狼姫咆哮シンフォギア〜世界を駆ける神狼〜   作:エドアルド

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カ・ディンギル跡地の戦いの後で

 

カ・ディンギル跡地にて起こった装者達とウェル博士の戦闘は幕を閉じた、ウェル博士の逃亡という形で。

 

ウェル博士によるF.I.S側の装者、リゼ・アルジェネロのパンドラの箱による暴走を始めとしてそれに伴う正規適合者の暴走、響と牙による衝突。様々な事がカ・ディンギル跡地では起こった。

 

ウェル博士は正規適合者達の暴走の鎮圧の合間に負傷したリゼ及び心臓だけになったネフィリムを回収して逃亡。リベルタスや二課でもウェル博士を追跡はしたが忽然とその姿を消した。

 

また、カ・ディンギル跡地は戦闘により地形がある程度変わる事になったが被害が広がらなかったのはリベルタスによる結界の構築のおかげである。

 

 

 

 

 

********

 

 

 

 

二課の医務室では装者である、翼、奏、クリス、セレナと響、牙が寝ていた。装者の4人は暴走による肉体の酷使と精神的負荷から、響と牙は肉体の損傷こそ既に無いが精神的な疲れから眠りについていた。

 

「……んんぅ」

 

身動ぎをしたのは牙だった。牙は目を擦り寝ぼけ眼で響を視界に捉える。

牙は自身のベッドから出ると響のベッドの中に潜り込んでいく。

 

「響……」

 

そのまま抱き締めるように腕を回し響の胸に頭を押し付ける。

 

「……ちゃんと動いてる」

 

牙はドク、ドク、ドクと脈動する響の心臓の音を聴きながらそう言う。

精神世界で響の胸を貫かれた時を見た時、牙は笑っていたがそれはほぼ虚勢だった。

最初胸を貫かれた響を見た時は頭が真っ白になった、しかし、響が纏うグングニルを認識した事で牙は持ち直す事が出来たのだ。

 

今の牙の心は不甲斐なさでいっぱいだった。

響を守ると誓っていたはずなのに結果は苦しい思いをさせ、響が起こした奇跡に救われる始末だ。

 

「不甲斐ないな、私……」

「そんな事ないよ」

 

牙は驚き声がした方を向くと目を覚ました響が牙を見ていた。

響は自身の胸に頭を押し付ける牙を強く抱き締める。

 

「お姉ちゃんはいつも私を助けてくれた、いつも愛してくれた。それだけで私は嬉しい。それに私こそお姉ちゃんに助けられてばっかりで不甲斐ない」

「でも!私は響のお姉ちゃんなのに苦しい思いをさせてる!響を一人にしたあの時から!私は――」

 

牙は心に残っていた1つのしこり、響をこの世界の主人公として容認してしまったあの時から、燻らせていた罪悪感が響が死にかけた事により更に大きくなりそれを言葉として吐き出していくが、それは遮られる。

 

「お姉ちゃん、私達は家族なんだよ。だから、助け合って生きていきたい。一緒に支えあって生きたい」

 

牙の響への愛の根底の一つにあるのは罪悪感。未来をしりながらそれを防げず響を世界の主人公として表舞台にあげてしまった罪。

まあ、なんともお門違いで傲慢な罪である。

 

「……私は響に幸せになって欲しかった。なのに私がいたから……」

 

自分がいる事で本来の筋書きとは違う道を進み、より響に苦しみを与えているのは自分自身だという認識が牙を苦しめる。

 

「違う、違うよお姉ちゃん。私はお姉ちゃんがいたから幸せになれたんだよ。確かにお姉ちゃんは酷いから私に悲しい思いをさせるけど。でも確かにお姉ちゃんといた時間は私にとってかけがいのない幸せな時間だった。お姉ちゃんがいたから私はここまで頑張って来れたんだよ」

 

響には牙を苦しめているものは断片的にしかわからない。でも、それでも響は言葉を紡ぐ。

 

「お姉ちゃんが負い目を感じてるのはわかった。でもね、そんなの関係ない。今の私があるのはお姉ちゃんのおかげで、それでいて()()()()なんだよ」

「え……?」

 

確かに牙にとって響を主人公として容認してしまったのは罪なのだろう。しかし、その力をもってして戦うことは他ならぬ響自身が決めた事なのだ。

 

「私は逃げる事も出来たはずでしょ。でも私はそれをしなかった、したくなかった」

「ッ……それは」

 

そう響はその道を選んだのだ。ならば

 

「お姉ちゃんの心配は嬉しい。けど、これは私が()()()()だ。だからお姉ちゃんには応援して欲しいな」

 

この時、牙は自分の愚かさに気づいた。響を妹として守る事、響を戦いの世界に入る事を容認した事、それは自分が勝手に背負い込んでこの世界にとって異物である自分を罰したかったエゴなのだと。その理由に響を使っていた事を。

 

「……はは、バッカみたいじゃない」

 

響はいつの間にか守るべき妹などではなく共に歩いて行く家族になっていた事に牙は今気づいた。

あの小さくか弱いあの子はもう立派に成長していたのだ。

 

「ねぇ、響」

「なぁに、お姉ちゃん」

「ごめんね」

「私は気にしてないよ、お姉ちゃん」

「ありがとう。私も響に助けられたから」

「おあいこだよ」

 

そのまま響と牙は互いを抱きしめあいながら再び眠りについた。

 

その後仲睦まじく寝ているところを了子さんに写真に撮られたり揶揄われたりもあったが、二人は前よりも心の距離が近づいた。

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