ダンボール戦機 英雄の弟   作:ソーナ

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回想 W―ディテクター編 LⅡ 正義と正義

 

〜レイside〜

 

中央エレベーターに乗り、僕と兄さんたちはパラダイスのコントロールルームに辿り着いた。

コントロールルームに着くと、階上にはガーダインとビショップ、そしてあの人がいた。

コントロールルームで一番目立つのは、ガーダインたちの後ろに浮かぶ二つの物体。

右にある物体は凹凸があり、星型多角形一つである大二十面体のような形をしていて、周囲を水色のベールに包み込まれている。

左にある物体は右のとは反対に凹凸がなく、多面体の一つである正二十面体のような形をしていて、これも同じくオレンジ色のベールに包み込まれていた。

恐らくアレが【アダム】と【イブ】なのだろう。

そして、その前にはそれぞれ二つずつ、ベールと同じ色の空間ウインドウを表示しており、その空間ウインドウにはカウントダウンのように、パーセンテージがゆっくりと進んでいた。

どうやらあれがメインレーザー発射のカウントダウンのようだ。

すでに90%を超えており、時間がない。

 

「さすがはNICS。よくここまで来た」

 

嘲笑うように称賛の言葉を口にするガーダイン。

 

「だがもう遅い。すでにパラダイスは、私のモノ。大空遥、キミには感謝している。キミは、私の革命のため人類最高のコンピューターを完成させてくれた。アダムとイブのおかげで、パラダイスは完全なる宇宙軍事基地となったのだ」

 

「アダムとイブをそんな事に使わせないわ。今すぐメインレーザーの発射を止めなさい!」

 

アダムとイブをそんなことに使わせないって・・・・・・

大空博士の言葉に呆れが出る。

創ったのも、それを知らないまま稼働させたのは大空博士なのに何言ってんだ?

科学者ってのはどうしてこう、馬鹿ばかりなのか・・・・・・

 

「先に言っておく。投降する気はある?」

 

最終勧告の言葉を口にする僕。

ここで投降してくれるなら、この後の問題はあの人をどうにかするだけなんだけど・・・・・・

 

「そう言われて素直に投降や止めるとでも思うのかね?」

 

まぁ、そうなるよね。

肩を竦めてやっぱりね、と示す。

 

「エネルギーの充填はまもなく完了する。諦めて、その場で世界がひれ伏す瞬間を看ているがいい。まずは、大統領共々、NICS本部をこの世から葬り去ってやる」

 

「そんなことさせるものか!」

 

「そうです!」

 

「ふっ」

 

兄さんとヒロの制止する声にガーダインは鼻で笑う。

そのガーダインに父さんが。

 

「止めるんだガーダイン。お前のした事は、何れ世界に知れ渡ることになる。隠し通せるものでは無いぞ」

 

と告げる。

 

「すでにこの事は色んなの人に知れ渡ってる。もしかして知っている人全員を消すつもり?」

 

「レイさんと山野博士の言う通りです!この世に悪の栄えた試しはありません!!」

 

悪の栄えた試しはありません、か。

特撮好きのヒロらしい言葉だと思ってしまった。

不謹慎だけど。

ヒロの言葉にガーダインは軽蔑するような眼をして言った。

 

「ふんっ。これは"悪"ではない」

 

と。

 

「なに?!」

 

「意味わかんない!?」

 

「どう言う意味だ!」

 

これが"悪"ではないならなんだ?

 

「これこそ"正義"。本当の正義なのだ」

 

「・・・・・・"正義"」

 

"悪"ではなく"正義"。

ガーダインの言葉にボソッと声が出る。

ガーダインはそのまま語り始めた。

 

「私の家は、代々続く政治家の家系だった。私の父も代議士で、この国のために働いていた」

 

それはガーダインが今に至るまでの道標。

過去を聞きながら、僕は「ああ。この人もLEXと同じ世間や世界(・・・・・)の被害者なんだな」と思った。

それと同時に、この世界は何処まで腐ってるんだろう、と考えてしまった。

僕がそんな事を考えているとは誰も思わずに、ガーダインは話を続ける。

 

「―――父の政策は多くの国民から支持を受け、次期大統領に推す声もあり始めていた。さらに父は、当時の大統領が汚職事件に関わっていることを突き止め、告発していた。ところが突然、その汚職事件に関わっていたのが父であるという証拠が出てきたのだ」

 

怒りを隠さずに、憤怒の表情で告げるガーダイン。

汚職事件に、当時の大統領がそれに関与。

ということは―――

 

「父は無実を訴えたが、それが聞き入れられることは無かった。刑期を終え、父は再び政治活動を始めたが、一度過ちを犯した政治家に世間は冷たかった。集会に人は集まらず、誹謗中傷は日常茶飯事。そんな父を見ながら、私の少年期は過ぎていったのだ。そして・・・・・・」

 

言葉を途切らせ、ガーダインは悲哀の感じで顔を下に向けて言う。

 

「私が20歳(はたち)に行く前に・・・・・・。ちょうど大学の頃に父は、何一つ成し遂げることなくこの世を去った。父がこの世を去り、ある時父の書斎で遺品を整理していた時、本と本の間の隙間に挟まっていた日記を見つけた。そこには、父の集めた証拠が大統領の権力によって作り替えられ、全ての罪が父に擦り付けられたことが書かれていた。そして、力がない故に、国民のためになるための政策を実現出来なかった無念の気持ちも。父は、権力によって政治生命を絶たれたのだ。父の日記の最後のページには"力が欲しい。チカラが"。"政治とはなにか?正義だけで正しい政治は全う出来ない"。"政治家とはどうあるべきなのか?"。"チカラを手に入れなければならない"。と書かれていた。その時、私は決意したのだ。強大な力を持った政治家になると。そのチカラで、父が果たせなかった真の政治をこの手で行ってみせると。そのために私は、有望な政治家の下に着き。機会を伺い、そしてこのパラダイス計画を押し進めたのだ」

 

「だからって、力で人を押さえつけるなんて絶対に許せません!」

 

ガーダインが何故こんなことをするに至ったのか聞き、ヒロがすぐに反論する。

 

「お前たちに何がわかる?これこそ正義のための革命。邪魔する者は全て、消えてもらう!」

 

「フッ・・・・・・」

 

階上の死角の両脇から漆黒の機竜【キラードロイド】が2体飛び出してきた。

それにしても・・・・・・・

 

「(正義のための革命、か・・・・・・)ハッ」

 

思わず鼻で笑ってしまう。

 

「キラードロイドが2体も?!」

 

「どうすんの?コッチはLBX4体だけだよ!」

 

「LEX・・・・・・」

 

あの人を苦々しく見る兄さん。

どうやら兄さんはまだ気づいていないらしい。

いや、僕以外誰も気づいてすらいない。

当然か。僕だって―――

 

「ガーダイン。お前が何故こんなことをしたのかは理解した。同情もするし、理解も出来る」

 

カツン、カツン。と靴音が響く。

そのまま兄さんたちより前に出て言う。

 

「だが、そんな正義。僕に言わせれば、クソったれ、だ」

 

「なに?」

 

「れ、レイ?」

 

僕の言葉に忌々しそうに僕を見るガーダインに、怪訝そうにする兄さんや父さんたち。

僕自身、クソったれ、なんて言葉を初めて口にしたかもしれない。

 

「お前の言う正義は、チカラあっての正義だ。それで?そのチカラが無くなったらどうする?お前よりも遥かに強大なチカラを持った者が現れたらどうするつもりだ?それとも、まさかとは思うが自分はチカラを失う、という事を考えていないのか?」

 

「なんだと?何が言いたい?」

 

「正義なんてものは人それぞれだ。同じ正義など無い。同じ思想でも、考え方によって正義は千差万別だ。お前の正義が"力"なら、(わたし)(わたし)の正義を持って、お前の正義を否定する」

 

口調が僕から(わたし)へと変わる。

 

「お前が正義()を持って正義を成すなら、(わたし)(わたし)の正義の元に、お前の正義を破壊する」

 

「"正義"だと?産まれて経った10年しか経っていない子供がなんの正義を語る?」

 

「たった10年しか経っていない子供が正義を語るのは可笑しいか?」

 

「・・・・・なら、言ってみるがいい山野レイ。お前の言う正義とはなんだ?」

 

(わたし)の"正義"か?そんなの決まってる」

 

ガーダインの問いに答えようとしたそこへ、背後から中央エレベーターが上がってくる音が聞こえ。

 

「お待たせレーくん!!」

 

「待たせたわねレイ!!」

 

「バン!」

 

メアにルナ、アミ姉の声が響いた。

どうやら脱出出来たようだ。

ガーダインが話している最中、中央エレベーターが下に降りたのを横目に見ていたから予想はしていたけど。

 

「みんな!」

 

「脱出出来たんですね!」

 

「間に合ったぜ!」

 

これで全員集合。

戦力は整った。

 

「愚か者め。わざわざ殺られに来るとは」

 

そう呆れたように言うガーダインに向けて、ニッ、と右頬を上げ不敵な笑みをガーダインたちに向けて告げる。

 

「阿呆か?わざわざ殺られに来るわけなかろうが。聞け、ガーダイン。お前に(わたし)の正義について言ってやる。(わたし)の"正義"は、―――"理想"、だ」

 

「なに?」

 

「理想なくして正義など語れるものか。(わたし)の"正義(理想)"とは選ぶのではない、自らの手で掴み取ることだ」

 

そう。僕の正義は"理想"。

理想とは人が心に描き求め続ける、それ以上望むところのない完全な状態や、最高のあり方を指す。

理想は日常や現実との対比。

あくまで目指すべき最高の状態であるため、現状たる現実との間に違いが生じることがある。

だが、この葛藤を乗り越え、少しずつ目指す現実に近づけていくための指標が理想だ。

そして、僕の中で【理想】と【正義】は、【正義=理想】となっている。

例えば、貨車(トロッコ)の問題があるとしよう。

片方は1人。もう片方は多数。

どちらかは救えて、どちらかは見捨てなければならない。

1人か大多数。

普通ならどちらかを選ばなければならない、苦渋の選択を。

けど、僕は『両方とも選ばない』を選択する。

両方とも選ばない、つまり第3の選択肢(サードセレクション)だ。

両方とも救う。例え理想であろうとも、両方とも救う道を進む。

それが僕の選んだ選択であり、"正義(理想)"だ。

決められたルールや、課せられた前提という条件の天秤さえも破壊して、己の理想を掴み取ろうする行為こそが、正義なのではないかと僕は思っている。

 

「"理想"だと?理想などで真の政治は行えるはずがない!くだらん。そんなものは、所詮はただの夢物語に過ぎない!」

 

「ああ。夢物語だ。だから?夢物語だからなんだ??夢物語だからと言って、必ず実現しないと思うか?実現しないと誰が決めた?実現するために、その理想へと手を伸ばす。実現するかしないか決めるのは、誰でもないこの世でただ1人。自分自身だけだ!それが、(わたし)の。いや、僕の選ぶ正義だ!!」

 

「忌々しい。大統領と同じ、理想狂い者め。理想など、所詮はチカラの前では無力!」

 

「―――"汝、望まば、他者の望みを炉にくべよ"―――なら決めようか。どちらの正義が上か。僕の正義(理想)が上か。それともお前の正義()が上か!!」

 

僕のその言葉を皮切りに、2体のキラードロイドが動き出し、メアとルナたちをそれぞれ2組に分けて閉じ込める。

 

「メア!ルナ!キラードロイドは任せた!手加減無用の全力全開でやれ!!」

 

「「もちろん!!」

 

それぞれメア、アミ姉、カズ兄、ジンのチームと、ルナ、ジェシカ、ユウヤ、アスカのチームに分断される。

 

「さぁ。始めようかガーダイン!!」

 

ガーダインと決着を着けようとする。

だが。

 

「ガーダイン様の邪魔はさせません。貴方の相手は私が努めます。山野レイ」

 

ガーダインの代わりに、傍にいたビショップが鋭い目付きで言ってきた。

ビショップはそのまま僕らの前にDキューブを放り投げてバトルフィールドを展開した。

キューブの展開したバトルフィールドはアルテミス決勝のバトルロワイヤルと同じ、天空神殿。

 

「邪魔しないでほしいんだけど?・・・・・・って言っても無駄か」

 

はぁ、と溜め息を吐くや、獰猛な笑みを返して[ウラノス]を取り出す。

 

「レイ!俺たちも―――」

 

「お前たちの相手はこの私だ![ゼウス]!!」

 

援護しようとする兄さんたちを遮るように、ガーダインがLBXを取り出してジオラマに投下する。

 

「元よりゼウスは完全な機体。パーフェクトブレインを搭載することにより、究極の機体となった。お前たちに、倒せるかな?」

 

「兄さん、ヒロ、ランはガーダインの相手しろ。ビショップは僕がやる!」

 

「「「了解!」」」

 

すでにメアたちはそれぞれキラードロイドと戦っている。

メアたちならキラードロイドを倒してくれるだろう。

 

「私も参りましょう。行きなさい[ポセイドン]!!」

 

バトルフィールドに、ガーダインのLBXを追い掛けるようにビショップのLBXが降り立つ。

ガーダインとビショップのLBXはついさっき、風摩キリトとのバトルで割り込んできたLBXたちだった。

 

「ポセイドンにゼウス・・・・・・海神と雷霆か」

 

ポセイドンとゼウス。

どちらもギリシャ神話で有名な神であり、ポセイドンは海。ゼウスは雷霆を統べる。

神の名を冠するLBXだ。

強さは計り知れない。

 

「疾く天を駆けろ―――ウラノス!!」

 

「[イカロス・ゼロ]!!」

 

「[イカロス・フォース]!!」

 

「[ミネルバ改]!!」

 

僕らもガーダインとビショップのLBXと対面するように、それぞれウラノスたちをバトルフィールドに降り立たせる。

 

「挨拶がわりだ。受け取りなさい!」

 

バトル開始と同時に、光翼形態から砲撃形態へと変形させた子機(ビット)をゼウスとポセイドンに向けて放つ。

6本のレーザーがそれぞれゼウスとポセイドンへと放たれる。

素早く避けたゼウスに対して、ポセイドンは右手に持つ三叉槍のような槍で切り払い、ウラノス向けて突進してきた。

 

「っ!」

 

一息でこちらも『ネビュラ』と『アステラ』のクロスブロックによる防御で三叉槍の突きを受け止める。

 

「レイ!」

 

「こっちに気を回さないでいい!兄さんたちはゼウスに集中して!!」

 

「分かりました!」

 

「了解!」

 

ガーダインのゼウスのことを任せたのに、こっちに援護に来ようとする兄さんのイカロス・ゼロ。

僕はウラノスを操作して、ポセイドンの三叉槍を弾き、バトルフィールドの天空神殿の中央舞台から上部の石橋部へと飛び上がる。

ウラノスを追いかけるようにポセイドンも飛び上がって着いてくる。

追随するように浮遊する子機を使い、着地と同時にポセイドンに向かって連続で砲撃する。

ビショップのLBXポセイドンは、ゼウスと同等の体躯で、カラーリングが白のゼウスとは違い、海を象徴するような紺碧のカラーリングだ。

右手に持つ三叉槍は、アスカの[ヴァンパイアキャット]の槍に似た槍だが、ヴァンパイアキャットの槍が悪魔をイメージさせるなら、ポセイドンの槍は神具と例えるのが正しいと言えるほどの三叉槍だ。

三叉の穂先は中央が長く、両脇の二槍は中央より少しだけ短いが、どれも細長くて鋭いのが看れる。

そして何より、ポセイドンは―――

 

「(やはり、[プロト・U]と[プロト・I]に似てる)」

 

所々違うが、プロト・Uやプロト・Iと造形が似ているのだ。

そう思ってると。

 

「プロト・Uやプロト・Iに似ている。そう思ってらっしゃいますね?」

 

「!」

 

『ネビュラ』とポセイドンの槍がぶつかり鍔迫り合う中で、ガーダインの横に立つビショップがそう言ってくる。

ガンッ!という音ともに、それぞれ後退し距離が空く。

 

「ポセイドンはゼウスの兄弟機にして、プロトシリーズのノウハウを組み込んだ完璧な機体なのです。その為―――」

 

「っ!」

 

一瞬で接近してきたポセイドンの攻撃を受け流し、背後を切りつけようとするが。

 

「ちっ!」

 

関節の駆動部を180度回し、背面から正面へと変えて『アステラ』の斬り下しを受け止めた。

 

高次元多関節機構(・・・・・・・・)!」

 

それは正しくプロトシリーズの高次元多関節機構で。

 

「それだけではありませんよ」

 

「!!」

 

咄嗟にその場から離れ距離を取り、別の高台へと飛び上がる。

距離を取った瞬間、元いた場所に上から砲撃が来て土煙が巻き起こる。

そのまま立て続けに幾多もののレーザー掃射が来るがギリギリの所で避ける。

ある程度距離を取り、反撃にこちらも子機(ビット)でレーザーが放たれた場所に向かって純白のレーザーを放つ。

放たれた砲撃は相手の砲撃とぶつかり合い爆発が巻き起こる。

 

「・・・・・・子機(ビット)か」

 

爆煙が収まり見えた光景は、ポセイドンの背後に漂う3機の子機(ビット)だった。

 

「ふはははは!山野レイ、そのポセイドンを相手に1人でなんとかなるとでも思っているのかね?」

 

兄さんたちのイカロス・ゼロ3機を相手にしながらガーダインは嘲笑うように言ってくる。

 

「はっ。その言葉そっくり返してやる。僕相手に1人でなんとかなるとでも?」

 

傲慢。

そう思うかもしれない。

けど―――

 

「例えLBXの性能が高く、強かろうと、操者(プレイヤー)が弱ければ、そんなものなんの意味もない」

 

僕の()にはガーダインとビショップのスキルは高くないと出ている。

だが、逆にあの人は高い。

何を考えているつもりなのか解らないが、もし僕の考えている通りならあの人を止めなければこの戦いは終わらないし、長官や大統領のいるNICSだけでない。

全世界が未曾有の災害に逢うのは確実だ。

 

「言ってくれますね・・・・・・!」

 

僕の発言に怒りを露わにするビショップ。

ゼウスも本来ならもっとパワーが高いはずだ。

なのに。

 

「っ!?互角!?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

出力も速度も攻撃力も、風摩キリトの[デクーOZ]の方が何倍も強かったと感じられる。

キリトのデクーOZの一撃は、一振でウラノスたちを吹き飛ばし、紫雷を帯びた突風の剣風を飛ばしてきた。

だが、そのパーフェクトブレインを搭載したゼウスはただ単に、攻撃力や速度が上昇しただけで、全体的にそこまで性能が上がっているようには僕の眼には視えない。

ポセイドンも、シャルバート中尉のプロト・Uで対策済み。

 

「(いや。もしかしたら僕が異常なのかな?現に兄さんたちはゼウスに苦戦しているし、父さんはゼウスとポセイドンを見て難しい顔をしている)」

 

ふと、兄さんたちを見てそう思ってしまった。

シャルバート中尉と戦って以降、どうも神経が研ぎ澄まされている気がする。

なんて言うか、アレを使っていないのに、対象の速度が遅く感じ取れるのだ。

コントロールポットではあまり感じなかった感覚が今は感じられる。

光翼6翼の内、3翼をポセイドンに向けて放つ。

残りをゼウスに向けて放とうとしたが、兄さんたちの阻害になると思いその案を止める。

今の僕なら兄さんたちの攻撃の合間に射撃することなど造作もない事だとは思うけど・・・・・・どんどん自分が別の何かになっていきそうで少し、怖い。

その感情によりゼウスへの攻撃を止める。

今はポセイドンに集中しなければならない。

性能ではプロト・Uより上だろう。

高次元多関節機構に子機(ビット)

プロト・Uを父さんが換装した僕のウラノスに、プロトシリーズのノウハウを組み込んだ完璧な機体のポセイドン。

プロトシリーズのノウハウを組み込んだ、とは言ってはいたが恐らくポセイドンのベースはプロト・Uに違いない。

あの子機(ビット)がその証だ。

 

「っ!」

 

ポセイドンの3機の青い子機(ビット)から放たれた砲撃を避け、距離を詰める。

ギチギチと互いの剣と槍がぶつかり、互いの子機(ビット)による砲撃戦が周囲で繰り広げられる。

ガンッガンッガンッガンッガンッ!!!

と双剣と槍が立て続けにぶつかる。

高次元多関節機構と3機の子機(ビット)を駆使して攻撃してくるポセイドン。

対するウラノスは高次元多関節機構の動きを予測し、光翼6翼の子機(ビット)で反撃する。

中央舞台のフィールドではゼウスに苦戦するイカロス・ゼロたちが。

イカロス・ゼロたち3機を相手にほぼ有利に戦ってるゼウスを見て、

 

「(兄さんたち相手にやるなぁ)」

 

と少しだけ感心してしまう。

そう思ってると。

 

「っ!」

 

ポセイドンと交戦していた僕のところにゼウスが横槍してきた。

咄嗟に受け流して反撃(カウンター)を食らわせる。

 

「さすがだ」

 

「ガーダイン!」

 

不意打ち気味に攻撃してきたゼウスの攻撃を捌く。

その背後からポセイドンが三叉槍を突き出して、突き刺そうとしてくる。

 

「ちっ!」

 

いきなりの1対2に思わず舌打ちが出る。

ポセイドンだけならまだしも、ゼウスも一緒となると少し苦戦する。

いくら操者(プレイヤー)が弱くても、数が多いと押し切られる可能性があるからだ。

突き刺そうとしてきた三叉槍を、三叉槍の矛と矛の間部分を『ネビュラ』で止め、そのまま前方宙返りでポセイドンの背後に立ち、右蹴りでポセイドンをフィールド中央舞台に落とし、追撃で4翼の子機(ビット)による砲撃を浴びせる。

残りの2翼はゼウスへの牽制に。

 

「っ!」

 

だがゼウスは、さすが完全な機体と称するだけあって素早い速度で二射を避け、右側面から槍で薙ぎ払ってきた。

咄嗟に『ネビュラ』と『アステラ』で受け止めるが、威力が高く、兄さんたちのいるフィールド中央舞台に吹き飛ばされる。

後方宙返りで吹き飛ばされた勢いを殺し、ズサァー、と音を立てて中央舞台の中央部に降り立つ。

 

「レイ!」

 

「大丈夫!」

 

声を掛けてくる兄さんに返事し、ゼウスとポセイドンの追撃に備える。

 

「(せめてポセイドンだけでも・・・・・・)」

 

ポセイドンの子機(ビット)による砲撃を『ネビュラ』で弾き、ゼウスの動きを予測。

 

「ヒロ、合わせろ!」

 

「分かりました!!」

 

近くにいたイカロス・フォースのヒロに言い、左右からゼウスを挟み込む。

イカロス・フォースの突きを避け、死角からのウラノスの『アステラ』による薙ぎを飛び上がって躱す。

躱したゼウス向けて、3翼による一斉砲撃を放つ。

空中では上手く防ぎようがない上、三方向からの砲撃により背部、右脚、左肩に3翼による砲撃が当たる。

 

「なっ!?」

 

ガーダインの余裕綽々だった表情が崩れる。

 

「おのれ!」

 

激情したビショップがポセイドンで攻撃を仕掛けてくるも、回避からの三叉槍を持つ右手を蹴り上げる

 

「なっ!?ですが―――!!」

 

蹴り上げから、ポセイドンの高次元多関節機構によって薙ぎ払ってきた槍を『ネビュラ』で受け止めるが、続けてきたポセイドンの子機(ビット)による砲撃によって『アステラ』が弾かれる。

兄さんのイカロス・ゼロの方に飛ばされる『アステラ』。

イカロス・ゼロは同じくポセイドンの子機(ビット)で攻撃されてる。

 

「兄さん!」

 

「ああ!」

 

すぐに僕の意図を取った兄さんが、イカロス・ゼロの槍をウラノス目掛けて投げつけてきた。

交差するようにそれぞれの武器が飛び、イカロス・ゼロが『アステラ』を。ウラノスがイカロス・ゼロの槍を掴む。

 

「はぁっ!!」

 

「せあっ!!」

 

イカロス・ゼロは右手に『アステラ』。左手に盾。

ウラノスは右手に『ネビュラ』。左手にイカロス・ゼロの槍を構える。

イカロス・ゼロの槍を掴み、ポセイドンの子機(ビット)目掛けて思い切り投槍の如く投げ付ける。

投げた槍は『アステラ』を吹き飛ばした子機(ビット)に一直線に飛び、そのまま子機(ビット)の放った砲撃を切り裂いて子機(ビット)を穿いた。

 

子機(ビット)が!?」

 

動揺するビショップ。

僕はそのまま6翼全部を操作してポセイドンの子機(ビット)を囲いこむ。

 

「ヒロ!ラン!」

 

「はい!」

 

「任せて!」

 

包囲されたポセイドンの子機(ビット)をヒロのイカロス・フォースとランよミネルバ改がそれぞれ破壊する。

 

「っ!バカな・・・・・・!!有り得ません!!」

 

「何が有り得ないんだ?」

 

「っ!?」

 

投槍したイカロス・ゼロの槍を回収して、ポセイドンに肉薄する。

 

「兄さん、ゼウスを30秒で良い。押さえ付けて!」

 

「ああ!」

 

「小癪な真似を・・・・・・っ!!」

 

ポセイドンの三叉槍による薙ぎをイカロス・ゼロの槍で受け止め、『ネビュラ』による斬撃を放つ。

『ネビュラ』による斬撃を強引に三叉槍の持ち手で受け止めるポセイドン。

拮抗状態のところに、2翼の子機(ビット)による射撃がポセイドン目掛けて放たれる。

当たる直前に咄嗟に身を引くポセイドンに、さらに立て続けに2翼の砲撃が放たれ、ポセイドンの視覚を潰す。

その隙にポセイドンへ接近し、『ネビュラ』とイカロス・ゼロの槍で攻撃。

視覚を潰されても、高次元多関節機構で死角はない。

なら、視覚を限定すればいい。

例えどれだけ優れたLBXと言えど、操作するのは生身の人間だ。

昆虫や動物。トンボや鷹と言ったように複眼がある訳でも視覚がこれといって優れている訳でもないのだから。

反応速度や反射速度には何れも限界はある。

それに、1対1ならいざ知れず、混戦にしたのは向こうだ。

まずはポセイドンの槍を、『ネビュラ』で弾き、『アステラ』のお返しに吹き飛ばす。

 

「!!」

 

そのままイカロス・ゼロの槍で空いた胴体を穿ち。

体勢が崩れ、動きが止まった所に―――

 

「必殺ファンクション!!【アタックファンクション!マザーズ・ロザリオ!!】

 

紫光のライトエフェクトを輝かせた『ネビュラ』でポセイドンの胴体に、それぞれ斜めに5連を二回の突き。

クロスのように貫き、最後にクロスの中心点に全力の一撃を突き刺した。

 

「なっ!?」

 

破壊。とまでは行かなかったが、イカロス・ゼロとゼウスの間を吹き飛ばされながら、ポセイドンは天空神殿のステージ壁面にぶつかり蒼白いライトエフェクトを発光させて倒れた。

それと同時に。

 

「っ」

 

メアやルナたちが閉じ込められたキラードロイドのフィールドが消え、メアたちが出てきた。

 

「レーくん、キラードロイドは倒したよ!」

 

少し疲れた表情を浮かべて言うメア。

 

「あとは・・・・・・レイたちが相手しているのだけね」

 

ビショップのポセイドン今撃破した。

キラードロイド2体も、メアとルナたちが討伐してくれた。

これで残るは―――

 

 

『エネルギー充填100%』

 

 

ウィーン、という突然の機械音と、感情のない機械のような男性の声が響き渡った。

 

「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」

 

驚愕する僕らにさらに追い打ちを掛けるように、今度は機械のような女性の声が響く。

 

 

『目標、NICS本部。自転補正プログラム作動』

 

 

「パパ!!」

 

アダムとイブの機械音声と同時に、何かが稼働するような重低音と甲高い篭もったような音が鳴り響く。

どうやらメインレーザー発射準備に入っているようだ。

 

「どうやら私の勝ちのようだな。ついに来たのだ。世界を統べる王の誕生の時が!ふははははっ!はははははははっ!!」

 

勝ちを確信し高笑いをするガーダイン。

 

「ガーダイン・・・・・・っ!!」

 

発射を止めるには武力行使をするしかないが、誰が発射装置を持っているのか不明だし、制圧する前に確実にメインレーザーが撃たれる。

それに、他に武器を持っていないとも限らないから下手に手が出せない。

間に合わない歯痒さに、歯を食いしばる。

そんな僕らを見るやガーダインは

 

「やれ、LEX!」

 

あの人に指示を出した。

だが―――

 

「何をしている?!早く撃つんだ!!LEX、なぜ撃たん?!早く撃て!!」

 

あの人は何かをしたりせず、答えもしなかった。

何もしないあの人に苛立ちを露わにするガーダイン。

兄さんたちも一体どういう事なのかと困惑している。

だが、あの人が発射装置の起動スイッチを握っていることが判り、僕はすぐ理解した。

 

「(そういう事か・・・・・・!)」

 

僕の推測が正しければあの人は・・・・・・

 

「・・・・・・断る」

 

「なにっ!?」

 

僕の推測通り、あの人はガーダインの指示を断った。

それを聞き、僕は視線を鋭くしてあの人を視る。

 

「ガーダイン。言っとくがソイツはLEXじゃない」

 

「な、なに?」

 

ゼウスとの戦闘も一時中断し、僕は左手の人差し指を突き出し、あの人に指差して告げる。

 

「LEXじゃないだと?何を言っている!?」

 

「れ、レイ?」

 

「レーくん?」

 

激昂して問いてくるガーダインに、どういう事?と疑問符を浮かべる兄さんにメアたち。

 

「そうだろ?」

 

「・・・・・・・・・・ふっ」

 

僕の問いにあの人はふっ、と不気味な笑みを浮かべ返す。

 

「そろそろ正体を見せろLEX。いや・・・・・・偽物(フェイカー)!!」

 

敢えてあの人の事を"LEX"と呼ぶ。

 

「何を訳の分からんことを・・・・・・!ビショップ!」

 

「はっ!」

 

苛立ちを隠さずに、ビショップに命令するガーダイン。

ビショップがあの人に近づく。

だが、触れる前にあの人の座っている車椅子がガーダインとビショップの方を向くや、足場らしき所から白い糸のような物が飛び出し、ガーダインとビショップの二人を縛り、その場に倒れさせた。

 

「うっ・・・!」

 

「な、何をする?!」

 

理由(わけ)が判らない、と驚愕の表情をするガーダインとビショップ。

その二人を一瞥するや、あの人は車椅子から立ち上がり、フードを脱ぐや顔や身体中に巻いていた包帯に手を掛けた。

 

「なっ!?」

 

「「「「「「「「「「「!!?」」」」」」」」」」

 

倒れてるガーダインはもちろんのこと、兄さんや父さんたちも包帯を解いていき姿を現すあの人に目を見開く。

やがて全ての包帯を解き、あの人の素顔と姿かたちが顕となる。

 

「なに?!」

 

驚くガーダインを無視して、あの人はカツン、カツン、とヒールの靴音を鳴らして僕らの前に姿を現した。

その人は、紫のジャージのような服に、服の前を開け、日焼けした肌を見せる男性と見まごう程の端正な顔立ちの女性。

 

「れ、LEXじゃない」

 

やはり兄さんは気づいていなかったらしい。

いや、当然か。

あの人・・・・・・彼女のことはLEXが1回だけあの時に言っただけなんだから。

動揺する兄さんたちを他所に、僕は階上に立ち姿を現した彼女を見据え告げる。

 

「ようやく会うことが出来た」

 

と。

 

「レーくん、あの人のこと知ってるの?」

 

僕の言葉にメアが訊ねてくる。

兄さんや父さん。ルナやジンたちの視線が僕に向く中、僕は彼女を見たまま話す。

 

「僕だけじゃなくて、兄さんに父さん。メア、アミ姉、カズ兄、ジンなら知っているはずだよ。さらに言うなら拓也さんも知っているよ」

 

「知っている・・・・・・?」

 

「どういう意味だ・・・・・・?」

 

「私たち・・・・・・いえ、今言ったメンバーが知っているって・・・・・・」

 

僕の言葉に上から兄さん、カズ兄、アミ姉がどういう意味か呟く。

 

「あの時LEXが言っていたでしょ。「今家族がどこにいるのか、生きているのかすら分からない」って」

 

「家族・・・・・・まさか!?」

 

「そうだろ?LEX、檜山蓮の唯一の家族にして血縁者。そして、LEXと同じくこの世界に対して復讐する動機を持つ者。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        檜山真実    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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