ヘタレ霊夢   作:ブナハブ

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他力本願なヘタレ

 紫に脅され、急いで異変解決に赴いた博麗霊夢。

 しかし一人じゃ心細すぎたので、道連れもとい同伴者を求めて魔理沙が住まう森へ直行。その後、魔理沙を道連れにした霊夢は勘を頼りに右往左往していると氷の妖精が喧嘩を吹っかけてきた。

 

 氷の妖精と弾幕ごっこをする事になった霊夢一向。その後の霊夢はというと、

 

「……」

 

 特に何もしていなかった。

 

 現在、霊夢の目の前では魔理沙と氷の妖精による弾幕ごっこが行われている。相手は妖精にしては強い部類のようで、魔理沙は少々手こずっていた。

 

「……」

 

……さて、再び言う事になるが、この時の霊夢はというと、

 

(いやー、心が休まりますわ〜)

 

 何もしていない! そう! 何も!! 完全にリラックス状態である。手元に茶があったなら思わず手に取って一口入れてしまうぐらいにはほのぼのとしていた。場違いにも程がある。

 

 しかし外聞を気にするヘタレに抜かり無し。腕を組み、魔理沙と妖精の弾幕ごっこに真剣な眼差しを向ける。側から見れば霊夢は観戦に集中しているように映る事だろう。

 

(……にしても、魔理沙ってば随分と強くなったわね。初めて会った時とは大違いだわ)

 

 さて、どうしようもなくヘタレな霊夢であるが、意外にも自分の事を弱いとは思っていない。むしろ強い方だと自負している。

 圧倒的な才能を持ちつつも、ヘタレが故に驕らず鍛錬を重ねる。なので戦闘力に関しては普通に自信がある。

 

 では何故ここまでヘタレなのか? それは……

 

(ひたむきな努力、私には無い強靭な精神、もし魔理沙が私を倒す為に全力を出したら……ひぇっ)

 

 これである。ヘタレな霊夢は自分の能力を客観的に見れる目を持っているのと同時に、相手の能力を見極める観察眼も兼ね備えているのだ。

 

 そしてここで問題となってくるのが、霊夢のヘタレ過ぎる思考だ。

 例え相手が今弱くても、将来どうなるかは分からない。弱くても闇討ちでなら自分は殺されるかも知れない。

 

(魔理沙には嫌われないようにしよう)

 

 被害妄想と言ってもいい程の慎重論。こうした理由から霊夢は敵を作らないよう立ち回る事を常に意識するのだった。

 

「おーい霊夢!」

 

 どうすれば魔理沙に嫌われないかなどとヘタレがくだらない事を考えている内に決着はついたようで、魔理沙は手を振って霊夢に呼びかけた。

 

「強くなってるわね」

「おうとも! あたしは常に成長するのさ。霊夢もボケっとしてたらあたしに追いつかれるぜ?」

「そう」(嫌だなぁそんな未来……いや待てよ? もし魔理沙が私より強くなったら、それは凄く心強い味方が出来るという事では?)

 

 一々そんな事を考えちゃうヘタレは、薄っすらと笑みを浮かべて魔理沙に言った。

 

「期待してるわ」

 

▼▼▼

 

 紅魔館、人里から遠く離れた場所にある館の門の前に彼女は立っていた。

 

「……」

 

 中華風の衣装を身に纏うその女は目を閉じ、不可視の力を感じ取ろうと集中する。

 

 『気を使う程度の能力』、エネルギーやオーラといった目に見えぬ力を操る力。この力を使って彼女、紅美鈴は周囲に潜む生命を感知していた。

 

 ネズミ一匹逃がすまいと、あらゆる生物の存在を把握していく。

 

「……来たか」

 

 すると前方から二つの気がこちらへと向かって来ている事に気付き、美鈴は静かに目を開く。

 彼女は近づいてくる侵入者に悠然とした佇まいで待ち構える。

 

「ほう」

 

 そして侵入者を視界内に入れた時、美鈴は思わず感嘆の息を漏らした。

 

 その対象は魔法使い然とした方に、ではない。確かに実力はあるんだろうが、驚くほどじゃない。注目すべきはその隣に居る方だ。

 

 強い。一目見て、第一印象として真っ先に思い浮かんだのがこれだ。

 巫女服を着た少女が内包するその力、内に秘められる『気』を使って戦う美鈴だからこそ、彼女の異質さが理解出来た。

 

 あれはただの人間が扱うには膨大過ぎる。よく平然としていられるなと感心するほどだ。

 

 しかし同時に納得する。あの大妖怪が強いと断言したのだ。これぐらいの異常性は持って然るべきなのだろう。

 

「お、なんか門番が居るな」

「そうね」

 

 博麗の巫女は一言だけ魔法使いに言葉を返すと、地上に降り立ちこちらへやって来た。

 

「通して欲しい」

 

 ぞっとする程に冷たい声、無機質な声色は自身の事など歯牙にもかけていないのだと察せられた。

 

「お断りします」

 

 だがそれがどうした?

 

「此処を通りたくば、私を倒してからにして下さい」

 

 相手がどれだけ強かろうと、自分は門番としての役目を果たすまで。

 

「……そう」

「ふーん……そう言う事なら霊夢、そっちは任せたぜ!」

 

 魔法使いはそう言ってこの場を離れた。一人を中へ入れてしまう事になるが、流石に目の前の脅威を放って魔法使いを追う訳にはいかない。

 

「では、参ります!」

 

▼▼▼

 

(……な、な)

 

 眼前に広がる虹色の弾幕を見て、霊夢はわなわなと静かに震えた。

 

(なんで行っちゃうのー!!?)

 

 このままボスまで魔理沙にやって貰う、そんな甘い考えを現実は世の中舐めんなと打ち砕く。

 

 内心ビビり倒す霊夢、対するは気と拳法を操る紅魔館の門番、紅美鈴。

 

 異変解決への道のりは、まだ先のようだ。

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