊もかすかな笑みをうかべてそれに応える。
そして俺の方を向いた星ヶ崎の肩を軽く押した。星ヶ崎は自分の机から何か取り出して俺のところへ来た。
「どうしたんだ?」
星ヶ崎は、黒いポリ袋からカラフルなカバーの文庫本を取り出す。
「これお兄ちゃんが面白かったって。」
「これ、ラノベだろ」
「そうだよ。だから七村に渡すんだけど」
「そうか、紅也さんによろしく言っといてくれ。」
「うん、休み明けの文実のときでいいよ。それじゃね。」
ほかのクラスの女子が星ヶ崎に寄って来る。
「星ヶ崎さん、今のどういうこと?」
「うん、わたしのお兄ちゃんと七村がラノベ友達なんだ。だけど普段あんまり七村と付き合いないからこっそり隠れてわたしが貸し借りの中継していたんだけど、みつかっちゃったじゃない」
「あの坂戸さんの件?」
「そうそう、それでどうやってお兄ちゃんと七村が知り合ったのかとか聞かれて説明するのも面倒だし、どうしようか思ってるうちに、七村はかばってくれて、それが誤解されちゃうし」
「最近、七村君とよく話すのもそういうことだったんだ。」
「うん。それからわたしもお兄ちゃんの影響でラノベ読むようになって…結構おもしろいよ。」
ふいに星ヶ崎が俺の方へむいてにやりと微笑むと
「だよねっ!七村!」
とクラス全員に聞こえるような声量、半ば叫ぶような声で話した。
ここで俺にふるかよ、と思ったが返事しないわけにいかない。
「ああ、そういうことなんだが…。」
「ということだから、七村っていいやつなんだってみんながわかってくれると嬉しいな。」
星ヶ崎はリュックを持ち上げ、柊たちと一緒に教室を出ていこうとする。
「一学期終わりだしパーッて歌おうよ。」
「え~学期末じゃなくて、ふだんも行ってるじゃん。」
ほがらかな笑い声が聞こえる。柊たちのグループは、カラオケ行こうと話しているようだ。
「瑠璃は何歌うの?」
「どうしよっかな~」
柊たちが出ていくと、オタク集団の田代たちが話はじめた。
「オタクに理解あるギャルか…。」
「マンガだけじゃなくて、マジ存在するんだな。希望出てきた。」
「お前じゃ無理だから希望捨てとけ」
そんなことを話しながら出ていく。俺も教室を出ようとすると野球部の久野が話しかけてきた。
「ちょっと七村君、待てよ。もしかして瑠璃とそういう関係だったの?」
「ああ」
「マジか~、瑠璃のお兄さんといつ知り合ったの?」
「もういいだろ。俺帰りたいんだが…明日話すから。」
さっさと帰っていくと何かに気が付いた久野の叫び声が聞こえる。
「明日って夏休みじゃねえかよ!」
俺は、後ろを振り返らないが、行く手に黒髪ロングの清楚な美少女が廊下の壁に背をもたせかけ、俺の方を見つめ手を挙げる。
「昨日から大活躍だったな。考えてみれば柊さんまで手玉に取ったんだな。」
「誤解生むだろ、その言い方。」
「でも君を見ていると、男子は、久野くんと西田くんとしか話しているのを見たことないな。女子としか仲良くならない『縛りプレイ』でもしているのか?」
「そんなわけないだろ。白峰も知っての通りなりゆきだ。」
しばらく歩いていくと、白峰が再度話しかけてくる。
「そのうちクラスに溶け込めそうだな。」
「そうかな。だってぼっちを至高とする俺だぞ。」
「う~ん、そこで無駄な自信持たないでほしいんだけど…。二学期も君とのつきあいが続きそうだな。」
「ああ、よろしく頼む。白峰は七村係だからな。」
「そんな変な係になった覚えはないよ。」
そのときスマホが震えた。
「ん、なんだろう」
なんの通知だろうとみると「星ヶ崎瑠璃が、あなたを『1AグループLEIN』に招待しました」という通知が表示されていた。
「白峰?」
「なんだ?」
「これ見てくれ?」
「よかったなあ…」
白峰がほおをかすかに赤らめ、うれし涙がにじんでいる。
「これ『拒否』したらどうなるんだろう。」
「バカなことはやめろ。」
あの冷静な白峰が、本気で怒った表情をしている。
「でも、俺にはグループLEINは荷が重すぎだろ」
「答えられない、答えたくない話題に無理して答えなくていい。クラスのみんなが何考えてるかわかるのが君にとって重要なんだ。参加しろ。なら私が押そうか?」
「わかった。」
「参加」を押すと、トーク画面に「七村穂高が参加しました」と表示された。
「先生」
「白峰姉妹どうしましたか?」
「にわとりの彼が、クラスのグループLEINにさそわれて、加入しました。」
「おお、すばらしい。姉妹が熱心に祈っていましたからね。」
「夏休み中に1回は連れてこようかと思います。」
「大歓迎だと彼に伝えてください。」
「今日の説教個所は、へブル人の手紙11:1ですか」
「はい。『信仰とは、目に見えないものを保障し、望んでいるものを確信させるものです。』」