パルデアでアイドルを目指す   作:ゾネサー

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好きこそ物の上手なれ

「ミラ……!?」

 

「あ、ネモさん。おはこんハロチャオ」

 

「えっ! お、おはこんハロチャオー!」

 

「えー! なにナニ? もしかして知り合い?」

 

 ネモさんがハッコウジムに挑んできた。存外早い再会だったわね。……西門から出たはずよね?

 ジムテストをクリアしたネモさんは勢いそのままにナンジャモさんを突破したわ。前までは何故強いのか分からなかったけど……集中力が凄いのね。最初から最後まで変わらぬ姿勢で、バトルにのめり込んでいるんだもの。ナンジャモさんの言葉を借りるなら、狩人のごとしね。

 折角なので断りを入れて、ネモさんにお茶でもどうかと誘った。返答は「それなら勝負しない!?」だった。本当にポケモン勝負が好きなのね……。これまで何度も誘いを受けていたのだけど、アイドルに関係無いからと全て断っていたの。だから了承した時の彼女の喜びようは凄かったわ。

 

「ミラ! 実りある勝負をしよっ!」

 

「ええ……!」

 

 ネモさんはケンタロスという身体中が黒く染まったポケモンを繰り出してきた。クワッスと共に食らいついていったのだけど、残念ながら負けてしまったわ。一つ一つ考えながら動いている私と、感じるままに動く彼女ではそれも当然のことかしら。けれど私もクワッスも彼女達の動きを肌で感じられたのは勉強になった。彼女にとって実りがあったのかに関しては、疑問が残るところだけど。それでも彼女は目一杯楽しんでいたわ。

 

「どうしてチャンピオンランクが夢じゃないって言ってくれたの?」

 

「気になるの?」

 

「わたし、ミラに勝負をしつこく迫りすぎかなって思ってたから……」

 

「そんなこと気にしなくていいのに。簡単な話よ。それだけ望むほどポケモン勝負が好きな人を私は知らなかったから」

 

「……! それだけで言ってくれたの?」

 

「そうよ。だって好きなことで掴もうとした目標が泡沫(うたかた)の夢なんて悲しいじゃない。貴女ほど大好きなら尚更ね」

 

「……! 嬉しい……! 絶対なるよ。チャンピオンランク!」

 

「ええ。応援してるわ」

 

「だからもう一回()ろっ!」

 

「………」

 

 再戦はクワッスも疲れているし断ったわ。そうしたら、居ても立っても居られないと疾風(はやて)のごとく駆けて行ってしまった。……あれだけ集中して勝負しているのに、彼女自身は疲れないのかしら。

 翌日。珍しいことに今日はジムがお休みらしい。

 

「皆の者の噂によると、徹夜で片っ端から勝負を挑んだトレーナーがいて、チャレンジャーが途切れたらしいぞ〜!」

 

「……それはそれは」

 

「本当かどうかは怪しいけどね〜」

 

 思わず額を押さえる。ネモさん……貴女という人は。課外授業が終わったら、滋養強壮に効果がある料理を持っていって、あまり無茶しないように注意しないと。

 

「てな訳で到っ着〜!」

 

「涼しくて気持ちが良いわね」

 

「でしょでしょ〜! ボクのマル秘スポットなんだ〜!」

 

 小さな林を抜けた先には綺麗な川が流れている野原があった。それなりに歩きはしたけど、大都市ハッコウシティの近くにこんな場所があるなんて思いも寄らなかったわ。

 

「JAMO'Sキッチンの時っ間っだぞ〜!」

 

「……何らかのソレに反していないかしら?」

 

「カメラ回してないからヘーキヘーキ! 今日作るのは〜? な、なんと! サンドイッチだ〜!」

 

「定番中の定番じゃない」

 

「ただのサンドイッチと侮ることなかれかれ〜! 今回ボクが選んだ具材は……これだぁー!」

 

「ヌードル!? サンドイッチに……?」

 

「これが意外と合うのだよ〜。ミラは?」

 

「ハーブソーセージをメインに、スライスしたピーマンとたまねぎを乗せて……」

 

「うんうん」

 

「ハラペーニョとクレソンを添えるわ」

 

「うん!? なんかオシャレさんな食材が出てきたぞ〜! これは楽しみ! お次は味付けタイムだ!」

 

「私はチリソースにするわ」

 

「そう来たかぁ〜! チリソースでも良いんだけど……でもボクは、オリーブオイル!」

 

「最後にピックを刺して……」

 

「完成〜! イェーイ!」

 

「イ、イェイ」

 

「へいロトム! 記念撮影よろしくねん」

 

「……! ……やったわね」

 

「ニッシッシ。映えそうな写真頂き〜」

 

 油断したわ。一回転してバンザイした彼女に合わせて手を挙げてみたら、作ったサンドイッチをバックにばっちりとツーショットを撮られてしまった。さすがはナンジャモさんの配信を担うスマホロトムね……。

 

「んじゃもーサンドイッチも頂くとしますか。はい!」

 

「えっ。これってナンジャモさんのじゃ」

 

「ボクが作ったサンドイッチを食べて欲しいんだ〜! 美味しいから!」

 

「そういうことなら……私のはナンジャモさんに」

 

「良いの!? 食べる食べる〜!」

 

 ヌードルとパンって合うのかしら。自分ではしない組み合わせ……興味半々、恐れ半々で口にしてみる。

 

「美味しい……」

 

「ホント!? やった〜!」

 

 少し硬めのパン、柔らかい麺、そしてあっさりとした歯応えのレタスと食感が良い。ケチャップがそれぞれに合っているし、口にする度にオリーブオイルの風味が漂って食欲を促していく。

 

「ん〜。ビリビリとシビれてスパイシー! 1000万ボルト級だよ〜!」

 

「強めの刺激にしていたから、口に合って良かったわ」

 

「辛い系はあんまり挑戦しないから、新しい発見だったよ〜! ミラって辛いの好きだったんだ!」

 

「代わりに甘いものはダメなんだけどね」

 

 思えばこうして他の誰かと好みを共有したのは初めてかもしれない。好きな人が同じ物を好いてくれると嬉しいものね。

 食べていると私達のポケモンが全員顔を覗かせてきた。先に食べちゃってたわね。人数分作ってあったから、それぞれ一個ずつ取っていく。

 

「うぱ?」

 

 そうしているといつの間にか茶色い野生のポケモンが寄ってきていた。クワッスが持っているサンドイッチを何とも言えない表情で見つめている。

 

「あれ? ウパーだ〜。ここら辺だとちょっと珍しいね」

 

「チル……チルッ」

 

 どうやらクワッスは欲しがっていると解釈したらしい。惜しそうにサンドイッチを見ていたけど、真っ二つにして片方をウパーに向けたわ。良い子ね。ウパーはしばらく目をパチクリさせていたけど、少ししてかぶりついた。すると気に入ったようでそのまま食べ切ったわ。ふふっ、良い食べっぷりね。

 

「うぱぱっ」

 

「チルッ?」

 

 クワッスが食べ終えたのを見届けると、ウパーが距離を取ってぴょんぴょんと跳ねた。

 

「どうしたのかしら」

 

「バトルで遊んで欲しいみたいだね〜」

 

「……! バトルで……」

 

「チルッ!」

 

「……クワッスもやる気みたいね。なら食後の運動と行くわよ」

 

「頑張れ〜! 慣れないうちはポケモン図鑑でタイプを確認しとくと良いぞ〜!」

 

 こうして野生のウパーとの戦闘が始まった。毒・地面タイプ……複合タイプというやつね。私は脳内で相性を照らし合わせ、指示を送った。

 

「『みずでっぽう』よ!」

 

「そう! 地面タイプのウパーは水タイプが弱て……あっ」

 

「……!?」

 

 しかし放たれた水が効いている様子はなく、それどころか吸収されてしまった。

 

「特性『ちょすい』だ〜! 水タイプの技は効かないぞ〜!」

 

 弱点を当たらないようにするケースは見てきたけど……直接効かないようにする特性なんてものもあるのね。

 すかさず反撃が来るかと思ったらウパーは『しっぽをふる』だけだったわ。……! この状態変化は……ぼうぎょを下げられた!? しかも水が途切れたところで『たいあたり』を……これはぶつり技!

 

「『なきごえ』よ!」

 

 踏みとどまって発射していたクワッスに避けるのは難しそうだった。こうげきを下げることでなんとか大ダメージを避け、飛ばされずに済む。

 

「『つばさでうつ』で弾いて!」

 

 突撃の勢いが収まったところでクワッスがカウンター気味に翼で払う。水タイプのクワッスの飛行技だからか、まだまだ余裕はありそう。

 

「『みずでっぽう』を地面に撃って、距離を取ったら『ふるいたてる』!」

 

「うーぱっ!」

 

「あっちも負けじと『マッドショット』だ〜! クワッス、粘れ〜!」

 

 追撃のチャンスではあったけれど、迂闊な攻めは反撃の起点とされやすい。ここは、体勢を整える。泥を浴びたクワッスに余力は見られない。地面タイプの技みたいね。けれど息を吸い込んだら泥を吐き出してくるなら、次は回避の指示を出せるかもしれないわ。……! ウパーが尻尾を紫色に染めて突っ込んできた。

 

「ここで『ポイズンテール』……!」

 

「『つばさでうつ』で迎え撃って!」

 

「チルッ……!」

 

 クワッスを向かわせると、ウパーの視線がこちらに向いたわ。このままなら技同士がぶつかり合う。あれは同タイプの毒技の可能性が高い……分は悪いでしょう。

 

「うぱっ!?」

 

「上手い……! 足を滑らせたっ!」

 

 草に隠れて見えづらいけど、二度目の水鉄砲で水溜りを作っておいたの。こちらに気を取られてウパーが転んだ隙に、奮い立ったクワッスの一撃を無防備を晒したウパーに叩き込めたわ。

 

「後はボールを!」

 

「……! そうだった」

 

 そして私はモンスターボールを投じたわ。上手く当たってくれた。繰り返される点滅に私達は思わず息を呑む。すると小気味の良いカチッ、という音が鳴った。

 

「おめでと〜っ!」

 

「やった……!」

 

 しゃがんでポケモンボールを手に取り、クワッスとハイタッチを交わす。私の胸中は新しい仲間を迎え入れた嬉しさと、実った達成感でいっぱいだった。

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