パルデアでアイドルを目指す   作:ゾネサー

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照らされた道を見据えて

 テラスタルの専用授業を受け始めてからかなり経ち、明日試験を受けさせてもらえることになった。今、私の手元にはテラスタルオーブがある。管理が厳しいらしく、試験に落ちたらすぐ返却しなくてはならない。試験の内容はテラスタルを用いてキハダ先生に勝つこと。あちらはエスパー・格闘タイプのチャーレムを出してくることを予告していて、こちらはその必要がない。またあちらはテラスタルを使用しないんだとか。進化系のチャーレムに対してテラスタルの有利を活かして勝利できれば、使いこなす資格アリということなのでしょう。

 

「はあ……。こんな時に限ってネモさんがいないなんて」

 

 ネモさんはご実家の用事で帰省している。どんな授業でも顔を出していた彼女がアカデミーにいない。当たり前のようになっていたことが突如無くなると胸にぽっかりとしたものが浮かぶのだと分かった。

 

「……いけないいけない。今いないだけよ。付き合ってもらった経験まで消えはしないんだから」

 

 再び試験を申請するには一ヶ月以上は空くらしい。もうその時には次の宝探しが始まっているわ。だから思わず不安になってしまった。他にも理由はあるのだけど……とにかく私は意識して明るい表情を浮かべるようにしてみる。築き上げたものは嘘じゃないと信じたかったから。

 

「出来ることはやったし、最後にいつものレッスンをして寝ましょうか」

 

「チルッ!」

 

 踊りの練習を始めたら、特にクワッスは見る見るうちに上手くなっていったわ。どうやら元から素養があったらしいの。今は動作の指示を送りながらだけど、いつか私の歌に合わせて踊ってくれたら嬉しいな。

 翌日の朝、バトルコートに向かった。熱く語る時間が長いせいか、キハダ先生は授業中に実践に入れないのよね。

 

「押忍! よく眠れたか!?」

 

「いつもとあまり変わらなかったわ」

 

「はっはっは! それでいい! それぞれ最適な睡眠時間があるからな! 早速だが試験を始める! 料理のアドバイスを貰った恩はあるが、それとこれとは話は別だぞ!」

 

「ええ。元よりそのつもりです」

 

 今日もキハダ先生は元気ね。私もやる気では負けないようにしないと。予告通り繰り出されたチャーレムがヨガの構えを取って脱力する。私も息を吐いて肩の力を抜いてからクワッスを繰り出したわ。

 

「……『アクアジェット』!」

 

「む!?」

 

 私は開始早々に仕掛けた。キハダ先生の仕草に気を配っていたところ、動く気配を感じなかったから。私がテラスタルするのを待っていたように思える。その隙を突いて水を纏った突撃を炸裂させられたわ。

 

「『しねんのずつき』で反撃だ!」

 

「『みずでっぽう』で離れて!」

 

 チャーレムは一歩後退(あとずさ)りながらも、すかさず頭を打ち付けてきた。間一髪……。水を放つ反動で離れながらダメージを与えることに成功する。

 

「構わず『かみなりパンチ』だ!」

 

「……!」

 

 するとチャーレムが電気を纏わせた拳を突き出して突進してきた。水が掻き分けられ、道が切り開かれていく。まずい……!

 

「テラスタル……!」

 

「……! ここで来たか!」

 

 オーブを起動すると、とてつもない衝撃が右手に伝わってきた。放出されるエネルギーの反動が強い……! 思わず両手で押さえそうになるけど、意地で片手のまま放った。見栄だけでも格好付けたかったのかもしれない。結晶化したクワッスの頭にはダイヤモンドが象られていた。

 

「そうか! よりによってノーマルタイプだったのか……」

 

 水を放ち終えたクワッスは一撃を貰ってしまうも、なんとか耐えてくれた。……想定よりダメージが大きいわね。あまり猶予は無さそう。

 

「だが、容赦はしないぞ! 続けて『こおりのパンチ』!」

 

「『アクアジェット』で回り込んで!」

 

 追撃で放たれたパンチを噴射で横に回避したクワッスは半円を描いて後方へと回り込んだ。

 

「『つばさでうつ』のよ!」

 

「躱せるな!」

 

「……!」

 

 くっ、二撃目は軽いジャブだった……! 背中を捉えたように思えた翼が見切られて躱されてしまったわ。しかもこの間合いは……。

 

「『かかとおとし』で弱点を狙わせてもらうぞ!」

 

「コォォォ!」

 

 近距離での戦闘を得意とする格闘タイプの本領……! ノーマルタイプになったクワッスじゃ耐えられない。……こうなったら!

 

「そのままウィンドミル!」

 

「なにっ!?」

 

 とっさに出た指示だった。クワッスも驚いたはず。それでも振り下ろした翼を緩衝材に背中を地面につけ、軸として身体を回転させてくれた。

 

「コォ!?」

 

「あ、あそこから躱したのか!?」

 

 攻撃後の隙を突かれた厳しい反撃だった。けれど攻撃の勢いそのままに移動したことで、振り下ろされた踵は空を切って地面に誤爆した……!

 

「流れに乗って『ダブルアタック』!」

 

「チルッ……!」

 

 クワッスはそれぞれの足を回転を利用して叩き込んだ。テラスタイプと同じノーマル技……タイプ一致で放たれたそれを懐に貰ったチャーレムは背中から地面に倒れたわ。か、勝てた……!

 

「お見事! 文句なく合格だ! 今、オーブは正式に君の物になった。おめでとう!」

 

「ありがとうございます!」

 

「それにしても最後の一連の流れは見事だったな。あれは……そう! カポエイラのようだったぞ!」

 

「カポエイラ……ですか?」

 

「ダンスを融合させた武術のことだ!」

 

「……! そう見えたなら、良かったわ……」

 

 まだまだ練習中で実戦で使うには不安定だけど。かつてナンジャモさんに指摘されたバトル中も楽しませる方法。色んな人に話を聞いてようやく具体的なイメージが掴めてきた。いつか歌うように指示を出して、踊るような動きで戦えたならば……。

 

「チルッチルッ」

 

「凄かったわ。ふふっ。私も思わず見惚れちゃった」

 

 クワッスが駆け寄ってきた。頭上に付いているダイヤモンドの輝きが眩しくて目を閉じそうになる。けれどその光は見つけた宝の地図を鮮明に照らしてくれている気がして。私は嬉しそうに笑う顔を見つめながら、飛び込んできたクワッスを抱き締めた。

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