「...では、こちらの魔石、ドロップアイテムで...11560ヴァリスになります。」
「えっっ」
「...?」
初戦闘&初冒険を終えた俺たちは、手に入れた魔石やドロップアイテムをギルドで買い取ってもらっていた。ベルのこの反応から見て、ベルにとっては(つまり駆け出し一人の稼ぎにしては)結構な金額だったのだろう。
しかし...相場がわからない。
「ベル、結構稼げたのか?」
「うん...うん! すごい金額!いつもの何倍も稼げてる!」
「お、おう。良かったな。」
「きっと右京がいたおかげだよ!ありがとう!」
正面向かって純朴なこと言われると照れちゃう。嬉しいけど。
「そ、そうだ。エイナさーん!」
「ん、何かなー?右京君ー。」
そういえば、俺にはヴァリスを使う時の金銭感覚が全くない。日常生活で覚えるといっても、どの程度の稼ぎがあるのかも聞いておかねば。
俺は気恥ずかしさを振り払うように、アドバイザーであるエイナさんに質問を投げかける。
「モンスターの魔石って、どのくらいの相場なんですか?」
「魔石? そうね、魔石の需要やモンスターの強さ、つまり魔石の大きさも関わってくるけど大体......あった、これに載ってるわよ。」
そう言ってエイナさんはモンスターごとの魔石の相場リストを取り出してくれた。
「毎年ギルドが色々な調査をして、サイズごとの魔石の相場の上下率を計算するの。今年はほとんど上下してないから、書いてあるままの相場はずよ。」
「おぉ、ありがとうございます、エイナさん。」
(ギルドも色々考えてるんだな。こういう裏設定みたいなもの、大好物だぜ。)
ギルドの魔石相場表には、モンスターの強さごとの、正確には階層や種類ごとの魔石の相場が書かれていた。
あと蛇足かもしれないが、なぜか異世界の文字は普通に読めた。まるで
...そういえば俺、値段とか普通に読んでたな。何で気付かなかったのか。
〈相場表〉
「1〜10層」
ゴブリン:10
コボルト:10
ダンジョンリザード:20
フロッグシューター:20
ウォーシャドウ:500
キラーアント:700
ホーンラビット:200
パープルモス:300
ブルーパピリオ:400
オーク:900
インプ:40
バットパット:60
:
:
今の所必要なのはこんなものだろう。金額の差が極端に開いているのは、群れで出てくるやつはその分魔石が小さいからだろうか。キラーアントも仲間の危機を伝える音波を聞けば群れを作ることはあるが、あれはノーカンだろう。
11560ヴァリスという金額も、まあまあ高い方であろう事もなんとなく分かってきた。
「...よし、ありがとうございました。」
「うん、もしまた分からない事があったら、すぐお姉さんに相談してね。」
「はい、ぜひ!」
「右京、終わったの?」
「あぁ、バッチリ。」
「すごいね、右京は。僕、数字とかは難しくて。」
「あんなん楽勝よ。今度教えようか?俺も一応、12年真面目に勉強したしな。」
「え...右京、もしかして学校に行ってたの?」
「おう」
「えっ!? ってことは、右京って貴族なの!?」
「んな大層なもんじゃないよ。普通の家。」
「そ、そう...。(普通の人は読み書きや計算しか習わないよ...。なるほど、右京がお昼にかなり高い食べ物を買おうとしてたのも、魔石の値段についてすごく見ていたのも、金銭感覚がズレてるからなのかな...。右京は自分の家について言いたくなさそうだし、聞かないでおこう。)」
さて、そうこうして昼下がりの帰宅中。私は重大なミスを冒していることに気付いているのでした。
それはズバリ、”原作改変”。
本来ならこの日、つまりヘスティアがジャが丸くんの売り子のバイトを始めた次の日、ベルは「豊穣の女主人」の店員である少女、シルから弁当を貰っているはずだったのだ。それを俺が邪魔してしまったため、夕食を食べに行く約束ができていない。これは非常にまずい。ここで豊穣の女主人とのフラグが立たなければ、例のベートにバカにされて強くなりたくなるアレも、
とりあえず、帰ってからベルを夕食に誘わなくては。
「ベル! せっかく稼いだんだしさ、ちょっと祝勝会に行かないか?俺良い店知ってるんだよ!」
「...いい店?」
「そうそう!ちょっと値は張るが、結構イケるんだぜ? 店員さんもかわいい女の子だし!」
「う〜ん...(貴族基準で”値が張る”となると...)」
不味い、何故か乗り気じゃないぞ。なぜだ、ナチュラル女たらしベルくん。
「いいんじゃないかい?ベルくん。」
「あ、神様!」
「ヘスティア様!」
「二人はは高かった装備代をゆうに超える金額を一日で稼いでくれたし、多少の贅沢は許さなきゃ。それに...」
「それに?」
「...何でもないさ!二人で豪華な夕食にでも行くがいいさ!(ベルくんめ、あんなにステイタスが上がっているなんて!そんなにヴァレン某がいいのかい!)」
どうやらベルのスキル、「憧憬一途(リアリスフレーゼ)」のことで怒っているらしい。お可愛い嫉妬だこと。
「行ってきます!」
「あー、行ってらっしゃい...」
「大丈夫かな...」
なんとかベルを説得して、「豊穣の女主人」までたどり着いた。道順はなんとなく。教会跡とダンジョンの最短ルート上の大通りを探したら、すぐに見つかった。いい立地にあって助かったぜ。
「こんばんわ〜」
「あっ、いらっしゃいませ!こちらの席にどうぞ!」
看板娘に案内されるままに、キッチン横のカウンターに座る。
「中々いい店だろ?」
「うん、そうだね...(ここのメニュー、やっぱり高い...!)」
と、そこに恰幅の良い
「いらっしゃい、坊主共!駆け出しがここに来るなんて、気前がいいんだね!」
「今日はえらく稼げたんで!それに、ここの料理がとびきり美味いと聞いたもんですから、気になっちゃって。」
「ハハッ、いいねぇ、ガキンちょ!特別に大盛りにしてやろう!」
「おっ! 嬉しいっす!」
...なんとか原作者通りにこぎつけた。隣でなぜか青い顔してるベルくんも見れて、満足満足!
「はい、今日のおすすめだよ!」
厨房から2つ、クソデカスパゲッティが出てきた。まだ頼んでないのに。でも美味そうだから許す!
「お、いただきまーす!」
「いや、頼んでないですって!」
お、案外イケるな。いや普通に美味い。今日の昼の焼串みたいなのは塩とハーブみたいな味だったが、こっちは出汁っぽい旨味を感じる。飯は美味くないと悲しいし、今日くらいは多少の贅沢も許されるだろうさ、知らんけど!
その時、店員の声と共に店内がざわつき始めた。その言葉に、俺は本日二回目のガバを突きつけられることになる。
「ご予約のお客様、ご来店ニャ!」
思わず麺を吹き出す。美味い飯に気を取られて、完全に失念していた。そういえば、今日がロキ・ファミリアが遠征から帰ってきて、例の「ベートにボコボコ言われるイベント」が起こる日だったな。俺はあんまり好きじゃないけど、イベントのためだ、許せベルくん。
そうして麺を啜りながら、チラチラと双方の様子を伺う。
ベルはアイズさんに見惚れたりシルさんと話してて順調、俺も適当に話を合わせる。
ロキ・ファミリアの方は遠征帰りの宴と言って騒いでいる。
そして宴もたけなわとなると、いよいよベートが動き出した。
「よっしゃぁ! アイズ、そろそろ例のあの話、みんなに披露してやろうぜ!」
「あの話?」
「あれだって、帰る途中で何匹か逃したミノタウロス! 最後の一匹、お前が5階層で始末したろ? そんでほれ、その時いたトマト野郎の!」
「......!」
その時。
イラッ、と、何故か心が苛立った。
「いかにも駆け出しのひょろくせえガキが、逃げたミノタウロスに追い詰められてよ! そいつ、アイズが細切れにしたクッセぇ牛の血を浴びて、真っ赤なトマトみてぇになっちまったんだよ!」
ただの戯言だ。気にすることはない。
「それでだぜ? そのトマト野郎、叫びながらどっかに行っちまって。うちのお姫様、助けた相手ににげられてやんの。はははっ! 情けねぇったらねえぜ!」
「あの状況では、仕方がなかったと思います。」
「っ......!」
どうせすぐエルフの人にシバかれる。
「いい加減にしろベート。そもそも17階層でミノタウロスを逃したのは、我々の不手際だ。恥を知れ。」
「あ? ゴミをゴミと言って何が悪い!」
......だが。それはそれとして。
なぜだか知らんが、物凄く。
...腹が立つ。
そう自覚する前に、俺は無自覚に席を立ち。
...なんで?
ここからいいとこだろって所で。どうも、投稿者です。
ファンメールから元気を頂いたのが1月26日の夜8時半。
そこから久しぶりに爆速でキーボードを鳴らして3時間半。
...中身のない物語ではありますが、できてしまいました。元よりただの自己満で書き垂れていただけの時とはモチベーションが桁違い。馬力が違いますよ。(某スリラーより抜粋)
ということなので、高評価やらメールやら、イタズラ半分でもいいので送ってくれると嬉しおす。ほな。