「あぁ? 何だてめぇ。」
「失礼、連れを侮辱した言葉が聞こえたもんですから。」
...なんでだ?
「これは...。私の仲間が失礼した。彼に代わって謝罪させてくれ。」
「なぜあなたが謝るんです?彼が本人に謝罪するのが道理では?」
「あぁ? 俺に謝れってか?」
「聞こえなかったのか? 随分耳が遠いんだな。」
「...あ?」
自分でもよく分からない。なぜ静観を決め込んでいたイベントに割り込んだのか。なぜ足をテーブルに乗せるなど行儀が悪い挑発をしているのか。
「そんなんだからそこの金髪の人にも呆れられているんじゃないかい?」
「なっ...! テメェ!」
メタ知識を出してまで煽りたいほど、こいつのこと嫌いじゃないだろ。
「やめろベート。酒が不味くなる。」
「ジジィは黙ってろ!」
なぜ俺は
「ちょ...ちょっと、右京!」
「邪魔すんなベル。俺は今猛烈にこいつを殴りたい。」
「余計ダメでしょ!」
「離せジジィ!こいつぁ一発ブン殴る!」
「やめておけベート。お前が殴ったら死んでしまうぞ。」
「そうやでベート。そこの子もや。あんた駆け出しやろ。ホンマに死ぬで?」
「...すみません。行儀悪かったですね。」
「いやそういうことやあらへんし...」
正気を取り戻した俺は恐怖していた。俺を叱った神にではない。
自分の意志ではない行動を起こした自分自身に恐れていたのだ。
何らかの魔法か?それとも
一つの結論に至った俺は、事態を収集したあと夕飯を詰め込み、急いで店を飛び出した。もちろんお代は二人分置いて。
原作改変など、もう考える余地もなかった。
「ヘスティア!!!」
「うわぁ!! なんだい右京君、びっくりしたじゃないか!」
「俺から変な気配とか感じないか!? 魔法とか呪術とか!」
「...何も感じないけど、何かあったのかい? 」
「じゃあステータス更新してくれ!」
「ちょ、ホントにどういうことなんだー!?」
「説明は後! とりあえずやってくれ!」
「...えっ」
遅れて帰ってきたベルの目の前には、ベッドの上に正座したヘスティアを尻目に、隣に腰掛ける男の姿があった。
「あんたが
「隠し事をしていたことは謝るよ....でも仕方ないじゃないか、こんな弊害があるなんて知らなかったし!」
俺が
確かに、「経験値獲得量の増加」「特定の人物に対する思いの強さで効果向上」などの強力な効果を得られていた事は嬉しく思う。しかし、問題はそれに代償が付いているという点だ。
この「試練の誘引」。これが中々厄介で、飯屋での一件やダンジョンでの強化種との遭遇など、字面に当てはまりそうな状況はあるが、詳細は全く分からない。
最初は因果律の操作かと思ったが、人間一人のスキルにしては強すぎるしベートに喧嘩を売った理由にもならない。効果が出る条件もさっぱり分からないし、ひとまず保留にするしかないか...。
「何がなんだか分からないけど...右京は大丈夫なの!? 」
「なんともなかったよ。ちょうど今神様にも調べてもらったし。...でも面倒くさいスキルが出てきちまったんだよ。」
「いきなりスキルが発現したの? すごいじゃん右京!」
「別に凄くないさ。ベルにもすぐ生えてくるだろ。」
「その言い方、何か嫌だよ...。」
実際にレベル一つ上とも戦えるスキルを手に入れるし、それだけでは飽き足らず速攻魔法やそれをチャージできるスキルまで...。見れば見るほどチートだな。(褒め言葉)
「悪い、一匹行った!」
「うわっ!?」
飯屋騒動から一夜明けた現在、俺たちは昨日の遅れを取り返すべく、朝早くからダンジョンに潜ってから4時間経つ。疲労のためか注意は疎かになっており、丁度今、足元をコボルトが走り抜け、ポーションを飲むベルに襲いかかった所だ。
「クッソ!」
毒づきながらも斧槍を振り抜き、コボルト共を蹴散らす。そしてベルの援護に...
「こっちは大丈夫!」
素早く脳天にナイフを突き立てる。
「すまん!」
...行く必要はなさそうだ。頼もしい先輩だこと。...というものの、こっちはこっちでかなり面倒くさい状況であることも確かなわけで。
ウォーシャドウが2体に、パープル・モスの希少種であるブルー・パピリオが1体。単純だが素早い前衛に、回復効果を持つ鱗粉を飛ばす後衛。早めに前衛を倒さなければ、ジリ貧になる可能性が高い。
「2対1か......分が悪いな。」
前衛が2枚いるのは厄介だ。片方と戦っていてももう片方に背後を取られてしまう事もあるだろう。ベルのように敏捷が高ければ撹乱もできたのだが、今の俺は力と耐久に特化したタンクビルドになっているから難しい。
ならば、脳筋は脳筋らしく...!
「押し通るッ!」
俺は盾を背負い、両手で握り直した斧槍...の槌の部分を、フルスイングで手前の奴に叩きつける。これで
「まずはお前じゃぁい!」
緩い放物線を描いて飛んでいく手前の奴には見向きもせず、すぐさまもう一方に唐竹割りを打ち込んであっさり撃破。こいつらはその高い攻撃力こそ脅威なものの、動きは単調だし大して早くもない。複数体で湧くから「初心者殺し」と呼ばれるのであって、各個撃破できるなら結構弱かったりもする。
「次ィ!」
帰ってきたもう一体の剣戟も、買い替えた
「これで、」
最後は斧槍を高く掲げ、
「終わり!!」
振り下ろす。
相手もクロスガードで対応したが、やはり奴らの剣は脆い。魔石ごと叩き割って討伐した。
残りはブルー・パピリオのみだが、あれはドロップアイテムが超高額で取引されるため、できれば斧槍で叩き切りたくはない。
ということで、新しく買った小振りのナイフで仕留めてみる。
......よし、ちゃんと正中線*1に沿って斬れたな。
ドロップアイテムもモンスターの体の一部だ。複数人で囲んで殴るなどして無駄に傷を付ければ、ドロップアイテムはボロボロになってしまう。だからこそ、冒険者は少ない手数で効率的に魔物を屠る
「出なかったか。」
ドロップアイテムは常に落ちるとは限らない。運が良ければ落ちる程度に考えておけば良いだろう。
そのため、稀少種のドロップアイテムは高価になる傾向がある。例えばブルー・パピリオの羽は、その美しさと価値から貴族のドレスの装飾などに使われるらしい。需要と供給のバランスが崩れていると、価格は大きく上下するという良い例だな。
「右京、そっちは終わった?」
「おう。さっきは悪かったな。」
「気にしなくていいよ。そろそろお昼だし、疲れちゃったよね。」
「じゃ、昼飯にするか。先に食っていいぞ。」
「ありがとう、右京。見張りよろしくね。」
「了解。」
壁にもたれて周囲を見渡していると、ベルが今まさに食べている弁当が目に入る。
「随分気合の入った弁当買ったんだな。高かったろ。」
「そっか。右京は武器買いに行ってたもんね。」
「...どゆこと?」
「これ、今朝シルさん...豊穣の女主人の店員の人に貰ったんだ。」
「......まじか。」
あそこでフラグを立てましたか、シルさん。原作と変わらずたくましいことで。
というか、俺がフラグをへし折ったせいで出会い方が変わったのか。その程度じゃ大した改変にはなってない...よな? まぁとりあえず......
「また今度食べに行くか。」
「うん、そうしよう。」
そんなこんなで昼食の後、3、4時間ほど狩りをした後、俺たちは帰路についた。
所変わってバベルの大穴。他の冒険者に混ざって螺旋階段を登る中...
「右京、あれはなんだろ?」
「あれか? 別に俺もオラリオに詳しいわけじゃないんだが...」
「知らない?」
「...いや、知ってる。そういえばもうアレの季節か。」
「アレって?」
「
”
第2話と言ったら、ベルがこれからの冒険の相棒である武器、通称”ヘスティアナイフ”を初めて使うシーンが印象的だ。
「行ってみるか?」
「えっ、ダンジョン攻略はどうするの?」
「一日くらい休んでも影響はないさ。むしろ、こういう時こそ体を休めないと。いざって時持たんぞ?」
「そ、そこまで言うんだったら、楽しんじゃおうかな。」
「じゃ、決まりだな。その日はちゃんとシルさんに弁当いらないって言っとけよ?」
「うん、わかった!」
......ナニこの天使。超カワイイんですけど。
どうも、投稿者です。ハーメルンのコピー機能の勝手が分からず四苦八苦なう、な現在からお送りいたします。助けて。(迫真)
なんかカットするって言った割には全然グダグダしてますね、はい。
怪物祭の後はリリルカとヴェルフの話と魔法の件だけなのに、どうも手が込んじゃうんですよね。これは雑にカットとかできないかもしれません。だってしょうがないじゃん。伏線張るとかなんとかで楽しくなっちゃってるんだもの。
ということで、もう少しだけ面倒な話が続くかもしれません。全国津々浦々の春姫ファンの皆さん、もうちょっと待ってね。それでは。