モブトレーナーのボクが伝説ポケモン使うのはやっぱりマズイですか?   作:そりだす

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 転入前にスター団とのゴタゴタがあったものの、ベリルは無事にグレープアカデミーへと入学することができた。

 

 そして、肝心のクラスはというと、ハルトやネモと同じ1ーAになった。正直、全く知らない人ばかりのクラスになることが心配であったが、こうして少しでも顔見知りがいるのはとても心強い。

 それに加え、ハルトもベリルと同じく今日から転入だったことも安心感が増した理由の一つだ。

 なにより、クラスのみんながハルト含めベリルのことを暖かく迎え入れてくれたのが嬉しかった。

 

 とりあえず、学園生活のスタートダッシュをつまずかないでスムーズに行うことができた。

 

 それから数日が経過し、ベリルは校長室へと来ていた。

 椅子に腰掛けた校長のクラベルは、心配したような表情でベリルを見つめる。

 

「……本当に一般の学生と一緒でいいのですか?あなたほどの実力であれば――」

 

「――いえ、みんなと一緒でいいです。というよりも、みんなと一緒がいいです」

 

 ベリルはクラベルの口から何かとんでもない発言が飛び出そうな気配を感じたので、食い気味に断った。

 

「それに……不相応な肩書きなんてあってもろくな事にならないですから」

 

 そう語るベリルの目には光がなく、真っ直ぐにクラベルを見ているはずなのに、彼の目はどこか遠くを見つめているようだった。

 その様子を見たクラベルは、しばしの沈黙の後深く頷いた。

 

「……分かりました。ですが、気持ちが変わりましたらいつでも言ってください」

 

「はい、ありがとうございます。それでは失礼します」

 

 ベリルは一礼すると校長室を後にする。

 そうして扉を出たところで、ちょうどハルトと鉢合わせになった。

 

「あれ、ベリル?どうしたの?校長室から出てきたみたいだけど何かあった?」

 

「いや、その……転入手続きでちょっと確認したいことがあってさ。けど、その用事もたった今終わったよ。それよりも、ハルトはどうしてここに?」

 

「うーん……それがね、すぐに来てくださいとしか言われてないから、用件はまだ分からないんだ」

 

「そっか……今ならクラベル先生も大丈夫そうだよ。次の授業はバトル学だっけ?僕は先に行ってるから遅れないようにね!」

 

「うん、分かった!ありがとう!」

 

 ハルトはニコリと笑うと、校長室の扉をノックし「失礼します」と中へと入っていった。

 

 

◆◆◆◆

 

 

「――以上で、本日の『バトル学』の座学は終わるぞ!……ムム、今日は時間があるな。それでは体で体験してもらおう!」

 

 バトル学担当のキハダ先生は時間を見ながら、そう言った。

 いつもは座学で授業時間が終わるのだが、今日はかなり時間が残っている。

 

「えっ!今から戦るんですか!!」

 

 ネモのすごく嬉しそうな声がグラウンドに響いた。

 

「ああ!戦るぞ!……うーん」

 

 キハダ先生は生徒達の方をキョロキョロと見回す。少し考えるような素振りを見せた後、一度大きく頷いた。

 

 「よし、転入生!……って、転入生は二人だったな。ちょうどいい、転入生二人!今からバトルだ!」

 

「ボクとベリルですか?……分かりました」

 

 ハルトは一瞬困惑した様子を見せたが、すぐに頷いた。

 しかし、ベリルは視線を泳がせる。

 

「先生、すみません……あの、僕ポケモン持ってないので……」

 

「そうか!だが心配するな!アカデミーにはレンタルポケモンがいる!好きなポケモンを一体選べ!」

 

 そう言って先生は6つのモンスターボールの入ったボックスを取り出して、ベリルの前へと差し出した。

 

「……分かりました、それじゃあ僕はこの子で」

 

 ベリルは躊躇するような仕草を見せたが、結局ひとつのモンスターボールを受け取った。

 

「よし!準備できたな!試合は1VS1のガチンコ勝負とする!それではバトル始め!」

 

「いけ!アチゲータ!」

 

 先生の掛け声を合図にハルトはポケモンを繰り出した。

 そのポケモンは以前に見た時と姿や体の大きさが変わっていた。

 この短い期間で進化したのかとベリルは冷静に分析する。すなわち、それだけバトルを行い、たくさんの経験を積んだということ。

 そして、アチゲータとハルトの目を見る。

 

 彼らの目には、お互いへの厚い信頼と目の前の勝利を信じて疑わない、そんな気持ちが溢れ出ているようだった。

 

 ――ゾクリとベリルの胸の奥で何かがざわめく。

 

 そんな目をした相手に真剣に向かわないのは、あまりにも失礼だ。

 そして、力を貸してくれるこのポケモンにも。

 

 ベリルはひとつ、深く息を吐いて真っ直ぐに相手を見る。

 

「――任せたよ、マリルリ」

 

 ベリルは握り締めたボールをバトルコートへと投げた。

 そうして現れたマリルリに、カバンから取り出した木の実を渡す。

 

「よろしくね、マリルリ。……これ、体力が減ったと思ったら食べていいからね」

 

 マリルリは木の実を仕舞い、こくりと頷いた。

 

「……よし!待たせたね!行くよ、ハルト!」

 

「もちろん!手加減はしないよ!」

 

 両者、バトルの準備が整った。

 そんな彼らの周囲には、クラスメイト達がワクワクした目で今か今かとバトルが始まるのを待っている。

 

 ベリルは少し懐かしさを感じながら、ついにポケモンへと指示を出した。

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