〜レイside〜
「ふーん、ふふーん、ふふーん♪」
手際よく調理していく中、時刻はもう19時近く。
作り始めたのが17時少しすぎだったからもう2時間近く経とうとしていた。
人数が人数なため、それなりに作らないといけないから時間が掛かるのは当然といえば当然だ。
すでにお米は炊飯器で炊く準備をしている。
今回はかなり凝った料理を作ってるからまだ炊いてない。
お米に水分を吸わせてる状態だ。
次の料理に取り掛かろうとしていると、なんか兄さんたちの慌てた声が小さく入ってきた。
それと同時に、ズドン!と天文台自体が揺れるような衝撃音が響き渡った。
「???なに?」
エプロンを外して手を洗って兄さんたちのいる部屋。
さっきまで父さんたちと話していた部屋へ行く。
「ねぇ、さっきからズドン!ズドン!五月蝿いんだけど?一体何?」
部屋に入るなり兄さんたちに訊ねる。
「レイ!」
「?兄さん、この状況は一体・・・・・・・・・・」
視線を兄さんたちが観ていたと思わしきモニターに移し、自体を把握する。
モニターには数えるのが億劫になるほどの、尋常ならないLBXの大群が。
しかもその手には銃や
この事からさっきからの騒音を把握し、
「あー、うん。解った」
と言い。
「よし、殲滅しよう」
と、ハイライトをオフにした眼で宣告した。
「ちょっ!?レイ!?」
「せっかくの料理を邪魔したんだから殲滅・抹殺・消滅・抹消あるのみだよね?」
「いやいやいや!!そんなこと言ってる場合じゃないからな!?」
「お、落ち着きなさいレイ!?」
「言葉が物騒すぎるよ!?」
何故か慌ててツッコミをしてくる兄さんたち。
兄さんたちの言葉をスルーして父さんに。
「父さん、確か幾つかサンプル用のLBXがあったよね?」
と訊ねる。
「ああ。実験用のが幾つかあるが」
「ならそれを兄さんたちに使わせて。兄さんたちはそのLBXを使って外の邪魔を排除。父さんたちは[エレボス]たちの修理を進めて」
「判った。コブラ」
「はい!」
父さんの声にコブラがすぐにここにあるLBXを取りに行く。
「レイ、
「問題ないよ」
兄さんの疑問に僕はニッと口角を上げる。
「父さん、僕のアレ。
僕の問いに父さんは頷くと。
「問題ない。修理と調整はバッチリだ。何時でも行ける」
「よし」
父さんの言葉を聞いて満足そうに頷く。
「兄さんたちはコブラがLBXを持ってきたらすぐに出て戦闘を。僕もすぐ行くから」
「わ、分かった」
「で、父さん。アレは今どこに?」
「私の書斎だ」
「分かった。じゃあ僕はそれを取ってくるから。先行ってて」
父さんにアレの場所を訪ね、父さんの書斎へと向かう。
「さあ、反撃の時間だ」
書斎に入り、置かれていたソレを視て呟く。
ソレは元通り修理されており、新品同然のように黒と白の双剣を携え、黒い機体に白銀のマントが靡く。
騎士のようにスマートなフォルム。
ソレを見て、久しぶり、という感情が出る。
「久しぶりの戦闘だ。―――[カオス]」
その機体はエレボスの前の機体カオス。
僕の2番目の相機。
僕の呼び声に答えるように、キラっと双剣が煌めいた。
CCMを操作して、機体情報を変更。
エレボスからカオスへと変える。
カオスの眼が光り、問題なく変更できたことを報せる。
「行こう、カオス」
ピッピッ、とCCMを操作してカオスを操作して左肩に乗せる。
カオスを肩に乗せたまま書斎を後にし、兄さんたちのいる外壁部に向かう。
到着すると、すでに兄さんたちは実験用のLBXを操作していた。
戦闘は白熱しているようで、銃撃音や爆発音が絶え間なく響く。
「お待たせ兄さん。ここからは僕とこの子も参戦するよ!!」
CCMを操作してカオスを出撃させる。
「疾くと舞え!―――カオス!!」
ガシャン!と音を立てて壁上に着地し、武器を双剣の『フェンガーリ』と『アステール』から両手銃の『シューターSR34C』の光学系銃を構える。
「レイ!それにそのLBXは!!」
この中でカオスを知っているのは兄さんとジンのみ。
兄さんとジンは驚いた表情を浮かべ、カオスを知らないヒロ、ラン、ジェシカ、ユウヤはカオスを物珍しそうに視る。
「修理していた僕のカオスだよ」
兄さんたちのLBXはそれぞれ、兄さんは[ブルド]、ヒロは[ウォーリアー]、ランは[クノイチ]、ジェシカは[アマゾネス]、ジンは[ムシャ]、ユウヤは[デクー]だ。
「それが、レイがエレボスの前に使っていたLBXカオス・・・・・・・」
「色々あって父さんに修理をお願いしていたけど・・・・・・いやー、あって良かった良かった〜。だってぇ〜・・・・・・」
見下ろすように眼下のLBXの大群を観て。
「コイツらを殲滅出来るからね!!」
ピッピッピッ、とCCMを操作する。
「必殺ファンクション!!【アタックファンクション!ディバインバスター!!】」
『シューターSR34C』の尖端の砲口に星円型の魔法陣が現れ、そこから白銀の砲光が高密度のレーザーのように放たれた。
放たれたレーザーは跋扈するLBX郡の一部を一撃の下に破壊する。
「うっそォ・・・・・・」
「マジ?」
「えぇっ!?」
「す、すごい威力・・・・・・」
ラン、ジェシカ、ヒロ、ユウヤが、え、マジ?と言った顔で見てくる。
「あ、相変わらずデタラメな・・・・・・」
「以前よりパワーアップしてるな」
一撃の下に大群の一部を削り取った必殺ファンクションを視て各々が感想を言う。
「さすが父さんの調整したカオス!」
フフん!と胸を張る。
「さぁ!どんどん行くよー!!」
今度は必殺ファンクションではなく、『シューターSR34C』からレーザーを発射して、横薙ぎに薙ぎ払い十数機のLBXをブレイクオーバーさせる。
本当は『アステール』と『フェンガーリ』の双剣で切り込みたいのだけど、乱戦になるため我慢する。
そんなこんなで、すでに一体何十、何百破壊したのか分からないくらいLBXを相手にする。
正直多勢に無勢。
こちらは7機に対して、相手は一体幾つ用意したのやら。
圧倒的な物量作戦に押され気味だ。
「ジェシカ、コレがブレインジャックなのは確かなんだよね?」
「ええ!けど、指令コンピューターが見当たらないの!」
「見当たらない、ねー・・・・・・」
ジェシカの言葉に考える。
もし市街地でブレインジャックが発生していたらニュースになってるし、レオンさんかティア姉から連絡が来るはずだ。
だが、そんな連絡はない。
つまりブレインジャックされたLBXは明確にこの天文台、【ビルニッジ天文台】を目指している事となる。
「・・・・・・まさか」
ブレインジャックされた電波探知プログラムの電波反応を視て呟く。
電波反応はゲージの真ん中から上を行ったり来たりして近くにあることを示している。
つまりそれは、元凶となっているコンピューターが近くにあるということ。
そしてそれが行ったり来たりしているということは―――
「ああ、そういう事か」
なんとなく解った。
「必殺ファンクション!【アタックファンクション!ディバインバスター!!】」
再度必殺ファンクションを放ち、一撃の下に敵を薙ぎ払う。
「面倒だなぁ。それを破壊しないとコレ止まらないよね」
「レイ?」
「あー、いや。これさ、多分、LBXに指令コンピューターが取り付けられてると思うんだよね」
「は?」
「へ?」
「はい?」
「What?」
「?」
「え?」
「いや、だから。指令コンピューターのシステムをこの大群のどれかのLBXが搭載しているってこと」
「「「「「はあぁぁぁぁっ!!!?」」」」」
ジンを除いた兄さんたちの声に耳が痛くなる。
「ど、どどど、どういうこと!?」
「いや、だって、指令コンピューター見つかんないんでしょ?なのに、電波反応はあって、しかもこの電波からかなり近くにあることが判る。ってことは、あのLBXの大群の中のどれかに指令コンピューターがあると視て間違いないんじゃない?」
カオスを操作しながら、次々と向かってくるLBXを薙ぎ払いながら言う。
「だから、その指令コンピューターを搭載したLBXさえなんとか出来れば、この騒動も収まると思うんだよね」
「でも、たとえそれが合っていたとしてもそのLBXがどれかは分からないんじゃないの?」
「うん。全くわからない。だから、こうして薙ぎ払うしかない」
カオスの構える両手銃『シューターSR34C』から純白のレーザーが放たれ全面にいる一列を薙ぎ、そのまま立て続けに後ろのLBXを破壊する。
破壊したその瞬間―――
「っ!?」
「な、なんだ!?」
橋の端。
湖上に浮かぶ天文台と逆の、街へ行く橋にある森林地帯から突如爆発音がした。
しかも一回ではなく何度もだ。
さらに、その爆発は爆発音を立てながら天文台の方へと近づいて来る。
「なにアレ!?」
「爆発が近づいてくる!?」
橋の上に跋扈するLBX全てを破壊したソレは立ち込める爆煙の中から姿を現した。
姿を現したソレのカラーリングは黒とオレンジ。
全身機械仕掛けで両手は手ではなく銃。
尻尾と羽根のように広げられた翼にはオレンジの燐光を放つ刃。
いや、刃というより、剣のほうが正しい。
大きさはLBXの数十倍あり、その姿は
そう、ソレは正しく―――
「――――――!!!」
「キラードロイド!!」
時計台で戦ったあの、キラードロイドだった。
甲高い奇声を発したキラードロイドに、驚愕する僕ら。
「キラードロイドが何故ここに!?」
「キラードロイドまで現れるなんて」
「だが、何故仲間のLBXまで・・・・・・まさかレイの言った通り、ディテクターとは関係ないのか、キラードロイドは・・・・・・」
「ということは、キラードロイドはディテクターとは関係ない第三勢力が!?」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないですよ!キラードロイドを何とかしないと!!」
「何とかしないって言うけど、あんなのとどうやって戦えばいいのよ!」
「それでもやるしかないですよランさん!僕らのスーパーLBXのために!!」
突如現れたキラードロイドに怖気付くヒロたち。
だから―――
「兄さん」
「?レイ?」
「ヒロ」
「は、はい!」
「ラン」
「なに?」
「ジン」
「・・・・・・?」
「ジェシカ」
「ん?」
「ユウヤ」
「なんだい?」
「みんなに今、覚悟を問おう」
僕が覚悟を問わせよう。
「覚悟?」
「それって」
「どういう意味?」
困惑するヒロたち。
それを無視して僕は続ける。
「僕らがこれまで戦ってきたのはなんの為だ?目的は1つだろ?ディテクターを止めて、LBXが危険な玩具なんかじゃない、大人も子供も全ての人に楽しみを与える物だと証明するためじゃないのか?その目的を叶えるための障害として、ヤツが立ち塞がるなら何をするべきだ?決まってるだろ??」
漆黒のコートが風に吹かれながら、眼下に映る今の障害キラードロイドを睨みつける。
「倒す。ただそれだけだ」
「ただそれだけって・・・・・・随分簡単に言うわね?」
僕の言葉にジェシカが呆れたように返してくる。
「・・・・・・"汝、望まば、他者の望みを炉にくべよ"。結局の所、己が我を押し通す力こそすべて、なんだよこの世界は。だからさ―――」
CCMを操作してキラードロイドに向かって『シューターSR34C』の光線を放ち攻撃する。
「ヤツを踏み越えて、
放たれた純白の光条はキラードロイドの頭部のカバーパッドに当たり、キラードロイドの歩みを止める。
「――――――!!」
甲高い奇声を発するキラードロイド。
「吠えるなゴミ屑。その煩い声を上げるな。貴様は
口調が冷たくなるのを感じる。
一人称が、僕から
立て続け連続でレーザーを放つカオスに狙いを定めたキラードロイド。
「煩いと言っている」
冷酷な口調をキラードロイドに向けて言い、『シューターSR34C』を仕舞い、カオスの主武装黒剣の『アステール』と白剣の『フェンガーリ』を装備して上からキラードロイドのいる橋上へと降りる。
「兄さんたちはどうする?このまま何もせずに、
動かずにジッと僕を見ていた兄さんたちに訊ねる。
「まあ、それでもいい。
フッ、と不敵な笑みを浮かべてキラードロイドと相対する。
そんな僕に。
「決まってる・・・・・・!」
「はい!」
「ええ!」
「そうね!」
「ああ!」
「うん!」
兄さんたちが向かって言う。
「レイ一人でやらせるか!行くぞみんな!!レイに続け!!」
「はい!!レイさん一人にカッコつけさせるわけにはいきません!!」
「うん!!こんな所であたしは立ち止まるわけにいいかない!!」
「そうね!!弱気になってソーリーだわ。こんなんじゃパパに笑われちゃう!!」
「うん!!僕たちはディテクターの野望を止めるために今まで戦ってきたんだ。こんな所で足止めを食らうわけにはいかない!!」
「ああ!!例え本来のLBXではなかろうと、今僕らの手にはLBXが。戦えるためのチカラがある。ならそれを活用せずになんのためにある!!」
次々と自身を鼓舞するように気合を入れる兄さんたち。
「ふふっ。じゃあやろうか」
カオスに並ぶように兄さんたちのLBXがそれぞれ近接武器に持ち替えて降り立つ。
ジェシカのに限っては元々遠距離武器だけど。
獰猛な笑みを浮かべ、口角を上げてキラードロイドとの再戦を行う。
この中でアドバンテージがあるのは僕のカオスだけだ。
兄さんたちのLBXは、所詮借り物。
経験値が足りてない。
そのため、必殺ファンクションは放てるが、本来のLBXと比べたら威力は低い。
だが、カオスは僕のLBXだ。
今はエレボスだが、その前はこの子を使っていた。
故に、カオスの放つ必殺ファンクションは問題ない威力で放てる。
それに、僕のための調整もされているため手足の如く動かせる。
「ここならある程度は本気でやれる」
そして何より、時計台とは違い広さはもちろん、周囲には天文台以外何も無いためある程度の本気で行ける。
まあ、橋が戦闘で壊れない、とは確実には言えないが問題は無いだろう。
問題があるとすれば、天文台が攻撃の余波によって停電などの障害が起こらないとは言えないことだ。
一応何かあった時のため予備電源は備え付けられているが・・・・・・
それも精々30分程度のはず。
キラードロイドを翻弄する兄さんたちのLBX。
カオスも隙を突いて、脚部の剥き出しのケーブルコードを攻撃する。
ケーブルを攻撃すると、僅かに動きが鈍ったのを見て。
「みんな、脚のコードを攻撃!動きが鈍くなる!!僕が引き付けるからジェシカとユウヤは銃で僕のサポートを!ヒロとランは撹乱して脚のコード以外を攻撃!兄さんとジンはタイミングを見計らって一撃を叩き込め!!」
「「「「「「了解!!」」」」」」
すぐに指示を出す。
武器を持ち替えたユウヤがジェシカとともに弾幕を張り、乱雑にキラードロイドを攻撃する。
コードを攻撃されてカオスに狙いを定めたのか、キラードロイドはカオスを攻撃してくる。
「はあぁっ!!」
「やあぁっ!!」
ヘイトがカオスに移り、カオスに攻撃するのを見てヒロのウォーリアーと、ランのクノイチが脚のコード以外の部分を攻撃する。
ウォーリアーは鋭い一撃で、左膝部分のカバーパッドを切附、クノイチはキラードロイドの背中に飛び乗って殴りつけて行く。
「――――――!!」
甲高い奇声を上げ動きを止めたキラードロイド。
そこにすかさず。
「「必殺ファンクション!!」」
「【アタックファンクション!ライトニングランス!!】」
「【アタックファンクション!インパクトカイザー!!】」
兄さんのブルドと、ジンのムシャが威力は劣るが必殺ファンクションを叩き込んだ。
ブルドから一筋の純白の光条が放たれ、ムシャからは灼熱の地の奔流が。
二つの必殺ファンクションはキラードロイドに命中し、キラードロイドの歩みを止めた。
「――――――!!」
「逃すな!攻撃し続けろ!!」
奇声を発するキラードロイドに、双剣から両手銃に切り替えて至近距離から左翼の剣に『シューターSR34C』の光撃を放つ。
至近距離から放たれた砲撃は左翼の剣を破壊する。
ドカンッ!という爆発音が響き、キラードロイドは今までの比じゃないほどの奇声を発する。
「このまま地に堕ちてろ、ゴミ屑!!」
立て続けに右翼の剣を『シューターSR34C』を連射して破壊し、距離取って今度は頭部を狙撃する。
「――――――!!」
「っ!」
両手の銃から放たれた紫の光弾をバックステップで避ける。
カオスは避けたが、放たれた光弾は天文台にいくつか当たり、ズドン!という音を立てる。
それと同時にパッ!と電気が消える。
「ちっ!」
今ので天文台の電源設備が故障したのか、天文台の電気が消えた。
これ以上天文台に攻撃の余波が行ったら、スーパーLBXが作れなくなる。
「させるかよ!」
集中力を一気に高める。
すると視界に映るキラードロイドの動きがスローモーションのように見えてきた。
「必殺ファンクション!!【アタックファンクション!真―ヴォーパル・ストライク!!】」
両手銃から双剣に再度切りかえ、深紅に染った光条を放つ。
放たれた一撃は胸部にヒットする。
だが、それに怒ったのか、両手の銃から光弾を無作為に放ち、ランのクノイチとジェシカのアマゾネスの動きを止めたところに、破壊された両翼の剣を2機に叩き付けて、2機を破壊した。
「「ぁっ!!」」
しかも立て続けにジンのムシャとユウヤのデクーをも光弾を食らわせて破壊する。
「「くっ!!」」
連続で4機を破壊。
正直マズイ。
弱点といえるか分からないけど、弱点は判った。
なのだが、やはりスペックが違い過ぎる。
残ったのは僕のカオスと兄さんのブルド、そしてヒロのウォーリアーだけ。
「絶対に研究所は守る!」
「エルシオンたちの改造が終わるまでは!」
ヒロと兄さんも意気込んで天文台を守ろうとするが。
「ぁ!!」
「っく!ゴメン父さん・・・・・・!」
キラードロイドの尻尾に薙ぎ払われ、倒れたところをまとめて踏み潰されて破壊された。
残ったのはカオスのみ。
期せずして再び時計台の時と同じ状況になった。
「これで残ったのはレイのみ・・・・・・」
兄さんたちが僕の方を視る。
「父さん、後どのくらい!?」
『後10分弱だ!』
「了解・・・・・・」
父さんに後どのくらいか通信して訪ねる。
父さんたちも急いでいるのか、通信ている時でもカチャカチャとキーボードをタップする音と、ジリジリという電気の音が耳に入る。
「ふぅ・・・・・・」
後10分。
これを一人で耐えるのは少し厳しいかな。
でもやるしかない。
兄さんたちの不安気な空気を感じる。
深呼吸をして、息を整え、意識をクリアに。
「久しぶりにやろう、カオス」
そうカオスに言う。
「さあ、ゼロから始めてゼロで終わらせようか!!」
久しぶりに声に出す言葉。
それは僕の意識を切り替える
視界に全部が視え、相手の動きがよく見える。
「更なる高みへ。限界を超えるよ!カオス、エクシードモード!!【エクシードモード!!】」
そして、久しぶりにカオスの特殊モードを発動させる。
CCMが変形し、CCM頭頂部から菱形のようなホロウインドウが現れ、その両脇に翼のようなウインドウが展開される。
そして、CCMから突き出た両端には白銀の文字で【
最後に【エクシードモード】を使ったのは何時だろうか。
空中要塞【サターン】で、LEXと戦った時以来かな?
久しぶりのカオスの特殊モード【エクシードモード】に懐かしく感じる。
「行こう」
一言、カオスに告げCCMを操作してカオスを動かす。
機体の能力が上がり、キラードロイドの攻撃を次々と避けていく。
視界に移る事象が全てのスローモーションに視え、キラードロイドの動き、動作、攻撃のタイミングなど全てが視える。
さっきまでとは違い、次々と攻撃を食らわせて行く。
たぶん、今この場では僕はキラードロイドを倒すことは出来ない。
直感からそう分かっていた。
ならどうするか?
このまま無様に負けるか?
いや、そんなの僕自身の信念に反する。
倒せないなら、次に相手するだろう兄さんたちに少しでも倒しやすくするようにする。
スーパーLBXのチカラがどれ程のものか知らないが、[エルシオン]、[ペルセウス]、[ミネルバ]の3機によるものだ、スーパーLBXのプロトタイプである[エレボス]より遥かに凄いだろう。
そして、少しでも時間を稼ぎ父さんたちが完成させるまで待つ。
まあ、このまま僕が倒してしまっても良いかもだけど。
と、何故か死亡フラグみたいな事を思ってしまった。
キラードロイドから放たれる光弾を左右に避け、凪いできた尻尾の攻撃を飛び上がって躱し、そのままキラードロイドの背中に飛び乗り連続攻撃を浴びせる。
一回でダメなら二回。
二回でダメなら三回。
三回でもダメなら四回。
何度も何度も、攻撃をし続ける。
たとえ、一つ一つの攻撃がダメでも、喰らった、という事実だけは変えられない。
蓄積されたダメージは何れ勝機を齎す。
「す、スゴい・・・・・・」
「コレがレイさんの・・・・・・」
「エレボスの前に使っていたLBX・・・・・・」
「カオスの実力・・・・・・」
カオスを知らない兄さんとジン以外の4人が感嘆の声を漏らすのが耳に入る。
ガンッ!ガンッ!ガンッ!と斬り付けられる音が鳴る。
「兄さんたちは下がって何時でもスーパーLBXで出られる準備をしとけ!ここは僕が―――!【アタックファンクション!バーチカル・スクエア!!】」
飛び上がり上からカオスが4連撃の斬撃を飛ばす。
「―――耐えてやる!」
続けて放たれたキラードロイドからの紫の光弾を避け、叩き付けるように振り下ろされる両翼の剣を避ける。
「わ、分かった!」
「任せたぞ」
兄さんとジンはすぐに動き出し、二人の後を追いかけるようにヒロたちも続く。
父さんが言っていた10分まで後5分強。
「掛かってきなゴミ屑。お前を破壊してやる!!」
獰猛に笑みを浮かべカオスをキラードロイドに向けて動かした。
~レイside out~
~バンside~
キラードロイドをレイ一人に任せ、俺たちは父さんのいる部屋へと走っていた。
「ねぇバン。あの場をレイ一人に任せて良かったの?」
ジェシカが走りながら訊ねてきた。
「良かったの?て言われても、あの場はああするしかない。俺たちのLBXはもう壊れちゃったし、彼処にいてもレイの足手まといになるだけだ」
「でも!」
「分かってる!」
「っ!?」
「分かってるよ・・・・・・口ではああ言っても、そんなの上辺だけってことは・・・・・・」
「バンくん・・・・・・・・・・」
俺はレイという弟に少し嫉妬している。
俺にはない行動力や頭脳、人脈、LBXの操作テク等など・・・・・・
上げればキリがない。
昼間にヒロたちに言った事だってそうだ。
『化け物』・・・・・・たった一人の大切な弟がそんな、人外みたいな呼ばれ方をしていい顔をするわけが無い。
兄として。
たった一人の大切な弟の兄として、弟がそう評価されるのは堪らない。
俺もレイに無茶なことはするなと、何度も。
何度も何度も言った。
でも、その度にレイは、正論を返して来る。
昔、まだ子供だった頃、俺はレイのことを『化け物』と呼んだ子に、なんで俺の弟を『化け物』呼ばわりするんだ!と突っかかった。
そこには幼馴染みであるアミも、親友たるカズも一緒にいた。
アミもカズもレイの事を大切な弟と見ているからこの事に我慢出来なかったのだ。
俺たちの突っかかりに、その子は、『化け物』の事を『化け物』と呼んで何が悪いんだ!!と言い返してきた。
ガキの癖に澄ました顔していて不気味なんだよ!!とも言っていた。
そしてその事は俺にも飛び火して来て、俺の事も『化け物』なんじゃないか!?と言ってきた。
当然俺もアミも、誰が『化け物』だ!!俺は俺だ!!、と言い返した。
父さんが居ないから俺がレイを守らないと、そう思った。
でも、結局―――
俺は弟に。
レイに助けられた。
俺に飛び火してきた『化け物』と言う言葉にレイが反応して相手が一切反抗出来ないよう言いくるめ返したのだ。
そして俺が『化け物』と呼ばれる代わりに、レイが一身にその『化け物』という言葉を受け入れた。
その時のレイの年齢はまだ小学に上がった頃。
7歳近くの時だ。
その時の俺たちの年齢は11歳ほど。
小学高学年だ。
俺は、弟が。
レイが怖かった。
その時のレイは感情など捨て去った様に、能面で冷たい表情をしていた。
それがあり、少しの間レイの事を避けていた。
それが今も負い目になってる。
けど、どんなに他人に見られようと俺がたった一人の大切な弟を思う気持ちは本物だ。
それと同時に嫉妬や妬みもある。
なんでレイはあんなに人に好かれるんだろうと。
なんで自分のことを『化け物』呼ばわりする人を助けたりするんだろうと。
なんで俺がレイの代わりになってあげられないんだろうって。
レイの一番の長所は"優し過ぎる"こと。
どんな事でも、助けを求めてる人がいれば助けて、相談に乗ったりしている。
俺には到底出来ない。
その優しさで、レイの人脈が広がっていると思うと複雑な気持ちになる。
もし俺とレイの立場が逆だったら、俺はレイと同じ事が出来るだろうか?
いや、そんなの不可能に違いない。
だから、俺はレイに何か言うんじゃなくて見守ることにした。
そして、レイが出来ない、助けを求めて来た時は全力でそれを助けようと決意した。
昼間にヒロたちに言ったのはそんな秘めた決意があったからだ。
少しでも弟に降り掛かる火の粉を振り払う。
出来ることは少ないだろうけど、俺たちは俺たちで出来ることをする。
それは、メアやキヨカには出来ないことだ。
嫉妬も妬みも色々あるけど、一番は大切な弟を守る。
それは変わらない。
さっきも、本当はあの場に残りレイを守りたかったけど、あの状況下では足手まといなのは必定。
でも、レイが任せろと言ったからには任せるのもそうだと分かってるから。
何も守るだけが、護るって訳じゃないから。
レイを信頼しているから任せる。
例え本心が違えど、俺はレイを陰から守る。
そう決めたから。
「父さん!」
走りながらレイへ思っていた事を浮かべ、父さんたちのいる部屋へと入る。
「今丁度終わったところだ」
部屋へ入ると、父さん、コブラ、マングースさんが待っていた。
部屋の中は薄暗かったが、一箇所だけは明るく照らされていた。
「父さん、今レイがキラードロイドを抑えてる」
「分かってる。バン、ヒロ、ラン。すぐに準備をするんだ」
「「「はい!!」」」
明るく照らされていた場所には俺たちのLBX、エルシオン、ペルセウス、ミネルバが万全の体勢で立っていた。