狼姫咆哮シンフォギア〜世界を駆ける神狼〜   作:エドアルド

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罪の精算とウェル博士の足掻き

 

 「はぁ、はぁ……クソッタレめぇ!!!!」

 

 フロンティア、システム中枢機械群のある場所にてウェル博士は悪態をつきながら地面を強く叩いた。

 何とか弦十郎たちから逃げ切ったがコントロールルームは制圧された。

 こうなればもはやフロンティアを動かすにはコントロールルームを奪い返すしかない。しかし、それももはやウェル博士の戦力では無理だ。

 ノイズは攻略されネフィリムは休眠状態、THE DISASTERは装者の足止めに使われて戻ってきていない。手札は皆無だ。

 

 だがこの程度で諦めるようならウェル博士はそもそも英雄になろうとはしていない。

 

「…………まだです、まだ終わってはいません。まだ私にはネフィリムとソロモンの杖が──グアッ!?」

 

 再び動き出そうとするウェル博士だったが手に持ったソロモンの杖を弾かれ痛みに手を抱える。

 

「そいつは無理だぜ」

「お、お前はァ!?」

 

 現れたのは硝煙をあげる銃のアームドギアを構えたクリスだった。

 

「何故ここにいるゥ!?お前はノイズの相手をしていたはず!!」

「はっ!もう外にノイズなんざ残っちゃいねぇよ。纏めて灰にしてやったぜ」

「なっ!?」

 

 ウェル博士が驚くのも無理は無い。フロンティアが上昇した時点で出したノイズの数は万はくだらない。それを30分足らずで殲滅出来るなど既存のシンフォギアでは不可能だ。

 

「あ、ありえない!!シンフォギアでそんなこと!」

「ところがどっこい嘘じゃあねぇ。あたしがここにいるのが何よりの証拠だ」

 

 そう言ってクリスは不敵に笑う。

 実際ウェル博士の言う通りシンフォギアでは不可能の偉業だ。だがそれを可能にするだけのアシストを行えるものたちが──リベルタスがいた。

 が、今回に限っていえばリベルタスと言うよりはクリスの母であるソネットが起因する。

 

 ソネットは歌手でありその歌声に含まれるフォニックゲインは平行世界において完全聖遺物である天変地異レベルの自然災害を引き起こせる気象兵器【マヤの遺産】を起動する程のフォニックゲインの量だ。

 

 そんな彼女は戦場で戦う娘の助けになるのならばと、大いなる力・権力・威信の象徴でありインドの叙事詩の英雄達はみな持った白い法螺貝の聖遺物である【白いほら貝】を欠片をもちいて作られた、フォニックゲインを増幅し拡散させる哲学兵装【レガラーレ】により絶唱に匹敵するフォニックゲインを得て瞬く間にセレナ、翼、奏、と共にノイズを殲滅したのだ。

 

 本来ならばその時点で更なるノイズを警戒し残らなければいけなかったのだが。

 

『やり残した事があるんだろう?』

『……良いのか?』

『良いも何もケジメつけてきな』

『貴方がやりたい事をやって良いんですよ』

 

 という翼、奏、セレナのクリスが以前から抱えていた悩みを見抜いた発言に感化され弦十郎の許可もえて単独でフロンティアへと乗り込んでウェル博士の前に現れたのだ。

 

「くっ──」

「おっと、動くんじゃねぇぞ」

 

 ウェル博士はクリスの目を盗んでソロモンの杖を拾おうとするが足元に弾丸を撃ち込まれ動きを止める。

 

 クリスはチラリとソロモンの杖を見る。

 あれこそがクリスの罪の象徴。過去にフィーネに利用されて起動してしまったソロモンの杖、それによって現れたノイズにより多くのもの達がその被害に会い命を落としてきた。

 その事をクリスはずっと後悔していた。たとえ悪人に使われたという事実があっても、あの時、ソロモンの杖を自分が起動しなければと考えた事は数しれず。

 

 それからずっとソロモンの杖を再び己の手で回収する事を考えていた。贖罪の為にも。

 

「お前さんの野望もここまでだ」

「風鳴弦十郎っ!!」

 

 ついには弦十郎も現れ、いつの間にかソロモンの杖は緒川が手にしていた。

 

「ソロモンの杖の回収完了しました」

「礼を言う、クリスくん」

「あたしはあたしのやるべき事をやっただけだ」

「それでもだ……」

「そうかよ……なら、礼は受け取って置いてやる」

「そうしてくれ」

 

 もはや詰み、あらゆる手札を潰され例え1人でも勝ち目の無い相手が3人もウェル博士を囲んでいる。

 その事実にウェル博士は絶望でも諦めでもなく怒りと憎悪であった。

 

 何故、自分は英雄になれないのか。何故、みな邪魔をするのか。何故、上手くいかないのか。

 

 ウェル博士にはその答えを出すだけの余裕も時間も無かった。

 

 ──だから。ウェル博士は激情に身を任せた。

 

「ネフィリムゥゥゥゥゥゥ!!」

「テメェ!!何を!?」

 

 クリスが引き金を引くよりも早くウェル博士は異形の右手を地面に叩き付け未だにコントロールームに残るネフィリムに命令を下した。

 

 ──喰らえ、と。

 

 その命令に従いネフィリムはその力のままにフロンティアを喰らい糧とし始める。それに伴いフロンティア内部に警報が鳴り響き揺れが襲う。

 

「何をした!」

「ヒヒヒッ、僕はただ命令しただけさ。ネフィリムにフロンティアを喰らえと」

「なんだと!?」

「ネフィリムはもう止まらない!!フロンティアを食い尽くしてお前らも食い尽くすんだ!!僕の邪魔をした報いさ!!」

「このイカレ野郎が!!」

「僕を英雄にしないこんな世界なんて必要ないんだァ!!アーハッハッハッハッ──がっ!?」

 

 やけになり高笑いするウェル博士を弦十郎は気絶させ担ぐ。

 

「クリスくん、緒川。急いでここを出るぞ!」

「そいつ連れてくのかよ……」

「罪を償わせる、ただそれだけだ」

「……そうかよ」

「急ぎましょう!!」

 

 3人は大急ぎでその場を後にした。

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