闇堕ちした初代ギターヒーローを二代目が救う話   作:火内coach

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アンケート見る限り、意外と未確認ライオットまでやって欲しい意見があってほっとしてます。とりあえず文化祭まではちゃんと書くので見てください。


言いたい事も言えないそんな世の中なので

「ヨヨコちゃんと仲直りしたの? ミナちゃん?」

 

「それはお姉さんが知りたいんだよなぁ………私が潰れた後、ひとりちゃんと何があったのやら」

 

 北海道のライブを経て、夏休みも終わった新宿FOLTで残暑の纏わりつく熱気を生ビールで流し込む女傑が1人。煙草の煙が天井の光に煌めきながら、燻る中で隣で話を聞いている強面の店主………銀次郎はそれでも良かったと笑っていて。

 

「ここ数年はうちにすら寄り付かなかったのに、最近来てくれるのも関係があるのかしら?」

 

「うちのマネが他のライブハウスで問題起こすくらいなら古巣でやれって言うから………」

 

「今のSIDEROSの様子も見るのも入ってるんでしょう?」

 

「………………」

 

「沈黙は肯定と見なすわね。なのに、貴女の方からはわざわざ時間をずらしてまで会わないようにしてるのやめたら? 見栄っ張りなのか、意地っ張りなのか」

 

「ほっといてよ。銀ちゃん、生お代わり」

 

「あら、ごめんねえ。廣井が飲み干しちゃってそれで最後なの」

 

 今日もまごう事なき、アルコール中毒者は夏休み明けの結束バンドライブに行ったきり、帰ってきてない。ヨヨコも行ってるため、いい機会だと来てみたらこの始末。

 

 いない時でも影響を残していくSICK HACKのカリスマは恐るべきと言うべきか。人生フルスロットルで寿命を減らしているあのベーシストに恐れるべきか、ミナは真剣に悩んだ。

 

「いつかあの人、アル中で死ぬよ? 令和のシド・ヴィシャスにでもなるつもりなの?」

 

「その時は誰がナンシーになるのかしらねえ」

 

 他愛無い雑談をしつつも、ミナはスケジュール表に目をやる。10月と12月にSICK HACKのライブ予定が入っているのを見つつ、サービスで出されたジンジャーエールを飲む。

 

「10月の前座なら、まだ空いてるわよ」

 

「………そんなに分かりやすい?」

 

「年齢重ねれば誰でもわかるわよぉ。10月のハロウィンライブ、前座にいた子達が解散しちゃってね。何でもボーカルが別のバンドに移ったのが原因見たいね」

 

「それはそれは………ご愁傷様です。じゃあ、その枠。お姉さんが買っても問題ないかな?」

 

「いいわよ。ノルマ代払ってくれたらね。だけど、勝手にライブなんか決めて大丈夫なの? 事務所に話を通さなくていいのかしら?」

 

 銀次郎の問いかけに、ミナは意地悪く笑う。また碌でもないことを考えているようだが、その考えはまた上手くいかないのだろうと銀次郎は呆れたように愛想を振舞っていた。

 

 翌日、10月の前座にシークレット枠で名前が記載されているのを見たヨヨコはミナだと確信して、自分達も前座として予約を入れるのだった。

 

 なお、未確認ライオット出場の話も含めてバンドメンバーからスケジューリングの大事さを教えられることをまだ知らない。

 

 

 

 

「ラスト1本ー!!」

 

「「「はい!!」」」

 

「この暑い中、よくやるねえ。お姉さんは早く帰ってビールが飲みたいっていうのに」

 

「真面目に」

 

 マネからの仕事の連絡を受けて、彼女と一緒に訪れたのはかつての母校──秀華高だった。

 

「なんだっけ。文化祭の特別ステージに卒業枠として出て欲しいって話? お姉さん、卒業してないけど」

 

「屁理屈はいいから。少しはOBとしてらしくなさい。そもそもはアンタ達の印象を少しでも良くするためのものなんだから、きっちりやりなさいよ?」

 

「はいはい。煙草吸っていい?」

 

「終わるまで我慢しなさい!」

 

 車を来訪者駐車場に止めて、陽炎のように揺らめく記憶を頼りに来訪者用昇降口から目的地へ向かう。土日の校舎は誰もいない残暑の熱気をまじりながらもどこか寂しげに見えた。

 

 煙草を止められ、口元寂しく、案内された応接室へ向かう。道中、変わったものや変わらないものに何処となく懐かしさを覚えながら。

 

「いやいや、よくぞ来てくださいました。私はこの高校の校長をやっており………こちらが」

 

「1年の学年主任をしています。本日は、懐かしい顔に会えると聞いてわざわざこの場を設けさせていただきました。本日はよろしくお願いしますね。仲間さん」

 

 愛想よく笑う2人にミナも笑いながら、握手を交わす。こういう事にも随分と慣れたものだと自嘲する。欲しかったものだけは手に入らず、見えない傷と上手い仮面の被り方だけが増えていくのだから。

 

「知り合い?」

 

「多分、昔の担任………かな? 覚えてないけど」

 

 マネの確認に短く頷き、返答する。その後はスケジュールやチケットの調整。当日、押し寄せるかもしれない外部の観客達に対する対策を煮詰めていく。

 

(本来なら、INSH×ROCK全体でこういう話が来るべきなんだろうけど私だけしか話が回ってこないのもそういう事だろう)

 

 学生達とSNSは切り離せない関係だ。迷惑沙汰を起こせば、噂が広まるのは止められない。その辺り、上手くやれる上に母校だからやらかさないだろうとの判断を下して自分を派遣したのかと考えつつ、計画を練っていく。

 

「ひとまずは私達の要望はこの辺りでいいでしょう。後はそちらにお任せいたします」

 

「はいはい! それでは当日、お願いしますね!」

 

 出されたお茶が温くなるほどに重ねた議論を経て、解散となった。マネが仕事の電話と車を回してくる間に煙草を1本取り出し、待ち望んでいた煙を吸おうとして、

 

「校舎は禁煙よ。仲間さん」

 

「………昔は吸っていた先生いた気がしますが」

 

「時代の流れよね。ともかくうちは禁煙なのでタバコは控えてください」

 

 背後から元担任に声をかけられた。ジッポをしまって、煙草を箱に戻せば、彼女はミナの隣にまで歩いてくる。その目には変わってしまった事への悲壮感が宿っていた。

 

「あの仲間さんが煙草を吸うなんて………悪い人に影響されちゃった?」

 

「まあ、古巣のライブハウスにはちょっと人間的に尊敬できない人もいましたが………結局は自分で始めた事なので」

 

 飲酒も煙草も今ではかけがえのないものだが、当時の自分はその姿を嫌悪していたようにも思える。

 知らない男達と浴びるように酒を飲む母や、背中を丸めて誰かに急かされるように煙草を吸う父。そのどちらにもなりたくないと思っていたのに、今の自分はこうなっている。

 

「それで何の用ですか? 中退した問題児に人生の指導でも?」

 

「今更そんな事はしないわよ。ただ、貴方の弟子の………後藤ひとりさんについて話があるだけ。貴方、ちゃんとあの子のこと見てあげてる?」

 

「それは勿論。愛弟子ですから、きっちり鍛えていつかは私の相棒にするつもりでいるので」

 

「そう………じゃあ、彼女が夏休みデビューで垢抜けたのは貴方のせいって事ね?」

 

「ごめん、何それ知らない」

 

 肩を竦めたり、おどけていたミナから溢れた言葉に嘘偽りなど一切なかった。ミナは知らなかったのだ。ひとりがヨヨコからの遠慮ない言葉に私服全てをダメ出しされて、母親か師匠の買った服を着てること。

 

 夏休み終了間際に江ノ島行く予定を勝手に建てられた挙げ句、可愛い服を見繕うわ!とノリノリな喜多に散々連れ回された挙句、気絶したことをきっかけに母親に美容院に連れ込まれていた事。

 

 その結果、

 

「何という事でしょう。1学期はあまり目立たない地味なクラスメイトが透明感溢れる気品のいい美少女になっているではありませんか。私はてっきり誰かと肉体関係でも結んだのかってヒヤヒヤしたわよ。生徒指導時に砂になった彼女を見て、ないわと思ったけど」

 

「まあ、ひとりちゃんって背筋を伸ばせば結構クール系の美人顔だからね。ようやく愛弟子の可愛さが知れ渡る日が来たか………」

 

「後は彼女の内向的な態度よね」

 

「それは、まあ………本人の個性なので」

 

 ミナですらちょっと矯正できないかもと、思うひとりの性格。かろうじて仮面を被らせてライブをする時の自分と切り替えさせる方法を与えたのはミナ自身も自分を褒めてやりたいほどの成功だったと思ってる。

 

「だから、ちゃんと見てあげてね。私としても学校を牢屋とかみたいにいたくない場所とは思って欲しくないの。貴方ならきっと上手く導けると思っているわ」

 

「頑張りますよ。お姉さんみたいな人生、送るのは私一人で十分ですから」

 

「………仲間さん、そのことだけど」

 

「あっーと、マネちゃんから連絡だ。ではこの辺で失礼しますよ。せーんせ」

 

 ばーい。と軽く手を振ってミナはその場を後にする。あれ以上、あそこにいても自分に実りがあるものなんてないとわかっていたから。だから逃げるように後にして、車に乗り込む。

 

「マネちゃん。煙草吸っていーい?」

 

「ダメに決まってんでしょ。ニコチン中毒。事務所帰るまで我慢しなさい」

 

「………頼むよ。ちょっと気分変えたいだけなんだ」

 

 移動する車内から見えたのは仲良さそうに帰宅する生徒たち。また明日なんて、言って楽しげに帰宅する彼女達は明日も明後日も変わり映えしない日々を楽しみながら、増えた過去を懐かしんでいくのだろう。

 

 ミナのように増える傷を指折り、数えては小指に繋がっていた糸を辿るように祈る毎日を送ったりはしないのだろう。

 1人にならざるを得なかった日々を悪夢として見ないのだろう。

 

「頼むよ、マネちゃん」

 

「………1本だけよ」

 

「ありがとう」

 

 震える指先で煙草に火をつける。窓を開けて、冷たい風を顔に浴びながら、現状への不満を吐き出すように白い煙を風に消していくのだった。

 

 

 

 

 

 仕事が終わった。今日も今日とてストレスが溜まる日だ。だからって酒に逃げるのはちょっと不味い。下手すれば仮面が落ちて学生時代の情けない自分を曝け出してしまうかもしれない。

 

 ならば、自宅に帰ればいいじゃないとマネは言うがミナは自宅には滅多に帰らなかった。厄介なストーカーがいるわけでもない。タワマンだから、近隣迷惑とかでもない。

 

 ただ、暗い部屋で〇〇でいるのが嫌だっただけだ。

 

(素顔をだすと、ファンの子たちは私が支えないと………!でガチ恋化するからなぁ。酒が飲めて、曝け出しても問題ない場所はあそこしかないかぁ)

 

 近くのスーパーで買い物して、そのマンションへと足を運ぶ。なんて事はない賃貸のマンション。その一室にミナが頼りにしている避難場所があった。

 

 今日みたいに過去の自分に触れてしまった時や、誰かに見られたくない自分の時にはこの場所をよく利用していた。インターホンを鳴らす。ドタドタと走る音がして、鍵が開き、ものすごい勢いで開くと中に引き摺り込まれた。

 

「来るなら事前に連絡してくれる!? こっちだって締切とかで相手出来ない日だってあるんだから!」

 

 部屋の主は肩を怒らせてはいるが、ちらりと袋の中身を確認しているので苦笑しながら袋の中身を見せびらかす。中には野菜やお肉などの食材と頂き物の日本酒だ。

 

「締め切り間際だからこそ、人の心がこもった料理を食べたい時があるかなあって思ってだけどいらないのかな?」

 

「食べます! 食べたいです! ()()()()()()()()()のご飯! 食べさせてください!!」

 

 彼女の怒りは見せかけだ。なんやかんや言ってもいつも部屋に入れてくれるとミナは知っている。まあ、ライターが歌手を部屋に招き入れてるなんて知れば、大炎上は間違いないのだが。

 

 だから、ダメ押しにミナは顔を彼女の耳に近づけて囁く。甘くハスキーな声で。いつものように、甘えるように。

 

「だから、今日も泊めてね──愛子」

 

「おっ………やばい、耳がはらみゅ………ギターヒーロー、さいっっこう」

 

 ぽいずん⭐︎やみ改めて佐藤愛子が床に崩れ落ちたのを確認して、ミナはキッチンへと向かうのだった。




評価をお願いします………意欲に繋がるので何卒

この小説はどこで終わるべき?

  • 文化祭ルート(新宿FOLTでミナと勝負)
  • 未確認ライオット
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