モブトレーナーのボクが伝説ポケモン使うのはやっぱりマズイですか?   作:そりだす

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幕間ということで、ややコメディっぽくしていたり、地の文が一人称だったりと、雰囲気をちょっと変えてみました。


21 幕間

 

 ベリルとスター団との確執も解消、お互いに和解したあの日からしばらくして。

 

 今日予定していた授業も終わり、これから何をしようかと考えながらこの学園名物のやたらと長い階段をゆっくりと下る。

 下りても下りても中々終わりが見えてこない、この長い階段……。

 学園の寮に住んでいる生徒は、この階段を上り下りすることなく学園内の各教室に向かうことができる。

 しかし、自宅から通学している生徒は毎朝、そして下校する時は毎回通らなければいけない道だ。

 これが春や秋など、気温や気候が穏やかで落ち着いている時期なら、毎回しんどいなぁくらいで済むだろう。

 

 だが、これが冬……特に夏になった時、その牙を剥いてくる。

 夏の日差しがさんさんと照りつける中、一向に終わりが見えてこない階段を教科書などが入ったリュックを背負って黙々と上らなければならない。

 思わずどこぞの修行僧か?と言いたくなるような苦行を、通学生の彼らは毎日行っているのだ。

 なんまんだぶなんまんだぶと、以前テレビで聞きかじっただけの念仏を唱えながら、手をこすり合わせて彼らに捧げる。

 他の町にも高低差がある場所はあるが、そういった場所は昇降機を設置していることもある。

 パルデア地方の中心であるこの街には何故ないのだろうか……。

 

 そんな余計なことを考えながら階段を下っていると、学園前にあるバトルコートの近くにあるベンチに腰掛けながら、街の様子をぼうっと眺めているベリルの姿を見かけた。

 だが、以前のような、どうすればいいか分からずに思いつめたような雰囲気ではない。

 平和で賑やかな街の様子を、実際に目で見て耳で聞いて……五感でじっくり感じているような、そんな風に見えた。

 そんなリラックスしているところを邪魔するのはまずいかなと、一瞬声を掛けるのを躊躇う気持ちも出たがせっかく見かけたのだ、声くらい掛けても問題はないだろう。

 

「ベリルー!」

 

 僕は階段を下りている途中でベリルの名前を呼んだ。

 思ったよりも大きい声が出たせいもあってか、僕やベリルの周囲にいる他の生徒たちの視線も集めてしまった。

 ちょっと羞恥心を感じながらも、ベリルとやや距離があったがそんなことは気にせず、僕はベリルに向かってブンブンと手を振る。

 こちらに気が付いたベリルはハッとした表情を見せた後、恥ずかしそうな笑みを浮かべながら控えめに手を振り返した。

 

 ベリルと会ってする話は他愛もないことばかりだ。やれ授業が思ったよりも難しいだの、この地方の人たちは目が合ってもバトルを挑んでこないだの(一名を除く)と。

 目が合っただけで勝負を挑まれるなんて、ネモ……じゃなくて、好戦的なバトルジャンキーの溢れかえるところもあるんだななんて思いながら、その後もお互いにやらかした失敗談やポケモンの育成論、笑い話も交わしていく。

 傍から見れば、授業終わりにだべっているごく普通の友達同士にしか見えないだろう。まあ、実際その通りなので特に何も言うことはないが、あの騒動前に比べると本当に平和になったな~としみじみと感じる。

 

 そして、話題はあのポケモンの話になる。

 

「そういえばさ、ベリル。前にミュウツーってポケモン使ってたよね」

 

 ミュウツーの名前を出した瞬間、ベリルの顔がわずかに強張るのが分かった。

 

「……だね。……ミュウツーはすごくいい奴なんだ。……だから、前のことは全部ボクの指示で――」

 

「――そう!ミュウツーって本当に優しくてかっこいいよね~!実は僕、ミュウツーに助けられたことがあるんだ!その時、ペパーも一緒でさ。ミュウツーは僕たち二人の命の恩人なんだ!それでね、出来ればでいいんだけど直接お礼が言いたいなと思ってて……」

 

 ポカンとした顔で僕の顔を見つめてくるベリル。

 

「え?どうしたの?……そんなに見つめられたらなんだか照れちゃうなぁ」

 

 えへへとあほっぽい笑いを浮かべながら、自分の頭を撫でる。

 しかし、冷静に考えてみると笑っている場合ではないことに気づく。

 なんだろう、何か気に障ることでも言ってしまったのだろうか。それに、僕が話を切ってしまったがベリルは何かを言いかけていた気がする。

 もしかしたら、その言いかけていたことがすごく大切な話だったのかも。そもそも、人が話している途中でいきなり割って入るのはいくら友達とはいえ相手に対してあまりにも失礼だった。

 

 もしかして僕、やっちゃったかもしれない。

 

「あ、あの……ベリル。その、ごめん……話してる途中だったのに割って入っちゃって……それに――」

 

 すぐに謝罪の言葉を述べようとするが、泳いでいた視線をベリルに向けた。

 そして、その顔を見て思わず言葉を飲み込んでしまう。

 

 なぜなら、ベリルの目から涙が頬を伝っていたからだ。

 

「……そうなんだよ。ハルトの言う通り、あいつは優しくてかっこよくて、本当にいい奴なんだ……。ハルト、ありがとう……」

 

 そう言ってベリルは嬉しそうに笑った。

 どうして泣いているのか、なぜ笑いかけてくれたのか、なんでお礼を言われたのか、いろいろ状況が分からないし、むしろお礼を言いたいのは僕の方だし……。

 残念ながら、キーのみを装備していなかったハルトの脳内は混乱状態となっていた。

 

 訳が分からないよ……とは思いながらも、きっと僕の発言がベリルにとっては何かとても大切なことだったのだろう。

 それだけは伝わった僕はとりあえず、ニヘッと笑いながらベリルにサムズアップした。

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 その後、なんとミュウツーに会わせてもらえることになった。

 しかし、多くの人々が行き交う街中ではちょっと……とのことだったので、僕らは街から少し離れた草原へと向かった。

 

 到着した草原は通行人もほとんど来ないが、周囲も開けていて近くには川も流れている、すごく景色のいい場所だった。今度、みんなを誘ってピクニックにでも来よう。

 

 さて、そんな絶景の中、僕はベリルがミュウツーを出してくれるのをワクワクしながら待つ。

 

 「それじゃあ、今からミュウツーを呼ぶね」

 

 ……ん?呼ぶ?モンスターボールに入っているのではないのか?

 

 そんな疑問も浮かんだが、ミュウツーに会えるのならそんなことは些細なことだ。

 ベリルは何かを念じるように目を瞑る。どうやらテレパシーか何かで話しているようだ。

 そして、それからしばらくして僕とベリルの間に、純白の身体を持つミュウツーがテレポートで現れた。

 

 片手に食べかけのサンドイッチを持ちながら、もっしゃもっしゃと口いっぱいに頬張り、咀嚼しているミュウツーが。

 

 ……あれ?ベリル、間違えてヨクバリス呼んじゃったのかな?

 

 思わずそんなすっとぼけたことを言いたくなるくらい、頬がパンパンに膨らんだミュウツー。……ミュウツーに頬袋ってありましたっけ?

 完全にお食事の真っ最中に呼び出されてしまった様子のミュウツーに、さすがに困惑する表情を隠しきれない僕。

 

 ベリルも一瞬見開いた目が丸くなっていたが、すぐに真ん丸お目目はジト目となり、ミュウツーが手に持った食べかけサンドイッチを指差す。

 

「……なにそれ」

 

(……これはサンドイッチだ)

 

 これはミュウツーの声だろうか。脳内にテレパシーか何かで直接言葉……というよりも、意思が流れ込んでくる。

 この返答にベリルは首を横に振る。

 

「そうだけどそうじゃない。食事中なんて一言も言ってなかったじゃん。……それに、そのサンドイッチは誰に貰ったの?」

 

(ペパーだ。あいつのサンドイッチは美味い)

 

 ……以前助けてもらった時はすごくクールそうに見えたのだが、話しているところを聞くとなんだかえらくマイペースなようである。

 けど、僕もペパーのサンドイッチは何度も食べているが、あれは本当に美味しい。一度食べれば病みつきになってしまうほどだ。だから、まあしょうがないしょうがない。

 というか、いつの間にペパーと友好関係を築いていたのか。これで案外コミュ力は高いのかもしれない。

 

「……ペパーには後で僕の方からお礼を言っておくよ。それより、実はミュウツーと話したいって人がいるんだ」

 

「こうして顔を合わせて話をするのは初めてだよね。僕の名前はハルト。……実は君にずっとお礼が言いたかったんだ。君は覚えているか分からないけど、以前砂漠で僕とペパーが巨大なポケモンに襲われた時に助けてもらったんだ。もし、あの時助けてくれなかったら僕たちはきっと無事じゃ済まなかったと思う」

 

「助けてくれて、本当にありがとう」

 

(……気にするな)

 

 それだけ言い残すと、ミュウツーはくるりと後ろを向いて、来た時と同じようにテレポートを使って一瞬で消えた。

 

「ぶっきらぼうな奴でごめんね……?けど、あいつすごく嬉しそうな顔してたよ」

 

 そういってニッコリ笑うベリル。

 それを聞いて、嫌われているわけではなかったと分かって安心した。

 そして、もうひとつ。ペパーと言われて大事なことを思い出した。

 

「ベリル……実はひとつ、お願いがあるんだ」

 

「お願い?」

 

 ベリルは首を傾げる。

 

「実はフトゥー博士に頼まれた物を届けにエリアゼロに行くことになったんだけど……ベリルも一緒にきてくれないかな?」

 

「エリアゼロか……危険な場所だって聞いたことがあるけど……」

 

「そうなんだ、おそらくこのパルデア地方で一番危ないところかもしれない。だからね、二人だけじゃ流石に心配だから一緒に行ってくれる仲間を探してるんだ。……もちろん、無理にとは言わないよ。凶暴なポケモンもたくさんいるって博士も言っていたし」

 

「……友達が困っていたら助けるのは当たり前、でしょ?ボクも一緒に行くよ。何か力になれることもあるかもしれないしさ」

 

 そう言って微笑みながら僕の肩をポンと叩く。

 

「……本当にいいの?」

 

「まだハルトには、あの時の恩返しもできていなかったしさ。それに、友達が困っていたら助けるのは普通だって教えてくれたのはハルトじゃないか」

 

「ありがとう……よろしくね、ベリル!」

 

 そうして、僕とベリルは固い握手を交わしたのだった。

 

 

 ――そして、僕たちはエリアゼロの最深部へ向かうことになる。

 

 だけどまさか、あんな事態になるなんて、この時は全く考えてもいなかった――。

 

 

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