路地裏にて男がひとり。
襤褸切れに身を包み、倒れ伏す
「おおぅ...まじか。」
驚き、一度は後ずさるものの、足を踏み出しその顔を隠す布をめくる。ガサガサの髪に浅黒く変色した肌。そして彼女の目は...
「え......」
次の瞬間、男はさらなる驚愕に陥ることになる。
「暇なんだよなぁ...」
男...いや、俺はひとり街を歩き回っていた。両手には屋台で買った飯が、五指を駆使して絶妙なバランスで保持されている。
なぜ俺が一人寂しく祭りを満喫しているのか。早速だが、状況を説明しよう。
ベルくんとヘスティア様は、原作通り美少女の忘れた財布を届けたり馬鹿強いナイフを作ったりデートしたりと忙しそうにしている。
それは先程、実際にストー...偵察を行って確認している。
ここまでで大体のストーリーを正しく進めていることに安堵した俺は、早速お祭りムード全開の街に繰り出した。
朝飯を抜いてきたスカスカの胃を満足させるべく、美味そうに見えた屋台飯を片っ端から買い漁り、頬張っている最中であった。
唐突だが、俺は祭りが好きだ。特に射的とか的当てとかのアクティビティ系のものが大好きだ。金魚すくいはわざわざ金魚を飼いたくなかったから、釣ったそばから釣れなかった子供に配ったりしていた。
...祭りを一緒に回る友達はいないこともなかったが、皆ノリが悪かった。最近の子はあんまり祭り行かないのね...
祭りを満喫していた俺だが、ここに来てふと気付く。
...
我が故郷である日本の風景を、似ても似つかないオラリオに重ねてしまうのだ。
一体何故だろうか。
それはずばり、ホームシックだ。
両親は、兄は、妹は、今どうしているのか。俺を探しているのか。それとも元々いなかったことにされたのか。
心からの友達こそいなかったものの、だからこそ繋がりの強い者をより大事にしようとするのだ。
そんなことを悶々と考えていると、浮かれた心も次第に落ち着いていく。
人生で、本当の意味で心を通わせられる人間がいったい何人いるだろうか。立ち止まって考え込んでしまう。
「はぁぁぁーー...」
そんな時。
祭りどころではなくなった俺に人の津波が襲いかかる。その拍子に右手のオニオンリング(的な何か)を落とし、それが決定打となった。
妙に冷めた感情と残りの貴重な屋台飯を抱えながら、俺は安寧の地を探すべく、路地裏へと足を運んでいた。
そして現在に至るわけだ。
茶色の髪と、布の合間から見える細すぎる腕。
「おいおい、まさか...」
俺は、この少女_か細いうめき声を聞くまでは性別も生死も判別できなかったが_が、この後のストーリーで仲間になるはずの
もし仮に自分がここに来たことで物語が変わってしまったのならば、それを修正するのもまた自分の責任だ。
しかし、それは少し違う形での影響となった。
「碧眼?」
倒れ伏した彼女の目は、濁っても尚その美しさを失わない碧眼であったのだ。何なら短めのケモ耳まで付いている。
しかも、丸まってたから気づかなかったが、リリ助よりも少し体格が大きいようにも見える。本人が変身した姿でもなさそうだ。少なくとも本人ではない事がわかって一安心。
「..........い..」
「!?」
驚いた。この状態でまだ意識があるのか。もう助からないかと思っていたのに。
「......すいた...」
「...ん?」
なぜか俺の磨き上げたギャグ感知スキルが働くんだが。こいつ、もしかして......
「...お腹空いた...」
「さいですか......」
どっと力が抜ける。てっきり誰かの死に直面してSAN値チェック! とかになると踏んでいたんだけど。
ま、取り敢えずは...
「食うか?」
と言って屋台飯を差し出す。
日本人は、こんな状況で目の前で飯を食ってやるほど残酷ではないのだ。
文字通り「死ぬほど」空腹だった彼女に食事マナーなんてものがあるわけもなく、描写できないほどのひどい食べ方だったので大幅にカットさせてもらおう。
本人がたどたどしく話す情報としては、以下の通りだった。
・年齢10歳。
・種族は
・ある日いきなり両親がダンジョンで死に、身寄りも兄弟もいなかったため天涯孤独となる。
・生き延びるため、両親に少しだけ教えてもらったサポーターとしての知識一つを頼りにしてなんとか小さなファミリアに雇ってもらうも、すぐに捨てられる。
・その後も様々なファミリアを転々として、その度に捨てられた。現在は改宗待ち状態。
・しばらくは仕事がなくても家の貯蓄で生活していたが、それもすぐに尽き、2日前、ついに家を失う。
ここまで聞いた限りでは、ダンまちの世界によくいる孤児に見える。無論この少女を捨てた人でなし共には腹が立っているし、その判断を下したロクでもない神達には熱湯でも浴びせて心も体も熱湯消毒してやりたい気分だ。
しかし、何度ファミリアに捨てられてもめげずに歩き続けたこの少女の胆力は10歳のものとは思えないし、それは大きな才能の裏付けでもあるだろう。
正直、この少女をファミリアに招き入れたいと思う自分がいる。しかしそれと同時に、これ以上物語を捻じ曲げてはいけないと警告する自分もいる。
悩みつつ彼女の前にしゃがみ込んだ時。
じっと考える自分の目線とと彼女の碧眼がぶつかった。その目には涙が溢れている。
「うぐ、ひっぐ...あ、ありがとう、ございます...」
「気にすんな。ほっとけなかっただけだ。」
(もしかして、この子を助けたいと思ったのは、
「...なあ。」
「ぐす..は...はい..」
「もしよかったら、うちのファミリアに来ないか?ちょうど、サポーターを雇おうとしていたところなんだ。」
「え.......」
(たまたま
「うちには頼れる団長がいるし、食いっぱぐれる心配はないぜ? 実際、屋台で豪遊できるくらいの金は持ってるし。」
「うぅ...」
(なんならこの後入ってくるリリルカ・アーデにも影響があるだろう。)
「入りたいです...入れてくださぁい......」
「よしよし、そうか。じゃあまずは...」
(だが、それは今置いておいて。)
「体を洗うぞ。」
「...へ?」
言うのを忘れていたが。
実は俺は、結構な綺麗好きなのだ。
「こんなに汚い奴をうちのファミリアに入れるわけにはいかん!!!まずは洗え!!!」
「は......はい...」
今朝自分用に買ったディアンケヒトファミリアの石鹸(結構な値段がした)を使い、近くにあった井戸の水で少女を洗うこと約3時間。ようやく許せるレベルになってきた。
浅黒かった肌は白さを取り戻し、ボサボサだった髪もなんとか手櫛できる程度には回復した。
そこからは体の至るところにある生傷をポーションで治し、ボロボロの服はとりあえず近くの雑貨屋で買った生成りのシャツと半ズボンに買い変える。
「我ながら良い仕事をした...!」
個人的には大勝利である。彼女の素顔は幼さと芯の強さを内包しており、しかも結構な美人だ。流石に幼女に手を出すほど堕ちてはいないが、あと3年遅かったら危なかった。
「あ...あの...」
「ン、どした?」
「せ、石鹸なんて高価なものを使っても、よろしかったのですか?」
「いーのいーの。水洗いじゃほぼ効果なかっただろうし。」
そう言いつつ、頭を撫でてやる。
「んぅ...」
やっぱり可愛いな。あと3年と言わず、2年でもギリギリ...
「あ、そういえば。」
「は、はい...」
「自己紹介がまだだったな。俺はウキョウ・
「え、えっと.........”ラーマ・ノニト”です。」
「じゃあラーマ。しばらくここで待っていてくれないか?」
「え...」
そう言った途端に青ざめるラーマ。
「いやいや、捨てるわけじゃないから、俺はちょっと武器を取りに帰らなくちゃいけなくて...」
(いや、どうせ教会まで行くなら連れて帰ったほうが...)
「そうだな、じゃあ付いてきてくれないか?うちのホームでお留守番していて欲しいんだ。」
「ど、どうしてですか?」
ラーマは腰に抱きつきながら上目遣いで訪ねてくる。お前わざとかよ...
「これから、行かなきゃいけないところがあるんだ。」
そう、こんなことをしてすっかり忘れていたが、物語が正しく進むのであれば、今日の昼過ぎにどこぞの女神様のせいでモンスターの大脱走が始まる。日の上りから見てあと1時間あるかないか...
もしまた自分のせいでモンスターの数が増えてでもいたら、被害が増えてしまう。それだけは避けなくては。
「時間がない。急ぐぞ!」
「は、はいっ」
...急ぐのだからこそ
ステイタス全開にしながら、少女を抱えてホームへと駆けた。
彼が走り始めた、少し後のこと。
「フフ、あなたに決めたわ...」
闘技場のモンスター倉庫にて。見張りを無力化したある女神が、白い大猿(シルバーバック)に命令を与えていた。
「”小さい私を追いかけて”」
鉄籠の鍵を開け、モンスターを解き放つ。
「さて、後は...」
...ウキョウの影響は、特に神フレイヤの心情に、大きく響いていた。
不透明で、全く見通せない謎の青年。
そんな不確定要素の塊に、彼女が興味を引かれないはずもなく。
「...あなたがいいかしら。」
結果、原作では未登場のままに終わった、
「”
どうも、投稿者です。
いい感じにやる気が出てきたのでストーリーを書き、ついでにオリキャラをぶち込んでみました。やっぱオリキャラ作るの楽しいわ。
しかし若干出し切った感はあるので、次の投稿こそ遅れるんじゃないかなぁ、なんて思っちゃってます。では。