モブトレーナーのボクが伝説ポケモン使うのはやっぱりマズイですか?   作:そりだす

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 砂漠のぬしポケモンであるテツノワダチと対峙するハルトとペパー。

 先にポケモンを繰り出したのはペパーだった。

 

「このへんで捕まえたスコヴィラン!ピリッとホットに活躍してくれ!」

 

 バトルへと繰り出されたスコヴィランはペパーの鼓舞に応えるように、赤と緑の双頭がそれぞれ雄叫びを上げる。

 ハルトもそれに続いて、ポケモンを繰り出そうとした時、テツノワダチとの先程のバトルを思い出す。

 

 ――テツノワダチは初めて見るポケモンのため、どのようなタイプを持ち合わせているか分かっていない。

 相手のタイプが読めないというのは、こちらにとっては大きな不利となる。

 というのも、相手に合わせた作戦を立てることが困難となるからだ。

 そのため、刻一刻と変化する戦闘の中でポケモン達の一挙手一投足を感じ取り、それらの状況に応じて瞬時に有効な対処や作戦を考え、行動に移さなければいけなくなる。

  

 バトルにおいて、自分と相手のポケモンのタイプ相性は最も重要であり、バトルの勝敗はそこで決まると言っても過言ではない。

 

 先ほどのテツノワダチとの戦闘、手持ちのポケモンを何体か繰り出して様子を見ると、ほのおタイプの技を受けた時に異様に嫌がる素振りを見せていた。

 それを踏まえながら、さらにテツノワダチの体表等の特徴から考えてみると、恐らくはがねタイプであろうと結論付けた。

 

 であれば、バトルに出すのはこのポケモンしかいない。

 

「――頼むよっ、アチゲータ!」

 

 ハルトはそう言いながらモンスターボールを投げ、アチゲータを繰り出した――!

 

 

◆◆◆◆

 

 

 ――バトルが始まってからかなりの時間が経過したが、未だ勝負に決着はつかず熾烈を極めた。

 

 ハルトはそのバトルの中で、テツノワダチの動きが1戦目の時と明らかに変わっていることに気が付いた。

 

 恐らく、岩壁を壊した際に食べていた何か……スパイスと思われる物を食べたことが、今のパワーアップの原因だろう。

 

 先程までとは比べ物にならないほど攻撃一つひとつの威力や鋭さが増し、そしてなにより攻撃の見境が全く無くなっているのだ。

 まるで目に入るものがすべて敵であるような、その巨体から繰り出される手当たり次第の攻撃……。

 

 ぬしポケモンがパワーアップするのは、これまで何度か他のぬしポケモンとバトルした際にもあった。

 ……しかし、攻撃の対象にトレーナーであるハルトとペパーも含まれていたことは今まで一度もなかった。

 

「うおっ!コイツ、オレたちにも攻撃してくるのか!?ハルト!巻き込まれないように注意しながら戦うぞ!」 

 

「うん!分かった!」

 

 顎を伝っていく汗を拭いながら、ハルトはそう応えた。

 

 ……気性が荒く、好戦的なポケモンはこれまでにも出会ったことがある。

 縄張りから追い出すためや力試しのため、単にバトルが好きな者……その理由は様々だった。

 

 しかし、これほどまでに明確に殺意をポケモンとトレーナーに対し、ぶつけてくるポケモンは今まで一度も出会ったことがない。

 一歩間違えば、致命傷を負わされる可能性もあり、生命に関わる。

 

 そしてハルトはもうひとつ、手持ちのポケモン……アチゲータを筆頭に、全体的にレベルが足りていないということをバトルの中で痛感した。

 

 ペパーの援護もあるおかげで何とか戦えてはいるが、攻撃や素早さ等の能力がテツノワダチに全く届いていないのだ。

 

 繰り出される攻撃を躱すのもやっとであり、こちらから攻撃しても思ったようにダメージを与えることが出来ていない。

 当然、そんなギリギリの戦いをしていれば、スタミナの消耗も激しく、先にアチゲータの限界が来るであろうとは想像に難くない。

 

 そして、その限界は既にそこまで来ていた。

 

 肩で息をするアチゲータを見て、ハルトは悲しげな表情を浮かべながら下唇を噛んだ。

 

「……ごめん、アチゲータ。僕がしっかり考えてなかったから――」

 

 テツノワダチから意識が逸れたのは、ほんの一瞬……。

 だが、その一瞬の隙は今、この場では絶対に作ってはいけなかった。

 それに気が付いたのは、ペパーの鬼気迫る叫びが耳に飛び込んでからであった。

 

「――ハルトーーッ!!」

 

 ペパーの叫び声で我に返ったが、その時にはすぐ目の前にまでテツノワダチの巨体が、こうそくスピンを繰り出しながら迫ってきているところだった。

 

 アチゲータとスコヴィランがフォローに入れる時間は無く、他のポケモンを繰り出す余裕もない。

 眼前に迫り来る圧倒時な質量を持つ巨大な鉄の塊……もし、これと自分がぶつかれば助からないであろうことは容易に想像がついた。

 

 ――死ぬ。

 

 明確に死を意識した瞬間、自分以外の世界の動きが急激に遅くなる。

 

 高速回転するテツノワダチの動きもスローになって見えるが、既に躱すことのできる距離ではない。

 必死に打開策を見つけようとするが、この状況を打開できる有効な方法は何一つ思いつかない。

 

 既に手を伸ばせば触れてしまいそうなほどの距離まで接近したテツノワダチ。

 

 もうダメだと、諦めの感情がハルトを覆い尽くす。

 同時に、死への恐怖が一気に込み上げたハルトは無駄とは分かっていながらも思わず顔を腕で覆い、目を瞑る。

 

 ……しかし、いつまでもテツノワダチの攻撃が届くことはなく、ハルトは恐る恐る目を開ける。

 そして、足元からゆっくりと視線を上げていく。

 

 すると、目の前には紫の尻尾と純白の身体を持ったポケモンが、鈍い光を放つテツノワダチを片手で展開したバリアーで受け止めていた。

 

 まるでハルトの事を身を呈して守ってくれているかのように、目の前に立ち塞がる姿を見たハルトは、無意識にその名が口から零れた。

 

「……ミュウツー?」

 

 

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