パルデアでアイドルを目指す   作:ゾネサー

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宝物の在処

「押忍! ジムテスト合格だ!」

 

「やった……!」

 

「良いぞミラ! 喜びが伝わってくる! 先生も嬉しいぞ!」

 

 リップさんと友人らしいキハダ先生が担当してジムテストが行われたわ。合図に合わせて喜怒驚楽を全身で表現するという内容。私は以前ナンジャモさんに笑うことを促されて、意識してみたら自然と表に出るようになっていたことを思い返していた。無理だなんて勝手に限界を作るものじゃないわね。大変だったけど、出来た……!

 

「……あら。おはようございまーす」

 

「お、おはようございます!」

 

「うんうん。挨拶は大事よ。じゃ、見せてもらおうかしら? 練習の成果を……本番で!」

 

「やってみせるわ!」

 

 バトルコートで待っていると仕事の合間を縫ってリップさんが来てくれた。これまでもジムリーダーと兼業している人は見てきたけれど、彼女はメイクアップアーティストだけでなく広告モデルも担っているから、忙しさもひとしおのよう。ただそれでもこなして、私のトレーニングにまで付き合ってくれた姿から、私も夢を現実のものにする勇気をもらったの。

 ジムバトルが始まったわ。私はウェルカモを、向こうはリキキリンを繰り出してきた。

 

「まずは『アクアジェット』でリズムに乗るわよ!」

 

「ふふっ。慌てず騒がず『リフレクター』を纏いましょう」

 

 『リフレクター』……! 確か『ひかりのかべ』と双璧をなす変化技で、ぶつりこうげきを半減させられるんだったわね。でも『アクアジェット』なら張り巡らされる前に……!?

 

「チル……!」

 

「えっ!?」

 

 『アクアジェット』が不発に終わった……? 先制技を封じる特性があるのかしら……。その隙に『リフレクター』が張られてしまった。なら反撃を恐れずあちらから攻め込んでくる……!

 

「メイクが仕上がったところで『しねんのずつき』!」

 

「耐え忍んで『きあいだめ』よ……!」

 

「……!」

 

 ピンク色に染まった頭で突撃された。タイプ一致となるエスパー技……かなりのダメージね。でも短期決戦に持ち込む方法はある!

 

「今よ! 『アクアカッター』で解放して!」

 

「……!」

 

 ウェルカモは『じしんかじょう』との兼ね合いもあってぶつり主体。けど『リフレクター』には穴もある。急所に当たった場合は半減できない……!

 

「よし……! 倒し切った! 良いわよウェルカモ!」

 

「チルッ!」

 

「どうやらエクササイズ以外の練習もチリバツのようね」

 

「ええ! ネモさんに付き合ってもらったの」

 

「私も色んなこと試せて楽しかったよー!」

 

 以前、アカデミーで付き合ってもらっていた時より確かな手応えがあったわ。知識や経験、あの時より変われたことも沢山あると思うけど。何より吹っ切れた……そんな感じがしたの。

 続くフラージェスの『はなふぶき』で弱点を突かれたウェルカモは倒れてしまったわ。けど『ローキック』ですばやさを下げたわ。ここはハイダイさんの時と同じ作戦で押し切れる!

 

「舞い踊りましょう! 『めざめるダンス』よ!」

 

「まいまいスタイルってことは、ゴーストタイプね。『マジカルシャイン』で応じるのよ!」

 

 オドリドリとフラージェスがそれぞれ闇と光のエネルギーを放ったわ。タイミングがズレたことで技同士はぶつからず、先にフラージェスに当たってから反撃気味にオドリドリにも当たった。

 

「……!? エスパータイプじゃない……フェアリータイプ!」

 

「ご名答。エスパータイプのジムだからって決めつけちゃダメよ?」

 

 こちらの技がバツグンではなく、フェアリー技の『マジカルシャイン』の威力が高かった……。エスパーもフェアリーも格闘技は半減……『ローキック』で探れなかったのは痛かったわね。ただ悪タイプで攻めたならともかく、双方弱点を突けない状況なら挽回は効くはず!

 

「『エアスラッシュ』よ。空気を切り裂く音を聴かせてあげて!」

 

「もう一度『マジカルシャイン』! ……! 怯まされた……!?」

 

 オドリドリが一閃して衝撃波をぶつけると、放たれるはずの光がスパンコールのように霧散したわ。すばやさの有利は何も先手での大ダメージで倒し切ることだけじゃないわ。怯みの追加効果と合わせて一方的な連撃を狙えると学ばせてもらった! これで次の攻撃は耐えられない。後は交代も考えてゴースト技で押し切ればいい!

 

「……最後の輝きを見せて! 『でんこうせっか』!」

 

「……!? 『めざめるダンス』よ!」

 

 そうか……『アクアジェット』と同じく先制して動ける技だったのね。まさしく電光石火の勢いで突撃されたオドリドリは体力を削られたものの、反撃のダンスでフラージェスの輝きを闇に閉ざしてみせたわ。

 

「良いパフォーマンスだったわよ。さぁ、トリはあなたよ。存分に魅せてね。サーナイト!」

 

「ポーポー!」

 

 今ので余力は無いわ。ここは覚悟を持って真っ直ぐ攻める!

 

「あなたの踊りで観客を惹きつけて!」

 

 オドリドリに負けないくらい私も気持ちを顔に、声に、体に出し切って指示を送った。

 

「こちらも負けないわよ。『ドレインキッス』を受け取ってちょうだいな」

 

 リップさんも投げキッスと共に指示を送ったわ。サーナイトもシンクロするように投げキッスで作り出したハートマークを通してオドリドリの体力を吸い取った。上手くダメージを軽減されてしまったわね……。

 

「良いライブだったわ。フィナーレは貴方が飾って! ドオー!」

 

「どー」

 

 『ドレインキッス』の威力が高かったわ。フラージェスと同じくフェアリータイプ? だとしたら毒タイプが弱点。『ヘドロウェーブ』で攻めるべきかしら。……いや……!

 

「『ドわすれ』で肩の力を抜きましょう——本当の貴方を出すために!」

 

「『サイコキネシス』でランウェイを彩って——自分自身も輝いて!」

 

 私達の声が重なった。そして同時にテラスタルオーブを手にしていた。解放の衝撃で思わず一瞬顔を顰めてしまったけど、優美にオーブを手にしているリップさんを見て、私も口角を上げて放ってみせたわ。エスパータイプにテラスタルしたサーナイトが放ったサイコパワーは強烈の一言だった。押し寄せる奔流にドオーはとくぼうをぐーんと上げて受け流していく。

 

「虫タイプにテラスタルして凌いだ!」

 

「けどダメージは深いんじゃ!?」

 

「いや、ドオーの高いとくぼうをさらに上げた分浅めだ!」

 

「行けるぞチャレンジャー!」

 

 その光景に盛り上がる観客からやがてバックコーラスが添えられたわ。私の脳裏にはリョウタさんやヒロユキさんに言われたことがフラッシュバックしていた。そっか……。私はこうやって自分の気持ちを共有して、みんなにも雰囲気を楽しんで欲しかったんだ。私の好きな時間がみんなにとってもそうだと、嬉しいから。

 

「突き進んで!」

 

「『マジカルフレイム』で焼き尽くしちゃって!」

 

 『リフレクター』が切れたことを確認し、ドオーを接近させる。するとサーナイトが吐き出した炎が包み込んだわ。虫タイプの弱点……けれどポケモンのタイプは多くて二種類。『サイコキネシス』の威力を加味すればサーナイトはエスパー・フェアリータイプ! テラスタイプがエスパータイプだった以上、これはタイプ不一致。とくぼうを上げた今なら!

 

「飛んで火に入る虫も時として火を貫くわ! 『メガホーン』……!」

 

「……!」

 

 ドオーの背中から六本の太いトゲが突き出されると、炎の中に道が切り開かれていく。苦しみながらも発射地点まで辿り着いたドオーはトゲでサーナイトを突き上げたわ。タイプ一致の大技が弱点にまで届いた……それが意味するところは、決着だった。

 

「……やられたわ。これでも弱点は多く突かれてきたんだけど。まさかここで虫タイプなんてね」

 

「ふふっ。虫タイプを甘く見ると痛い目見るのよ」

 

「なんだかんだカエデちゃんの娘さんなのね」

 

「ええ、それも私。私はアイドルだけでも、トレーナーだけでもない。ここに立つことで培った全てを見られているのね」

 

「そうよ。だからリップ達は体で示してみせるの。エンターテイナーとしてね」

 

「私……これからもそうでありたい! 時に楽しさを、時に悔しさを……色んな感情で共鳴するひと時。けれど私が変化を求める限り、景色が変わる。そんな夢のような時間を振り撒ける大人になりたい!」

 

「もうリップに止める権利は無いわ。応援しちゃう。だから……究極まで突き詰めてね」

 

「はい……! お世話になりました!」

 

 いつか憧れた光が眩しくて、目を瞑っていたこともあった。やがて舞台に立とうとする者にはスポットライトが当てられて、一つ一つの動きが見られるのだと分かった。表現の仕方は自由で、だからこそ不安もあるけれど、私は私らしく進めば良いのだと前を向けた。眩しいと思っていた光は陰に落とした宝物の在処を照らしてくれていた。

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