ダンボール戦機 英雄の弟   作:ソーナ

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回想 W―ディテクター編 ⅩⅩⅩIV ∑オービス

 

~レイside~

 

「あははは・・・・・・!」

 

ドカンッ!ドカンッ!と絶え間なく響く爆発音。

キラードロイドの周囲を黒金色のエフェクトが縦横無尽に駆け回る。

キラードロイドの両手の銃から放たれる紫の光弾を素早い速度で避ける[カオス]。

視界に映る事象全てがスローモーションに映る。

兄さんたちの居ない、まさに孤立無援。

いや、無援って訳じゃないけど、今の状況は無援状態か。

正直キラードロイドは強い。

けど、強ければ強いほど―――

 

「面白い・・・・・・!」

 

燃えてくる。

戦闘狂ってわけじゃないんだけど、やっぱりサガなのかな~。

兄さんも強い相手とは燃えるし。

兄弟共々、血は争えないないね。

次々と攻撃を仕掛けて行くカオス。

ガンッ!ガンッ!とキラードロイドの装甲にダメージを与えていく。

 

「――――――!!」

 

薙ぎ払ってくる尻尾の刃を避け、振り下ろしてくる両翼の剣を躱す。

受け止めるのは無理。

なら、躱すしかない。

普通ならここまで避けたりするのは無理だろうけど、今の僕なら問題ない。

戦いに興奮してくると笑いが隠せない。

左からの攻撃を『アステール』で逸らしながら懐に潜り込んで首筋辺りに『フェンガーリ』で貫く。

そのまま右の銃身に足を付けて、そのまま背後に飛び乗る。

飛び乗り、すれ違いざまに斬り付け、そのまま大きく距離を取り射程範囲外に逃れる。

逃れるも、動きが速いためすぐに追い付かれる。

まあ、それも看えているんだけどね。

兄さんたちが天文台の中へ戻って既に数分。

父さんの言葉通りなら、もうそろそろのはずなんだけど・・・・・・

さすがにこの戦況は厳しい。

1対1とはいえ、相手はLBXではないキラードロイドという未知の化け物。いや、怪物と言うべきか?

純然たる、LBX同士の1対1なら問題ないが、こんなよく分からない怪物相手にはかなり分が悪い。

僕でもよく持ちこたえられてるって程だ。

カオスの発動している【エクシードモード】と僕自身の能力によって何とか反撃して時間を稼いでいる。

だが、それも何時まで持つか・・・・・・

防いだり、躱したりしても微々たるダメージをカオスは受けてるし、僕の操作に何時まで耐えられるか分からない。

今の状態は僕の切り札だ。

それにまだ長時間の使用は身体に負担が掛かる。

オタクロスからもこれは長時間の使用は止めるよう言われてる。

僕の年齢と状況によるけど、良くて最長でも15分までと言われてる。

まあ、そんなに使う時はないし、使っても基本5分以内なのだけど。

けど、すでに1人で持ち堪えて5分以上経過している。

頭も少し痛くなってきた。

この能力がどんなので、どういう理屈によるものなのかは僕も知らない。

けど、なんとなく脳のリミッターを解除しているものでは無いかと思ってる。

思考反応に、反射速度、認識速度。

通常のヒトの数倍以上速い。

そんな状態が長時間、何時までも続くわけが無い。

しかも僕の場合、年齢はまだ10歳。

子供も子供だ。

肉体の疲労に追い付いてない。

 

「くっ!!」

 

ズサーっ!と下がりキラードロイドの右の銃身による突き飛ばしをクロスブロックで受け止めて滑るカオス。

それと同時にカオスを包んでいた【エクシードモード】の黒金色のエフェクトが終わり、変形していたCCMも元に戻った。

 

「しまった・・・・・・!!」

 

時間切れ。

くっ!!と悪態吐く。

奥歯を噛み締め、CCMを持つ手が自然と強くなる。

再度特殊モードを発動させたくても不可能だ。

特殊モードは奥の手。

一戦闘につき、一度しか使えない。

しかも発動したらしばらくは発動出来ない。

父さん曰く、特殊モードはLBXにもかなりの負荷が生じるため、長時間の発動及び、連続運用は出来ないとの事。

まあ、あんな性能を引き上げるモノなんてそりゃLBXにも負荷が掛かる。

僕のコレは任意でON/OFFが出来るのだけど。

特殊モードによる機体性能の向上が戻り、一方的には出来なくなった。

キラードロイドから放たれた光弾を左右に避けて後ろに下がる。

手負いの獣ほど手に負えない、と言うけどまさにその通りだね。

ダメージを負いすぎたせいか、キラードロイドから怒りの波動を感じる。

 

「まだなのか・・・・・・?」

 

チラッと父さんたちのいる研究室の方を視て呟く。

そこに。

 

「っ!父さん?」

 

父さんからの通信が来た。

 

『レイ、今バンたちの準備が整った』

 

「了解・・・・・・」

 

カオスは武器を双剣から両手銃の『シューターSR34C』に切り替えて距離を取りながら攻撃する。

 

『エントランスまでおびき寄せられるか?』

 

「エントランス?判った」

 

少し首を傾げたが、すぐに返事を返して後ろの天文台へとカオスを下がらせる。

後ろには天文台内部へと通じる道。

射撃をしながらキラードロイドを父さんの指示したエントランスへと誘い込む。

誘い込むも、頭の痛みが少し強くなってきた。

もし今この状態が解除されたらしばらく動けないだろう。

そうなれば、まず間違いなくカオスは破壊される。

さすがそれはさせない。

二度と僕の愛機をあんな半壊なんかさせるものか。

そう決意しつつ、攻撃を避けつつ下がる。

 

「っ・・・ゲホッ・・・・・・ゲホッ・・・・・・チッ!!」

 

ヤバい・・・・・・

身体に負荷が掛かりすぎてる。

近くの壁に背中を預けてCCMを操作する。

エントランス付近まで来させ、外と中を隔てる扉の前まで誘き出す。

 

「父さん、キラードロイドをエントランスまで誘き寄せた」

 

『よし!3人とも出番だ』

 

『『『はいっ!!』』』

 

「後10秒ぐらいでキラードロイドが着く。悪いけど、兄さん、後の事・・・・・・よろしく」

 

父さんたちと通信しながらカオスを操作して、最後の一撃の準備をする。

やがて追い掛けてきたキラードロイドが姿を現し。

 

「必殺ファンクション!!【アタックファンクション!絶―ヴォーパル・ストライク!!】」

 

真の時の深紅よりも更に明るい深紅に耀くライトエフェクトがカオスが構える右の黒剣『フェンガーリ』を包む。

ジェットエンジンの音がCCMを通じて響く。

真よりも、威力の上がった砲撃のような閃光がキラードロイドへと迫る。

深紅の一閃がキラードロイドを呑み込み、ノックバックを発生させて反対へと吹き飛ばす。

これで僕の役目は終わりだ。

 

「あとはお願いね、兄さん。ヒロ、ラン」

 

小さく呟くのと同時に、視界がスローモーションから元に戻り、それと同時にとてつもない痛みが頭どころか身体中を襲った。

 

「っ・・・・・・ぐっ・・・・・・!!」

 

奥歯を強く噛み痛みに耐え、そのまま崩れ落ちるように壁に背中を預けてズルズルと座り込む。

痛みに耐える中、カオスからの映像には背後の扉から兄さんたちが現れ、ボロボロのカオスの前に立ち、改修と修理の終わったそれぞれのLBX[エルシオン]、[ペルセウス]、[ミネルバ]を出撃させた姿がCCMのカメラに映った。

 

~レイside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~バンside~

 

「――――――!!!」

 

父さんから改修されたエルシオンを渡され、キラードロイドを迎え撃つためエントランスに来た俺たち。

エントランスの扉を潜ると、視界に眩い輝きを放つレイのLBXカオスがいた。

カオスから放たれた深紅の閃光はキラードロイドを呑み込み、大きく吹き飛ばした。

それにも驚くが、俺たちはカオスの有様を見て驚愕した。

カオスの装甲はボロボロで、構えてる双剣にも幾つかのヒビが入っていてよく無事だと言える有様だった。

俺たちを庇い、今を待つために1人で踏ん張ってきた証。

不甲斐ないの一言が俺たちを包む。

キラードロイドは最初遭遇した時よりもダメージをあちこちに負い、動きも幾分か鈍っている。

相当なダメージが積まれているのだろう、装甲には破損している部分がチラホラと見える。

 

「っ!行くぞヒロ!ラン!」

 

「はい!」

 

「うん!」

 

キラードロイドを目視し、修理して元に戻ったそれぞれのLBXを動かないカオスを庇うように前に降り立たせる。

 

「エルシオン!」

 

「ペルセウス!」

 

「ミネルバ!」

 

「バン、ヒロ、ラン頼んだぞ!」

 

ここまで奮闘しボロボロとなったカオスを回収した父さんに激励されつつ、キラードロイドと対峙する。

対峙したキラードロイドはエルシオンたちを認識すると、飛び上がり時計台の時と同じDエッグに似たバトルフィールドに取り込まれた。

八面体の大きなフィールドに、半透明のエネルギーフィールド膜。

フィールドは薄暗く、荒廃して廃れた都市。

出られるのは俺たちか。

それとも、キラードロイドか。

 

「――――――!!」

 

雄叫びとともに放たれた紫の光弾を散開して避け、ペルセウスに続けて突っ込んできた攻撃をペルセウスは飛び上がって避ける。

そのまま再度放たれた光弾による攻撃をそれぞれステップして避ける。

父さんが調整してくれたお陰で、スムーズに思うように動いてる。

キラードロイドの攻撃を避けながら、隙を見てそれぞれ攻撃する。

だが、それでも全く倒れない。

時計台での戦闘に加え、さっきの防衛戦に、レイのカオスによる攻撃の蓄積ダメージ。

普通なら何十回も倒れてるほどのダメージのはずだ。

なのにまだ動いてくる。

やはり、耐久性はLBXより数十倍高い。

ヒロとラン、3人で散開して攻撃しているため、キラードロイドの攻撃は分散している。

 

「相変わらず頑丈なヤツね」

 

ランが悪態吐くのも当然。

このままじゃせっかくレイが耐えてくれたこの機会が無駄になる。

なら。

 

「ヒロ、特殊モードだ!」

 

「はい!」

 

返事をしてCCMを操作してペルセウスの特殊モードを発動させるヒロ。

 

「【ストライクモード!!】」

 

俺やランと同じくCCMが変形し、翼のような意匠のホロウインドウが展開される。

クリアブルーのエフェクトがペルセウスを覆い、その背には翼が生えたような虚像が現れる。

至近距離から放たれた光弾を閃光の速さで避けたペルセウスはキラードロイドから大きく距離を取り、まるで空を翔けているような動きでキラードロイドを翻弄しながら、目にも止まらぬ早さで攻撃して行く。

【ストライクモード】は単純な速度上昇。

だが、その比は普通のLBXの速度の数十倍だ。

キラードロイドも反応出来ないほどの速度。

ペルセウスの翔けた軌跡を、ペルセウスを覆うクリアブルーのエフェクトが表す。

攻撃による火花さえも、次の瞬間には別の場所で起こり、火花が散る頃にはもうペルセウスは別の場所にいる。

キラードロイドを翻弄して凄まじい速度で攻撃するも、やはり決めきれない。

こんなヤツを相手にダメージを負わせたレイはやはり凄いと感じる。

 

「なんてヤツだ!」

 

特殊モードの発動時間が終わり、CCMが元に戻る。

ペルセウスを覆っていたクリアブルーのエフェクトも消え去り、元のペルセウスへと戻った。

特殊モードで機体性能が向上しているのにも関わらず決めきれない事に舌を巻くヒロ。

そこに。

 

「【ドッキングモード】を使え」

 

「え?」

 

「「??」」

 

父さんが俺たちにそう言ってきた。

 

「【ドッキングモード】・・・・・・」

 

「シミュレーションは済んでいる。お前たちならやれるはずだ」

 

「やりましょうバンさん」

 

「よぅし。やるぞ!」

 

父さんに言われ、俺たちは【ドッキングモード】を発動させる。

発動させると、CCMのカメラ部分が光り、上端部にそれぞれ同じ正方形型のホロウインドウが展開される。

 

「「「【ドッキングシークエンス開始】」」」

 

「【プロセス(ワン)】」

 

「【プロセス(ツー)】」

 

それぞれのCCMから機械音声が響き、エルシオンたちが自動的に行動し始め、ヒロ、ランの順にCCMからプロセスが案内される。

やがて、ペルセウスが胴体、エルシオンが手足と頭部とバックパック本体、ミネルバが武装となったオタクロスの[パーフェクトZX3]や[パーフェクトZX4]のように、合体した一つのLBXが姿を現した。

 

「エルシオン、ペルセウス、ミネルバが合体し誕生した。これが[∑オービス]だ!」

 

「「「∑オービス・・・・・・!」」」

 

父さんの生み出したスーパーLBX∑オービスの姿に感嘆の声が出る。

 

「∑オービスのコントロールは、3人で行う。バンは機体制御。ヒロは攻撃、ランは防御だ」

 

「「「了解!!」」」

 

両銃の照準を∑オービスに合わせるキラードロイド。

 

「ラン、来るぞ!」

 

「はい!」

 

放たれた光弾を、背部に着けられたミネルバの両腕が浮かび上がり、両腕から放たれた灼熱の拳が次々と撃ち落としていった。

キラードロイドの弾幕を撃ち落とすだけでも、物凄い出力だと分かる。

 

「バン、機体制御!」

 

「はい!」

 

キラードロイドは光弾では埒が明かないと判ったのか、今度は直接攻撃を仕掛けてきた。

∑オービスを操作して、キラードロイドの攻撃を素早く上に飛び上がって躱した。

そのまま眼下のキラードロイドに向けて、右手に装備されたミネルバの脚部から高出力のレーザービームが放たれる。

放たれたレーザービームが直撃し、苦悶の雄叫びを上げるキラードロイド。

今の一撃で大ダメージを与えられた。

その証拠にキラードロイドは苦悶の雄叫びを上げながら仰け反っている。

 

「今だヒロ!」

 

「はい!必殺ファンクション!!【アタックファンクション!∑ドライブソード!!】」

 

∑オービスの右手のビームライフルの銃身から、緑に耀く燐光の巨大なエネルギー刃が発生し一つの巨大な剣となる。

∑オービスのバックパックのブースターにより、一瞬の内にキラードロイドに肉薄しその巨体を緑のエネルギー刃が一閃する。

巨体を斜めに一閃されたキラードロイドは断末魔の叫びを上げて爆散。

 

「スゴい!あの怪物を一撃で!!」

 

「これが新しいチカラ!」

 

「スーパーLBX、∑オービス」

 

キラードロイドが破壊されたからか、俺たちを閉じ込めていたフィールドとエネルギー膜がDエッグと同じく消滅し俺たちは解放された。

 

「父さん」

 

「うん」

 

一撃。

予めレイがダメージを与えてくれていたというのもあるが、たったの一撃による一閃であのキラードロイドを撃破した。

凄まじいチカラだ。

破壊されたキラードロイドの跡地に降り立つ∑オービスを父さんは満足そうに頷いて返した。

これが俺たちの新たなチカラ。

 

「何とか倒せましたねバンさん、ランさん!」

 

「うん!」

 

ヒロの興奮して言う言葉にランも同じく興奮して返す。

 

「ああ。けど、俺たちが今ここでキラードロイドを倒せたのはレイのお陰かな」

 

「あ・・・・・・」

 

「そうですね。レイさんが僕らの分まで戦ってくれてなかったらもう研究所は堕ちていたかもしれません」

 

「で、でもあたしたちも頑張ったよね!?―――って、ところでレイは?」

 

ランが姿を見せないレイを探してキョロキョロする。

この場にいるのは俺たちに、ジン、ユウヤ、ジェシカ、コブラ、マングースさんだけでレイの姿は無い。

レイが何処にいるのか探そうとすると。

 

『・・・・・・お疲れ様、兄さん』

 

CCMの画面に疲れた表情のレイが映し出された。

 

「れ、レイ!?大丈夫か!?」

 

滅多に見た事ないレイの疲弊具合に慌てる俺。

その俺の両横からヒロとランも覗き見る。

 

「レイさん!?」

 

「ちょっ、大丈夫なの!?」

 

2人も見たことないレイの疲弊に慌ててる。

そんな俺らにレイは。

 

『あー。うん、まあ、大丈夫。ちょっと身体が痛くて手足が動かないだけだから』

 

「「「それは全然大丈夫じゃない!!!」」」

 

レイのあははは、という苦笑いとともに答えた言葉に同時にツッコム俺たち。

どうやら父さんとジンの端末にも行っているらしく、父さんたちみんななんとも言えない微妙な表情を浮かべていた。

そんな俺たちの姿を見てレイは面白そうに笑う。

 

『あははは。ゴメンゴメン。冗談だよ。ちょっと疲れたからテラスで休んでるの』

 

「・・・・・・ホントに大丈夫なの?」

 

朗らかに笑いながら言うレイにランが心配した顔で訊ねる。

 

『うん。大丈夫だよ~』

 

「・・・・・・・・・・」

 

心配顔で訊ねるランに大丈夫だと言うレイ。

けど俺はそれが無理して告げてると解った。

たぶん、父さんとそれなりの付き合いのあるジンも解ってるはずだ。

何処までが冗談なのか解らないけど、レイの表情からとてつもない疲労感があることは間違いない。

 

『外から見てるけど、どうやらあのLBXの大群は全てキラードロイドが破壊してくれたようだよ。LBXの影や形は見えない』

 

「じゃあもう大丈夫ってことかしら?」

 

『多分ね。ブレインジャックの電波反応はないし』

 

俺たちもブレインジャックの電波探知プログラムを開いて見てみるが、電波のインジケーターに反応は全く何も無い。

 

『にしても疲れたぁ~。アイツ、1人じゃ倒せなかったなぁ』

 

不貞腐れて言うレイに、俺は変な顔を浮べる。

普通1人で倒す、なんて発想出ないんだけど・・・・・・

てかあんなの普通無理だろ。

 

『あ、父さん。カオスの方はどう?結構無理させちゃったから、また修理お願いしたいんだけど』

 

「分かってる。カオス本体は無事だが、あちこちにヒビやガタが来ている。結構キラードロイドとの戦闘で無理をしたな」

 

カオスを検分して父さんがレイに言う。

 

『マジかー。カオスに悪いことしちゃったね』

 

父さんの言葉にカオスに謝罪するように話すレイ。

 

「やはり、今のカオスのコアスケルトンでは、コッチの方がお前に耐えられないようだな。修理をして幾分か強度は上げたつもりだが・・・・・・」

 

『えー・・・・・・ってことはもしかして1回オーバーホールしたりしないと・・・・・・ダメ?』

 

「そうなるな」

 

『えぇー・・・・・・』

 

父さんの宣告に文句を言うレイに、俺たちに笑いが走る。

普通の子供ぽい、年頃の子供のような反応が新鮮なのだ。

それにしても、修理したばかりのカオスがたった1回の戦闘でボロボロとまではいかないが、コアスケルトンにガタが来てるとは・・・・・・

それほどまでにレイの操作速度や反応速度に耐えられなかったという事か・・・・・・

我が弟ながら恐ろしいと感じる。

そう感じていると。

 

『あ、でも父さん。悠介さんに貰ったアレだけは絶対に外さないでよ?』

 

とレイが念押しするように父さんに言った。

 

「っ・・・・・・。解った」

 

父さんもレイの言葉の意味を理解したのか息をのみ、頷いて返した。

 

「悠介さん?」

 

「バンさん、悠介さんって誰ですか?」

 

ランとヒロが訊ねてきた。

悠介さんのことを知っているのは俺と父さん、ジンだけ。

ジェシカはもしかしたら知っているかもしれないけど。

悠介さんのこと、話してもいいのか悩む。

レイにとって悠介さんは恩人だし、心の傷を負った一件でもある。

俺もだが、俺と違って間近で観たレイの心傷は俺よりも大きい。

そう思い俺はヒロたち。

 

「いつか話すよ」

 

と告げた。

今この場で話すべきではない。

何より、それを話したらイノベーターの事とかも話す必要がある。

それを話していいものか悩ましくもある。

レイが以前言っていた。

カオスは悠介さんから受け取ったCPUがあってこそのカオスだって。

多分、建前はそうなのだろうが、本音は恐らく、忘れたくない、からだろうな。

いや、自分自身への戒め、なのかもしれない。

俺じゃレイの心象は解らないけど、たぶんそうなんだろうな。

 

『さてと。それじゃあそれぞれやる事やって待ってて。夕飯の支度するから。キラードロイドのせいでかなり邪魔されたけど!!』

 

「「「「「「えぇぇ・・・・・・・・・・」」」」」」

 

まさかの料理を邪魔されたことに怒っていた事に唖然とする俺たち。

まさかとは思うけど・・・・・・

 

「あー、レイ?もしかして料理の邪魔されてかなり怒ってたり・・・・・・」

 

俺の代わりにジェシカが恐る恐る訊ねる。

 

『何言ってるのよジェシカ。そんなの言わなくても判るでしょ?』

 

「そ、そうよね。それで怒ったりなんか―――」

 

『邪魔されて怒ってるに決まってるでしょ!!』

 

「ソ、ソウデスカ・・・・・・」

 

なんか今ジェシカの言葉が片言に聞こえたような。

レイの怒りの沸点が解らない。

 

『全くもう!急いで残りを仕上げないと』

 

プンスカと見るだけで分かるほどお怒り気味のレイ。

そう告げると、レイは通信を切り画面は元の画面に戻った。

レイとの通信が切れ、さっきまでのシリアス展開が一気にシリアスブレイクな空気になってしまった。

 

「と、とりあえずやること、やっちゃおうか」

 

「はい」

 

「そうね」

 

~バンside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~レイside~

 

「―――・・・・・・っく・・・!!ぁぁ・・・・・・っ!」

 

兄さんたちの通信を半ば強引に切った後、僕は右手を頭に当て頭痛に耐えていた。

今までなんか比にならないほどの痛み。

何時もなら大して痛くないのだけど、今回のはヤバい。

やり過ぎた。

いや、限界に限界を超えた代償か。

しかも頭痛だけでなく、身体のあちこちから痛みが伝わってくる。

深呼吸をして、身体を休ませる。

 

「ふぅ・・・・・・」

 

酸素を取り込み、体中に行き渡らせる。

少しして痛みも和らいできたため、手足が動かせるようになった。

目を閉じ全力で脱力をする。

 

「・・・・・・・・・・よし」

 

1分ほど掛けて体調を戻す。

まだ万全、とはいかないがある程度は問題ない。

ヒロやランたちなら誤魔化せるだろうが、兄さんと父さん、ジンに誤魔化せるかはわからない。

けど、何時もの自分を見せる。

 

 

《また貴方は無茶をしたのね》

 

 

「っ!?」

 

身体を動かそうと起き上がろうとした時、急に何処からか声が掛けられた。

 

「この声・・・・・・」

 

この声、去年神谷重工本社工場《ゴライアス》で神谷コウスケと戦っていた時に響いた声と同じ。

 

「誰?」

 

声の主に訊ねる。

声に悪意は無い。

逆に優しく、暖かみのある声だ。

 

 

《私が誰かなんて今はいいでしょ?それよりも、限界のさらに限界を超えるなんて、その歳でやって身体を壊したいの?いくら何でも無茶をしすぎ》

 

 

諭す言葉に反論できない。

 

「あの場合は仕方ないと思うけど?」

 

 

《そうね。確かに、あの相手では貴方じゃないと時間は稼げなかった。本来のLBXじゃないとはいえ彼らじゃ到底無理》

 

 

僕たちのことを観ていた。

けど何処から観ていた?

疑問が浮かぶ。

疑問が浮かぶ中、声の主はさらに話す。

 

 

《でも、それは今の貴方でも同じ事。強引にチカラを引き出してそのザマでは意味が無いわね》

 

 

「知らないよ。無意識にやってたんだから。それにそもそも僕のコレがなんなのかしらないし」

 

 

《まあ、それもそうね。だから私が調整してあげる》

 

 

「?調整?」

 

 

《ええ。貴方にはここで倒れて欲しくないの。私にも私の目的がある。その為には、貴方が。いえ、貴方じゃないとダメなの(・・・・・・・・・・・)

 

 

「何言ってるの?意味がわかんないんだけど?」

 

 

《今はまだ知らなくてもいいわ。でも、遠くない未来知ることになる。その時までに少しでもチカラを付けなさい。私もいざって時は手を貸してあげる》

 

 

「待って。なんで僕なの?」

 

 

《・・・・・・貴方だけが未来を変えられるから》

 

 

「???」

 

 

《少し痛むでしょうけど、我慢しなさい。すぐ済むから》

 

 

「え?」

 

そう声の主が言うと一瞬ハンマーで頭を殴られたような痛みが走った。

けど、その痛みがすぐに治まり身体中を痛めていた痛みが無くなった。

無くなったというより、馴染んだ感じだ。

 

「どういうこと?」

 

 

《私のチカラで貴方のチカラの反動を身体に馴染ませたの》

 

 

「はい?」

 

 

《頑張りなさい。その時が来るまでに・・・・・・》

 

 

そう一言言うと声の主は霞のように消えていった。

どこに居たのか分からない。

いや、むしろここに居たのかすら分からない。

周囲には誰の気配もなく、誰もいない。

起き上がり身体を確かめる。

 

「・・・・・・軽い?」

 

身体が軽い。

鉛のように重かったさっきまでが無かったようだ。

 

「よっと」

 

軽く飛び跳ねてみるも何ともない。

 

「・・・・・・ありがとう」

 

聞こえてるかは分からないが、さっきまでの声の主に感謝を告げる。

感謝の言葉が虚空に消えながら、僕は天文台の中へと戻っていき、作りかけの夕飯を料理した。

その数時間後、眠りについた僕は変な夢を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私を、助けて』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何も無く、荒廃し荒れ果てた大地を雲の隙間から太陽が照らす光景。

そしてその光の中、ポツンと立つたった1人の女の子が空を見上げている姿を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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