朝起きて、みんなで朝食をとってから私はギルドに向かった。
対応してくれたのは昨日もお世話になったローズさんである。どうやら、私の担当アドバイザーに決まったようだ。
「ダンジョンに潜りたいのだが、ある程度の情報をいただけぬかな?」
「了解しました」
「ああそれと、某には砕けた口調で構わぬよ。神様相手には敬語であるべきであろうが冒険者相手にはその限りではなかろう」
「そうかい?それならそうさせてもらうよ」
「では早速だが私がLV4だということを踏まえて、18階層まででの注意点を教えていただけるか」
そうして教えてもらったのはヘルハウンドやミノタウロスの危険性。後は17階層のゴライアスについて。いくらLV的には同格でも危険なので戦わず逃げろと言われた。
さてでは行くかと腰を持ち上げた私に手渡されたのは体力回復薬。LV4だから大丈夫だと思うが、一応持っておけとのことだ。ローズさんマジ天使。
私は地上とダンジョンを繋ぐ螺旋階段を降りて行く。
基本、冒険者は朝からダンジョンに潜るらしく、ものすごい数の人がいる。
ダンジョンの中は狭く、暗かった。上層は洞窟型で、下に行くにつれ通路は広くなっていくらしい。
現実のダンジョンは新鮮で、周りを見渡しながら進んでいく。
歩いていてもなかなか戦闘にならない。
ゴブリンとコボルドは実力差を本能で悟っているのか遭遇しても逃げてしまうのだ。ゴブリンやコボルドの足の速さなら全然追いつけるのだが、追いかけてまで倒そうとは思わなかった。
2層に降りると、壁に張り付いていたヤモリ型のモンスター。ダンジョン・リザードが飛びかかってきた。
だが当然、速度で負けるわけがなく。攻撃してくると判断してから対処しても全然間に合う。太刀を一振りして終わらせた。
ダンジョン・リザードが灰となって散り、地面に落ちる紫紺の結晶。
これが噂の「魔石」である。
とても小さいが、それでも人生初魔石であることに違いはなくとても嬉しい。
魔石は腰の袋にしまう。後で魔石は換金するつもりだが、コレは記念にとっておこう。
その後、ウォーシャドウやキラーアント、ニードルラビットと戦った。全て一太刀で終わったが。
階を降りると遠くに霧が発生しているのが確認できた。おそらく今いるのは10階層だろう。ここから怪物の宴(モンスターパーティー)も発生すると聞いている。ここで確か上層の実質的なボスにあたるインファントドラゴンが出現する。ドラゴンは他に24階層のグリーンドラゴンなどそこそこいるが、いずれも18階層より下なのでこいつに遭遇できなかったら今日は男のロマンであるドラゴンに会えないということになる。
霧の中を進んでいると、モンスターの集団と遭遇した。オークが2体に、インプ6体、バットバット2体である。敵より先に走り出してオーク2体を瞬時に切り伏せ、バットバットには魔石×2を投擲して撃ち落とす。
一瞬で前衛を削られてインプが怯んだので、そのまま流れで6体とも真っ二つにして戦闘終了。
落ちている魔石を回収していると、遠くから結構な速度で回転し、こちらに向かってくる球体に気付いた。
アルマジロ型モンスター、ハードアーマードだ。
普通に回避する選択肢もあったが、どうせなので手で受け止めてみる。で、そのまま持ち上げて地面にたたきつける。これだけで仕留めることができた。
周りを見ると冒険者が増えてきたので、彼らの稼ぎを奪わないためにも一旦食事をした。
袋より取り出したのは、笹に包まれた塩むすびが3つ。女神ツクヨミのお手製である。おむすびを口にしては水を飲み、おむすびを口にしては水を飲む。モンスターと戦う他の冒険者を眺めながら。
おっと、そんなこんなでゆっくりしているとモンスターが私の周囲で出現し始めた。
オークと、インプか。
オークはなぜか出てくるのに手こずっているので、出現しきる前に首を落として倒す。
インプは十数体いたが問題なく殲滅。
11階層、12階層もこんな感じで進んだ。それなりに時間をかけて探索したが、インファントドラゴンは残念ながら見つからなかった。
そして次、13階層からは中層だ。かの悪名高い「放火魔」ことヘルハウンドも出現するようになる。13~14階層でのパーティー壊滅のだいたいの理由がコイツらしい。
ヘルハウンド複数体による一斉放射が原因だ。
サラマンダーウールを着用していれば被害を抑えることが可能なのだが、みんながみんなサラマンダーウールを全員分揃えられるほど金銭に余裕がある訳でもない。
したがって、例え数人はサラマンダーウールを着用していてもサラマンダーウールを着用していない冒険者から脱落していき、そして遂には抜けたパーティーの穴を埋めきれなくなり全滅する。
サラマンダーウールを一人も着用していないパーティーだと一回でゲームオーバーとなる。
やばそうなパーティーを見つけたらできるだけ助けてあげようと思いながら13階層へと向かう。
13階層で初めて遭遇したモンスターはアルミラージだった。
そう、通称「ベル」である。
白い兎で小さくて、普通に可愛らしい。
ただ手に天然武器の斧を携えているので、モンスターなのだと認識できる。
アルミラージは武器を振りかぶって、飛びかかってきた。
武器ごとアルミラージを斬って、対処は終了。
だが、気づくと私はモンスターに囲まれていた。
無数のアルミラージと数匹のヘルハウンドだ。
アルミラージはその数によって絶えず攻撃をしてくるし、ヘルハウンドはアルミラージが巻き込まれるのも関係なく火球を放ってくる。
なるほど…、これが中層。モンスターの数が尋常じゃなく、また質も格段に上がる。
一体一体倒していると終わりが見えないので、少し戦い方を変えてみる。
現状、私の攻撃はオーバーキルだ。
なので攻撃力を下げて、一度に複数のモンスターを狩る事を優先する。
つまりは太刀で斬るのではなく、太刀を振るう。そうすることで有効打が線ではなく、面となる。
即ち、『回転斬り』
取り囲んでいたモンスターが薙ぎ払われ、灰となり消えていく。
残るのは後ヘルハウンドのみ。
順々に各個撃破して、ようやく一息つくことができた。
うむ、精神的に疲れたな。別に命の危険は感じないのだが、なんか終わらない課題をしている気分だった。
16階層までこんな感じなのであれば、縦穴を使ってショートカットする方が早いな。絶え間なくモンスターがくるのは普通にめんどくさい。
という訳で、私は今16階層にいる。
16階層はアルミラージはあまり見かけず、ヘルハウンドがよく出現するように感じる。
そして…、後はそうだな。
「グゥオオオオゥッー!!!」
コイツが出現するようになる。
牛の頭を持ち、片手で石斧を軽々と振り回し、LV1の冒険者であればその咆哮を聞いただけで行動不能とするモンスター。
ミノタウロス。
中層ではモンスターが単体で出現することはほぼない。
故に、例えLV2でも1対1で勝つことができるか怪しい怪物を最低でも2体相手取らなければいけない。
そして私の前にいるミノタウロスは26体。
うん…….これは少し手こずりそうだ。
ミノタウロスを6体から26体にしました。これなら流石に手古摺るだろ!?!