水中を進む潜水艦、ヴィマーナオケアノスは太平洋に繰り出していた。
「まもなくパラディソス島に着きます」
ヴィマーナオケアノスの操縦士からの牙への報告を聞いた響は首を傾げる。
一体そこは何処なのかと。だが別段気にする事は無かった、響は別に世界中の地理を把握してるわけでも無いのだ。
「追跡は?」
「科学的及び異端技術による追跡はありません。このままステルスフィールドに進入しても問題無いかと」
「わかったわ。それじゃあパラディソス島、リベルタス本部に向けて全速前進」
「ラジャー」
牙の掛け声と共にヴィマーナオケアノスのスピードはあがり水中を突き進んだ。
しばらくすればヴィマーナオケアノスの観測機器には島が映る。パラディソス島だ。
そのまま突き進むと島の海中に開いている大きな横穴に進入して行く。そして行き止まりの部分で上昇していくと広い空間に出た。
広い空間はしっかり整備されており港のような作りをしている。周りでは忙しなく人が動いていた。
ヴィマーナオケアノスから牙に続いて響が出てくる。
「洞窟?」
「海から直通の潜水艦用の港よ。こっちよ」
響はスタスタと歩く牙の後ろを着いていきエレベーターに乗った。
「ねえ、お姉ちゃん。確かリベルタスて何処の国とも手を組んで無いんだよね?ならなんでこんな大掛かりな施設があるの?」
響の疑問も最もだった。今この世界では全ての陸地は国々によって分けられている。誰のものでもない陸地など無いのだ。
にもかかわらずどこの国とも手を組んでいないリベルタスは一つの島に潜水艦用の港を作り更にはリベルタスの本部まで作っている。普通では有り得ないことなのだ。
「ああ、ここはリベルタスの島だからね」
「リベルタスの?」
「元々この座標に島なんて無かったのよ。作ったのよ私達リベルタスが」
「作った!?」
牙が何でも無いように言った言葉に響は驚愕する。島一つを作ったなんてとんでもな事だ。海を埋め立てたりする事は知っているが島を作るような真似はほぼ不可能に近い。
「もしかして聖遺物?」
「正解!」
響の導き出した答えに牙は元気よく答える。
島を一つ作るという偉業を達する事を可能にする存在として響は聖遺物をあげた。事実この島は聖遺物により作られた。
その聖遺物の名前は
この天沼矛を奇跡的に回収する事が牙はこれを起動しリベルタスの拠点としてパラディソス島を作った。今現在はパラディソ島の聖遺物管理棟にて厳重に保管されている。
そんな話をしていればいつの間にかエレベーターは止まった。そして扉が開き牙に続いて響がエレベーターから降りると驚愕した。
「大きい……」
響の目に映ったのは高さ400mのビルを中心に通路で繋がったビル群のような建物。敷地面積は東京ドーム5個程とかなりの広大さを誇っている。
そしておよそ5000人の人々がここで生活を送っている。そのうちの殆どは聖遺物実験の被害者となっている。
「さ、こっちよ」
「あ、うん」
よどみなく進んでいく牙に響はついて行く。その途中で多くの人とすれ違って行くが全員が牙に対して笑顔ですれ違っていく。その笑顔は心からのもので響は牙が多くの人に信頼されている事実に嬉しく思うと同時に少しだけ嫉妬してしまった。
「ただいま〜」
「このバカたれが」
「ガッ!?」
牙がとある一室に入ると同時に頭にバインダーによる攻撃が叩き込まれる。牙を叩いたのはキャロルだった。
「お前事の大きさがわかっているのか?」
「……へ、へへ。ご、ごめんなさい」
「そもそもお前はだな──」
そのままキャロルは次々に牙に向けて小言を連発していく。牙は自分の非を認めているからか大人しくその小言を受けて入れていた。その姿をその場所にいた職員達は微笑ましいものを見るかのように見ていた。
「今はここまでにしておいてやる。準備はもう整っている。行くぞ」
「あい」
キャロルに言われるがままに牙と響はその後をついて行く。しばらくすれば二課のシュミレーターのような場所に着いた。
「立花響、今日はお前のグングニルの調査をする」
キャロルのその言葉に響は首にかけてあるグングニルを見る。
「作ったは良いがこれまでに起動すら出来なかったグングニル。調べるべき事は多々ある。早速始めるぞ」
キャロルにそう言われ響はシュミレーターの中に進む。それを牙は見送るとシュミレーターの外に備え付けられた多数の端末の一つに向き合う。
『それじゃあ始めるよ。グングニルを起動して』
「 Balwisyall Nescell gungnir exterminait tron」
牙の言葉に従って響はグングニルを起動した。それに伴いグングニルが響の体に装着される。
その瞬間から牙やキャロルをはじめとしたリベルタスの職員たちが端末に向き合い様々な数値と睨めっこを始めた。
その後も響はグングニルの力を確かめるように次々とグングニルに組み込まれた聖遺物の力を使って行った。