〜レイside〜
「そうだろ?LEX、檜山蓮の唯一の家族にして血縁者。そして、LEXと同じくこの世界に対して復讐する動機を持つ者。―――檜山真実」
車椅子から立ち上がり、フードを脱ぎや顔や身体中に巻いていた包帯に手を掛け、姿を現して紫のジャージのような服に、服の前を開け、日焼けした肌を見せる男性と見まごう程の端正な顔立ちの女性にむけて、キッ、と鋭い眼をして告げた。
「檜山・・・・・・」
「真実・・・・・・」
「もしかして・・・・・・」
「LEXの・・・・・・?」
上からアミ姉、カズ兄、メア、兄さんが呟き。
「檜山君の妹・・・・・・」
父さんが檜山真実を見て言う。
「その通り。私は檜山蓮の妹、檜山真実」
そして、父さんの言葉を肯定する檜山真実。
けど、LEXと同じ瞳をした鋭い視線は射貫くように僕を看てる。
その瞳から感じ取れるのは深い憎悪。
直接視たら、視るものによっては怯むどころか恐怖を感じるだろう。
「どういうこと・・・・・・?なんでレーくんはLEXの妹の事を知ってるの?」
「た、確かに。なんで俺たちも知らない事を知ってるんだレイ?!」
メアと兄さんが何故?という疑問を投げ掛けてくる。
メアや兄さんたちの問いに、僕は油断せずにジッと階上に立つ檜山真実を見て言う。
「僕はあの時からずっと。貴女を探していた」
「・・・・・・・・・・」
その言葉に檜山真実は憎悪の宿る瞳で無言で返す。
代わりに。
「あの時から?」
アミ姉が訊いてきた。
アミ姉の問いに僕は静かに頷き返し話した。
「あの戦い。・・・・・・【サターン】での決戦以降だよ」
「サターン・・・・・・まさかLEXとの・・・・・・」
兄さんの言葉に頷く。
「僕はあの人を探すため、ここ1年動いていた」
「で、でも、探していたって・・・・・・」
「レイさんは、見聞を深める為に飛び回っていたんじゃないんですか?」
ランとヒロの疑問は当然だ。
だってこの事は、今いる中だとダッグシャトルにいるオタクロスしか知らないのだから。
「それは違う。ここ1年、僕が海外を飛び回っていた本当の理由は彼女を・・・・・・檜山真実を探していたからだ」
「「「「「「「「っ!!?」」」」」」」」
「僕はLEXの最後の願いのため、檜山真実をどうしても探さなければならなかった。それが、LEXの意思を受け継いだ僕の役割だから」
コレが無ければ、もしかしたら世界を飛び回っていなかったかもしれない。
いや、そもそも日本国内で済めば、世界に出る必要なんて無かったかも。
けど、現実は日本国内だけでは済まなかった。
日本国内だけでは情報が足りないため、僕は世界に飛び出した。
一部の人以外に本当の目的を隠して。
もちろん、世界の見聞を深める為ってのも本当だが、本当の目的は檜山真実を探し出して見つけるため。
「どうして僕が檜山真実を探す事になったのかは、サターンでの決戦後に行われたブルーキャッツでの捜査にまで遡る」
そうして僕は檜山真実を探す事になった理由を話した。
「あの時、ブルーキャッツでの捜査には警察や政府はもちろん、僕も参加していた。いや、参加したと言うより協力を要請されたから参加したの方が正しいか」
あの戦いは詳しくは報道されていないが、LEXが起こそうとしたテロは世界を恐怖に陥れ、捜査は政府主導による政府と警察庁の公安が務めることになった。
そして、捜査によりブルーキャッツの地下にあるアングラビシダスから更に地下に通じる通路が見つかったが、中に入るためには鍵が必要であり下手にこじ開けた場合トラップが起こる可能性もあった為慎重にならざるを得なかった。
幸いにも、その鍵がLEX自身のCCMだった為、LEXのCCMを持つ僕に捜査協力が要請され、公安の紳羅さんたちと捜査することになった。
そして開いた通路の先には、LEXがこれまでに調べた海道義光の事やイノベーターについて書かれた書類などが大量に保管されており、紳羅さんとともにそこの資料整理をしたりしてイノベーターの関係者捕縛の手伝いをしたりした。
さらに、そこにあった遺言書とともに、檜山真実を探して欲しいと書かれた言伝があったのだ。
この事は、僕や紳羅さん、そしてオタクロスとヤマネコら一部のハッカー軍団しか知らない。
拓哉さんにも話そうかと思ったが、拓哉さんは丁度タイニーオービットで忙しくしており、話す時間が無かったのだ。
オタクロスとヤマネコたちハッカー軍団が知っている理由は、檜山真実を探すのを手伝ってもらうためだ。
警察庁の紳羅さんやその部下の一部の警視庁公安部と、オタクロスたちによって、情報を集め檜山真実に似た人物が海外にいることが判明し、その手掛かりを手に僕は世界に飛び出した。
最初はA国に。次に、B国やイタリア、エジプト、中国、オーストラリアなどなど。
何かしらの手掛かりを紳羅さんやオタクロスたちから聞いたり、求めてはそこにいった。
もちろん、自力で情報を集めたりもしたが、やはり僕個人では限度があった為、結局は紳羅さんやオタクロスの伝手で海外にいる情報屋や、警察に手を貸してもらいここ1年探していた。
マダムについてはオタクロスから聞き、クリスさんらICPOは紳羅さんから。
他にもイギリス、スコットランド・ヤードのレオンさんや、中国の会社の社長である
時間を見つけては、その国のLBX大会に飛び入りで参加したり、ストリートファイトで連勝したりして実力を伸ばしていった。
そして、ようやくクリスさんによってA国Lシティで目撃情報と手掛かりがあることを掴んだ矢先に今回のことが起きて、最優先事項がディテクターへの対処に繰り上がり檜山真実を探す事が二番手になった。
だが、それでも情報収集は止めず時間がある時は檜山真実を探していた。
そして今、最悪と言っても過言ではないこの場所で会合することになったのだ。
「――――――これが、僕がここ1年世界を回っていた理由。ようやく見つけたと思ったら・・・・・・・・・・・・・こんな、最悪な場面だけど」
最後の方を自虐気味に呟く。
もっと早く見つけてればこうならなかったかもしれない。
そう思うと胸が痛む。
自分が不甲斐ないのが情けない。
「それが、レイがこの1年世界を回っていた理由・・・・・・」
「全部、LEXの頼みだったのか・・・・・・」
僕の話を聞き終えたアミ姉とカズ兄が唖然としている。
「兄さんたちに話さなかった理由は、これを簡単には話せなかったからだ」
この言伝を見つけたのは、ブルーキャッツ地下のアングラビジダスよりもさらに地下。
秘密の地下室にあった。
話せば、警察庁公安部の紳羅さんの事や、政府について話さなければならない。
兄さんたちは紳羅さんのことを警察官だということは知っているが、所属が警察庁警備局警備企画課だというのは知らない。
世間一般的には警察庁に警備局警備企画課というのは知られてない部署だ。
僕もオタクロスに出会わなければ紳羅さんに出会うこともなかったし、警察庁警備局警備企画課についても知る由もなかった。
僕と紳羅さんの関係は、互いに協力者という関係だが、一応友人という関係にもなっている。
紳羅さんについて知っているのは一部の。拓哉さんやオタクロスだけだ。あ、父さんもか。どういう経緯で知ったのかは知らんが、父さんだし。
まぁ、一応兄さんたちにも警察官だというのは秘密にするよう伝えてあるが。
それは抜きにしても、何より、これは僕がやらなければならない事だと思ったのだ。
LEXからあの話を聞いたからには。
「父さんは知ってた・・・・・・?」
「いや・・・・・・。私も今初めて聞いた。だが、これで納得がいった。何故レイがあの戦い以降動き回るのか。すべては檜山君のためだったのか・・・・・・」
「兄さんと父さんに隠していた事は謝るよ。一応、母さんには話したんだけど、兄さんと父さんには言わないようにお願いしたんだ」
そう、母さんにだけは話してある。
話して、世界を回ることと檜山真実を探すことの許可を貰ったが、その条件として何日かに一度は定期的に連絡をする事で、世界を回る旅に出た。
「ホント大変だったよ。僕個人では限度があるに加えて、権力も皆無だからね」
「「「「「いや、どの口がいうんだそれ」」」」」
「オイコラ」
兄さん、アミ姉、カズ兄、ジェシカ、アスカが何か言ってくる。
「兄さんたち、後でお説教ね」
ジト目で、兄さんたちに言うと。
「「「「「すみませんでした!!それだけは勘弁して下さい!!!」」」」」
何故か土下座するような勢いで謝ってきた。
いや、なんで???
そう思ってると。
「待て。ど、どういう事だ!?LEXではなく、檜山真実だと?一体何がどうなっている!?」
「やはりLEXは死んでいたのか」
今までLEXだと思っていた人物が全く違う人物だということにようやく気づき、床に転がらされてるガーダインとビショップが困惑しながら言う。
ガーダインなんか、僕の話を聞いても尚、動揺が隠せずにいる。
「兄さんは私の
「思い・・・・・・?」
ガーダインとビショップの問いに檜山真実は狂気に満ちた表情を浮かべて返した。
檜山真実の"思いを遂げる"という言葉の意味が分からない。
そんな僕らの意図を察したのか檜山真実は告げた。
「"人は、獣にあらず"」
「「っ!!」」
檜山真実の告げた言葉、それは墜落し、エクリプスへ通じるハープーンへ向かうサターンの通路でLEXが僕と兄さんに告げた、世界の人々へ向けて送るメッセージだった。
メアや父さんたちは僕と兄さんによって知っているが、その言葉を直に聞いたのは僕と兄さんだけ。
このメッセージを知っているのはあの時エクリプスで、話した人たちのみのはず。
だから檜山真実が何処で。どうやってこのメッセージを知ったのか不明だ。
彼女からLEXのあのメッセージに驚愕と疑問を持つ中、檜山真実は続けて言う。
「"人は神にあらず。人が人である為に、今一度考えるのだ。人とは何かを・・・・・・何をするべきかを・・・・・・。賢くなり過ぎた人間は、この世の全てを管理し支配しようとする。まるで神であるかの様に。大きな力を手に入れた人間は弱者を喰らい、どんな残酷な行いも厭わない。まるで獣であるかの様に。進歩し過ぎた人は、人である事を、いつの間にか忘れてしまったんだ。俺は世界の人々に考えさせたかった。人はどうあるべきか・・・・・・"」
檜山真実が言っているのに、LEXの声が脳裏に浮かぶ。
しかし。
「でも私は、世界の人々に考えるチャンスを与えない!」
檜山真実のその一言でLEXの声が消える。
「なに?」
「過ちを犯した者は消す。この手で、世界を浄化する!!それが兄さんの、本当の望みだから!」
「違う!LEXが望んでいたのはそんな事じゃない!!」
檜山真実の言葉を兄さんがすぐに反論する。
LEXの望みが過ちを犯した者を消して、世界を浄化すること?
「オマエに兄さんの何が判る?!」
「その言葉、そっくりそのまま貴女に返すぞ檜山真実!」
「なに?」
「過去しか知らない貴女が今の何を知っている!」
言い争いが僕と檜山真実との間で繰り広げられる。
「僕らと一緒に居た時のLEXを知らずに、過去しか知らない貴女が勝手に今のLEXの望みを語るな!!」
「ふざけるな!!オマエが兄さんの・・・・・・兄さんの何を知っていると言うんだ!!?」
「確かに僕や兄さんは、父さんや拓也さんのようにLEXと長く付き添っていたわけじゃない。けど、これだけは言える。LEXの過去に縋りついて、
檜山真実が知っているのは過去のLEX。
だが、僕らが知っているのは今のLEXだ。
LEXは、離れて以来妹には一度も会っていない、と言っていた。
だから、彼女が今のLEXの思いを知ってるわけがない。
それも、あの時のLEXの思いなど。
「ふっ。だが、パラダイスは既に私の手の中だ。パラダイスさえ手に入れば、お前たちのようなクズは不要だ」
「「うグググッ!!」」
「そこで眠っていろ」
車椅子を操作して恐らく電撃を流したのだろう、ガーダインとビショップの苦悶の声と一緒にビリビリという電撃の音が聞こえる。
少ししてドサッ、という音ともにガーダインとビショップの声が聞こえなくなった。
どうやら気絶したようだ。
気絶したガーダインとビショップを一瞥するや、檜山真実は再度僕らを見ながら、右手にCCMを構えた。
「ここからは私が相手よ」
檜山真実の持つCCMは僕と兄さんにとっては見覚えのあるものだ。
「LEXのCCM・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
そう。
檜山真実の取り出したCCMはLEXと全く同じく
だが、アレはLEXのCCMと同型であって、LEXのCCMではない。
何故なら―――
「・・・・・・・・・・」
「レイ・・・・・・」
心配そうに聞いてくる兄さん。
僕はジッと檜山真実を見て。
「れ、レイさん?」
「ちょっ、ちょっと!?」
自身のCCMの画面を閉じた。
困惑するヒロとラン。
アミ姉や父さんたちも同じだ。
「どういうつもり?潔く負けを認めるのかしら?」
「まさか」
そのまま自身のCCMを終い。
「僕は誰よりも諦めが悪いからね。最後の最後まで抵抗させてもらう。何より、貴女を倒すんじゃない」
「なにを言っているの?」
「貴女を止める」
もう一つのCCMを取り出して構える。
「っ!?そのCCMは・・・・・・!!」
僕の取り出したCCMを見て目を見開く檜山真実。
いや、兄さんやアミ姉、メアやルナたちも同様だ。
「何故・・・・・・・何故お前がそのCCMを持っている!?そのCCMは・・・・・・それは、兄さんの・・・・・・!!」
僕の取り出したCCMは檜山真実の構えるCCMと同じ。
違うのは、コレが正真正銘、LEXの使っていたCCMだという事だ。
「貴女を止める。僕が・・・・・・いや。
LEXのCCMを起動させ、予め設定していた通り[ウラノス]と同期させる。
これでこのCCMでもウラノスを動かせる。
あの人を止めるのは、僕だけじゃない。
LEXの思いが詰まっているコレで止める。
「・・・・・・っ」
檜山真実は憎悪を増した眼で僕を睨むと、CCMを操作する。
檜山真実が操作すると、バトルフィールドにいたガーダインの[ゼウス]が蒼い雷を発し動き出した。
どうやらゼウスのコントロール権限を奪ったようだ。
その間に、兄さんの[イカロス・ゼロ]と武器を交換し、右手に『ネビュラ』。左手に『アステラ』へ武装を元に戻す。
「私の邪魔をするなら誰であろうと・・・・・・消す!!!」
「やれるものならやってみろ。僕らは貴女を止める!!!」
バチバチと激しい目に見えない火花が飛び交い。
「山野レイッ!!」
「檜山真実ッ!!」
僕のウラノスの双剣と、檜山真実のゼウスの槍がフィールド中央でぶつかりあった。