ダンボール戦機 英雄の弟   作:ソーナ

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回想 W―ディテクター編 ⅩLⅧ 山野レイVSクイーン・シャルバート(後編)

 

〜レイside〜

 

[プロト・U]へ『ノワール』と『ブラン』の双剣を勢いよく振り下ろす[エレボス]。

そして、それをコンバットナイフのような片手剣の双剣で受け止めるプロト・U。

ギチギチ、と鍔迫り合う音とともに拮抗する。

そこにエレボスへ、上からプロト・Uの子機(ビット)による砲撃が放たれる。

双剣による拮抗から、左の『ブラン』へ軸を移して、右の『ノワール』で放たれた砲撃を弾く。

それと同時に、左腕の力を少しだけ緩め、プロト・Uが押してきたと同時にその場からバックステップで下がる。

ステップで下がるも、今度は両横から2機の子機が挟み込んで砲撃してくる。

仕方なく、放たれた同時に飛び上がって躱す。

 

「くっ・・・・・・!」

 

子機が邪魔でまともにプロト・Uへ攻撃出来ない!

近接と遠距離。

その二つを同時に相手取る。

もしこれが、プレイヤーによる遠距離攻撃なら予測は出来るけど、子機という完全自立稼動ではそれも宛にならない。

その上子機は―――

 

「っ!」

 

城壁の一番高い塔に移動するも、子機が追随して行く手を阻んでくる。

放たれた砲撃を全て切り裂く。

時間差や断続的に放たれるが、ギリギリのところで避け、砲撃を裂く。

サブに双銃の『ヘブンブラスター』があるけど、それだとプロト・Uの近接攻撃は対処出来ない。

かと言って、『ノワール』と『ブラン』では、あの3機の子機には効果が微妙。

浮遊しているため、どうしても近接攻撃だと当たりにくい。

有効な手段は遠距離武装の双銃ぐらいだが・・・・・・。

もちろん、近接武器でも接近すれば有効打は与えられる。

けど、問題は接近するまでだ。

1機、2機程度なら大丈夫だろうけど、3機は現状無理だ。

例え接近したとしても、残りの子機で集中砲火を喰らうのが目に見えてる。

 

「(同時に遠近両方を相手にしている感じだからからキツイ!どうすればいい?!プロト・Uに集中すれば3機の子機から背後を狙われるし、子機に集中すればプロト・Uによる攻撃を喰らう。かと言って、プロト・Uと子機を同時に相手取るのは厳しい。1VS1、ではなく、群VS個(・・・・)と考えたほうがいい。プロト・Uは1機で群と同等の機体。そしてそれを可能にしているのがあの子機。それとクイーン・シャルバート中尉のスキル)」

 

もしクイーン・シャルバート中尉以外が、今と同じようにしろと言われても無理だ、と言うだろう。

さすがのプレイヤースキル。

しかもそれだけでなく、空間把握や状況把握なども高い。

それも相まってこんな高等技術が可能なのだろう。

 

「(【ライトニング・フォール】で子機を一瞬動きを止めて斬る?いや無理だ。斬れて精々1機か2機ぐらい。3機は無理。しかもプロト・Uのサブ武装が分からないから下手に仕掛けられない。なら【ヴォーパル・ストライク】?いや、けどコレは直線攻撃だから避けられる。【ソニック・リープ】なら1機は虚を付けて斬れるだろうけど・・・・・・)」

 

プロト・Uと子機の砲撃を捌きながら思考する。

プロト・Uの斬撃の合間を、子機が砲撃してくるため、カウンターを与えたくても出来ない、防戦一方に成りかけていた。

動いてはいるも、何時脚が止まるか定かじゃない。

バトルフィールドの城壁を縦横無尽に駆け回り、双剣と双銃を切り替えながら対応していく。

 

「(マズイ。このままじゃコッチが押し切られる!武装の切り替えは数秒無防備になるからあまりしたくないし!!せめてコッチも遠近同時に出来た・・・・・・・・・ら・・・・・・・・・・??)」

 

戦略と戦術をどうしようか模索する中、ふと思考が一瞬止まった。

そして動きが一瞬鈍ったエレボスを逃すクイーン・シャルバート中尉ではなく。

 

「もらいました!」

 

「っ!」

 

一瞬で間を詰めたプロト・Uの強力な一撃がエレボスを城壁の奥へと吹き飛ばした。

防御する間もなく吹き飛ばされ、城壁の壁面にぶつかりエレボスを中心に土煙が立ち込める。

 

「勝負ありですね」

 

土煙に包まれて見えないエレボスを見てクイーン・シャルバート中尉が告げる。

確かに今の一撃は大抵のLBXならブレイクオーバーしているだろう。

だが―――

 

「ふっ・・・・・・」

 

「っ!?」

 

不敵な笑みとともに、土煙の中から飛び出す一振の純白の剣。

ガンッ!と慌ててコンバットナイフで弾くプロト・U。

そして、それに追随するようにもう一振の漆黒の剣が、弾いて自身のコンバットナイフで死角となったプロト・Uを切り裂き、背後の壁面へと突き刺さる。

 

「敗れかぶれですか?!」

 

「いや」

 

土煙が晴れた中から姿を見せるエレボス。

その手には双剣ではなくサブ武装の双銃『ヘブンブラスター』が二丁。

 

「貴方に勝つための算段です!」

 

クイーン・シャルバート中尉の驚いた声に僕はニッ!と笑みを浮かべて答えた。

 

「勝つための算段?」

 

「ええ。貴方と、貴方のプロト・Uに勝つ為の道標(アリアドネ)。ようやくそれが見つかりました」

 

「何を言って・・・・・・???」

 

困惑しているのが声から伝わる。

けど、僕もこれは賭けの部類だ。

さっきの思案で一つだけ勝てる可能性を見つけた。

問題は、それを誰もやったことないし、したことが無い。

実際に僕もやったことないし、この時まで考えもしなかった。

出来るかも分からない。

分からないし解らないし、判らない。

前代未聞な事をやろうとしている。

けど、『未知を既知に』。

だから、その未知を既知にしよう!!

 

「さぁ、もう一度・・・・・・零から始めて、零で終わらせよう!!!」

 

再度唱える言葉。

紡がれた言葉と共にエレボスが動き、『ヘブンブラスター』から光弾が放たれる。

放たれた光弾をプロト・Uは難なく弾き落とし、ブースターで接近してくる。

けどそれは予想通り。

そのまま立て続けに光弾をバラマキ、微量だがダメージを与える。

そして、子機からの攻撃も来るが、それもギリギリの所で避ける。

片方の銃で宙に浮く子機を、もう片方でプロト・Uを狙う。

集中力を高める。

3機同時に放たれた砲撃を立ち止まって躱し、今度はプロト・Uへ接近する。

 

「遠距離武装で近接戦闘!?」

 

プロト・Uに接近するや、至近距離で光弾を放つ。

すぐに射線から外れ、真横から高次元多関節機構によって変形しながら蹴りを放つ。

それを右の銃で受け止め、左腕で肘打ちをする。

その肘打ちをプロト・Uは左のコンバットナイフの腹で受け止める。

拮抗する体勢を、子機からの砲撃が崩すが、距離を離れずそのまま双銃による近接格闘戦を繰り広げる。

 

「(やっぱり。子機はプロト・Uに接近しているは間はパターンが一定になる)」

 

プロト・Uに近ければ近いほど、子機による砲撃は横か上の2つになる。

真後ろからなどと言った、プロト・Uを巻き込みかねない砲撃はしてこない。

ここまでは予測した。

後は―――

 

「なにを企んでいるのか分かりませんが、終わりです!!」

 

プロト・Uのコンバットナイフの猛攻を双銃で捌き、至近距離から光弾を放つ、ガン=カタをする。

一箇所に留まるのではなく、少しずつ動く。

これほど至近距離なら高次元多関節機構による変形する時間もない。

やがてプロト・Uの一撃で右の『ヘブンブラスター』が手から離れ、高々と放物線を描いて離れに落ちた。

 

「ここまでです」

 

剣を突きつけられチェックメイト同然のエレボス。

普通ならここで投降するんだろう。

普通なら(・・・・)、ね。

 

「それは、どうかな!!」

 

残った左の『ヘブンブラスター』で足元を撃ち、一瞬だけ視線を逸らす。

その隙にすぐ傍に突き刺さっていた(・・・・・・・・・・・・)漆黒の剣『ノワール』を右手に掴み、プロト・Uのコンバットナイフを叩き落とした。

 

「なっ!?さっき投げ付けた剣?!」

 

追撃を躱すように、下がるプロト・U。

そしてその周囲を浮遊する3機の子機。

 

「何故すぐ傍に・・・・・・いえ、違う。まさか・・・・・・!!」

 

「ええ。誘導させてもらいました。ここまで!!」

 

最初から投げ付けた剣を取りに行こうとすれば、真っ先に戦術が読まれる。

だからここまで双銃による近接格闘戦で誘き寄せた。

プロト・Uの双剣を奪うために。

少しずつ移動し、壁面に近づいたのも押されてると見せかけるため。

すべてはこの瞬間のため。

そして―――

 

「なっ!?」

 

無手で動かないプロト・Uの周囲を浮遊する子機の1機を左の『ヘブンブラスター』から放たれた光弾が破壊する。

 

「右手に剣。左手に銃!?」

 

「これが僕が考えた貴方とプロト・Uに勝つ為の策です」

 

あの時ふと過ぎったのだ。

なら、コッチも近接と遠距離両方使えばいいんじゃないか?って。

けど、初めからそんなことしていたら何かしら対策を取られる。

故に、さっきの策と合わせることにした。

 

「いきますよ!」

 

「っく!」

 

咄嗟に離れ、行く手を2機の子機が砲撃を放つ。

だが、それを『ノワール』と『ヘブンブラスター』で弾いて反撃する。

子機はそのままエレボスの周りをグルグルと浮遊して砲撃してくるが、ステップで避け、『ノワール』で砲撃を弾いて切り裂き、『ヘブンブラスター』で反撃する。

 

「(始めての銃剣武装だけど、なんか双剣と同じくらいしっくりくるかも)」

 

そんな事を思いつつ、絶え間なく放たれるが砲撃を切り裂き、弾き、撃ち落として相殺する。

そんな中、

 

「ふっ!!」

 

「はぁっ!!」

 

武装を切り替え、体勢を建て直したプロト・Uが攻撃を仕掛けてきた。

プロト・Uの新たな武装は、両端を白焔のような純白のエネルギー刃、武装全体をその純白のオーラが覆っている。

何処か近未来な感じを感じる双刃槍の両槍。

プロト・Uの純白のエネルギー刃と『ノワール』がぶつかる。

ギチギチ、と実剣とオーラ刃が拮抗する。

拮抗する中、左の『ヘブンブラスター』でプロト・Uを攻撃しようとするも、それを阻止するように左側から子機が砲撃を放ってきた。

仕方なく、鍔迫り合いくらエネルギー刃を滑らせてプロト・Uを潜り抜け、砲撃を躱し、子機の射出口に向けて『ヘブンブラスター』の光弾を放つ。

放たれた光弾は、子機の再度放った砲撃で相殺される。

けど、放った光弾は一発だけではない。

立て続けに二発目、三発目、四発目が子機に迫り、子機の射出口付近に命中する。

 

「はあっ!!」

 

光弾でぐらついた子機を一瞬で半分に斬る。

これで後1機。

 

「ここまで押されたのは久しぶりですよ!!」

 

半分に斬るや、プロト・Uが両槍で突いて来る。

そのままクルクルと持ち手を回して勢いよく突き、薙ぎ、切り裂きをしてくる。

ブォン!というエネルギー刃の音と、『ノワール』の風を斬る音が響く。

次々と来る猛攻を銃剣で対処する。

剣と銃、体術をこれでもかと言うほどに駆使する。

けど、体術面ではやはり現役国防隊員。

一枚上手を行く。

だが、それをスキルでカバーする。

ぶつかり合う中、視界が徐々にスローモーションに入って行くのを感じた。

高次元多関節機構と元々3機あった子機の、残りの1機を巧みに使い攻めてくる。

死角は無い。

近接、遠距離ともにトップクラス。

勝つ為には相手を超えるしかない。

高次元多関節機構の弱点はよく分からない。

けど、あんな変形を普通のCPUがいつまでも処理出来るとは思えない。

しかしそれは相手も想定しているのだろう。

つまり時間稼ぎによるコレは使えない。

となると残すはいつも通り倒すだけ。

まあ、もっとも最初からそのつもりだったが。

次々と撃ち合うエレボスとプロト・U。

フィールドを縦横無尽に駆け回り、地形全てを利用して、空、地面、壁など三次元空間をフルに活用していく。

撃ち合う中で、ようやく残った最後の子機を撃破し、コレでプロト・Uの子機による援護射撃のアドバンテージは潰えた。

 

「くっ!」

 

もっと。もっと速く。

疾く速く!

『ノワール』による薙ぎからの『ヘブンブラスター』のグリップによる打撃。

そのまま蹴り上げから、空いた胴体へタックルを仕掛け『ノワール』で下から切りあげる。

が、切り上げで空いた左手をプロト・Uの両槍が鋭く穿いて『ヘブンブラスター』を左手から吹き飛ばす。

すぐに次の手を考える。

高次元多関節機構で軌道を逆にしてきたプロト・Uの両槍を『ノワール』で受け止める。

すでにエレボスのLPは残り2割強。

これ以上戦闘を長引かせることは出来ない。

 

「っ・・・・・・!」

 

白剣の『ブラン』は離れたところに落ちてるから二刀流は難しい。

久しぶりの片手剣だ。

けど、僕は最初から二刀流じゃなかった。

最初は片手剣だけだった。

だから―――

 

「(原点・・・・・・か)」

 

面白い。

『ノワール』のみでプロト・Uを相手取る。

片手剣だけでプロト・Uを相手取るのは少し厳しいかもしれない。

けど―――

 

「・・・・・・視えて、きた」

 

ぶつかり合って視えた。

予測不可能が予測可能(・・・・)になってきた。

 

「っ!?プロト・Uの速度よりさらに速く?!一体何??それにその瞳は・・・・・・!!?一体、君は何者ですか!?」

 

「僕?僕は山野レイ。父さんと母さんの子供にして、兄さんの弟。そして、亡きあの人たちの思いを受け継いだ、ただのLBXプレイヤーさ!!」

 

「っ!!」

 

クイーン・シャルバート中尉の問いに自信を持って答える。

その一撃でプロト・Uを吹き飛ばす。

 

「行くよエレボス!!もっと僕らの先へ!!限界を超えたその先に!!!」

 

「っな・・・・・・!!」

 

ニッ!と口角を上げ目を大きく見開いた。

一瞬でエレボスがプロト・Uの背後を取り、一撃を叩き付ける。

そのまま続けて横から突き、壁面へと吹き飛ばす。

 

「反撃出来ない?!高次元多関節機構をする暇もない!?」

 

超高速の思考による高速戦闘。

その速度は今までの比じゃない。

しかも速度が徐々に上がって、プロト・Uの動きが止まって見える。

スローモーション所ではない、コマ送りしているように見えるのだ。

こんな事始めて。

プロト・Uもなんとか反撃しようとするも、反撃してもその場所にはもうエレボスがいない。

やがてプロト・Uの両槍の持ち手が『ノワール』で半分に斬られる。

だが、プロト・Uはそのまま近くに転がり落ちていた、弾き飛ばした最初のコンバットナイフの片手剣一本を拾って突きを放って来た。

そのまま交差するようにエレボスの『ノワール』とプロト・Uのコンバットナイフが重なりあい、互いをすれ違うようにして背後に移った。

動かない両機にやがて―――

 

「「っ・・・・・・!!」」

 

プロト・Uが青白いエフェクトを発光させて前のめりに倒れた。

 

「馬鹿な・・・・・・!!」

 

「はぁ、はぁ・・・・・・」

 

勝負が着いたことにより僕とクイーン・シャルバート中尉を閉じ込めていたDエッグのエネルギーフィールド膜が消える。

張り詰めていた緊張感が、フィールドが消えて元に戻ったのを実感して溜めていた息を吸って吐いた。

 

「僕の・・・・・・勝ちです・・・・・・!!」

 

息を整えつつクイーン・シャルバート中尉に言う。

 

「ええ・・・・・・僕の負けですね」

 

クイーン・シャルバート中尉は悔しそうに。けど、何処か満足したような苦笑混じりで自分の負けを認めた。

それと同時に―――

 

 

「ば、馬鹿な・・・・・・![プロト・I]が負けるなど・・・・・・!!」

 

 

少し離れたところに展開していたDエッグのエネルギーフィールド膜が消え、中から兄さんたちが姿を現した。

どうやら向こうも倒せたようだ。

向こうはまだ僕らに気づいてないようだけど。

クイーン・シャルバート中尉と同じアーマースーツを着たジャック・ジェラート中尉の問いに父さんが答える。

てか、今。プロト・Iの開発者だ、って自分の口で言ったよね父さん?

疑念が確信に変わるのと同時に兄さんたちに声を掛ける。

 

「お疲れ様〜兄さん」

 

「レイ!?」

 

左手を腰に当てて右手を振る。

 

「兄さんたちなら勝てると思ってたよ〜」

 

朗らかに言う僕を、兄さんたちは、え??となんか驚いた顔をして僕を見ていた。

ジャック・ジェラート中尉も同じ感じだし。

みんなが見ているのは僕の顔・・・・・・いや、視ているのは僕の・・・・・・眼?

 

「れ、レイ。その眼どうしたんだ??」

 

「?何が??」

 

首を傾げる僕にヒロが。

 

「いえ、その。レイさんの眼・・・・・・」

 

「眼がどうしたの?」

 

「え、気づいてないの?」

 

「???」

 

ランの問い掛けに首を傾げながら疑問符を浮かべる。

仕方なくカバンからコンパクトミラー(手鏡)を取り出して開いて眼を鏡越しに視る。

 

「へぇ。なるほどねー」

 

兄さんたちが僕の眼を視て驚いていた理由が解った。

何せ今の僕の眼は本来の黒眼から、右眼が緋銀。左眼が蒼銀のオッドアイになっていたのだから。

まさかこうも身体の見た目に変化が訪れるとは・・・・・・。

ちょっと驚いてる。

鏡越しに自分の眼を見て驚いている中。

 

「ジャック。キミも負けたか」

 

「クイーン・・・・・・まさかお前が負けるとはな。俺も言えたことではないが」

 

「世界はまだまだ広いね。彼、プロト・Uの子機全部破壊したよ」

 

「なに!?いや、そもそも子機を出したお前に俺ですら勝てるのは半々以下なのに、それなのに彼は勝ったのか!?」

 

「ああ」

 

マジか!?と驚愕するジェラート中尉にクスクスと朗らかに笑うシャルバート中尉。

 

「それで、僕らの話を聞いてくれますよね?勝ったのは僕らなんですから」

 

二人に向かってそう問いかける。

 

「"敗者は勝者の言いなり"・・・・・・とは言いませんけど、今は一刻を争う事態なんです。それでもまだ僕らの邪魔をするなら・・・・・・」

 

微笑みを消して冷たい、絶対零度を彷彿とさせる声で言う。

 

私が潰す(・・・・)

 

と。

 

「「っ!!」」

 

ビクッ!と後ろずる二人。

 

「まぁ、そんな事せずとも、コレを観たら僕らの言っていることが本当だって分かってくれますよね」

 

そう言い端末の画面に、ガーダインが大統領と長官を連れている姿を映した映像を出す。

 

「コレは・・・・・・!確かに、大統領だ」

 

「しかもこの通路は国防基地(ココ)の衛星管理センターに通じる通路ですね」

 

「ああ」

 

「シャルバート中尉とジェラート中尉の二人から確証を得られたという事で、僕らの事。信じてくれます?」

 

「ああ。信じよう。クイーン、お前は?」

 

「僕は初めから信じてたよ?」

 

「なに?」

 

「だって、彼らほどの有名人がわざわざ危険を犯してまでここに来る理由は、余程のことだからね」

 

「はぁ・・・・・・信じていたが、スジは通さなければならない、ってか?」

 

「そういう事」

 

「お前なァ・・・・・・!本当に昔からお前は一人で自己解決するよな!!」

 

ヒタイ(痛い)ヒタイ(痛い)ヒャック(ジャック)ヒタイホ(イタイよ)

 

バイザーを脱いで片手でシャルバート中尉の頬を掴むジェラート中尉。

 

「なんかどこかで見たことある光景だね」

 

「はい」

 

ランとヒロが二人のやり取りを見ながら、僕をチラッと見つつ言う。

 

「はあ。とにかく、俺たちで管理センターのドアを開ける」

 

そう言って奥の宇宙衛星管理センターへと駆けるジェラート中尉を追って僕らも管理センターのドアの前に行く。

ジェラート中尉がすぐ横の認証機にカードを当てて操作するが、すぐにプー!とアラート音が鳴る。

 

「ダメだ!クイーンは?!」

 

ジェラート中尉と位置を交換してシャルバート中尉が同じようにするが、やはりコチラもアラートが鳴る。

 

「僕も同じだ。恐らくパスワードが書き換えられている!」

 

シャルバート中尉の言葉を聞き父さんは中と外を隔てる分厚い扉の前に行き、扉を叩く。

 

「大統領!ご無事ですか大統領!?」

 

「カイオス長官!!」

 

 

『山野博士!バン!』

 

 

父さんと兄さんの呼び掛けに、扉越しからカイオス長官の声が聞こえた。

どうやら無事のようだ。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 

『ああ。大統領も無事だ!』

 

 

兄さんの問いにカイオス長官は僕らにそう告げる。

大統領も無事だということに安堵するが。

 

 

『私たちに構わず、今すぐにガーダインを追ってください!』

 

 

「「「「「「「え!?」」」」」」」

 

 

『ここにいては危険です!!』

 

 

大統領のその一言が安堵を一転させた。

 

「どういうことですか!?」

 

 

『ガーダインは、私から起動コードを聞き出せないことを悟ったのでしょう。私たち事、この施設を破壊するつもりです!』

 

 

大統領の告げた言葉は、僕らに衝撃を与えた。

 

「え!?」

 

「なっ!?」

 

「ここを爆破!?」

 

「なんて事を!」

 

 

『みんな落ち着くんだ。私はここで、爆破装置を何とかする。だから君たちは、早くガーダインを!!』

 

 

「長官・・・・・・」

 

「そんな事、出来る訳ありません!!」

 

「でもどうすれば・・・・・・!」

 

「扉のロック機構さえ破壊出来れば・・・・・・!!」

 

「この扉は爆発にも耐える代物だから、この扉に爆弾をセットしても破壊出来るとは思えない。何より、僕もジャックも今爆弾なんて物持ってないし・・・・・・」

 

みんなどうしたらいいのか困惑している。

僕ももちろんだ。

カイオス長官の口振りから恐らく爆発するまで2分もないはず。

考えろ。思考を加速させて二人を助ける算段を!

 

「・・・・・・!シャルバート中尉。ジェラート中尉。二人はこの扉のロック機構を破壊出来たら、扉を開けられます!?」

 

「ああ」

 

「出来る」

 

「良し。兄さん!ヒロ!ラン![∑オービス]の必殺ファンクションでロック機構を破壊して!!」

 

ジェラート中尉とジェラート中尉の二人に確認を取り、すぐに兄さんたちに指示する。

 

「っ!そっか!分かった!!ヒロ!ラン!」

 

「はい!」

 

「うん!」

 

父さんも僕の指示の意味を理解したのか、そういう事かと呟く。

 

「カイオス長官と大統領は下がっていてください!」

 

 

『分かった!』

 

 

カイオス長官と大統領が扉の前から離れたのを感じ取り。

 

「ヒロ!」

 

「はい!必殺ファンクション!!【アタックファンクション!∑ドライブソード!!】」

 

ヒロに指示をして、ヒロがすぐに∑オービスの必殺ファンクションを発動させる。

∑オービスの放った必殺ファンクションの一閃が、扉のロック機構を斜めに断ち切り、小さな爆発を起こす。

断ち切られて起こった爆発により、ロック機構が消滅した。

 

「後は任せろ!クイーン!!」

 

「ええ!」

 

ロック機構のあった所に出来た隙間に両手を当て、力いっぱいシャルバート中尉とジェラート中尉が扉開ける。

やがて重い音とともに扉が開き、管理センター内部と僕らのいる外への通路が開けた。

ドアが開くや、カイオス長官に促されて大統領が出てき、その後カイオス長官が管理センターから出てくる。

チラッと管理センター内部を視れば、中央のコンソールらしきものの上の空間ウインドウに、恐らく爆発までのカウントダウンであろうタイマーが表示されていた。

カウントダウンはすでに30秒を切っていた。

大統領とカイオス長官が脱出し、僕らも管理センターから離れる。

殿を務めるジェラート中尉が、伏せろーっ!!と叫び、僕らはその場に伏せる。

伏せると同時に管理センターから爆発音と爆風が響き、管理センター内部から煙を立ち昇らせた。

 

「危なかった・・・・・・」

 

ギリギリどころじゃない。

間一髪、といった方が正解だ。

後数秒遅かったら大統領とカイオス長官はあの爆発に巻き込まれて命は無かった。

モクモクと立ち込める黒煙を見ていると。

 

「なんだ!?今の爆発は!!」

 

階段の方からコブラの焦った声とともに、アミ姉やジン、拓也さんたちが姿を見せた。

どうやらみんなここに辿り着けたようだ。

 

「大統領!ご無事ですか?」

 

「ええ。なんともありません」

 

拓也さんが大統領に無事か尋ね、大統領はなんともないと返す。

ガーダインに拷問されたりはされてないようだ。

カイオス長官も特に変わったところはない。

そこに。

 

「パパぁ!!パパぁぁ!!!」

 

「ジェシカ!」

 

ジェシカが泣きながらカイオス長官の胸元に飛び込んだ。

まぁ、自分の父親が命の危機に晒されたんだ。

当然だね。

カイオス長官も娘の姿を見て嬉しいのか互いに抱擁を交わす。

父娘(親子)の抱擁は数秒だったが、それでも互いに無事だと言うとが知れて安堵している。

 

「良く来てくれた諸君」

 

「本当にありがとう。みなさんが来てこれなければ私と長官は今頃・・・・・・」

 

「クソっ!許せねぇぜガーダインのヤツ」

 

大統領の言葉に、ガーダインに向けて悪態吐くコブラ。

ホントだね。

 

「人の命をなんだと思ってるんだ・・・・・・」

 

ボソッと純度100の怒気で呟く。

アルテミスでの暗殺に加えて、今回。

ムカつく以前に許せない。

 

「だが、起動パスワード無しでアダムとイブは動かせない」

 

「後は逃げたガーダインを捕えれば全てが終わる」

 

確かにカイオス長官と拓也さんの言う通りだ。

けど、幾つか懸念が残る。

 

「・・・・・・ですが・・・・・・」

 

「どうしたんですか?」

 

「うむ。ガーダインはなぜ簡単にここを棄てたのか。ここ以外にパラダイスを動かす手立てはないはずだが・・・・・・」

 

カイオス長官と大統領も僕と同じ事を思っているようだ。

引き際が余りにもあっさり過ぎている。

捕まらないよう逃げた、とも見えるけどなんか違う。

あの感じから、恐らく僕や兄さんたちのシャルバート中尉とジェラート中尉との戦いを観ていたのだろう。

二人が負けたからこの場を放棄した。

パラダイス専用のコントロールセンターたるフューチャーホープ号はすでに制圧済み。

あと残された手段は国防基地の宇宙衛星管理センターからによる起動コード呑みだが・・・・・・

そこへ、ダックシャトルにいるオタクロスと大空博士から、シャトルに熱源反応がある事を伝えられた。

そして大空博士から、ガーダインがシャトルでパラダイスに直接行き、アダムとイブを起動させるつもりだということを。

すぐに僕たちは発射を阻止するために行動に移った。

だが、それはガーダインも想定しているようで、警備LBXの大群を仕向けてきた。

しかし、行く手を阻むように防ぐその大群をアミ姉とカズ兄、ラン、ルナが残り警備LBXの足止めをしてくれる事となり、残った僕らはそれぞれ管制室と発射台へと二手に分かれた。

管制室にはジェラート中尉を先導して父さん、大統領、カイオス長官、コブラ、拓也さん、ユウヤ、アスカ、ジェシカ、メアが。

発射台にはシャルバート中尉を先頭に僕、兄さん、ジン、ヒロが向かう。

あと少しの所で発射台というところで、何故か国防基地全体の電源が落ち、発射台へと辿り着くことが出来なくなってしまった。

端末越しから、この状態は外部の燃料制御系統にアクセスした際にトラップが発動する仕掛けになっていたと大空博士に言われた。

 

「僕らの動きを予測したトラップ・・・・・やられたね・・・・・・・・・・」

 

恐らくコレを仕掛けたのはガーダインではなくあの人。

国防基地に響き渡るロケット発射のカウントダウンが(ゼロ)になり地響きのような轟音が鳴り響く。

発射台へと通じる通路の上部。

ガラス張りの天井に映る漆黒のロケットは、エンジンを点火して宇宙へと動いていた。

シャトルが発射したと悲報を受け、僕らは成すすべが無くなった。

宇宙に逃げられては何も出来ない。

絶望に打ちひしがれているとカイオス長官が。

 

『いや、まだ終わってはいない』

 

と通信越しに言ってきた。

 

「長官?」

 

「まだ終わってはいないって・・・・・・どうするんです?相手はもう宇宙に、ですよ?」

 

僕らがガーダインらを止めるには僕らも宇宙に行くしかないが・・・・・・

僕がカイオス長官に至極当然の質問を問うと。

 

『そうだ。だから、我々も宇宙に行く』

 

と返ってきた。

 

「はい?」

 

まさかの返答に疑問符が浮かぶ僕らにカイオス長官は。

 

『総員。ダックシャトルに集合せよ。これより、我々はNICSに戻りダックシャトルを改造。宇宙に出る!目標、宇宙軍事基地パラダイス!!なんとしてもガーダインの野望を阻止するのだ!!』

 

と告げた。

 

「まだ希望はあるってことか・・・・・・」

 

「レイ・・・」

 

「―――よし。行こう!」

 

その場から走って兄さんたちと僕はダックシャトルへと戻った。

国防基地の事は大統領令でジェラート中尉とシャルバート中尉らファイアースイーツ隊が対処することになった。

どうやら国防基地の司令までがガーダインの協力者だったようで、二人に裏切り者たちの拘束を指示していた。

予測していたとはいえ、まさか国防の指揮権を持つ司令官までガーダインに付いているとは・・・・・・

軍内部でこれほどということは、やはり警察機関にもガーダインのシンパがいることは間違いないだろう。

一体どれほど手を伸ばしているのやら・・・・・・

正直末恐ろしいとしか言えない。

が、それと同時にガーダインの野望に共感している人が大勢いるということも示していた。

国防基地からダックシャトルでNICSに戻り、カイオス長官と大統領はNICS本部に戻ることになり、僕らはNICS施設のマスドライバーに行きダックシャトルを改装。そのまま宇宙に飛び立つことになった。

ダックシャトルからすでにカイオス長官がNICS局員に指示をしており、すぐにスムーズに進んでいく。

 

「大統領。長官。我々はこれから、マスドライバーにてダックシャトルを換装。大気圏離脱ブースターを装着し、パラダイスに向かいます」

 

「パラダイスの事は任せたぞ」

 

「分かりました」

 

「頼みます・・・・・・」

 

タラップを降りて拓也さんがカイオス長官と大統領と話す。

 

「カイオス長官。ICPOにはすでに伝えてあります。捜査員がコチラに合流するはずなので情報交換をお願いします」

 

「分かった。すでに制圧しているフューチャーホープ号についての情報も受け取る予定だ」

 

僕もカイオス長官にそう伝える。

すでにクリスさんたちが動き出しており、ガーダインの対策のため捜査員を派遣すると連絡を受けている。

僕はそのまま視線を大統領に移し。

 

「ガーダインに、チカラによる正義は何も生まないと、言ってきます」

 

「・・・・・・お願いします・・・・・・!」

 

自分の右腕として長年付き添って来た事もあり、今回のことは大統領自身にも深い傷を負っているのだろう。

それに―――

 

「(僕の目的もある)」

 

予測だが、あの人はパラダイスにいる。

目的は恐らく―――

 

「行こう拓也さん」

 

「ああ」

 

タラップを登り、ダックシャトル内部へ戻る。

 

「レイ。大統領に聞いたあの問いの意図はなんだったんだ?」

 

タラップが閉まる中拓也さんが素早く聞いてくる。

NICSに戻る最中、僕は大統領にある問いをしていた。

拓也さんの問いに、僕は歩きながら答える。

 

「"正義とは"なにか。それの質疑」

 

「"正義とは"だと?」

 

「そう」

 

ここ一年ずっと考えている。

"正義とは"なんなのか。

僕の正義はあの時から決まってるが、それが正しいのかどうかは誰にもわからない。

僕の正義を教えたのは―――

 

「(メアとシャロぐらいか)」

 

メアには何となく話したことがある。

そしてイギリス、ブリントンで出会ったシャロにも。

信念を掲げる正義。

だから聞いておきたかった。

大統領についての"正義とは"なにかを。

 

「ガーダインたちを止めよう拓也さん」

 

「ああ」

 

ダックシャトルの通路を歩きそれぞれ席に着席し、準備をする。

 

『総員に告ぐ。本機はこれより、パラダイス攻略に向けマスドライバーに向かう。移動後総員はダックシャトルにて待機せよ!』

 

放送で拓也さんの指示が流れ、ダックシャトルが動き出す。

ついに、僕らの最後の戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

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