パルデアでアイドルを目指す   作:ゾネサー

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破壊と創造を繰り返して

 ハッコウシティから出発した私は海沿いの遠回りルートを進んでいた。行きのように直線的な道ではないため、目的地に着くには一日どころか一週間でも足りなかった。

 

「『たたきつける』よ!」

 

「うぱっ!」

 

 道中幾度となく野生のポケモンが襲い掛かってきた。どうも好戦的な子が多いらしい。今もウミディグダが『まきつく』べく胴体を伸ばしてきたから、ウパーが頭で叩きつけた。砂浜に伸びる身体が思ったより長くてビックリしたわ。

 

「……そこに『ポイズンテール』!」

 

 追撃で振り下ろした尻尾が炸裂し、ウミディグダはそのまま倒れたわ。私はバッグからどうぐを取り出した。

 

「はい。もう良いわよ」

 

 キズぐすりで治療したウミディグダは潜ってどこかへと行ってしまった。モンスターボールも手元にあるけど、今のところ捕まえるつもりはなかった。まずここ数日ウパーが野生の時の要領で戦っていたため、息を合わせるのが難しく、ようやく少しずつ合い始めていること。クワッスとの連携とはまた感覚が違くて、使い分けが慣れない。クワッスにだけ集中していてあれだけ掛かったのだから、考えてみれば当然のことだった。ポケモンは同時に最大で六匹連れ歩けるらしいけど、実際にそうしている人が少ない理由が分かった気がするわ。

 そうして私は久しぶりのようにも思える大きな町に辿り着いた。ボウルタウン……町ではあるものの、全体が自然公園のような装いをしているのね。花畑にはポケモン——ええと、フラベベにキマワリ——が集まってきているわ。それと所々に作品が展示されているわね。折角なので見て回っていると、先程終始笑顔を見せていたキマワリが葉っぱの手を力無く伸ばしている造形物を見つけた。表情も物憂げで、おおよそ気分が高まる代物ではなかったけれど、私はそこで足を止めていた。

 

「……キサマはこの作品を見て何を思う!」

 

「え?」

 

「とうっ!」

 

 頭上から話しかけられたと思ったら、男性が飛び降りてきた。スタイリッシュに着地し、私の方を見つめる。どうやら返答を待っているらしい。

 

「答えなくてはいけないの?」

 

「今でなければ、いつ答えられるというのだ!」

 

 強引ね。……どこからともなく現れた人と二度と会うこともないか。私は仕方なく答えた。

 

「このキマワリを作った人は相当追い込まれていたのでしょう」

 

 ……以前鏡で見た誰かさんにそっくりだもの。

 

「……! その答え……じつにアヴァンギャルド!!」

 

「は、はあ……」

 

「『投げやりのキマワリ』……識者により様々な説が議論された! だが! その実態は! 作者が投げやりに作り出したものなのだ!!」

 

「タイトルまでも投げやりね」

 

「そんな審美眼を持つキサマと合作アートを作りたい!」

 

「そこまで滞在するつもりはないから……」

 

「アートはときに速さが命! 時間は取らせぬ! ああ、もうジムテストなど待っていられるものか! 今すぐワタシとバトルをするのだ!!」

 

「……! ジムテストって……まさか貴方、ジムリーダー?」

 

「そうだ! ワタシはコルサ! キサマの名は!?」

 

「ミラよ……。大丈夫なの? ジムテストをしないなんて」

 

「ジムリーダーとしてではなく! ワタシ個人と戦うのだ! それならば問題あるまい!?」

 

「仕事中なのでしょう? リーグの視察が来ていても知らないわよ」

 

「構うものか! ワタシにとってアートとは何事よりも優先されるのだ!!」

 

 他に誰も聞いていなくて良かったと思わされる爆弾発言ね。芸術は爆発だとでも言いたいのかしら。……ここもテーブルシティ近辺のジム。受け取り方は立場によって変わる、か。

 興味が湧いたのでコルサさんに付いて行くと、風車近くのバトルコートに案内された。独創的な配色で塗られた中央を境に私たちは対峙する。

 

「個人的な勝負だというのなら、ポケモン図鑑を使わせてもらえるかしら?」

 

「その方がより深みが増すであろう! 準備はいいな!? 成形……開始だ!!」

 

 時間を取らせないとの言葉の通り一対一のシングルバトルで決着をつけるとのこと。私はクワッスを、コルサさんは……岩タイプのウソッキーを繰り出してきた。木のような見た目をしているから、てっきり草タイプかと思ったわ。危なかった。

 

「『みずでっぽう』よ!」

 

 開始早々指示を出せた。自分でも今のは考えるより早く身体が動いたのが分かった。

 

「さらなる細工をくわえよう! 題して『ウソから出た(まこと)』!」

 

「……!? テラスタル!?」

 

 テラスタルオーブが放られるとウソッキーが結晶化し、頭から満開の花を咲かせていた。放たれた水鉄砲がその身で受け止められる。……しまった……!

 

「……なるほどね。面白いじゃない。戦術も、芸術としても」

 

「なかなか見どころがある! 『くさわけ』により作品完成まで一気に導くぞ!」

 

 テラスタイプと同タイプの草技……! これを弱点にもらう訳には!

 

「足を浮かせて!」

 

 水を突っ切って飛び込んでくるウソッキーに対して、こちらは踏ん張るのをやめて反動で離れる。その結果、掠りはしたもののまともに食らわずに済んだ。しかも反撃のチャンス……!

 

「『つばさでうつ』のよ!」

 

「木とは鳥の戯れも『いわおとし』の憂き目も避けること無き存在!」

 

 ただでさえウソッキーはバランスを崩していた。しかもコルサさんが回避を指示しなかったことで、弱点の飛行技を直撃させられる……!

 

「……えっ!?」

 

「そんな環境でも生き続ける木のなんと美しいことか! 『くさわけ』により作品完成のサインとしようぞ!」

 

 確かに直撃はした。同時に飛び散る破片を見て、ようやく理解した。クワッスの陰になっていたけど、岩を盾にして勢いを落とされたのだと。だから倒すどころか、弾き飛ばすことすら叶わなかった。技を出し終えた無防備な所を狙われ、回避する間もなくクワッスは倒されてしまった。

 

「……お疲れ様。ごめんね、クワッス」

 

「キサマもご苦労であった。おかげで満足ゆく作品が仕上がった!」

 

「これで良かったのかしら……」

 

「もちろんだ。芸術とは破壊と創造! キサマはどうやらオーブを所持しておらず、相性も悪かった。しかし養分になるまいと足掻いた! それがまた次の芸術を生み出すであろう!!」

 

「足掻きを次に繋げる……」

 

 バトルが終わったら、インスピレーションが止まらないから新作の制作に取り掛かると言って去ってしまった。ジムリーダー業は? とも思ったけれど、彼がポケモンバトルで芸術を追求していることが良く伝わってきた。それは彼の姿を見てというだけではなく、バトルを通して感じられた。そういう意味でも彼の勝利なのかもしれないわね。……考え方は自由、か。

 翌日。旅立つ際に彼がジムリーダーとして戦うのを見かけた。どうやら合間を縫ってこなしているらしい。それでこなしてしまう辺り、凄い人なのかもしれない。

 どうやらポケモントレーナー同士は声を掛けるのがポケモンバトルの合図らしい。南3エリアでは思い切ってトレーナーに声を掛けてみた。最初のうちは負けが込んだけれど、次第に勝てるようになってきた。負けたり勝ったりの繰り返し……破壊と創造の意図がようやく分かった気がするわ。ポケモンセンターに戻ったりもしたから、想定よりかなり時間が掛かった。同時にここを一直線に突っ切ってきた自分がいかに考え無しだったのか痛感させられていた。色々なことを学ぶ機会が辺り一面に転がっていたというのに。

 そういう経緯があって、テーブルシティに到着した時には宝探しの期日が迫っていた。チラホラと寮に帰っていく学生の姿も見える。けれど私はまだ帰る訳にはいかない。……いや、違うわね。一度帰らないといけない。かつて夢を叶えるまでは戻らないと誓った場所に。

 西門から出た私はようやく目的地に辿り着く。セルクルタウンのパティスリー『ムクロジ』に。

 

「あら〜。お帰りなさいミラ」

 

「ただいま」

 

 そこではパティシェの衣装に身を包んだお母さんが帰省した私を迎えてくれた。

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