狼姫咆哮シンフォギア〜世界を駆ける神狼〜   作:エドアルド

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神狼と神殺し

 

拳と拳がぶつかる。それだけで凄まじい音を伴いながら辺りに破壊が巻き起こる。

 

その発生源は響と牙……いや、フェンリルの二人だ。

 

「お姉ちゃんを返せ!!」

 

そう言った響の蹴りがフェンリルに向かう。が、それをフェンリルは片腕で受け止める。

 

「無理な相談だな、小娘。奴は自分の意思でこうなった。貴様の出る幕は無い。それよりももっと楽しませろ!!」

 

響の言葉に返したフェンリルは右手のストレートを打ち込む。響はそれを手のひらで受け止め掴みフェンリルを投げ飛ばす。

フェンリルはそれをものともせず着地する。

 

「だったら無理矢理にでも返してもらう!!」

「やってみろ!小娘!!」

 

二人にそれ以上の問答は必要ない。それからは再び一進一退の攻防が繰り広げられる。

 

本来なれば対神用に制作された響の纏うグングニルで神狼であるフェンリルはすぐさまカタをつけられるはずであった。フェンリルは曲がりなりにも神の血を引き継ぐ者。後世に語り継がれる神話ではロキの息子として知られる。

 

であるならばグングニルが持つ神殺しの力は遺憾無くフェンリルに発揮されるはずだった。しかし、響の攻撃では傷一つつけられていなかった。

 

というのもフェンリルも神とはいえ大神オーディンを喰い殺した神殺し、フェンリルとグングニルその二つの神殺しがぶつかり合うせいでそれぞれがその力を打ち消し合っていた。

そしてもう1つ

 

(コイツ、お姉ちゃんより強い!)

 

フェンリルの強さだった。

今までフェンリルという強大な力を牙は押さえ付け断片のみを使って来た。というのも牙は確信していたのだ、自分では扱えきれないと。

そうして牙はフェンリルを自身の奥底へと封印する事を選んだ。だがそれでも漏れ出す力は大きく、その為に封印の腕輪であるグレイプニルをつけていた。

 

だが今やグレイプニルは無くなり、牙によって奥底にいたフェンリルは今表へと出てきた。

今のフェンリルには押さえつけるものが無いのだ。

 

故に今のフェンリルその実力の全てを発揮する事が出来る。

 

「中々だな!ならこれはどうだ!」

 

そう言ったフェンリルの右腕に炎が灯る。そして右腕を大きく振れば爆炎が響を襲う。

が、響は無傷だ。太陽神が与えた黄金の鎧はその程度では傷一つつかない。

 

「こっちはどうだ!」

 

そして今度はフェンリルの左腕に冷気が宿る。左腕を振れば出来上がるのは大氷塊。

これも響に傷をつける事は出来ないがその氷で動きを止める事は可能。今の響にとって氷を破るのに一瞬あれば十分だが。

フェンリルにとっても響を攻撃するのに一瞬あれば十分だ。

 

フェンリルの蹴りが氷を突き破り響につきささる。そのまま響は吹き飛ばされる。

 

「……さすがカヴァーチャとクンダーラ。凄まじい防御力だ」

 

しかし、響はすぐに体勢を立て直す。響には傷一つついていなかった。

 

「互いに決定打に欠けるな」

 

フェンリルが言った通り今の二人は決定打に欠ける。互いに攻撃を通せないのだから。

 

「ならば」

 

フェンリルはそう言って首元のギアペンダントに手を伸ばす。

 

「ククッ、あの小娘はいいものを持っている。」

 

フェンリルがペンダントから何かを引き出すように手を動かせば焔が溢れ出す。それは徐々に剣の形をとる。

 

「欠片とはいえレーヴァテインは世界を焼き尽くす剣。完全でなくともその力は絶大」

 

響は凄まじい熱を感じる。本来ならば防御フィールドにより極度の高温や低音は遮られる筈なのだ。しかも響の纏うグングニルはカヴーチャとクンダーラの二つにより絶対的な防御力を誇る。それを突破して熱を感じるという事は、響を傷つけうる攻撃であると言う事だ。

 

フェンリルはレーヴァテインを左腰に鞘に納めるように置く。居合の構えだ。

響はその構えに気を引き締める。

 

「……ヴィジャヤ」

 

響は稲妻を纏い。フェンリルを睨む。

数秒の時、互いに動きを止めた。そして動いたの同時だった。

 

「シッ!!」

「フッ!!」

 

交錯は一瞬。響は拳をフェンリルはレーヴァテインを振り抜いた姿勢で止まった。

先に動いたのはフェンリル。剣を振り払えば血が地面に飛び散る。

 

そして響は右肩から左腰にかけて大きな切り傷を刻まれた。血を吹き出しながら響はよろめく。

 

「レーヴァテインを使ったのは少々面白くなかったな……まぁ、良い」

 

そう言ってフェンリルが響に背を向け歩き出す。

だが、その足を止める。

 

「……ほう、その傷でよく動く」

「ッ゛!?フーッ……フーッ」

 

響は唇を咬み、苦悶の表情を浮かべながらもフェンリルを見ていた。未だに血が傷から滴っているが瞳は強く輝いている。

 

「シャクティ!!」

 

響がそう叫べばグングニルの一部、黄金の部分が分解され響の手の中に一本の槍が顕現する。

インドラより英雄カルナが黄金の鎧の代わりに授かった、雷光で出来た神をも滅ぼす必殺の槍。

これはその逸話通りカヴーチャとクンダーラによる防御を捨てシャクティ必殺の一撃をもって敵を撃滅する為のグングニル最強の矛。

 

「防御を捨てたか。次で決着という訳か、良いだろう付き合ってやる」

 

そういうとフェンリルは大きく右腕を引き剣を水平に持つ。突きの構えだ。

対して響はシャクティを両手で握りしめこちらも突きの構えをとる。

 

先に飛び出したのは響、血を流している今なるべく早く決着をつける必要があった。故に動いたのだが

 

「無謀だったな」

 

傷により鈍った響の動きはフェンリルにとっては捉えるのも楽であった。

 

フェンリルと響の影が重なる。

 

「わかっていたはずだ」

 

シャクティはフェンリルの脇を切り裂いていた。

 

「貴様では勝てないという事を」

 

そしてフェンリルのレーヴァテインは響の心臓を刺し貫いていた。

 

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