狼姫咆哮シンフォギア〜世界を駆ける神狼〜   作:エドアルド

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姉妹の絆

 

大きく黒い狼が牙を襲う。狼は牙に己が刃を突き立てんと大口を開けるが牙はその攻撃を避けると首をつかみ一思いにへし折る。

すると狼は闇に溶けるように消える。

 

「……ハアッ……ハアッ……」

 

牙は全身に傷を作り血を流しながら佇んでいた。さらに牙の体の所々は黒く染まっていた。

そんな牙などお構い無しに新たな狼達が現れ牙を襲う。

 

この場所は牙とフェンリルの精神世界。闇がフェンリルを色彩が牙の精神を表している。だが色彩は牙自身にしかなく、その色彩も黒に蝕まれていた。

 

全身を蝕まれている牙の動きは鈍く普段の動き程のキレもない。

そんな牙に狼達は容赦なく襲いかかりその刃を突き立てる。

 

「グゥッ!?」

 

噛まれた場所は黒く染まり牙を取り込まんと蝕んでいく。

牙はそんな狼達を素手でへし折り抉り、潰す。

 

牙の体を食んでいた狼達は消えるがまた新たにその場に現れる。

そこに一際大きな狼が現れる。

 

『よく粘っているな、小娘』

「なんの、よう……」

 

現れたのフェンリルだった。

 

『ククッ、なに、様子を見に来ただけだ。しかし、よくもここまで頑張るものだ』

「何が…言いたい」

 

フェンリルはまるで笑うようにいや嗤っているのだ。

 

『なに、妹が死んだのによく頑張るな、と。ククッ』

「…………は?」

 

牙は惚けた声を出す

 

「……嘘だ」

 

そして否定する

 

『ククッ。嘘では無い。このままお前をジワジワと取り込むのも一興かと思ったが、せっかくだ、お前の絶望した姿を見たくてなぁ』

「黙れ……」

『お前の妹は中々強かったぞ』

「黙れ……」

『だが結局、お前の体を殺す事を躊躇って俺に心の臓を貫かれた時は傑作だったぞ!』

「黙れぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

牙は叫びながらフェンリルに対して跳躍する。だが、フェンリルの前足で虫をはたくかのように地面に叩きつけられる。

そして地面に転がる。

 

『論より証拠、貴様にも妹の死に様を見せてやろう』

 

フェンリルがそう言うと大の字で転がる牙の眼前の闇に景色が浮かぶ。

 

「……う…そだ……」

 

そこには牙に胸を貫かれている響の姿だった。

 

「は…はは……アッハハハハハハハ!」

 

だが牙は笑い声をあげる

 

『壊れたか……』

 

だがフェンリルの予想とは裏腹に牙は立ち上がる。

 

『なに!?』

「私は最高の妹を持ったわ」

『何を言っている!?貴様の妹は死んだのだ!!何故立てる!何故笑える!?』

「決まってんでしょ。大切な家族がいるからよ」

 

そう言った牙の目は爛々と燃えるように輝いていた。

 

 

 

 

 

****************

 

 

 

 

フェンリルは精神世界での牙に恐れ慄いて動きを止めた時。現実世界で

 

「……つ゛か゛ま゛え゛た゛ぁ゛」

 

血反吐を吐きながら響がフェンリルの腕を掴んだ。

 

「何故!?死んだはず!!」

 

フェンリルは響の心臓を貫き殺した。これは変わらぬ事実だ。

故に驚愕した。

そしてフェンリルは響が生きている原因を見つける。

 

響の手に装着され盾を見つけた。それはフェンリルもよく知る完全聖遺物。

 

「ヒルドルの盾!!」

 

ヒルドルの盾にはとある能力があるとされている。それは"戦場にて戦死者を蘇らせる力"

それが響の命を繋いでいた。

 

「だが!今の貴様に何が出来る」

 

そう言うフェンリルに答えるように響は歌を歌う。

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

Emustolronzen fine el baral zizzl

Gatrandis babel ziggurat edenal

Emustolronzen fine el zizzl

 

血を吐き出しながらも響は歌う、その歌は

 

「絶唱!?」

 

絶唱により増大したフォニックゲインは響の右腕に集約される。

 

「だが!この体を殺せば貴様の姉も死ぬぞ!」

 

しかし、響は止まらない。右腕のアームドギアが形を変える。普通はフォニックゲインにより大型化するのが殆どなのだが黄金の輝きを宿し、白く輝く。

それはまるでXDのようだ。

 

この時響の心にあるのは牙の言葉だった。

『そんなに私の手を見つめてどうしたのお姉ちゃん?』

『ん?響の手は凄いなって』

『凄いって何が?』

『シンフォギアのアームドギアて本人の心が大きく影響を与えるんだけど。響のアームドギアは手。しかも他者と手と手を繋ぐ手。それは響の心の奥底にある優しさ。

()()()()()の響の手はとっても優しい手だから』

『……何それ』

何気ない牙の言葉。だがそれは響にとっては心に残る姉からの言葉。

 

「殺さない!殺してなるものか!!」

 

それは響の心からの叫び

 

「もう無くさないと決めた!!もう繋いで離さない!!私のこの手は!繋ぎ束ねる!アームドギアだァァァァ!!」

 

響の右腕が牙の胸に当てられる。その時。

 

 

 

 

 

 

 

闇が蔓延る精神世界に一条の光がさす。

それは牙を包み一本の槍を顕現させる。

 

『何が…起こった』

 

その光景にフェンリルは唖然とする。

 

「流石私の妹ね」

 

そう言って牙は光の槍を握り締める。

その途端闇が薄れ色彩が精神世界を彩る。

 

『ありえぬ……ありえぬ!!』

「いいえ、これは純然たる事実。あの子が起こした()()

『奇跡だと……そんなものォ!!』

 

その言葉に唖然とするもフェンリルは牙に大口を開けて襲い掛かる。

それに対して牙は槍をフェンリルに向けて投擲する。

それはフェンリルをぶち抜き精神世界に風穴を開ける。

 

「今、行くわよ響」

 

 

 

 

現実世界でレーヴァテインが霧散する。それと同時に響が倒れそうになるが。

それをフェンリル、いや牙が支える

 

「ただいま、響」

「おかえり、お姉ちゃん」

 

姉妹の絆がフェンリルを打ち破ったのだ

 




これでカ・ディンギル跡地での戦闘は終了!!
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