ANOTHER TIME 仮面ライダージオウ れん編 作:すずらん☭️
よろしくお願いします
この本によれば…普通の高校生、常磐ソウゴ。
彼には魔王にして時の王者、"オーマジオウ"となる未来が待っていた…
『魂を吸収する少女のウワサ』を聞きつけ、神浜市へとやってきたソウゴ達は、2人の魔法少女と出会い、ウワサになっているアナザーマギカと出会った。
事件解決の手がかりを求めて、各々情報収集を集めるとそこには、悲しい出来事が判明し…おっと、少し先を読みすぎてしまいましたね…
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撃破した魔女が、最後の悪あがきと言わんばかりに注射器を暴発させビームを放った。
そのビームの先にはツクヨミが隠れており、ゲイツも衣美里も恐らく間に合わない。
「ツクヨミ〜ッ!!!!!」
ゲイツの叫びが響き、絶体絶命のピンチ…と思われたその時。
ツクヨミを守るかの如く、寸前で紫色の爆発がビームを受け止め、何者かが彼女を抱きかかえてその場から退避することが出来た。
「……ふぅ、間一髪、だな!」
ツクヨミを助けた少女は降ろしながら呟いた。
少女とは言ったものの、衣美里や梨花よりも小柄で、小学生といっても差し支えないくらいの見た目だが、言動はそれとは違うほどに落ち着いているように見えた。
「あ、ありがとう……あなたは……?」
「アタシ?アタシは都ひなの、衣美里の先輩だよ」
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時代を駆け抜けた平成仮面ライダー達…
その力が今、未来へ受け継がれる!
祝え!新たなる王の誕生を!
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【ANOTHER EP04】
キミがつむぐヒビ2017
ソウゴと梨花は相談所へと戻ってきたが、鍵がかかっていたのでドアの前で立ち話をしながら3人を待っている。
体を突き刺すような寒さに対抗するために、コンビニで買ったコーンスープを飲みながら。
日はとっくのとうに落ちており、女の子が1人で帰路へ向かうには躊躇う程だろう。
「そういえば……門限とかは大丈夫なの?」
「ん〜……ないって言ったら嘘になるけど……えみりんたちと遊んでたっていえばどうにかなるっしょ!」
「へぇ〜…信頼されてるんだね」
「んまぁねっ、あたしも家族のことは好きだし、友達も大切にしたいしねっ!」
コーンスープの缶をくるくると回して飲みながら梨花が明るく話す。
「えみりん達ともたまーにパジャマパーリィとかしたりするから割といつものこととか思われてんじゃないかなっ?」
「パーリィ?」
「そそっ、パジャマパーリィだよーっ!友達んち泊まりに行って何をするわけでもなくお菓子食べながらめっちゃ夜中までだべり続けるだけなんだけどねーっ」
いいねそれ、と言いながらソウゴも微笑む。
それにしても、3人はいつまで経っても来ない。
もしかしたら何か面倒事に巻き込まれてしまったのか……と、頭を過ぎった時、複数人の足音が聞こえてきた。
「はぁー……はぁー……ごめんね遅くなって……!」
衣美里達が到着し、鍵を開けて相談所へと一行は入っていった。
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ソウゴは思った以上に遅くなったゲイツ達に心配したよと声をかけると、色々あってなと返された。
それと同時に、見慣れぬ人物がいつの間にか1人増えている。
ぼさぼさとした薄緑色の髪をなびかせた彼女は小学生くらいだろうか。
君は衣美里の友達なのかなと話しかけようとしたら、向こうから話しかけてきた。
「お前が、ときわっしょい……か?」
「うん、そうだけど……」
「アタシは都ひなのだ、よろしく頼む」
手を差し伸べられ、握手を交わしてお互い微笑みあった。
小学生にしては、落ち着いた言動だなとソウゴは感じた。
「衣美里に呼ばれてな、助っ人として来たわけだ。まあ正直……仮面ライダーだのアナザーマギカだのと、信じられないことは多いがな……」
「んじゃっ、みゃこ先輩も変身した姿見ちゃったんだ……」
「まあな、タイムジャッカー……とやらが魔女結界を作ったらしく、危ない所だったらしいが、どうにか間に合ったよ」
それを聞いて、ソウゴは4人に食い入るように問いかけた。
「皆……タイムジャッカーに会ったの……?」
「ええ……彼女……衣美里の学校に向かう途中に、あのタイムジャッカーが目の前に現れて、魔女結界……を作って、邪魔してきたのよ。ゲイツと衣美里のおかげで魔女を倒せたけど、その魔女の悪あがきで私が狙われた時に、ひなのに助けて貰って…」
「そうなんだ……ありがとね、ツクヨミやみんなを助けてくれて!」
ソウゴの礼に、ひなのがまんざらでもない顔を浮かべていると、衣美里がソウゴにいきなり弾けたポップコーンのように話しかけた。
「ねえねえときわっしょい!みゃーこ先輩幾つだと思うーっ!?」
突然クイズを出され、少しだけ困惑してしまったが、数秒考えて答えを出した。
「もしかして…俺と同じ…とか?わざわざこうしてクイズにしてるし、衣美里が先輩って呼んでるし」
「おぉーっ!せいかーい!!やったじゃんみゃーこ先輩!!」
「喜んでいいのかこれ……」
まだ数分間の付き合いだが、ひなのは衣美里に相当信頼されてるんだと、ソウゴは感じた。
「珍しく冴えてるわねソウゴ…」
ツクヨミの言葉を耳に入れながら。
梨花はそんな様子の衣美里を見て、違和感を感じていた。
「ねえ、えみりん…なんかあった…?」
一瞬目を逸らし、取り繕うような素振りを見せ、衣美里は答えた。
「まぁ〜…ね…思ってたより、きつくてさ…」
「仕方ない、あんな事知れば…まず先に、お前達2人の聞き込みの成果を教えてくれるか?」
ひなのに問われ、ソウゴと梨花は以下のことを伝えた。
・ウワサの少女が標的にしているのは、おそらく"いじめっ子"であるということ。
・標的の年齢は女子中高生に限定されているということ。
・ウワサが出現する時間帯は彼女達の下校時間くらいで、それ以降は出現しないということ。
直接聞き込みした情報だけでなく、梨花が友人や知り合いにメッセージをやりとりして聞いた内容も含んでいるが、凡そはこんな感じだ。
流れていた噂とは違い、少女が現れる時間帯は夜ではなかったが。
それを聞いて4人は納得した…というより腑に落ちたというようなリアクションを取っている。
「とりあえず、こんな感じかなぁ…それで、ゲイツ達は?」
「あぁ…それなんだが…」
目を左右に動かし、腕を組みながらゲイツは重々しく話し始めた。
「"れん"という名前の生徒は…木崎衣美里が通っている学校…神浜市立大附属学校に通っていた…ということが分かった…」
「おっ?そーなの?それじゃあその子に会えたの?」
「いや…彼女はすでに…もうこの世にいないらしい…」
「えっ……!?」
思ってもいなかったような情報にソウゴと梨花は驚きを隠せなかった。
それと同時に梨花は、衣美里の振る舞いに対する違和感が解消できた。
こんな真実を知ってしまえば、無理もない。
楕円形のタブレットを操作し、ツクヨミはニュース記事を2人に見せる。
「彼女の名前は"五十鈴れん"。今から一年くらい前に、いじめが原因で…ビルから飛び降りて自ら命を絶ってしまったみたいなの…」
思ってもいなかった事実に、2人は言葉を失った。
「学校側はあまりこの事は知られたくないみたいで、こんな小さい記事しか見つけられなくて…」
「あーしも知らなかったよ〜…中等部でそんな悲しい事件が起きてたなんて…」
「そう……なんだ……」
点と点が繋がった……はいいが、正直のところ手詰まりだ。
アナザーライダーを完全に撃破するには、それに対応した力を宿すライドウォッチを持っている者と接触しなければならない。
今回の場合はアナザーマギカであるが、それは変わらない。
だが、ライドウォッチを持っているであろう人物がすでにこの世にいないとなると、それを受け取れず、アナザーマギカを撃破することが出来ない。
ウォッチを他の誰かに渡していて、本人の代わりにウォッチを継承したということはあったが、4人の調べによると彼女は友人もいなかったようなので、その方法も難しいだろう。
「どーすればいいんだろー……みたまっちょに頼んでウォッチ?っていうの作ってもらうとか?」
「流石にあいつでも無理だろ……こんな未知のデバイスを作るなんて」
頭を抱える衣美里にひなのがゲイツの腕に巻いてあるウォッチを見ながらボヤく。
「そういえば、魔法少女って……自分にしか使えない魔法があるんじゃなかった?それを使うとか?」
ツクヨミの提案に、3人の魔法少女は顔をしかめて考える。
「あーしの幻惑で〜……できるかもしんないけど、自信はないかなぁ……」
「アタシのは化学爆発だしなァ……」
「ねえ、梨花のはどういうのなの?」
ソウゴの問いに、梨花は少しバツの悪そうな素振りを見せる。
そんな梨花を見てか、ひなのが代わりに説明を始めた。
「あぁ、まだこいつの固有魔法は分かってないんだよ。最初から自分の固有魔法が分かってるやつの方が少ないしな」
「そっか……」
落胆するソウゴをよそに、ゲイツは3人のやり取りを見て何かを感じたが、敢えて口には出さなかった。
「ねねっ、3人とも明日もここに来れる?今日はもう日が暮れちゃってるし、改めて対策を練ろーよっ」
「うん、大丈夫……だよね?」
梨花の提案に、2人を顔を伺いながらソウゴが答えた。
調べていたことが本当なら、今日はもうアナザーれんは出現しないはずだから。
3人をそれぞれの家に送り届け、ソウゴ達も神浜を後にした。
「とは言ったものの、どうすればいいのやら……」
「ウォッチが入手出来ないということは、今までなかったからな」
ソウゴたち3人は歩きながらこれからどうするかを考えている。
アナザーれんを止めるだけならウォッチを破壊しなくても可能だが、ソウゴ達が戦った際に出た青い火の玉が吸われた魂だったとして、現代で全て救い出したとしても、結局はウォッチがないのだからまた同じような目に遭ってしまういたちごっこになってしまう。
もし本当に被害者が全員いじめっ子だとしたら、そうした方が……という考えも出てしまうかもしれないが。
「そうかなぁ?」
素っ頓狂なソウゴの声に2人は眉を顰めるが、それを気にせずソウゴは話し続ける。
「その、確証はないんだけどさ……たぶん、ウォッチは手に入るんじゃないかな?なんか、そんな気がする」
"なんか、いける気がする"という言葉は、ソウゴの口癖ともいえる。
一見、何の確証もないフレーズではあるが、その言葉の通り今まで事件を解決し、ライダーの歴史を継承してきた。
微笑みながらそれを言うソウゴには既に、魔王の風格が醸し出されている。
「はぁー……だといいんだけど……」
ツクヨミからは、いちいちつっこむのも面倒、という気持ちが滲み出てしまったが。
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昨日とは違い、早起きしたソウゴは順一郎が作ってくれた朝食を摂り、神浜へ向かった。
ソウゴ自身はいつもより早く起きた感覚だったが、2人には先を越されてしまったようだ。
書き置きがあり、どうやら衣美里と共に調べきれなかった情報を調べておく……ということらしい。
彼女達も、この事件を解決するのに本気で取り組んでくれているようだ。
ウォッチ型になっているライドストライカーをバイクへと変形させ、自らも急行している時だった。
「おはよう、魔王」
「っ!?」
あの白いタイムジャッカーの少女が現れたのは。
ライドストライカーを駆けるソウゴの周りに浮かんでいる彼女はまるでお化けのようだ。
「お前……一体どうして……!?」
「簡単だよ、邪魔をしに来たのさ。あの未来から来た2人を倒そうと思ったが、失敗しちゃったからねぇ……一人でいる状況なら、やりやすいだろう?それじゃあ、楽しんでくれたまえ」
指パッチンをしながらそう言い残すと、彼女は霧のように消えていった。
すると、空間にうねりが発生し、サイケデリックな空間が広がった。
「魔女空間……!」
危険を察知し、ソウゴはすぐさまジオウへと変身する。
だがいつもと違うのは、今まで走っていた道がそのまま魔女空間へと置き換わっているということだ。
空間から逃れるようにライドストライカーを駆けるジオウの周りに、突然火球が降りかかる!
「……くっ!?」
背後には、シャンデリアと金属製の爪が入り交じったような不気味な存在が、先程のタイムジャッカーのように浮遊しており、ジオウを追跡している。
ジオウはそれを見て、その存在が魔女だと分かった。以前に見た魔女よりも、だいぶサイズは小さいが。
爪を一点に集中させると火球が形成され、すぐさま放たれる。
その時間はおよそ3秒だろうか。
《ジュウ!》
ジカンギレード ジュウモードを携え、魔女に銃撃を放ちながらバイクを走らせるが、背後への射撃は狙いが定まりにくく、魔女の中心部には中々当たらない。
おまけにバイクで走行しながらの攻撃となれば、通常時よりも攻撃を当てるのは困難だ。
そんなジオウを嘲笑うかのように魔女は火球を次々と繰り出してくる。
なんとか今のところは回避出来ているものの、この魔女空間がどこまで続いてるのかは分からない。
ひょっとしたら突然行き止まりについてしまい、一方的に嬲られてしまうかもしれない。
「どうする……!?このままじゃ……」
タイムマジーンを呼び寄せれば質量の暴力で勝てるかもしれないが、この空間に呼び寄せることが出来るか……各種アーマーを纏うのもひとつの手だが、ここで体力を消耗したくはない。
そしてソウゴは思いついた。
おそらくタイミングは1度きりだが、なんか…行ける気がすると。
火球の威力が徐々に増している。
ここで死ぬつもりは毛頭ないが、心臓の鼓動が早くなっていくのを自分でも感じている。
ハンドルから手を離し、ジカンギレードに腕に装着していたフォーゼライドウォッチを装填する。
《フィニッシュタイム!》
次だ。次の火球が放たれた後に、実行に移ろう。
そう決意した後すぐに火球が放たれた。
「ここだ!」
ジオウは火球を回避し、ライドストライカーを急停止させる。
すると魔女はそれに対応出来ず、ジオウの真上を通過しようとしてしまう。
おまけに火球はタイムラグがあり発射することは出来ない。
この瞬間を待っていたんだと言わんばかりに、銃口を向け、必殺の一撃を放つ!
《フォーゼ!スレスレシューティング!》
仮面ライダーフォーゼが使用するランチャーモジュールのミサイルを模した弾丸が放たれ、魔女は粉々に砕け散った。
本物のシャンデリアも、壊したらこうなるのかなとソウゴは思った。
「ふう……ほんとにスレスレだったかも……」
と、一息ついていると、白いタイムジャッカーが傍らに現れ、不気味に微笑む。
「さすがだね魔王……まあ、あれくらいの魔女ごとき、倒してもらわなきゃ張合いがない」
「お前……一体何が目的なんだ!」
一難去ってまた一難とはこういうことだろうか。
「目的……ねぇ……あまり早くネタばらししても面白くないだろう?さあ、これを持って行きたまえよ。物語の終わりまで、あと少しだからね」
タイムジャッカーはそう言いながらジオウに何かを投げ渡す。
「これは……」
グリーフシード。
魔法少女が魔女を倒した時に現れるアイテムで、これを用いて魔法少女は自身の穢れを祓うことが出来る。
魔法少女にとってはこれが無ければ死活問題だ。
「どうしてこれを?」
「この先、必要になるだろうと思ったからねぇ、安心してくれ、それには変な仕掛けはないからね……それじゃあ、また楽しませてくれよ?」
不気味に微笑むと、タイムジャッカーは光の粒子となり消失した。
「なんだったんだ一体……」
ジオウの変身を解除すると同時に、魔女空間が解除され、再びライドストライカーを走らせる。
先程まで漂っていた瘴気が嘘のように、風が心地よかった。
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ライドストライカーをウォッチ形態に戻し、ソウゴはエミリーの相談所へと駆け込んだ。
「ごめーん!遅くなっちゃって!」
中にはゲイツ、ツクヨミ、梨花、衣美里、ひなのの5人がいた。
「……何があった?」
ソウゴの顔を見るなりゲイツが訊ねる。
ただ寝坊したというわけでないという事を読み取ったのだろうか。
「えっと……来る途中、あの白いタイムジャッカーに邪魔されて…」
「っ!?あいつに会ったのか?」
「まあ、ね……それで、魔女……でいいのかな?それを倒したらこれを貰って……」
「……グリーフシード……!」
「えっ?魔女を倒したら出てきたとかじゃなくて?」
「うん……変な仕掛けはないって言ってたから持ってても大丈夫だと思うんだけど……」
衣美里達が困惑するのも無理はない。
本来グリーフシードは魔女を倒した時に魔女から排出されるものだ。
ゲーム的にいえば、ドロップアイテムという所だろうか。
とはいえ、渡してきたのはあのタイムジャッカーだ。これ自体に仕掛けはないにせよ、何か仕組まれているかのような……言ってしまえば、アナザーライダー(今回はアナザーマギカだが)が起こす事象は彼らが仕組んでいることではあるが。
だが、今はその事よりも解決すべきことがある。
ソウゴは衣美里とひなのを見て疑問をぶつける。
「あれ、そういえば2人とも…なんで制服なの?」
理由は至極単純なものであった。
「えっとね、みんなと合流する前に学校でちょっと調べ物しよーかなーってなって、この格好の方が入りやすい感じすんじゃん?」
「まあ……大した成果はなかったがなァ……」
「そっか……」
空振りには終わってしまったが、衣美里たちもこの事件を解決しようと真剣になってくれている。
場合が場合なので表出はしなかったが、ソウゴはそれが嬉しかった。
話がひと段落したのを見て、ツクヨミが本題を切り出す。
「それで、アナザーマギカをどうやって止めるかなんだけど…」
「んー……現状だと、あーしの固有魔法を使うしかないっぽいよねー…やっぱ自信ないけど…」
衣美里の固有魔法は生物又は魔力が通っているものには通用する…ということになっているらしい。
「その固有魔法とやらを、アナザーれんに撃って、今俺たちが持っているウォッチでも破壊可能にするというわけだな」
「なんか洗脳みたいだね…」
ゲイツの説明にソウゴは呟いたが、洗脳でもしない限り現状突破口はない。
それが今突きつけられている現実だ。
「仮にそれでアナザーれんを倒すとしよう、その時は、今とアナザーれんが誕生した時間の二手に別れるということだな?……正直、まだアタシはタイムトラベルなんて出来るのかと半信半疑だがな」
「だとしたら、あーしが過去に行かなきゃだよね?洗脳しなきゃだし」
言葉だけを聞くと、まるでこちらサイドが悪役のようだ。
「そうなるわね……それでここからは私の推測なんだけど、今の時間にいるアナザーれんの方が戦闘力は高いと思うの。だから過去に行くのは衣美里とゲイツかソウゴの2人だけの方がいいんじゃないかなって」
「どうして?」
梨花の問いにツクヨミが続ける。
「昨日ソウゴが戦った時、1度倒した後にタイムジャッカーが何か細工したあと戦闘力が上がっていたんでしょう?だから細工される前の過去の時間は今よりは戦闘力は高くないと思うの」
「ん、んー……?」
理屈はよく分からないが、そういうものなんだと梨花は解釈した。
昨日の戦闘のあらましをツクヨミ達も聞いており、どうやらタイムジャッカーが再びアナザーれんを誕生させた際にリミッターみたいなものを解除したので、戦闘力が向上したのと、攻撃を受けたら魂が漏れてしまうということを聞いて、梨花はさらに頭を悩ませてしまったが。
「ねえ、それじゃあ先に今の時間にいる方を倒さないと魂吸われた子達は戻ってこないって可能性ない?」
「そうね……念の為、衣美里の言う通りにした方がいいかもしれないわ」
以前、絶望を希望に変える魔法使いの仮面ライダーであるウィザードのアナザーライダーと交戦した際、ツクヨミはアナザーウィザードの魔法で眠らされてしまった事があり、その時はアナザーウィザードを撃破することによって魔法も解けたということがあったが、念には念を入れた方がいいだろう。
「じゃあ決まりだね、彼女が現れる時間を見計らって、作戦を実行しよう!俺が衣美里と一緒に過去に行く」
「待って……!」
ソウゴが行くよと言い終わる前に、梨花が遮った。
その表情は重々しい。
どうした、とひなのが呼びかけると、重い扉を開くかのように切り出した。
「あの……さ、黙ってて、ごめんなさい……これ、ソウゴくんに……」
鞄から取り出したものは。
「ライドウォッチ……!」
天面のカバーが銀色、本体が青色のライドウォッチだ。
羽根のようなマークと、"2017"という数字が書かれている。
「あたし……ね、これをたしか一年前くらいに……魔女退治したあとの、ビルの屋上で拾って……それでその……れんちゃん、が亡くなったって知って……もしかしたら、あたしがっ、もう少し早く、そこについてたら、救えたかも、しれなかったのにっ……って、思ったから、あたし一人で……」
次第に上手く言葉を紡げなくなった梨花を、衣美里が包み込む。
「ありがとりかっぺ…1人で抱えて、辛かったんだね……」
「……済まなかった、気づいてやれなくて」
身体は小さくとも、2人よりは何歳も年上であるひなのは、責任感が強い。それゆえ、大事な後輩が苦しんでいたことにこれまで何もしてあげられなかった自分を情けなく感じているのか。
正直、早く言って欲しかったという気持ちはあるが、ゲイツにもその気持ちは分かっている。
自分自身も、最低最悪の魔王によって数多の同胞を喪い、魔王が誕生する前に倒せばいいと自分で背負い込みここにいる。故に責めることは出来なかった。
「ほらほらっ、みゃーこ先輩もおいで〜!」
梨花を抱きしめながら衣美里がひなのを手招きしている。
「なっ……!?」
3人だけならすぐ抱きしめてやる所だが、ソウゴ達にも見られている状況だからか、少し躊躇っているようだ。流石に恥ずかしいのだろうか。
でも、大切な後輩を慰めるためだと、それに乗って梨花を挟むように抱きしめあった。
「ほらっ、アタシも来てやったぞ!」
すこしやけくそ気味ではあるが。
ソウゴは3人のそんな光景を微笑ましそうに見つめていた。
「……ありがと」
抱き終わって、少しだけ元気を取り戻した梨花がぼそっと呟く。
「いや、俺の方こそ……話してくれてありがとね、梨花!」
にこにこと笑みを浮かべてソウゴは梨花の頭を撫でる。
梨花は年上の男の子に撫でられるなんて滅多にないからか、戸惑いながらも少し頬が紅く染まっている。
言い方は悪いかもしれないが、こうして人の領域にずけずけと入り込めるところがソウゴの良さでもある。
話がひと段落したところで、これから先の事をツクヨミが切り出した。
「それじゃあ、衣美里が過去に行く必要が無くなったから、過去に行くのはソウゴだけってわけね」
「おっけおっけー!……5人で1人を叩くっていうのはちょっと気が引けちゃうけど」
衣美里が返事をすると、そこにソウゴが割り込んだ。
「いや、過去には俺と梨花が行くよ。」
その言葉に梨花は鳩が豆鉄砲をくらったような顔を浮かべる。
「梨花はさ、五十鈴れんって子を救えなかったこと、ずっと後悔してるんでしょ?だったらさ、その……本人じゃないかもしれないけどさ?アナザーれんを止めて、少しでも彼女の……なんて言うんだろう?悔恨?を祓ってあげようよ」
ソウゴにしては難しい言葉を使うな、とツクヨミは感じた。
アナザーマギカとはいえ、彼女だって五十鈴れんという存在だから、それを止めるのがせめてもの償いなのか。
少し歪んでいる解釈かもしれないが、伸ばされたソウゴの手をとりながら、梨花はそれに乗った。
「うん、分かった…!みゃこ先輩、えみりん、ゲイツくん、ツクヨミちゃん…この時代のあの子のことを……お願い」
銘々の返事が帰ってきて、梨花も覚悟を決めたようだ。
あっ、そうだと再び梨花はカバンの中を漁り、何かを取り出した。
「これ…もしかしたら役に立つかもって思って」
「これは……」
「服の……切れ端……か?」
薄汚れた白と青の布をひなのと衣美里が受けとると、2人はなにかに気づいたようだ。
「ほんと……お前ってやつは……!」
「りかっぺー!ファインプレーだよー!」
「それは一体なんなんだ?」
ゲイツの問いにえーっとねーと前フリを置いて衣美里が話し始めた。
「あーしたち魔法少女ってさ、魔女とか探す時魔女の痕跡とかを頼りにして探すんだけど、多分アナザーマギカ?も魔力使ってやばいことしてるから同じなんじゃね?ってわけで、この布がアナザーマギカの痕跡になってるから、これを頼りに探せば見つけやすいし、あーしの幻惑で時間を誤認させやすいんじゃね?ってこと!」
「まあ……痕跡がなくとも探そうと思えば探せるが……地図なしで目的地にたどり着くよりも、地図を見ながら目的地に向かう方が分かりやすいだろう?」
3人はひなのの喩えで大まかには理解することは出来た。
この切れ端は、アナザーれんへの地図ということだ。
「それとさゲイツ……これ使ってよ」
「……これは……!」
ソウゴがゲイツに渡したものは、"ディケイドライドウォッチ"だ。
世界の破壊者、または通りすがりの仮面ライダーこと、『仮面ライダーディケイド』の力を宿したライドウォッチであり、大きさは通常のライドウォッチよりも半分ほど大きくなっており、ディケイドの顔が象られている右側のスロットに他のライドウォッチを装填することで、性能をひと段階向上させることが出来る。
このライドウォッチにはまだ隠された能力があるのだが……それはまた別の話。
「あ、あとでちゃんと返してよ?」
「わかっている」
このディケイドライドウォッチを貸した理由は2つある。
アナザーれんが誕生した時よりも今の時間の方が強さは向上しているため、現段階で最大戦力であるそれを今の時間で戦うゲイツが持っていた方がいいということ。
それと、貸してあとで返せというのは、必ず戻ってくるという証ということだ。
僅かなやりとりではあるが、お互いにそれを読み取れた。
おそらく今のゲイツに言ったら否定されてしまうことだが、もう既に彼らの間には友情が産まれている。
彼らは、悪意の果てに心を殺され、僅かな光さえも得ることが出来なかった哀しき少女の悔恨を止めるために動き出した。
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「でさっ、過去に行くって…なんかタイムマシーンがあるって言ってたけど、どういう感じなの?」
「あぁ、もう呼んであるからそこまで移動しないと」
梨花の頭の中には世間一般によく知られたタイムマシーンが思い浮かんでいる。
未来から来たネコ型ロボットが乗るようなアレだ。
ライドストライカーを起動させ、梨花を後ろに乗せて人里離れた場所に移動すると、そこには…
「……でっか…!」
《タイムマジーン》があった。
人間の何倍もの大きさのそれを見るとそんなリアクションになるのは仕方がない。
タイムマジーンは今、ビークルモードという形に変形しており、エアバイクのようだ。
ハッチを開け、中に入ると、SF映画に出てくるような夥しい数の機械が入り組んだコックピットがあった。人が数名入れるくらいのスペースはあるが。
「へぇー……すごい……なんか夢みたい……」
「だよね〜!俺も最初見た時はびっくりしたよ」
と、言いながらソウゴはレバーに両手を添え、右手でディスプレイの文字列を"2017"に変える。
「いくよ梨花!しっかり掴まってて!時空転移システム、起動!」
ターイムマジーン…と、起動音が流れ、機体が動き出した。
梨花はソウゴに抱きつく形でなんとか掴まっている。
タイムマジーンは空へと飛び上がり、空中に現れた時空トンネルへと入り込んだ。
「ねえ、ソウゴくん……すこし聞いて欲しいことがあって……」
機体が安定し、ソウゴの身体から離れた梨花が切り出した。
そういえば家族以外の男の人に抱きついたの初めてだったかもしれないと、少しまた頬が紅くなっているが。
「どうしたの?」
「あたしの……固有魔法のこと……」
「えっと……まだ分からないんだっけ?」
「ううん、ほんとはもう分かってる……あの時、みゃこ先輩が気遣ってくれて、あぁ言ったんだろうけど……」
ひなのは本当にいい先輩なんだな、と改めてソウゴは感じた。
「あたしの固有魔法ね……"心変わり"なの」
「心変わり……?」
「あんま、使ったことないんだけど、少しだけなら、役に立てるかも知れなくて……例えば、攻撃を止めるとかさ」
「そうなんだ……使わないのって、その……魔力消費が激しいとか?」
少しばつが悪そうに黙ってしまったが、彼なら話していいかと、ゆっくりと口を開く。
「ちょっと長くなるんだけどね……あたしが魔法少女になった理由はね、好きな人と結ばれたかったからなの」
「そうなんだ……それで、その好きな人とは今でも」
仲良くしてるの?とソウゴが言い終わる前に食い気味に梨花が告げる。
「もう別れたよ……それにね、あたしが結ばれたかったのは……女の子なの」
えっ?とつい梨花のことを凝視してしまった。
「あはは……そうなるよね……んでね、その子にはちゃんと男の子の恋人が出来て……それであたしは……魔法少女になって願いのおかげで結ばれて……」
恋愛というものには、正直ソウゴは疎い。
とある事件の際に、ツクヨミがある男と握手してるのを遠くから眺め、青春じゃーん!と笑っていたように、今現在彼は恋愛というステージの外に立っている。
一応、初恋というものを経験してはいるのだが。
「でもさ、それはまやかしの愛でさ、自業自得なんだけど、あたしはあたしが嫌になって……結局、その子とは別れたの……」
「そう、なんだ……」
そういった事情もあってか、梨花はその固有魔法を使いたがらないと理解することは出来た。
でも、その心変わりを使おうと思えるほどに、梨花は五十鈴れんを助けられなかった事を激しく後悔しているのだ。
梨花がいたら五十鈴れんが救えたとは限らないし、それは傲慢とも言えるかもしれないが。
ソウゴは話を聞いていて、梨花をまた傷つけてしまうかもしれないが、気になることがあった。
「それでさ、その子と彼氏さん?はどうなったの?」
「あたしと別れたあと、ちゃんとまた結ばれたよ。その、願いのせいで、2人が付き合ってたってこと、なかったことになっちゃったから、ヨリを戻したってわけじゃないんだけど……ね」
「そうなんだ……もしかして、2人が結ばれるために、梨花が頑張ったとか?」
頬を軽く掻きながら梨花が続ける。
「……勘がいいね、ソウゴくんはさっ」
「俺はさ、そういう恋愛とかよくわかんないけど、自分のせいで捻じ曲げちゃった関係をちゃんと元に戻そうって思えたりして、それをちゃんと実行出来たんだから、梨花は良い奴なんだなーって思えたよ。誰かのためにこうしようあぁしようって思えるのってさ、すごいことじゃない?」
「もー……でも、ありがと、もしソウゴくんがちゃんと王様になったら、王宮?みたいなとこにちゃんと招待してねっ?みゃこ先輩もえみりんも」
「わかった、約束するよ!」
梨花の心が晴れるように、時空トンネルの終点が見え、光が差し込んできた。
━━━━━━━━━━━━━━━
2018年の12月に残った4人は、切れ端を頼りにとある廃ビルの屋上へとたどり着いた。
常人なら立ち入らないような廃ビルで、強く蹴れば崩れてしまいそうな外観をしている。
「んじゃっ、やってみるよっ?」
既に変身している衣美里が切れ端に手を翳して魔力を送り込む。
理屈はよく分からないが、これでアナザーれんに時間を誤認させることが出来るようだ。
こんなに汎用性の高い固有魔法を有していて、まだ魔法少女としての活動歴が浅いというのだから、成長すればより強くなるのではないか……とツクヨミは感じた。
ひなのが目をやると、ゲイツは少し落ち着かない様子のようだ。
「どうした?緊張しているのか?」
「い、いや、そういう訳では無いんだがな……」
「ゲイツは戦いに慣れてるから今更そんなことで緊張しないと思うわよ?」
「にしては妙に落ち着きがないようだが…」
「俺のことは別にいいだろう!」
つい、強い口調になってしまったが、実はゲイツはお化けが苦手なのである。
よくよく考えれば、既に亡くなってしまった存在のアナザーマギカということは……と少し考えてしまったのだ。
「そんな強く言わなくてもなァ……まあ、深くは聞かないでおくよ」
ひなのがため息混じりに言い終わると同時に、黒い霧を出しながら彼女が現れた。
「来たぞ!」
「おっし!新聞は下がってて!」
ついにツク"ヨミ"の成分すら無くなったと心の中で少し呆れたが、言われた通りにツクヨミは3人と距離を取った。
ツクヨミ自体は、ファイズフォンXで戦闘が出来るので護られるほど弱くはないが、念の為に。
ゲイツが一歩踏み出し、言い放つ。
「お前は……俺達が止めてやる!」
先程までの落ち着かない様子が嘘のようだ。
━━━━━━━━━━━━━━━
2017年。
白い日差しでそう描かれたとあるビルの屋上にソウゴと梨花が降り立った。
ここは、五十鈴れんが自らの意思で命を絶った場所だ。
そして、彼女の悪意と悔恨と復讐を混ぜた存在がドス黒いオーラを漂わせてそこにいる。
顔を覆いたくなるようなオーラに2人は顔を顰めている。理屈の上ではそんなことは無いのだが、2018年に出会った彼女よりも、より強く感じてしまった。
一方的な善意の押しつけになってしまうが、彼女に伝えたいことがあり、梨花はゆっくりと口を開いた。
目の前にいるそれは、あくまでも"アナザー"であるため、本人には決して届かないが。
「五十鈴…れんちゃん……ごめんなさい……あたしなんかが、出来るとは思えないけど、貴女みたいに苦しんでる人を、救えなくて……そんなになるまで……色んな感情を溜め込んで……だからせめて、ここであたしが……貴女を止めるっ……!」
言い終わるとやいなや、梨花は魔法少女へと変身した。握りしめたコンパクトから、強い意志が感じられる。
「そうだね……君のことは、俺達が救う!」
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過去と現在。
その2つの時間で、少女の意志を止め、救う戦いが幕を開ける。
それぞれの時間で、王となる存在と、王を止める救世主と呼ばれる存在がライドウォッチを構え、ジクウドライバーに装填し、戦うための姿へと変わる構えをとる。
「「変身!!」」
《ライダーターイム!カメン"ライダ〜"!!ジ、オ〜ウ……!!》
《ライダーターイム!カメン"らいだー"ゲイツ!!》
この哀しい連鎖を止めるために、彼女を救うために。それぞれの時間で火花が散る。
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ゲイツたちの成すべきことは、今現在アナザーれんの中に入っている少女達の魂を解放することだ。
攻撃を与え続ければそれは可能……のはずだが、近寄ることすら出来ない。
アナザーれんは地面に杖を突き立てると、ドス黒いオーラを放出させ、ゲイツ達に地面から光弾の筒を見舞った。
直感でそのエネルギーの塊の筒に触れたらひとたまりもないと理解しても、地面自体が大きく響いているので立つことは出来ても走り寄ることは難しい。
「なら!」
《You Me!!》
ジカンザックスをゆみモードに変形させ、攻撃を与えようとするが…突き立てた杖を抜いて回転させ、ゲイツの攻撃が弾かれてしまった。
だがそれが終わった途端に、アナザーれんの身体が爆発する。
ゲイツの攻撃の隙を縫ってひなのが試験管を投擲したのだ。
それを受けるがいなや、身体が痺れてしまったようだ。
そんなこともできるのかと感心しつつ、この間にゲイツはアナザーれんに駆け寄り、いつの間にか、おのモードに変形させておいたジカンザックスで斬りかかる!
「はぁッ!!」
袈裟斬りをくらい、大きく身体が揺れた所をゲイツは連撃を加える。
生身の人間を斬っているようであまりいい気分はしないが、今はそう言ってられない。
ここに来る前、4人はあることを話していた。
ソウゴと梨花が戦った際に青い火の玉がアナザーれんの体から出たが、それが囚われていた魂なのか……という疑問があったが、衣美里の人脈をフル活用して情報を仕入れた。
ソウゴと梨花が目撃した火の玉は両手で数えられるほどだと聞いたが、それとほぼ同等の人数の意識が戻ったと、衣美里のスマホに連絡が入った。
これでアナザーれんの中に魂が吸収されていることが証明できた。
だが、問題はまだある。
その魂がいったいどれほどの量吸収されているのか
、2人がやったように普通に攻撃を与えればそのまま解放されるのか……
こういった戦いはあまり経験がないからか、念の為にツクヨミはひなのに相談した。
「それなら問題は無いだろう、普通に戦えば魂は解放されると思うぞ?」
「そうなの?」
彼女を見上げながらひなのが語る。
「実際に見たわけではないから絶対とは言いきれないが……梨花はともかく、ソウゴの攻撃でも火の玉が出たのであれば、同じような力の性質を持っているゲイツが攻撃を与えても魂は開放されるだろうな」
長年魔法少女をしているひなのの言うことなら、恐らく正しいのだろう。
それに付け加えようにひなのは続ける。
「魂ではないんだがな、前にも似たようなことがあって、魔女に囚われた人を助ける時にある程度攻撃を加えたら栓みたいなのが外れて助けることが出来たんだ」
フワッとした説明にツクヨミは納得がいっていないようだ。
「うーむ……例えるとな、水が満タンに入ったペットボトルがあったとして、梨花とソウゴがキャップを取ってくれて、水を数滴垂らした…というのが今の状況で、今からアタシ達はペットボトルを大きく揺さぶって中の水を全部抜こうとしている……というわけだ。逆さまにすれば早いが、相手の実力も上がっているというわけだから、恐らく固定されてしまっているのかもしれないがな」
「なるほど……?」
理解できるようなできないような……そんな説明だが、ツクヨミは納得した。
キャップが開いたペットボトルからは次々と水が溢れ出す。
それと同時に、ゲイツたちはどれだけの魂を吸い込んでいたのか、と慄然する。
その溢れだしている水が出なくなったら、彼女を止められる……という合図ということになるが、正直、気が遠くなるような戦いだ。
戦いが始まって数十分……くらいだが、既にひなのと衣美里は疲労の表情を浮かべている。
「わっ……!」
アナザーれんの杖から放たれる光弾を受け、衣美里は大きく地面に叩きつけられてしまう。
「衣美里!」
ひなのが駆け寄ろうとするが、いつのまにか痺れの効果が切れたのか、先程までと同じ……それ以上にも感じるような夥しい光弾が降り注ぐ。
「ちっ……避けられない……!」
広範囲による攻撃はゲイツたちに大ダメージを与え、彼のスーツからは火花が散っている。
2人も身体の各所から血が溢れている。
相手が魔女ならいったん引く……という選択もアリだが、そうはいかない。
もうこれ以上、彼女には苦しんで欲しくないのだから。
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2017年。
こちらでも、1人の仮面ライダーと魔法少女、1人のアナザーマギカの戦いが繰り広げられている。
今現在、ジオウに変身しているソウゴと梨花のやるべき事は時間稼ぎだ。
1年後のこの場所で今戦っている仲間たちが成すべきことを成さねば、救われない魂が増えてしまう。
時間稼ぎ……とはいいつつも、それを維持することが難しいくらい、アナザーれんは思った以上に厄介だ。
ソウゴも内心、1度撃破しているのだからどうにかなるかもしれないという慢心があったのかもしれないが、昨日戦った時よりも心做しか強くなっている。そんな気がしている。
「(ソウゴくん!大丈夫……!?)」
頭の中に声が響く。
魔法少女は魔法少女同士でテレパシーが使えるようだが、それを応用してジオウの頭の中にも通じるようにしたのか。
「(なんとかね……)」
「(なんか……昨日よりも強くなってない……?)」
「(梨花もそう思う?)」
一拍置いて、悲しげな顔を浮かべた梨花からテレパシーが帰ってくる。
「(もしかしたらさ……アナザーマギカとして、生まれたてだから……恨みとか、憎しみとか、そういうのがまだ強いのかな……)」
ジオウの攻撃の隙を埋めるようにコンパクトから光弾を撃ちつつ、梨花が続ける。
「(人ってさ……怒りの感情は時間が経てば忘れることもあるじゃん?だから今は……)」
テレパシーを遮るように、梨花に光弾が放たれる!
「……っ!」
右肩にかすって、血がだらりと漏れ出す。
やろうと思えば魔法少女は痛覚を遮断することも出来るがそれはやらない。
この痛みは……贖罪の意味もあるのだから。
「……だったらこれで!」
腕のライドウォッチホルダーからオレンジと黒のライドウォッチを取り出し、起動させる。
《ゴースト!》
素早くジクウドライバーのスロットに装填し、アーマーを装着する。
《アーマーターイム!!カイガン!"ゴースト!"》
ジオウは数々の英雄と心を結び、同じ時代に出会えた仲間と命を燃やした仮面ライダー、ゴーストのアーマーを装備した。
「命!燃やしちゃってみるぜ〜!!」
少しズレた決めゼリフも添えて。
言い終わるやいなや、両肩の《眼魂ショルダー》から色とりどりの《パーカーゴースト》を召喚し、アナザーれんへと向かわせる。
といっても、幼児がクレヨンで描いたような本物には似つかない存在ではあるが。
赤いパーカーゴーストが両腕の刀を振るい、青いパーカーゴーストが両腕のグローブで殴り、黄色いパーカーゴーストが頭から雷を放出し、アナザーれんを翻弄しているので、実力には関係ないみたいだが。
その隙にジオウは梨花に駆け寄り、介抱しようとするが、遮られてしまった。
「……くっ!」
アナザーれんは杖の鎌を展開し、まるでブーメランのように投擲し、一度にパーカーゴーストたちを蹴散らし、ジオウにも牽制をしたのだ。
鎌が手元に戻って来てそれを掴み、ジオウに襲い掛かってくるが、ジオウはすぐさまジカンギレードを携え、なんとか受け止めることが出来た。
しかし、大振りの武器を操っているとは思えないほどに素早い乱撃に、ジオウは次第に対処が出来なくなっていく。
梨花は援護をしないと、と思っているが、右肩が痛むのと、今の位置だと光弾がジオウにも当たってしまいそうになるので迂闊に手出しは出来ない。
今の状況は、しっかりと時間稼ぎは出来ているのである種目標は達成出来ている。
しかし、このままの状況をずっと維持し続けるのはあまり得策とは言えない。
ゲイツ達のやるべき事を無視すれば、すぐさま継承したライドウォッチを使ってアナザーれんを撃破することも可能だがそれでは約束を破ってしまうことになる。
あちらの目標が達成されれば、梨花に連絡があるはずだがまだないということは、あちらも苦戦しているということだろう。
「(梨花……!大丈夫……!?)」
「(あ、あたしは……平気……それよりも……!)」
他人より自分のことを心配してという言葉を紡ぐ前に、梨花は重い身体を起こして、行動に出た。
「(梨花!?)」
乱撃を捌いている所に、思いもよらない行動に驚いてしまい、一撃をもらってしまう。
「うあっ!!」
大きく火花が散り、ゴーストアーマーが解除されてしまった。
このまま攻撃をくらうのはまずいと、ジオウは地面に倒れたまま防御の姿勢をとるが、目の前からアナザーれんは消えていた。
「梨花……!」
どうやら梨花が横からコンパクトによるビームを放ち、アナザーれんを吹き飛ばしたみたいだ。
梨花から見てジオウの後ろ姿が見える状況でアナザーれんが迫ってくるのなら、少し立ち位置を変えて横から狙撃をすればいい……と思い、行動に出たのだ。
ちょうどジオウが吹き飛ばされたタイミングで、出力を絞ったビームを放ち、どうにか状況を変えることができた。
「ごめんねっ、囮みたいにしちゃって……」
梨花は手を取ってジオウを立ち上がらせると、非常に申し訳なさそうな顔を浮かべていた。
「大丈夫!……多分あと少しだからさっ、がんばろう!」
仮面を被っているから表情は読み取ることは出来ないが、多分ソウゴは微笑んでいるだろうと、梨花は感じた。
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2018年。
ゲイツ達も奮戦しているが、アナザーれんに攻撃を与え続けて人魂が漏れだしてはいるものの、それが途切れる様子はなく、ゴールがなかなか見えない。
「ちぃっ、衣美里!大丈夫か……?」
「うんっ、なんとか……」
ひなのと衣美里は肩で息をするくらいに疲労が溜まっている。
彼女達の生命の輝きの結晶である《ソウルジェム》も濁り始めている。
それが完全に濁りきった時、魔法少女は戦えなくなると、ゲイツも宝崎の戦いで知っており、そうなる前に決着を付けないと……ということは分かっている。
この状況を打開するには1つ手段があるが、それをしてしまえばペットボトルの中の水を全て抜く前にペットボトルを破壊してしまい、中の水は戻ってこないかもしれない。
それ故に、まだゲイツは迷っていた。
「(ミョウツー!!何か策はある感じ?)」
頭の中に衣美里のテレパシーが鳴り響く。
「(あるにはあるが……囚われている魂は救えんかもしれん)」
「(そっか……それじゃあ無理系じゃんっ)」
落胆する衣美里の声に、ひなのが割り込む。
「(いや、何とかなるかもしれんぞ?アタシと衣美里の固有魔法を使えばな)」
「(なにっ?)」
「(大方、お前さんがやろうとしてるのは、さっきソウゴから渡されたもので何かするんだろうが……それだと魂を解放する前にやつを倒してしまうという事だな?)」
ひなのの理解度の高さは長く魔法少女を続けている賜物なのか、とゲイツは感心する。
3人ともアナザーれんの攻撃を避け、いなしながらテレパシーで会話を続ける。
「(相手が万全の状態じゃ出来なかったかもしれんが……相手も相手でダメージは大きいはずだ、そこにアタシの固有魔法で状態異常にさせて、衣美里の固有魔法の幻惑で次の攻撃を受けた際に、残されている魂を解放するとすれば……いけるかもしれん)」
なんとも都合がいいような作戦だが、今はそれが合理的とも言える。
初めからその作戦を使えば……とも一瞬ゲイツは思ったが、衣美里の力では今のアナザーれんの状態じゃないと幻惑しきれなかったのかもしれない。
かといって最初から奥の手を使うのはハイリスクすぎる。
この作戦を実行できるのは今が最善ということだ。
「(わかった、俺はどうすればいい?)」
「(まずはアタシの武器に固有魔法を込めて当てる必要がある。だから相手の動きに隙がないように攻撃を続けてくれ)」
「(あっ、ミョウツーっ、でも多分、あーしの力だと幻惑したあとの攻撃も、それなりの攻撃じゃないと通らないかもっ、ただ殴るだけとかじゃなくって…倒さない程度の大技とか!)」
衣美里が言うように、たとえばデコピン1発で魂を解き放てるのなら容易いが、彼女自身もまだ魔法少女としてまだ発展途上というわけだ。
魔法少女として成長すれば、もっと戦い方は広がるのだが。
二人の作戦を聞き、任せろと言わんばかりにゲイツは己を鼓舞させてジカンザックスを構えてアナザーれんに攻撃を与え続ける。
鎌で防がれても、絶え間なく連撃を続ける!
「くらいやがれぇ〜っ!!」
ゲイツから見て2時の方向に、ひなのが大きく飛び上がり、鞄から数本の試験管を取り出し、アナザーれんの背後に投げつける!
着弾する寸前にゲイツは回避し、アナザーれんの動きを止めることに成功した。
アナザーれんの体から緑色の泡のようなものが溢れ、もがき苦しんでいる。
これをゲームに喩えるなら、毒状態……という所だろうか。
「衣美里!」
「おっけー!!いぇすっ!」
呼び掛けに応じて衣美里は大きく宙返りながら、尻尾のハート型の先端をアナザーれんに突き刺した。
そのまま着地し、待つこと数秒。
「おっし!これでいけるはず!!」
状態異常となっているアナザーれんに触れていたから衣美里もその影響を受けるのではとゲイツは思ったが、その心配はないようだ。
準備は整った。
ソウゴから託されたディケイドライドウォッチを取り出し、天面のボタンを押す。
《ディ・ディ・ディ・ディケイド!》
変身の手順を取り、アーマーを召喚すると、ゲイツの周りに灰色のオーロラのような模様の等身大のカードが十数枚ほど展開され、ゲイツを包み込む。
《アーマーターイム!……カメンライド!ワーオ!ディケイド!ディケイド!"でぃけいど"〜!!》
そこに現れたのは、ピンク……ではなくマゼンタと黒の鎧を纏いし救世主、仮面ライダーゲイツ ディケイドアーマー!
顔はまるでタブレット端末のようなディスプレイになっており、緑の文字で『でぃけいど』と書かれている。
《ライドヘイセイバー!》
起動音と共に出現したそれを構える。
ライドヘイセイバーとは、現状、ディケイドアーマーの専用剣であり、持ち手の上の鍔に当たる部分の時計を模した針を動かして、まだライドウォッチを入手していない平成ライダーの力も行使することが出来る。
ゲイツは針を勢いよく動かし、あるライダーの力を選択した。
《ヘイ!ゴースト!》
ゴーストライドウォッチは既に入手済みだが、現在はソウゴが持っているため、こういう形でしか今のゲイツには使用できない。
命が消えたあとでさえも、その苦しみを晴らすかのように足掻く彼女の鎮魂……それと今を生きている少女たちへの生きて欲しいという願いなのか、正直ゲイツ自身にも上手く表現は出来ないが、命を燃やした仮面ライダーである彼の力を行使する。
《ゴースト!デュアルタイムブレーク!》
ライドヘイセイバーの刀身から、炎を灯した巨大な斧のようなエネルギーが現れ、アナザーれんを正面から斬り裂く!
「はあぁぁぁぁぁ…………っ!!ハァッ!!!!!!!!」
致命傷……とはならなかったようだが、大ダメージを与えることが出来たようだ。
「っ!先輩!あれ!」
アナザーれんに衣美里が指を指すと、青い火の玉が次々と噴水のように放出され、それが終わると彼女は地面に伏してしまった。
作戦は上手くいったのかはまだ分からない。
死体蹴りになるようで非常に心苦しいが、ひなのは伏している彼女に歩み寄り、軽く攻撃を与えようとする。
そうした時に火の玉が出なければ……と思ったその時。
「……うわっ!?」
ひなのの細い脚がアナザーれんによって掴まれてしまった。
相変わらず表情は見えないが、まるでゾンビのようだと感じ、ひなのは慄然とする。
「先輩っ!」
「くっ!」
ゲイツが引き剥がそうと走り出そうとしたその瞬間、一筋の紅い光弾が立ち上がろうとしたアナザーれんに命中し、なんとかひなのは離れることが出来た。
それに、光弾を受けたアナザーれんからは人魂が出ないことを確認できた。
その光弾を放った者とは……
「新聞!!」
「な、ナイスだ!」
物陰に隠れていたツクヨミだ。
これまでは戦闘に参加は出来ていなかったが、それが功を奏したということだ。
ひなののサムズアップに、彼女は大きく頷き、自分が成すべきことをなす。
銃撃をしたファイズフォンXをフォンモードに変えて、過去の時間へと電話をかける。
もう少しで、この戦闘は決着がつく。
━━━━━━━━━━━━━━━
2017年。
依然としてジオウと梨花は時間稼ぎを行っていた。
しかし、懸念材料がひとつ。
身も蓋もない言い方をすれば、ソウゴはただ疲れているだけだが……魔法少女である梨花はそれに加えて魔力を大きく消耗している。
彼女の胸元の十字架のような形をしている宝石、ソウルジェムの輝きがくすんでおり、それが完全に濁り切ると魔法少女は戦えなくなってしまう。
尤も、どう戦えなくなってしまうのかはまだ彼女たちは知らないのだが……それはまた別の話。
それ故に、ジオウは梨花にあまり魔力を消耗させずに護りながら戦っているので、先程よりも分が悪い。
「くっ……ちょっと……やばい気がする……!」
「一旦引く……ってわけにもいかないよねっ……!」
「そうだねぇ……ここで止めないと……今はゲイツ達が上手くやってくれるのを待つしかないよ!」
根拠はないが、彼らならちゃんとやることをやってくれる……そんな気がすると、確かな自信がソウゴにはあった。
と、その時。
梨花のスカートから電子音が鳴り響き、ゲイツから貸し出されたファイズフォンXを取り出し、電話に出ると……
「もしもし……」
『梨花!?』
「ツクヨミちゃんっ!?」
彼女から電話が来たということは。
『こっちのやることは終わったわ!あとはお願い!』
「わかった!ありがと!またあとで!」
色々話したいことはあるが、最低限の事だけを話し、電話を切る。
事前に過去と未来で電話が出来るとは聞いていたが、本当に出来るとは……と感心しつつ。
「ソウゴくん!もう大丈夫みたい!!」
「……よし!わかった!」
時間稼ぎは終わりだ。
ジオウは体勢を建て直し、梨花から託されたライドウォッチを構えようとするが、鎌を展開したアナザーれんの猛攻が襲いかかる!
攻撃が当たらないように回避し、いなしているが、このままではアーマーを装着できない。
その様子を見て、梨花は覚悟を決めた。
目を閉じで、胸の前で祈るように手を重ね、魔力を溜める。
これが、あたしの贖罪になるのなら……と、大きく目を開き、アナザーれんを凝視する!
「っ!?……なんだ?急に動きが……」
1秒前まで自分に攻撃を与えていた目の前の存在の動きが急に止まり、ジオウが辺りを見回すと……梨花が膝を折っていた。
「梨花!」
「あたしは……大丈夫……!今、あたしの固有魔法でうごき、止めるから……さっ……今のうちに……はやく!」
梨花の固有魔法は心変わりなのだが……彼女はそれをあまり使いたがっていない。
でも、彼女はそれを使う程まで、この悲しみを止めたいと本気で思っており、ソウゴは改めてその覚悟を受け取った。
「ありがとう……梨花……これで、いける気がする!」
銀と青のライドウォッチを構え、天面のボタンを押す。
《れん…!》
ジクウドライバーの左側のスロットに装填し、ドライバーの天面を押してドライバー本体を傾かせ、時計回りに一回転させる!
《アーマーターイム!》
アナウンスが鳴り響くと、ドライバーから射出されたのは、二翼の白い大きな翼。
翼はすぐさまジオウの背後に回り込み、ジオウを優しく包み込む。
「え、ちょちょちょ!!なにっ!?」
仰天し、ジオウはなすすべもなくしゃがみこむように翼に包まれてしまった。
「え、ソウゴくーん!?」
流石に梨花も心配している。
だが、その心配はないようだ。
うずくまったジオウを包んだ翼の形はまるで柔らかく暖かい卵のようだ。
その中でもアーマーが装着しているような駆動音が響いている。
《レ・ン〜!!》
使用したアーマーの音声が終わると同時に翼は大きく広がり、それは天使のように美しかった。
立ち上がったジオウの顔には『レン』と書かれているが、右目に当たる部分が隠れており、辛うじて『レ』と分かるものとなっている。
それ以外はまるで新品のような白地に所々空色のラインが引かれた着物のようであった。
その姿を見て梨花は、アーマーというよりは、ジオウがそのまま綺麗にしたアナザーれんの服装をそのまま着ているように思えた。
魔法少女と仮面ライダーの力の性質の違いなのかな、と自分を納得させた。
……と、その時。
「祝え!!!!」
突然聞きなれない声に梨花は大きく驚いた。
辺りを見渡し、その声の主を探すと、自分たちがいる屋上に上がる階段の棟の上に、声の主がいた。
「全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来をしろしめす時の王者!その名も仮面ライダージオウ れんアーマー!魂を鎮めし魔法少女の力を継承した瞬間である……!!」
聞き込み後に出会った黒いマフラーに緑のコートの顔立ちが整った家臣のウォズだ。
ウォズはこうしてジオウの覇道を毎度のように祝っている。
初めはソウゴもそれに戸惑っていたが、次第にウォズの祝いを受け入れ、祝われることが好きになっていった。
ウォズもまた、祝うということを好きになり、最終的には義務と感じるまでになっていった。
満足気に本を閉じ去っていったウォズに梨花は唖然とした。
わざわざそれを言うために過去まで来たの?
そもそもどうやって来たの?
ってかあの人……なんなの?
……と、様々な疑問が頭に浮かんだが、それをよそに最後の戦いが幕を開ける。
ジオウはアナザーれんが持っている杖と似たような武器を構え、先端から鎌を展開させる。
無論、相手も同じだ。
互いに鎌をぶつけ合い、五分五分になると思えたが、その拮抗はすぐに破られた。
「これでもくらえーっ!!」
ジオウがそう叫ぶと、肩の薄い板に見えていたものの蓋が開き、そこから何かが発射され、アナザーれんは爆発し、ダメージを受けた。
梨花から見れば、何が発射されたかは全然分からず、いきなり爆発したように見えた。
「何今の……」
梨花のつぶやきに、ジオウは肩のアーマーを閉じ、再度開いて中のものを取り出して見せた。
「えっ……色鉛筆……!?」
「みたいだねぇ……なんでこれがミサイルなのかはわかんないけど!」
先程まで使っていたゴーストアーマーと同様に、ジオウが使うアーマーは何かしらズレた部分がある。
梨花は色鉛筆とそのケースが五十鈴れん本人を形成する要素なのか……と感じた。
尤も、それが小型ミサイルになる理屈は本当に理解ができないが。
ジオウはその色鉛筆ミサイルで弾幕を張り続けているが、どうやらそれは決定打にはならないとわかった。
それに1度打ち尽くしたら蓋を閉じないと再装填されないみたいで、隙が生じてしまう。
そこを突かれてしまえば形勢逆転されてしまうかもしれないので、油断大敵だ。
相手も相手で、最後の力を振り絞っているようだ。
戦い始めた時に比べ、身体が大きく揺れており、彼女がアナザーでなければもうソウルジェムが濁りきっているかもしれない。
五十鈴れん本人も、そうして足掻いていたのだろうか。
だが、人の悪意によるいじめに耐えきれず、彼女は自ら命を絶った。
そのアナザーである相手をこうして痛めつけるという事は……と、ソウゴの頭にも過ぎったが、彼自身も覚悟は出来ている。
その悲しみも、苦しみも、痛みも、全て受け止めると。
身勝手な自己満足かもしれないが、今はそれが最善の手段だ。
王様になる存在である彼は民を見捨てておけない、という心意気があるが、全員が全員救えるはずは無い。
故に、この戦いはソウゴにとっても償いというわけだ。
既に失われてしまった命をこれ以上苦しめたくないという。
決着の時間は近い。
━━━━━━━━━━━━━━━
2018年。
こちらも相手ももう戦える力は少ないので、短期決戦をする必要がある。
ゲイツはディケイドライドウォッチのスロットにあるライダーのウォッチを装填した。
《ファ・ファ・ファ・ファーイズ! ファイナルフォームタイム!》
右肩と胸アーマーの十字架のような形をしている部分の模様が『ふぁいず あくせる』という文字に変化し、両腕と胸から下部分、それと顔のディスプレイが変化する。
顔のディスプレイと胸アーマー以外は仮面ライダーファイズ アクセルフォームと同等になり、実際にその力も行使できる。
アクセルフォームは、合計で数十秒間しか変身出来ないが、その真骨頂は加速能力だ。
左腕に装着されている《ファイズアクセル》のボタンを押すことにより、アクセルモードへと移行することができ、10秒間だけだが、音速で行動することが出来る。
アクセルモード終了後にフォームは解除されてしまうが、攻撃力も上昇しており、短期決戦にはうってつけのフォームだ。
仮面ライダーファイズは必殺技を用いる時にあるデバイスを体に装着している必要があるが、既にゲイツの右脚にも既に必殺キックを放つためのデバイス《ファイズポインター》が装着されている。
「これで終わらせる!」
ディケイドライドウォッチの天面のボタンと左腕のファイズアクセルのボタンを押し、ゲイツはアナザーれんに向かっていった。
《ファ・ファ・ファ・ファーイズ!ファイナルアタックタイムブレーク!》
必殺技を告げる音声が響いた。
本来ならゲイツの必殺技はタイムブレークではなくタイムバーストの筈だが、ウォッチの仕様上、普段とは異なっているようだ。
そして、ゲイツの視点で見ると、パンチを一発、二発、三発……と打ち込み、そのまま空中に蹴り上げ、宙に浮いたところに全方位を赤い円錐のようなマーカーで取り囲み、そのマーカーの数だけ必殺キックを叩き込む。
「はあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
複数のそれが突き刺さり、アナザーれんは爆発した。
これがアクセルフォームの必殺技、アクセルクリムゾンスマッシュだ。
他の3人にはこれが一瞬のように感じ、文字通り目にも止まらぬ速さで決着が着いてしまった。
「な……何今の……」
「速すぎて……何が何だか分からなかったぞ……」
ゲイツは通常形態に戻り、落ちてきたアナザーれんに歩み寄る。
アナザーライダーにも変身者はいるので、こいつにも……と思ったが、ゲイツが目撃したのは意外な存在だった。
━━━━━━━━━━━━━━━
2017年。
金属と金属がぶつかり合い、軋む音がこだまする。
相手の振り絞った力も、もうじき限界を迎えてしまうと、ソウゴは感じた。
やろうと思えばすぐに必殺技を叩き込むことは可能ではあるが、最後まで攻撃を受け止めようと、攻撃をいなしている。
ひとしきり、攻撃がいなされたアナザーれんは体を大きく揺らし、やがて膝を折ってしまった。
そんな彼女にジオウは語りかける。
「……辛かったよね、こんなこと、本当はしたくなかったかもしれないよね……だから、ここで終わらせよう」
いつもの彼のあっけらかんとした様子とはうって変わり、優しく諭すように。
《フィニッシュターイム! ソウル…タイムブレーク!》
ウォッチとベルトを操作し、必殺技の体制へと移る。
鎌を仕舞った杖の先端を空に大きく掲げると、そこに蒼色の火の玉のようなエネルギーが次々と集結し、それはやがて大きな火の玉へと進化した。
「はぁっ!!」
杖を高く突き上げると、火の玉は空中に大きく跳ね上がり、そのまま相手に突進……と思いきや、約3秒後にジオウの元へと落下してきた!
梨花は思わずえっ!?と声を上げるが、ジオウは動じない。
ジオウを大きく包んだ火の玉……というより巨大な火の玉となったジオウは、身体を大きく回転させながらアナザーれんへと突進した!
それはさながら太く短い青い色鉛筆のようで、着弾して数秒後に爆発が起こった。
その場からすぐに退避し、ジオウは無事に着地したが、梨花は少し違和感を感じた。
本物の五十鈴れんとは会ったこともないが、何か違うんじゃないかと。
このように、ジオウの継承した力を用いた必殺技は、どこかしら本物とは違うのだ。
言い方を悪くするとパチモノ……のような。
爆発の煙が晴れ、その場に2人が駆け寄ると、まだアナザーれんの姿があったが、それを確認した後すぐに身体からアナザーウォッチが排出され、砕け散った。
一年後のゲイツと同じように変身者を確認しようとした2人であったが、そこにあったものは。
「……日記帳……?」
アナザーマギカとしての体が守ってくれたのか、日記帳が欠損した様子はない。
この日記帳の持ち主は大方予測がつくが、それよりも……
「まさか……変身者が、人間じゃなかったなんて……」
初めに戦った時の違和感の謎が解けたが、どうも釈然としない。
これまでのアナザーライダーとの戦いでは、アナザーライダーに変身する者の姿が見えていたから変身者の事も止めようという気持ちになれていたが、今回は変身者を見ることがなかったからか、それが頭から抜け落ちていたのかもしれない。
もしかしたら、そう認識するように誰かに仕掛けられていたのか…まるで、魔法にかけられたかのように。
色々と心境を整理したいところだが、そこへ割り込む声が。
「いやぁ〜……お見事お見事……!今回もまた、楽しませてもらったよ!」
「タイムジャッカー……!」
白いローブを纏った少女を目の前にし、ジオウは再び武器を構える。
「待ってくれ、今は戦う意思はないよっ、ただ単純に祝福をしに来ただけさ」
「祝福?」
「少しばかり、道は逸れてしまったが……君たちは見事に私の生み出したアナザーマギカを撃破することが出来た……おめでとう!」
便宜上呼んでいたが、どうやらアナザーマギカという呼び名は正しいようだ。
「お前……何が目的なんだ!」
「目的ぃ?そうだねぇ……まあ色々あるけれど、私は私の物語を作りたいだけだよ」
「物語?」
「そうさ、だから今回もタイムジャッカーという役割を演じさせてもらったけれど……私は別に君の覇道を邪魔する気は無いよ」
こいつからはアナザーれんとは違った空虚さを感じる。
まるでどこかから借りてきた言葉を紡いでいて、中身がない空っぽの存在だと。
タイムジャッカーでないとすればこいつは、一体何者なのだろうか……と、ソウゴは思い巡らせる。
「どうやら、私の正体が気になるみたいだね?少しくらいなら教えてあげてもいいよ?」
彼女はくるりと一回転し、上体を大きく逸らして大仰に答えた。
「私は……本筋には関われない傍観者……というより、観察者……かな?時代を生き抜いた、魔法少女達の記録……"マギアレコード"のね」
「観察……者?」
「その観察をしていくうちに、私も私で物語を作りたいと思ってねぇ……こうして、本来の歴史とは分岐した世界を作ったわけだ……まあ、教えられるのはこれくらいかなっ!……それじゃあ魔王、また会う時があれば、その時まで自分を見失わないでおくれよ?」
待てっ、とジオウが言い終わる前に彼女は灰色のオーロラに消えていった。
正体と目的を知ることは出来たが、それが本当なのかは分からない。
ただひとつ言えるのは……彼女も他人を傷つけて愉悦に浸っている悪人だということだ。
問答が終わり、変身を解いたソウゴは梨花に駆け寄る。
「これは……」
「ん、大丈夫……だから……」
「そういうわけにはいかないよ……その、ちょっと不安だけどさ、これ使いなよ」
黒く澱んでいる梨花のソウルジェムに、観察者から渡されたグリーフシードを当てると、穢れが吸い取られ、輝きを取り戻した。
「あ、ありがとう……」
「……正直、あいつに助けられたみたいで釈然としないけどね」
穢れは抜けても、梨花の表情は曇ったままだ。
変身を解き、残された日記帳を抱きしめながら梨花は語る。
「なんかさ……こうしてほんとに過去に来ちゃうと……このまま……五十鈴れんちゃん本人を……助けられるんじゃ、って、考えちゃった……」
「やろうと思えば出来るけど……」
「でもさ、それってやっちゃいけないよね?」
自分の都合のいいように過去を改変すれば、現代に影響が生まれてしまう。
それが何を引き起こすかは誰にも分からないし、取り返しのつかないことになってしまうかもしれない。
タイムトラベルものの定説とも言える。
いくらアナザーれんを止めれたとしても、五十鈴れん本人の命が戻ってくる訳では無い。
「あたしが……いれば、って思ったけど、彼女は……もうこの世界で生きたくないって思えたんだったら、それを無理やりねじ曲げるなんて、あたしの善意の押し付けになっちゃうよね……」
「梨花……」
ソウゴも思わず言葉につまる。
もし、ゲイツやツクヨミ、ウォズ……順一郎を喪ってしまったら、その悲しみを乗り越えられるだろうか……と、考えてしまった。
それこそ、自分の都合のいいように過去を改変してしまうかもしれない。
常磐ソウゴは人一倍寂しがり屋なのだから。
そして彼は言葉を紡ぐ。
「梨花はさ、れんって子の思いを、無下にしたくないんだよね?だったらさ……彼女を助けられなかったぶん、他の誰かを助けられるような……そんな魔法少女になればいいんじゃないかな?」
至極単純な回答を聞いて、梨花はハッとなる。
「これもまた、善意の押し付けって言われるかもしれないけどね……あと、彼女が生きていたことを、ずっと忘れないのも大事だと思うよ?ある人が言っていたことなんだけどさ、誰かが記憶の中に覚えていれば……その存在は本物なんだって」
単純に言えば、存在証明という所だろうか。
偽物の存在だろうと、人の記憶や、心の中に残ってさえいれば、それがいたことは嘘じゃない。
「俺も……梨花と衣美里とひなの……それにれんがいたこと、絶対忘れないからさ!」
「ソウゴくん……」
梨花の表情と同じように、空は澄み渡るように晴れていった。
「ありがとう、少しは楽になったよ……それとね、あたし、決めたよっ」
「何を?」
「ソウゴくんが言ったように、あたしは誰かを助けられるような……そんな魔法少女になるよっ!あの、聞き込みで会った子とも、友達になってみせるっ」
「……そっか、じゃあ約束だよ?俺は最高最善の魔王に、梨花は人を助けられるような魔法少女に!」
「うんっ!」
梨花の心からの笑顔は、とても眩しく見えた。
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ソウゴは、現代に戻る途中にゲイツからある話を聞いていた。
アナザーれんへの変身者だ。
現代に出現した方も、撃破後には日記帳が現れたのだが、少し時間を置いた後にそれは消失した……とのこと。
過去の時間で彼女を止めたからそうなったと納得はいくが、それにしても人間ではないものをあれほどの強力な怪人にしてしまうのは……とてつもない脅威といえる。
あくまで可能性の話だが、そこら辺に落ちている本、登山用具、刀のレプリカ等……人が持っているものがアナザーライダーやアナザーマギカになる危険性があるのだから。
ただでさえタイムジャッカーだけでも手がかかるのに、また観察者が邪魔してきたら、傷つく人がもっと増えてしまう……だから、お互い気を引き締めないとと告げ、通話を切った。
それとほぼ同時に、ソウゴと梨花は2018年へ戻ってきた。
こちらの空も、一年前と同じように澄み渡っていた。
「……ただいま!」
「おっ!おかえり〜っ!!」
梨花が顔を見せるやいなや、衣美里は嬉しそうに抱きつく。
「わっ……もー……いきなりだなーっ……」
呆れるようなことを言いながらも、梨花は満更でもなく、抱き返して頭を撫でている。
そんな2人にひなのが近寄る。
「おかえり、そして……お疲れ様だ」
やるべきことを終えた後輩への、短くても心がこもった言葉。
それを受け取って梨花の表情は更に柔らかくなる。
「ほらほらっ、みゃーこ先輩もおいで〜!」
「またかよ!?……しょうがないなァ〜……」
よいしょ、っと抱きつき、お互いが生きていることを確かめ合う。
こうして彼女達はこれからも生きていくのだ。
「……ただいま!」
「おかえりなさい、ソウゴ」
抱きつきは流石にしないが、お互いがお互いを思って生きていくのはソウゴ達も同じだ。
ソウゴとツクヨミは互いに微笑みあったが、そうはいかないのがゲイツだ。
「あれ〜?ゲイツはおかえりって言ってくれないの〜??」
少しばかり、煽るような口調でソウゴがまくし立てると……
「フンっ……誰がそんな事を言うか!」
清々しい程にツンツンした言葉を返す。
ゲイツはいわゆるツンデレというやつだ。
彼らが友となるのは……少し先の話である。
「まあ、別に心配はしていないさ……これくらいの戦いでやられるタマではないと思っているからな」
そう言いつつ、ディケイドライドウォッチを返却する。
「……そっか!んじゃっ、俺ももっとがんばらないとねっ、ゲイツにおかえりって言って貰えるまでには!」
なんだそれは!?とキレるゲイツを制しながら、ツクヨミは梨花達に話しかける。
「3人とも、本当にありがとう。3人がいなかったら…きっと解決出来なかったと思うわ」
「そんなっ、あーし達の方こそ!新聞達と出会えてめっちゃよかったよ!さいっこー!!」
相変わらずのハイテンションに圧倒され気味になる。
言葉は交わさなかったが、ゲイツとひなのも同じような気持ちだろう。
そして、別れを告げるように、ソウゴと梨花が前に出る。
「梨花!お互い……交わした約束、忘れないようにね!」
「うんっ、もちろんっ!お互い、これからも大変かもしれないけど、頑張って生きようね!」
握手を交わし、堅く誓い合った。
仮面ライダーも、魔法少女も、戦いの中で命を落とすかもしれない。
だからこそ、今こうして生きている瞬間瞬間を必死に生きて……自分が生きていた証を刻むのだ。
悪意に呑まれ、日々を綴れなかった少女のためにも。
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……かくして、常磐ソウゴは新たに五十鈴れんの力を継承したのでした。
ですが皆さん、ご安心を。
私が初めに言ったことを覚えてるでしょうか?
この物語は……皆さんが知っている彼らの話とは少し違うお話……ですが、辿る結末は、皆さんが知っているものと恐らく変わらないでしょう。
その結末の果てに、五十鈴れんは最高、最愛の友人と出会い、この世界で生きていく……と。
ここまで、お話をお送りしたのは、この物語のタイムジャッカー役を務めました"マギアレコード"の観察者にして魔法少女……"みらい"でした。
皆さん、ご清聴ありがとうございました。
また会う機会があるまで……ごきげんよう。