ヲタク流、オラリオの生き方。   作:ケモミミ推し

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「あの子は強くなる。いずれは淀みも消し去る程に。けれど...」
「...冒険しない者に、殻を破る事などできますまい。」
「任せるわ、オッタル。......ついでに彼も、ね。」




第十二話「第二の脚(ブリンク)」

 

某日、大体朝8時くらい。

バベル前に、我らがパーティの4人が集結した。

 

高速型攻撃役(スピードアタッカー)のベル・クラネル。

盾型壁役(ウォール)筋力型攻撃役(パワーアタッカー)のシロカネ・右京。

弓型射手(アーチャー)のラーマ・ノニト。

補助役(サポーター)のリリルカ・アーデ。

 

前後衛が二人ずつ、良いバランスではないだろうか。

勿論(もちろん)リーダーはベルが務め、今はダンジョンに潜る前の最終確認を行っている。

 

「皆、準備はいい?」

「はい、リリはバッチリです!」

「矢は...うん、全部ある。大丈夫です。」

「うん、分かった。右京は?」

 

後ろでウキウキしていた俺にも、団長からの声がかかる。

 

「おう、問題ない。さ、早く行こうぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

時間は一週間ほど遡り.........

 

 

 

久しぶりに取った休日にて、俺とヘスティア様は一枚の羊皮紙を睨みつけていた。

 

「これが俺の"魔法"...?」

「そうみたいだね。ただ......」

 

 

 

 

「ブリンク」

・転移魔法

・射程、重量限界は魔力量に比例。

 

法則(さく)を破りし其の一歩≫

 

 

 

 

「転移魔法…」

 

女神にとってその魔法は、魔法名、属性、詠唱に至るまで、どれもこれもが()()だった。

 

「ベルも大概だが、君は別の意味でとんでもないね...」

「...あざっす」

「せっかく魔法が発現したのに、さっぱりしてるなぁ。」

「だって、もう少し派手派手な名前でもいいじゃないですか...」

 

対して右京はそれがどういったモノなのか、なんとなく予想できていた。思い切り『転移』って表記されてるし。

 

「とりあえず、ちょっと試してみますか。」

「うぇ!?ちょちょ、ちょっと待ってくれよ〜!」

 

よいしょと立ち上がると共に、変な声を上げた主神はツインテを振り回しながら遥か後方に逃げてしまう。

 

「...何をそんなにビビってるんですか?」

「ビビるだろ普通!もし『いしのなかにいる』とかなったらどうするんだ君はー!?」

「んなもん出てたまるかぁ!?」

「とと、とにかく気をつけるんだぞ!危なそうならすぐにやめるんだ!」

「あぁー、分かりましたよ、もー...」

 

 

即席の椅子の盾(バリケード)の裏で警戒しっぱなしの神様を尻目に、早速詠唱を...

 

「神様、俺って魔法使えるんですかね?」

「...?恩恵(ファルナ)に発言したんだから、使えなきゃおかしいよ。」

「そっ......すよね。」

 

 

異世界から来た人間が、この世界にとって異物であることは自覚していた。だからこそ、自分に魔法が、長く長く憧れていた超常的な力に触れることが許されるのか、少し不安だった。

 

 

 

深く呼吸を挟み、ほんの少し震える声で詠唱を開始する。

 

「【法則(さく)を破りし其の一歩】」

 

定められた言の葉を唱えると同時。

掘ったばかりの溝に初めて水が流れるような衝撃と、燃え上がるほどの熱量がじわじわと身体に巡るような充実感が生まれる。

 

_これが...魔法!_

 

掛け値なしに、今までの人生で一番感動した。

 

「よし...!」

 

溢れる魔力を、魔法名によって収束させる。

 

「【ブリンク】」

 

 

魔力は微細な光粒子へと変換され、極細の糸を引いて視線の先___5mほど先の地面へと伸び、見覚えのある人間の姿を写す。

あれは俺だ。どうやらリアルタイムで転移先の予想状況を伝えてくれるようで、自分の動きに寸分狂わず追従している。

 

「…何してるんだい?」

「いえ、何も」

 

手をワキワキしたり小踊りしてもヘスティア様が不思議がっているという事は、この転移補助(アシスト)が見えるのは俺だけという訳か。

そのまま、見えざる手に背中を押されるイメージで前に跳ぶ。

 

 

「…あれっ?」

 

残像すらも置き去りにして、その場から彼の姿が掻き消える。

椅子の間から見守っていた女神は、瞬目の隙に消えた青年を見失い、驚愕。

そして間髪入れず、彼の視線の先、元の場所から5mほどの距離に再び現れていた。

 

「よっ......しゃオラァァァー!!!成ッ功ォー!!!」

「...わぁ」

 

魔法一つで幼児のようにはしゃぐ眷属(こども)と、予想外の子の成長に言葉を失う主神(おや)の姿は、非常に対照的であった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その後一週間の間で試行錯誤を重ね、この魔法が何なのかが分かってきた。

 

クッソ文字通りの「テレポート」というやつだ。それも、短文詠唱で発動できる短距離ワープ。

 

しかも、魔力を練るほど移動距離は伸び、最高飛距離は20mを少し超える程になっている。

魔力を上げればもっと伸びるらしいし、いくつかの()()()も身に着けた。

 

うむ。総評としましては...

 

「一見地味だけど便利ですね、コレ!」

 

という感じだ。もう少し派手でも嬉しかったんだけどね!

 

「...全くとんでもないね、うちの子供達は。」

 

 

 

 


 

 

 

 

「そういえば右京、魔法はもう使えるの?」

「おう、今度ばかしはキッチリ検証しまくったかんな。またあんな事には…」

「右京様、"また"とは一体...?」

「右京さん、何かあったの?」

 

「...何も無かったよ、何も。」

 

今思い出しても恥ずかしい、イキリ気味に馬鹿狼(ベート)に突っ掛かった時の黒歴史を思い出しかけ、記憶の蓋をそっと閉めた。

 

 

 

 

 

迷宮の最上層付近、洞窟を超えた9階層までたどり着いた彼は、遅まきながらダンジョンの異常に気づいた。

 

 

「...?」

「どうかしましたか、ベル様?」

「リリ、何か感じない?誰かに見られてるような...」

「さぁ。ただ何か、この階層には違和感があるような気がします。」

「確かに、モンスターが少なすぎるな。」

 

モンスターが、少ない......?

あっヤッベ。

そういえばこの感じ、あれじゃん!

ベルがミノタウロスと戦うやつ!!

とりあえず、邪魔しないように立ち回るか...?

 

あぁクソ最悪だ、魔法の事で浮かれて、すっかり忘れてた...!

 

「い、行こう、皆。」

 

ベルが、急に焦ったように歩きだす。

 

「お、おいベル!何か...

 

 

ヴモォォォォォォォォォォォォッッ!!

 

 

お約束とばかりに遠くから響く怪物の咆哮。瞬間、ベルの背中が硬直する。

 

「ま、まさか...」

 

ズン、ズン、と足を踏み鳴らし、握られた大剣が地面にキリキリと線を引く。

威圧的な唸り声と暴力的な紅い体躯が、彼らの体を否応もなく縮み上がらせる。

 

「な、なんで9階層にミノタウロスが...!?」

 

眼前に現れたのは、中層に出現するありふれたモンスター。

しかし、駆け出しにとっては十分な脅威(ぜつぼう)になり得る。

 

「ベル様、逃げましょう!!...ベル様?」

 

ベルは動かない。いや、()()()()()()。明確な敗北のトラウマが、彼の動きを縛り付けている。

 

しかし、もう一人の青年の動きは迅速だった。

 

「ラーマ、リリ!上から助けを呼んできてくれ!俺たちが残って引き付ける!」

「...ッ!?そんな、お二人を残して行けるわけ...!」

「いいから行け...ってオイ、ベルッ!!!」

 

眼前には、短い問答の中で剣の攻撃範囲(レンジ)まで近づいたミノタウロスが。目下の白兎(えもの)を叩き斬らんとばかりに、右手の刃は既に振り上げられている。

 

「動けや、クソッッ!!!」

 

俺がベルを、危機を感じ取ったリリがラーマを突き飛ばし、奴の目の前にいるのは俺のみとなった。

 

「耐えろよッ...!」

 

自分自身に無理矢理言い聞かせつつ、盾を構える。その直後、自動車でも突っ込んだかのような途方も無い衝撃を一身に受け、為す術もなく吹き飛ばされる。

 

「ぐオぁッッ!!!」

 

斜め後方に立っていた鍾乳石(はしら)に叩きつけられ、一拍遅れて血反吐を吐く。盾も完全にひしゃげており、もう使い物になりそうにない。

 

(おいおい、一発喰らっただけでこれかよ...!)

 

震える手で取り出したポーションを呷りつつ、あまりの壁の高さに絶望しかける。

しかし時間は、特に怪物(モンスター)は待ってくれない。

こちらの絶望など一笑に付しながら、今度はベルに歩み寄っていく。

 

「おいリリ、ラーマ!!早く下がれ!」

 

潰れかけた喉から声を張り上げ、前方に居た少女達を怒鳴りつける。もしも彼女らが狙われて、最悪死に至ろうものなら、予定(チャート)という意味でも精神衛生的な意味でも、修復不可能なダメージが生まれるだろう。

 

「右京様...!」

「右京さん...!」

「...早く行けッ!!!」

 

誰も死なせたくない。だからこそ今は...!

 

()()()()()()()()ッ...!」

()()()()()...()()()()......!!」

 

「......は?」

 

 

嫌な予感がした。途轍も無く。

 

断片的な情報が、窮地の閃き(アイデアロール)によって、急速にその形を現していく。

 

ミノタウロスを送り込んだ人物、その主人と彼女(めがみ)の望み。俺は全てを知っていながら、ある一つの可能性にたどり着くことができずにいた。

 

嗚呼、何故こんなありふれた可能性に気づけなかったのか。

 

まさか...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"この俺すらも、女神(フレイヤ)に気に入られていた"とは。

 

 

 

背後に現れたのは、黒い毛皮を金色(こんじき)の長爪で飾った、異形の(モンスター)であった。

 

 

 

 

 

 

 




やっはろー!(気さくな挨拶)
どうも、投稿者です。

ついに出せましたね、魔法!
種類についてはアンケート結果を参考に、空間操作系の魔法を採用させていただきました。
別途追加していく予定なので、良さげなアイデアがあったらどんどんコメントで教えて頂ければ幸いです。それでは。
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