モブトレーナーのボクが伝説ポケモン使うのはやっぱりマズイですか?   作:そりだす

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遅くなりました。18話を書き直し、改めて投稿します!内容は全く違うものになっており、今後の本編はこちらで進んでいくことになります。よろしくお願いします。


18

 

「――ルベウス」

 

 ハルトは静かにその名を呼ぶ。

 しかし、ルベウスはその呼びかけには何も答えず、濁った瞳でボタンを真っ直ぐに見つめたまま、なおも幽鬼のような足取りで近づいてくる。

 今の彼には、半端な言葉では届かないであろうことは明らかだ。

 

 そんな状態のルベウスを前にしたハルトは一瞬躊躇う様子を見せた後、意を決したような表情で再度呼びかける。

 

「……ねぇ、『ベリル』……君なんだろう?どうしてこんなことを……?」

 

「――――」

 

 ベリルの名前を出した瞬間、彼の歩みがピタリと止まる。その表情は俯き、こちらから伺うことはできない。

 彼の正体はおそらくベリルで間違いない、だが、どうか違っていてほしい……そんな複雑な感情をずっと抱いていたハルトは、この状況も相まってその悶々とする気持ちがついに限界に達した。

 それに、今ここで尋ねなければなにか取り返しのつかない事態になりそうな予感がしたことも理由のひとつである。

 

 ハルトはルベウスの口から、ベリルではないと否定する発言が出ることに僅かな望みを託して彼の名を呼んだ。単なる思い違いならそれで構わない、ただ、ここではっきりさせなければ次の一歩へ踏み出せない。

 そして、たとえその正体が誰であっても助けてあげたいという当初の気持ちに変わりはない。

 

 そんな気持ちを抱え、ルベウスの様子を見ていたハルト。

 ルベウスの顔がゆっくりと上がり、その表情が月明りと照明に照らされる。

 その表情はまるで仮面を張り付けているかのような、感情がすっぽりと抜け落ちたものであった。

 しかし、そこで初めてルベウスの瞳だけがその心情を表すかのように揺れ動き、その瞳はゆっくりとハルトへと向けられる。

 

「……そうか、そいつに聞いたのか」

 

 ルベウスは一瞬ボタンをちらりと見て、実質ハルトが訊いた内容を肯定したとも取ることができる問いを投げかける。

 それに対し、ハルトは首を横に振る。

 

「違うよ、僕は自分でいろいろ調べたんだ。……そうしてルベウスについて調べていくにつれて、徐々にそう思い始めたんだ」

 

 そのまま話を続ける。

 

「確信した理由はいくつかあるんだけど、ルベウスが過去の公式戦で見せた戦い方とベリルと僕が授業でバトルしたときの戦い方があまりに似ていたのがひとつかな。……実は、僕はバトルの最中は全然気づかなかったんだけど、ネモが教えてくれたんだ。ポケモンとの『アイコンタクト』を通じた意思疎通は各地方のチャンピオンクラスのトレーナーでもまずできないって……まして、それがレンタルポケモンならなおさらだってね」

 

「そして、なによりも君のそのランニングシューズだよ」

 

 ハルトがそう言うと、この場にいる全員の視線がルベウスの足元に集まる。

 その靴はきっと様々な冒険を共に乗り越えてきたのだろうと分かるほど使い込まれた、ボロボロのランニングシューズだ。

 

「その靴、ベリルも同じものを履いていたんだよ。そして、過去のルベウスも……。けど、それだけじゃ根拠としては薄いと思っていたんだけど、調べるとどうやらその靴はデボンコーポレーションという会社が製造したけど商品化されなかったんだってね。……だとすれば、世界に一つしかない靴をどうして二人が履いている状況が生まれるんだろうって素朴な疑問だよ」

 

「…………そっか、靴までは気が回らなかったよ。けど、ばれちゃったのならしょうがないね」

 

 長い沈黙の後、ルベウスがぽつりと呟くように言った。

 そして、深く被った白い帽子に手を伸ばし、ゆっくりと取る。

 

「……やっぱり、そうだったんだね……ベリル」

 

 帽子を取ったことではっきりとその顔を見ることができた。

 結果、ハルトの予想していた通り、その顔は見慣れた友……ベリルで間違いなかった。

 分かってはいたが、改めてその事実を突きつけられると頭が真っ白になってしまう。

 

 ルベウスは……いや、ベリルは帽子をカバンに仕舞いつつ、今度はそのカバンからゆらりとモンスターボールを取り出し、そのまま流れるように真上へと放る。

 

 ……彼が以前、使用していたのは『ミュウツー』と呼ばれる圧倒的なまでの超能力を使いこなす、最強と呼ばれる伝説のポケモンだった。

 その実力を間近で2回見る機会のあったハルトは、その戦いぶりを思い出すと背中を冷たいものが伝っていく。

 

 あれほどの戦闘能力を持っているのだ、きっと彼の手持ちの中ではミュウツーが最も強いポケモンのはずだ。

 であれば、繰り出してくるポケモンはミュウツー以外には考えられない。

 

 ――そう考えていたハルトだったが、予想は大きく外れることとなる。

 

 ルベウスのモンスターボールから放たれた眩い光に皆、視線が一瞬遮られた。

 すぐに視線を戻すが、彼らの目にはつい数秒前まではいなかった信じられない存在が飛び込んできた。

 

「なんだ……このポケモン……」

 

 それは誰の呟きだったか、今となっては分からない。だが、この場の全員の意思はその言葉に詰められていた。

 

 目の前に現れたポケモンは、これまで見たこともない巨大なドラゴンポケモンだった。

 その全身は引き込まれるような深いエメラルドグリーンに輝き、その身体には黄色の不思議な模様が刻まれている。

 鋭い爪の付いた前足を向けながらとぐろを巻いた状態で空中に浮かんでおり、その状態のままハルト達を見下ろす迫力や神々しさに思わず誰もが言葉を失い、その姿に惹き付けられる。

 

「――あれは『レックウザ』……ッ!?グラードン、カイオーガに並ぶ伝説の超古代ポケモンがなぜ……!?」

 

 クラベルが驚愕に満ちた声を上げる。

 レックウザと呼ばれたポケモンは、敵意をむき出しにした眼でゆっくりと見回すと、威圧感を放つ咆哮をグラウンド一帯に轟かせる。

 その一声で空気が、地面が、ここにあるもの全てが呼応するかのように激しく震える。

 加えて、見た者を突き刺すような冷徹な瞳から凄まじいプレッシャーが放たれ、普通のポケモンや人であれば恐怖でまともに動くこともできないだろう。

 

 ――このポケモンは、他の生命とは明らかに格が違う。

 

 その場にいるだけで命の序列を容赦なく突き付けてくる。そして、この感覚は以前ミュウツーと相対した時に感じた感覚と酷似していた。

 まさか、ミュウツーと同等のポケモンがもう一体いるなんて。……いや、もしかしたら他にも同格、それ以上の存在が控えている可能性も充分に考えられる。

 

 誰しもが圧倒的な実力差の前に立ち竦んでしまうそんな絶望的な状況の中、ハルトは一歩前へと踏み出す。

 

「ベリル……どうして……?」

 

 そう尋ねるハルトの声と身体は細かく震えていた。それはポケモンを前にしての恐怖なのか、友の苦しみに気づけなかった己への怒りなのか。

 ベリルはそんなハルトの様子を見つめ、しばしの沈黙の後、ぽつりと呟いた。

 

「――ボクはね、人やポケモンを平気で傷つけて殺すような奴らが心の底から憎いんだ」

 

 ベリルは続ける。

 

「ボクはこれまで様々な地方を旅して色々な人やポケモンに出会ってきた。するとね、各地方には必ず歪んだ欲望や野望を抱いている組織がいるんだ。それこそ、ポケモンを道具のように扱ったり、実験に使ったり……中には人やポケモンの命を軽んじているとしか思えない奴らもいた。……しかも、ひとつやふたつじゃないよ」

 

「……そんな」

 

「その度にボクたちは……ボクは、そんな組織を何度も壊滅させてきた。そして、このパルデア地方にも徒党を組んで人やポケモンに危害を加えかねない組織がある……。理由はこれで十分だと思うけどね」

 

「お、オレたちはそんなことはしない!」

「オルティガ殿!ここは落ち着かれよ!」

 

 我慢できないといった様子で、スター団のボスのひとりであるオルティガが反抗的な目つきでベリルを睨みながら食って掛かる。

 そんなオルティガを周囲のボスたちは抑えてと諭しながらも、眼前のベリルからは目を逸らさない。

 だが、ベリルは一瞬視線を動かした程度でほとんど気にも留めず、話を続ける。

 

「もし仮に今はただの不良生徒の集まりに過ぎないとしても、今後を考えれば十分危険な組織になりうる可能性はある。あるいは、別のもっと危険な組織に利用されるか……ボクは後者の方が可能性は高い気がするけどね」

 

 そういったベリルは何かを思い出しているように、遠くを見るような眼で語る。

 

「だから……だから、見定めなくちゃいけない。そして、もしも本当にその可能性があるのであれば、今ここで、おかしな考えを持たないように徹底的に潰さなくちゃいけないんだ」

 

 しかし、そんなベリルの前にクラベルが生徒たちを守るように立ち塞がる。

 その表情はこれまで見たことがないほどに険しく、そして悲しげだった。

 

「……ベリルさんの事情は分かりました。ですが、彼らはあなたが考えるような者たちではありません。それに、今のあなたは誰が傷ついても構わないという目をしている。そこには私たちだけではなく、おそらくあなた自身も含まれている……違いますか?」

 

 この問いかけに何も答えないベリル。

 

「そのままではベリルさん、あなたも彼らも不幸になるだけです。……ですが、そうはさせません。このアカデミー校長として、あなたを止めます」

 

 そう言いながらクラベルは、ジャケットに身に着けているモンスターボールをひとつ取り外して構える。

 これまで見たことがないような表情でベリルを見つめるクラベル。その全身から立ち昇るその気迫は凄まじく、ベリルやレックウザのプレッシャーに引けを取らない。今まさに二人の対決が始まりそうなところであったが、それはボタンの声に遮られる。

 

「ま、待って……!」

 

 声を絞り出したボタンは拳を握り締めながら、辛そうに表情を歪める。

 

「……ベリルは悪くない、うちがベリルに疑われて当然のことをしたから、こんなことに……」

 

「それはいったいどういうことですか……?」

 

 クラベルは困惑した様子でそう訊いた。それに対し、ボタンは震える声でゆっくりと答えていく。

 

「人の過去……それもすごく辛い過去にズケズケと入り込んでトラウマを抉っただけじゃなく、それを利用して脅すような真似を……。言葉ひとつで人がどれだけ苦しみ傷つくか、うちが一番分かってたはずなのに……」

 

 ボタンは一歩前へと踏み出し、深く頭を下げた。

 

「――本当にごめんなさい」

 

 ここでハルトはこれまでの様々な点と点が繋がっていくのを感じた。

 

「ボタン……君は、スター団のみんなを守るために、ベリルの襲撃を止めようとしたんだね……?」

 

 ――スター団あく組襲撃の際、まるで藁にも縋るような声色で、誰かが傷つけられそうなら助けてあげてとハルトに伝えた彼女。

 きっと誰よりも先に、すぐにでも駆けつけたかったはずなのに、それができなかった彼女は今の自分にできることは何かをたくさん考え、悩んだに違いない。

 その結果が、今言った通りベリルのトラウマを利用して襲撃をやめさせることだったのだろう。

 

 しかし、ボタンは暗い表情のまま顔を俯かせる。

 

「そ、そんなのただの言い訳……ベリルを傷つけたことに変わりないし。もっと冷静になればきっと良い方法があったはずなのに、それなのに……」

 

 俯くボタンの様子を見たベリルは瞳が大きく揺れ、誰が見ても動揺しているのは明らかだった。

 きっとこれまでの状況や話から、ベリルの中での『スター団=悪の組織』の固定観念が崩れかけているのだろう。

 

「……もう分からない。いったい何が正しくて何が間違っているのか、ボクにはもう分からないよ。スター団は……スター団は……」

 

 うわ言のようにスター団と繰り返すベリルに、ここまで黙って話を聞いていたメロコが徐に口を開いた。

 

「……さっきから黙って聞いてりゃ、言いたい放題言いやがって」

 

 そういったメロコはまっすぐベリルに鋭い視線を送る。

 

「確かに、ボタンの選んだ方法は間違ってる。人の弱みに付け込んで脅すなんざ卑怯者のすることだ!……でもよ、オレらはこいつが人の痛みの分かる奴だって知ってる。……そんなこいつが薄汚ぇ方法を取らざるを得ないところまで、お前は追い詰めたんじゃねぇのか」

 

 メロコは普段の荒々しい言葉遣いではあったが、その口調は比較的落ち着いたものであった。だが、乱れそうな感情を必死に押さえつけているのだろう、その声は微かに震えていた。

 その声色の変化にいち早く気付いたビワが「メロちゃん……」と名前を呼び、その肩にそっと触れる。

 メロコはすぐにビワへ視線を向け、大丈夫と小さく頷いた。

 それを確認したビワは、ベリルに視線を戻し優しく語りかける。

 

「……詳しくは分からないけれど、ベリルくんは悪の組織たちと何度も戦ってきて、きっとその中ですごく辛い経験や思いをしてきたんだよね。だから、ボタンちゃんやわたしたちがこれまでと同じような敵なんじゃないかと不安に思ってるんでしょ?……でもね、スター団はベリルくんが考えているような悪の組織じゃないよ?……アカデミーの風紀を乱してしまっていた部分はあるけど、これからはみんなで協力してそういうのもなくしていくし、それにわたしたちも――」

 

 ここまで話したところでビワは顔を俯かせると、しばしの沈黙の後、言葉を詰まらせながら涙声で呟く。

 

「――人もポケモンも、これ以上誰も傷ついてほしくないよ……」

 

 この言葉を聞いた瞬間、ベリルはその目を大きく見開いた。

 先ほどまで光のなかったその眼に、わずかだが輝きが蘇る。

 ハルトはゆっくりとベリルに近づき、そっと手を差し伸べる。

 

「ベリル……ちょっとだけ、ほんのちょっとだけみんなを信じてみない?そうすればきっと、これまで見えなかったものが見えてくると思うんだ。……大丈夫、隣には僕もいるから」

 

 それを受けたベリルは差し出された手のひらを見つめ、長い静寂がこの広いグラウンドを包み込む。

 しばらくして、ベリルは細かく震える手を伸ばして差し出された手を掴もうとするが、手と手が触れかけたその瞬間、何かを思い出したかのようにハッとしたその手を引っ込める。

 

「――だめだッ!……だめなんだよ、信じてもきっとまた裏切られる。馬鹿なボクが馬鹿みたいに簡単に信じて、大切なものが奪われるくらいなら、最初から信じちゃ……いけないんだ……ッ!」

 

 今にも泣きそうな顔で引っ込めた手のひらを見つめながら、悲痛な声を上げた。

 一体君の過去にどれほどのことがあったんだ……。ハルトは忌まわしき過去の呪縛から抜け出せずに苦しみ悶えるベリルを見て、思わずそんな言葉が喉元まで上がってくる。彼はこのまま行けば、きっと死ぬ時まで同じように苦しみ続けるのだろう。

 ……それでは、あまりにも救いがなさすぎるではないか。

 ハルトは下唇を強く噛締め、己の無力を呪った。

 

 一方のベリルは当初の目的を思い出したように、空虚に満ちた瞳をボタンへと向ける。

 

「そうだ……さあ……マジボス、決着をつけよう。ボクがスター団を倒すんだ……」

 

 右手を空へかざすと、これまでベリルの上空で沈黙していたレックウザが凄まじい咆哮を轟かせ、グラウンドの地面近くまで降りてくる。

 しかし、そのレックウザをまっすぐに見据えたクラベルは再度、モンスターボールを構えた。

 

「させません。生徒を守るのが教師の務め。傷つけない、傷つけさせない。どうしてもというなら私が相手になります」

 

 だが、そんなクラベルの横に並び立つ者がひとり。はっとした様子で振り返ったクラベルが見ると、そこにいたのはスター団あく組のピーニャであった。

 

「待ちなよ……マジボスの前にボクが相手っしょ」

 

「ピーニャさん、下がってください」

 

 厳しい口調でそう伝えるクラベル。しかし、ピーニャは身体の向きはレックウザへ向けたまま視線だけをクラベルへと動かす。

 

「校長。校長はきっともう分かってらっしゃると思いますが、ここで彼と戦わなければきっと誰も救うことができなくなってしまいます」

 

「ですが……」

 

「……危害は加えない」

 

 ベリルのその眼に嘘はない。

 クラベルもここで戦わなければ彼を止められず、結果、救うことができなくなってしまうだろうとは感じていた。加えて、もし仮に自分が戦ったとして、彼を救うほどの心情の変化をもたらすことができるのか。

 そして、ベリルの今の発言。これは先ほどまでの彼ならきっと言わなかったであろう発言であり、彼の中で何かが確実に変わっている証拠でもあった。

 短い時間の中で彼は何度も思慮を重ね、そしてついに決断を下した。

 

「……分かりました。ですが、真に危険と判断した場合はどんな方法を使っても止めます。そしてもうひとつ……これから私は教師として恥ずかしいお願いをします。――どうか、ベリルさんを救ってあげてください」

 

 後ろを振り返ったクラベルは、皆に対し深く頭を下げた。

 これを受けた皆は覚悟を決めたように深く頷く。

 だが、その直後ハルトはピーニャから肩をポンと叩かれる。

 

「――悪いんだけど、ハルトくんはそこで見ていてくれないか?君にはこの勝負の見届け人になってほしいんだ」

 

 ハルトとて、ここで空気が読めないほど馬鹿ではない。これ以上、余計な言葉を重ねる必要はないであろう。

 

「……うん、分かった」

 

 頷くハルトの横をボタンが通り、皆の前へと立つ。

 

「ごめん、みんな。これはうちとベリルの戦いだから――」

 

 ここまで言いかけたところで、ボタンの言葉はベリルによって途中で遮られてしまった。

 

「――悪いけど、6人がかりでも勝負になるとは思えない。……いいから、まとめてかかってきなよ。それに勝てばスター団は文字通り、完全敗北。解散せざるを得ないはず。……これで、終わりにしよう」

 

 この状況を知らない者が聞いたら無謀以外の何物でもないと感じるであろう提案を受け、6人全員の表情が更に強張る。

 その表情には、一人に対して複数名で挑むことに対する罪悪感、そして、ベリルも話した通り6人で勝てるのかという不安等の感情が滲み出ていた。

 

「……分かった。……けど、スター団はどんな勝負にも手を抜かない!戦うからには絶対に勝つ!」

 

 ボタンの声にボスたちは互いに顔を合わせ、こくりと頷いた。

 

「ベリルくん、君には以前酷い目に遭わせられてるからね……今度こそ、永遠にチルアウトさせてやるよ!」

 

「……爆ぜろや」

 

「シュウメイ!推して参る!!」

 

「今回は……オレたちは負けるわけにはいかない!」

 

「全身全霊で……あなたを倒す!」

 

 5人のボスは目の前に立ちはだかる壁を超えるため、そして、スター団というみんなの居場所を守るため、各々のポケモンを繰り出す。

 そして、最後にボタンがポケットからモンスターボールを取り出した。

 その手に握り締めたモンスターボールに祈りを捧げるように、額にボールを当て、目を閉じる。

 

「――ベリル、うちはこれで償い切れるとは思ってない。けど、あなたに対して今のうちができうる最大限の償いを……」

 

 そうして、場には6体目となるボタンのポケモンが繰り出された。

 

 6対1……。数で見れば後者が圧倒的に不利だ。だが、それは一般的な基準に当てはめた場合に限る。

 そして、その1体はそんな一般の基準などには到底収まらない、次元の違う存在である。

 

 ベリルはさっきまで濁り切っていたその眼に、これまでにないほど鋭く輝く光をぎらつかせる。

 

「――もちろん、ボクだって手は抜かない。こっちも本気で行くよ」

 

 そう呟くと、ベリルは徐に制服の片腕の袖を捲った。

 

 すると、これまで見えなかった手首にはパルデア地方では見慣れない、不思議なバングルが装着されているのが見える。

 そのバングルにはキラキラと美しく輝く宝石のような石が埋め込まれているようだ。

 

 ベリルはそのバングルを身に着けた腕を前へと突き出し、もう片方の手でバングルに触れた。

 

 次の瞬間、嵐の前の静けさと言わんばかりに静まり返ったグラウンドに、異様な突風が巻き起こると同時、全員の背筋に冷たいものが走る。

 そして、ベリルのぞくりとさせられる抑揚のない声が、この空間全体に響き渡った。

 

 

「――『メガシンカ』」

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