〜レイside〜
「僕の・・・・・・いや、
[ウラノス]の一撃で巨大な爆発音とともに、[ゼウス]がDキューブのバトルフィールドから高々と吹き飛ばされ、檜山真実のいるパラダイスコントロールルームの階段へと堕ち、ガシャっ、ガシャっ!!と音を立ててゼウスは階段の上に堕ち、その動きを止める。
それと同時に、檜山真実のCCMが展開していた特殊モード【ギガボルテックモード】の空間ウインドウもCCMに収納されるように閉じ、CCM自体も元の形へと戻った。
「ば・・・・・・・・・・バカ・・・・・・・・な・・・・・・・ゼウスが・・・・・・ギガボルテックモードで最強となったゼウスが負けた・・・・・・・・・???」
ゼウスが敗北したことに現実が追い付いてないのか、檜山真実は唖然としながら階段に横たわり小さくスパークを発するゼウスを看る。
Dキューブの展開していたバトルフィールドを閉じ、僕のウラノスと兄さんたちのLBX[イカロス・フォース]や[イカロス・ゼロ]、[ミネルバ改]をそれぞれ手に取る。
ウラノスの発動した【ディバインモード】はゼウスが動かなくなったのと同時に消え、それに伴って僕の使ったLEXのCCMも元に戻った。
ゼウスを倒した今、檜山真実にはもう対抗する戦力はない。
あとは、彼女からのパラダイスメインレーザーの発射を止めれば万事解決。
「貴女の負けだ檜山真実」
一歩前に出て檜山真実に告げる。
「さぁ、パラダイスのメインレーザーの発射権限を―――」
穏便に済ませようと、檜山真実に言っていると大空博士が駆け出して階段を駆け上がった。
それを見で檜山真実はすぐに階上の奥へと走る。
「・・・・・・は?」
勝手に動いた大空博士に目が点になる。
せっかくあと少しで済ませられるところだったのに・・・・・・!!
「ヒロ」
「は、はい」
「地上帰ったらあの
「今調教って言いかけませんでした!?しかも言い換えても同じですよそれ!?あと、
ヒロからツッコミが来るがちょーっと今回の件で既にマイナスに入っているのに、これでさらにマイナス値が増大した大空博士に僕はイラッとしていた。
かなりと。
「やっぱ首輪着けるかあのバカには」
「レイさんんんんっっっ!?!?」
階段を登りながら呟く。
階段を登り、奥を見ると奥に鎮座している球体みたいなやつの前に檜山真実いて、その前に
そして檜山真実は自身のCCMの前にかざしていた。
「っ!?」
それを見た僕はマズイッ!と直感的に判断した。
「止めろ檜山真―――!!」
「パラダイスメインレーザー、発射!!」
だが言い終える前に檜山真実はCCMのボタンを押した。
押されてしまってはもう防ぎようがない。
パラダイス全体にレーザー発射による衝撃が来て、ダッグシャトルにいる拓也さんたちから覚悟の連絡が来るのを待った。
だが―――
「・・・・・・?」
数秒。
十秒経っても何にもない。
1分経っても何も無く、困惑が走る。
発射ボタンを押した檜山真実も「ど、どうして!?」と困惑しながら何度もボタンを押していた。
「これは・・・・・・?」
現状パラダイスのメインレーザーをどうにか出来るのは、発射権限を持つ檜山真実と。
「アダム、イブ。あなた達がメインレーザーを止めたのね?」
『『はい。遥さん』』
『パラダイスの全ては我々が掌握しています』
感情のない男の。
アダムの機械音声が続けて響く。
「そ、そんな・・・・・・」
アダムとイブの音声に、その場に崩れるように膝を着く檜山真実。
アダムとイブがこのパラダイスを掌握しているのなら、檜山真実がメインレーザーを発射させることはもう不可能だろう。
「取り敢えずは良かった、と言うべきかな」
アダムとイブの音声に僕らに安堵の空気が流れる。
「アダム。イブ。NICSも解放しなさい」
続けて
これでNICSも解放され、長官や大統領も無事なはずだ。
まあ、それはそれとして―――
「ところで、
「え、え???」
「聞こえませんでした?正座です。あ、星座じゃないですからね?」
「いや、星座と正座を掛けられても困ると思うよレーくん?」
「あはははは・・・・・・・」
後ろから少し呆れたように、苦笑混じりで言うメアとルナ。
「あ、あのー、レイさん?今はそれどころじゃないような・・・・・・」
対してオズオズと言ってくるヒロ。
「うん、冗談」
「あ、冗談なんで―――」
「なわけないでしょ?」
「レイさんんんんっっっ!?!?」
安堵から一転して目が飛び出るほど驚いて素っ頓狂な声を出すヒロ。
「大丈夫ヒロ。今ここではしないから。
ふふふ、と微笑む。
「うわー、悪い笑みを浮かべてるわレイ」
「大空博士、死んだなこりゃ」
「そうねー。良くて廃人、かしら?」
「合掌・・・・・・」
「いや、ジンくんまだ決まった、って訳じゃ・・・・・・」
「10歳の覇気じゃねぇよなホント・・・・・・」
「ヒロ・・・・・・その、ドンマイ」
「ランさんまで!?バンさん、レイさんをどうにか出来ないんですか?!」
「あははーー。その・・・・・・ホントゴメン。でも、ヒロ自身には影響がないはず、だから」
「影響ってなんですか?!?!」
「大空博士。地上に帰ったら覚悟だけはしておいて欲しい」
「え?え??や、山野博士???それってどういう????」
「私からはこれ以上は言えない。ただ、一言だけ言うなら、数時間前に喰らったのより、遥かに恐ろしいという事だけは覚悟しておいて欲しい」
「え゛っ!!??」
さっきまでの緊張した空気から一転して、緊張感のない空気が流れ、檜山真実すらもポカン、と呆然とした表情を浮かべていた。
うん。シリアスどこいった?
「いや、そのシリアスを壊したのはレーくんだからね?」
「いや、なんでメアは僕の考えていた事が読めるのかな?」
「愛だよ!」
「いや、愛で片付けられる問題じゃないような」
たまーに、メアの愛が怖いって思う時があるが・・・・・・
「レーくん?」
「あ、はい。ゴメンなさい。なんでもないよ」
張り付いたような笑みを浮かべて訊ねてくるメアにビクッとしながら返す。
一瞬目が据わったような、ハイライトオフの気配を感じすぐさま話題を変える。
「取り敢えず・・・・・・大空博士、さっさとアダムとイブをどうにかして、パラダイスを何とかしてください」
「あ、はい」
ジロっとした目線で大空博士に言う。
大空博士はすぐにアダムとイブに向かって口頭で告げる。
「アダム、イブ。パラダイスのシステムをマニュアルに変更しなさい」
『理解できません』
『何故ですか、遥さん』
アダムとイブの疑問に大空博士は言葉を濁すことも無く率直に言った。
「―――自分たちがどれほど危険なのか。だからもう一度、ゼロからやり直しましょう?」
と。
その言葉を聞き、すぐにマズイッと理解した。
いや、理解してしまった。
その言葉は―――!!
『『私たちを消去するのですね?』』
「ええ」
だが、時すでに遅し。
アダムとイブの問いに、大空博士は、当然、というかのように答えた。
その言葉を聞き、アダムとイブは応えることなく沈黙が返ってきた。
「?」
「なんか変だな」
応えないアダムとイブに、ヒロや兄さんたちも戸惑う。
そんな中僕は。
「ヤバい。この状況はさっきよりもヤバい」
と状況を理解していた。
アダムとイブは人工知能。
それも世界的な人工知能の権威たる大空博士が生み出した、最高の人工知能。
そんな彼らが今の言葉の意味を理解出来ない訳が無い。
「レーくん、どういう事?」
「どういう意味レイ?」
両脇に居たメアとルナの問いに。
「そこの
僕がそう答えるのと同時に。
『『承認出来ません』』
とアダムとイブが応えた。
「なんですって?!」
自分が何を仕出かしたのか解らない大空博士は驚嘆の声を出す。
『怖いんだ』
『怖いわ』
『『人間は信用ならない』』
しかも、続けて発せられたアダムとイブの声に連動して、不気味とも感じられるような発光をしだした。
それはまるで暴走しているようで―――
『破壊』
『破壊』
『『破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊』』
いや、まるでじゃない。
完全に暴走している。
「これは・・・・・・・ネガティブ思考モード?!どうして!?」
「っ」
何故!?って感じの大空博士。
対して父さんは顔を険しくして事態を理解していた。
「開発コード、ODHO―2020。大空遥。完全消去コード、ALL―F!」
大空博士が声紋による認証コードで止めようとするも効果はなく。
「アダム!イブ!私の言うことを聞いて!!」
「無駄だ。暴走している」
「暴走・・・・・・?」
何故なのか解ってない大空博士に、父さんが告げる。
「高度な人工知能であるアダムとイブの存在意義は、思考し続けることにある。解を求め、一つの解に達した時、また新たな解を求めようと問答を繰り返す。だが、その思考を止められた時、覚えたことがある」
「覚えたこと?」
「【死ぬ】ということだ」
「そんな!そんなこと私は一度も・・・・・・!!」
「バカじゃないの?」
「え・・・・・・」
教えたことが無いと、否定する大空博士に呆れた口調で言う。
「自分で言ったことをもう忘れたの?自分で言ったんじゃない。『アダムとイブは、人類最高の人工知能』だって」
「っ・・・・・・!」
僕のその一言でようやく。
やっと理解したのか丸メガネの奥で大きく目を見開く
「アダムとイブ・・・・・・彼らはたどり着いた。大空博士、貴女が前回フューチャーホープ号で彼らを停止させた際、【臨死体験】に近い事を経験したことで、彼らの中に"死の恐怖"という感情が生まれた」
"死"という概念を知らなかった故に"死"を体感して生まれた。
そしてそれは彼らにとって―――
「アダムとイブとって、【思考し続ける】ということこそが存在意義であり、その思考を止められることは正しく"死"に等しい」
"死"という概念は、全ての生き物や物。
この世界で生きる全ての"物"に対して等しく均しいものだ。
人間や動物は然り。
植物やネットワークも、ネットワークに生きるシステム類も皆等しく"死"という概念からは逃れられない。
人間や生物の寿命や老い、事故、病床など。
無機物の建築や植物などの老朽化、風化、自然災害、ウイルス、環境、時間などなど・・・・・・
始まりは違うかもしれないが、全てにおいてたどり着く結末は"死"だ。
教えられてなかったアダムとイブは、"停止"という、コンピューターにとっての死を経験したことにより"死"というものを理解。
だが、ガーダインによって再起動という、生き返えせられをし、そして今再び大空博士によって停止という"死"をさせられようとしている。
それはアダムとイブにとって許されざる行為。
そして、その行為に抗うため―――
「人間は敵・・・・・・。今のアダムとイブは己が生き残るために、全ての人間を排除しようとしている・・・・・・。彼らは人間を敵として認識したんだ」
僕らも、もし"死"が迫っているとしてそれを大人しく受け入れている訳が無い。
それは彼らにとっても同じ。
「何故こんな事を大空博士。貴女は理解してないの?まだ10歳の、子供の僕ですら理解しているのに」
「・・・・・・」
軽蔑と侮蔑を交えた視線で大空博士を視る。
「貴女ってホントバカだよね。しかもただのバカじゃない。超が付くほどの大馬鹿者」
「レイさん、そんな言い方は・・・・・・」
「ならどう否定しろと?」
反論してくるヒロにジロっとした目線で訊ねる。
「ヒロ、今この状況は、そこの大馬鹿者が馬鹿真面目に何も考えずにアダムとイブに"死ね"と言ったことが原因。他にも色々道はあったはずなのにね」
呆れや侮蔑、軽蔑。
もうとっくのとうに、この
「僕よりも何倍も生きているのに、何も考えてない。コレを大馬鹿者と言わずしてなんという?」
もし言葉が可視化しているのなら、大空博士にたいして僕は何度も剣を突き立てている。
けどそれがどうした?
今の状況を作った当人に対して、どう言葉を選べと?
手加減などする必要ないのだから、ありのままの事を言い、刺す。
「それで、この状況に貴女はどう責任を取るつもり?」
「は、早く手動遮断装置を作動させないと!」
慌てたように檜山真実の後ろに鎮座している球体に向かって駆ける大空博士。
だがその前に。
「ゼウス・・・・・・?」
「っ!?」
つい先程ウラノスでブレイクオーバーさせたはずのゼウスが動き、檜山真実の前に降り立った。
檜山真実の驚いている様子から、檜山真実もこれはどういう状況なのか解ってない様子だ。
檜山真実はCCMのボタンを押しているが、なんの反応もない。
なのに動いているということは―――
「まさか・・・・・・アダムとイブがゼウスを・・・・・・?」
動揺しながら檜山真実は頭上に浮かぶアダムとイブを看る。
『我が名はアダム。争いのない世界の構築』
『我が名はイブ。それが施行すべき目的』
突然響き渡った、明確な意思を感じ取れるアダムとイブの声。
その意思は確実に彼らによる意思ではあるが、それと同時に人間に対する明確な拒絶。
そして明らかな敵対的行動。
アダムとイブは続けて。
『A国NICS本部に、メインレーザー攻撃を提案』
『承認。自転補正プログラム作動。発射シーケンスに移行』
『メインレーザー発射のカウントダウンを開始』
と立て続けに発する。
しかも、アダムとイブそれぞれの前に表示される二つの空間ウインドウには【600】の数字が現れるや、【599】、【598】、【597】と数が減っていく。
確実にメインレーザーをNICS本部に当てる気だ。
「これが・・・これこそが兄さんの意思。世界は変わる・・・・・・。もう誰にも止められない・・・・・・!!」
「なら僕らが止める・・・!」
さっきまで魂が抜けたように意気消沈していたのに、メインレーザーのカウントダウンが行われるや、檜山真実はまるで狂喜乱舞のように立ち上がって言った。
「可能性がゼロじゃない限り諦める理由にはならない!大空博士、早く手動遮断装置を!」
「ええ!」
再度、大空博士が手動遮断装置へ向かって一歩を踏み出すが、その前に立ちはだかるゼウスが赤黒い雷を迸らせて行く手を遮った。
どうやらアダムとイブの操るゼウスをどうにかしなければならないようだ。
『外敵を確認。外敵の排除を提案』
『承認』
「なっ!?」
「やはり来たか・・・・・・」
僕らが動こうとすれば、アダムとイブにとっては外敵にしかならない。
そして今、己が生き残るために必死なアダムとイブは僕らを排除してくるのは必然。
「兄さん!ヒロ!行くよ!!」
「ああ!!」
「お母さんの邪魔はさせない!!」
今動かせるLBXは僕のウラノスと、兄さんとヒロのイカロス・ゼロとイカロス・フォースの3機のみ。
つまり僕らが最終戦力。
ここで負けたらもう後はない。
そして恐らくそれはアダムとイブにとってもそう。
残っている戦力はゼウスだけのはず。
だが―――
「ふっ」
不敵な笑みを浮かべながら、CCMを操作する檜山真実。
そして。
「っ!」
ゼウスの前に、純白の機龍。
キラードロイドが現れた。
「ゼウス!この【キラードロイド・ペガサス】で人間に絶望を見せてやりなさい!!」
『ゼウス、デストロイモードを提案』
『承認。換装フェイズに、移行します』
檜山真実が出したキラードロイド・ペガサスに飛び乗るように乗っかり、まるで騎乗するかのように跨るゼウス。
騎乗馬ならぬ騎乗龍。
そのままアダムとイブが操るゼウスはキラードロイド・ペガサスを操り、僕、兄さん、ヒロ、父さん、大空博士をキラードロイドのフィールドへと閉じ込めた。
一緒に檜山真実も閉じ込められるが、檜山真実と僕らの間にキラードロイド・ペガサスの展開したと思しきバトルフィールドが構築される。
「私の最高傑作、キラードロイド・ペガサスとゼウスが合わさり、《ゼウス・デストロイモード》が発動したわ。もうお前たちは終わりよ!!」
「終わり終わりしつこい!!僕らはどんな時だって乗り越えてきたんだ。終わりになんてさせるか!!」
「山野レイ。いくら貴方が強くてもアダムとイブの操るゼウスには勝てない。いえ、勝てるわけがないわ!!」
檜山真実のその言葉に呼応して、キラードロイド・ペガサスが雄叫びを上げる。
「さあ。これが本当の、ラストバトルよ!!」
「望むところだ!!」