〜レイside〜
囚われている父さんを助けるため、海道邸に侵入した僕ら。
障害が少なからずあったが突破し、目的の部屋にたどり着いた。しかし、部屋の中には兄さんたちと海道義光が。
本来居ないはずの海道義光の巧妙な策略によりLEXや拓也さん。郷田さんたちも捕まった。
そして―――
「大きくなったな、バン。レイ」
「父さん・・・・・・!」
「父・・・さん・・・・・・!!」
僕と兄さんは五年前連れ去られた父さんと再会を果たした。
五年ぶりに会った父さんに僕は何も言えない。言いたいことがたくさん。山ほどあるのに、言葉にならない。
けど、今は父さんが生きていて。また会うことが出来て良かった。
望んだ再会の形ではなかったけど。
「山野博士、申し訳ありません。私が着いていながらこのような事態に・・・・・・!」
父さんにLEXが申し訳なさそうに謝る。
LEXのせいじゃない。全ては父さんを誘拐した海道義光のせいだ。
「言ったはずだ。私のことは放っておけと」
「しかし!」
父さんの言葉に僕は複雑な気持ちだ。
父さんは自分のことより、LEXたちのことを案じて言ったのだとわかったから。
「ふふふっ。アキレスが手に入った以上、キミたちに用はない。この世から永久に退場してもらおう」
『『『『『っ!!!』』』』』
海道義光のなんの躊躇いもなく告げる言葉に僕は咄嗟にメアとキヨカを守る。
「ちょっと・・・・・・冗談よね・・・・・・?」
「いや、冗談とかじゃないようだぜ」
「海道・・・・・・っ!!」
憎しみを込めた視線でLEXが言う。
僕もLEXと同様、鋭い睨みを送る。
海道義光はそれを受けても尚、余裕の崩れない不敵な笑みを浮かべる。
「(このままじゃマズイ!この状況を打破するには・・・・・・!)」
黒服に囲まれながら僕は思考する。
打破するには―――
「「「―――」」」
僕は拓也さんと郷田さんに軽く目配せを気づかれないようにして。
「メア、キヨカ。二人とも耳を塞いで」
「「―――」」
小さな声で近くにいる二人に告げる。
「連れて行け」
海道義光が告げると黒服が手に掛けてこようとする。
その瞬間に。
「―――あああぁぁぁぁーーーーーっ!!!!!!!」
『『『『『っ!!!』』』』』
その場で思いっきり叫ぶ。
至近距離にいた黒服は堪らず耳を押さえてその場で蹲った。
「「―――!」」
注目が僕に集まりスキが生まれた瞬間、郷田さんが自身のすぐそばにいた黒服をタックルして倒し、拓也さんがその場から駆け出し黒服を乗り越え、海道義光へ迫り靴底に隠していた小型の
「ぬっ!?」
「!海道先生!」
「動くなっ!」
海道義光に駆け寄ろうとした黒服に拓也さんが脅す。
僕はその隙に死角からある人物の背後に回る。
「海道がどうなってもいいのか?!もっと離れろ!」
形勢逆転に兄さんたちは歓喜する。
黒服たちは歯痒さげに兄さんたちから離れる。
「バン!CCMを!」
LEXが兄さんたちにCCMを回収するように指示を出す。
拓也さんに拘束されている海道義光は慌てることなく余裕の表情だ。
「ふふっ。それで勝ったつもりかね?」
「なに?―――っ!」
「―――動かないで!そのナイフを下ろしなさい!」
拓也さんの背後に、いつの間にか小型光学銃を構えた里奈さんがいたのだ。そして里奈さんの構える銃の銃口は拓也さんへと向けられている。
まさかの展開に拓也さんもLEXも。その場にいた僕の仲間全員驚愕する。
しかし―――
「―――里奈さん、銃口を下ろして」
「っ!?」
死角から回り込み、里奈さんの背後を取った僕は里奈さんの背中にポッケに入れていた、細長い長方形のものを突き付ける。
背後にいるためこれが何なのかは気づかれてない。
ナイフ。もしくは銃口だと、心理的に錯覚するだろう。
僕の予想外の行動に里奈さんも、その場にいる全員が驚く。だが、父さんだけは違ったけど。
「聞こえなかった?里奈さん、拓也さんに向けてる銃口を今すぐ下ろして!」
「―――っ!」
「レイ、何故お前がそこに?!」
「里奈さんが裏切り者だってことは予想していたから」
「なに!?里奈、どういうことだ!」
「っく・・・・・・!」
「里奈。レイの言うことは本当なのか!?」
拓也さんとLEXは里奈さんに問う。昔からの仲間が裏切ったことに頭が追いつかないのだろう。
僕は里奈さんの背後にいながら、みんなに聞こえるように言う。
「思えば僕らのこの作戦決行は全て、里奈さんが持ってきた海道邸の設計図と、海道義光が政府の会合で留守にするという情報から始まった」
「確かに・・・・・・そうだな」
「え、ええ。私たちが手を拱いてる所に里奈さんが丁度よく来て情報を教えてくれたわ」
僕の言葉に郷田さんと、アミ姉が答える。
「最初は僕も里奈さんが持ってきた情報を信じたよ。けど、この部屋に入って、海道義光が僕らの動きを察知していることから分かった。僕らは、海道義光の掌の上で踊らされていたって・・・・・・!」
僕は憎々しげに海道義光を睨む。
「里奈さん、答えて。なんで僕らを裏切ったの?なんで海道義光に手を貸したの!?」
里奈さんに詰問するように問う。
ここからじゃ里奈さんの表情は見えない。けど、感じから問答している感じがする。
僕の問いに答えたのは―――
「それは私が答えよう」
「っ!海道義光!」
拓也さんに捕まっている海道義光だった。
「彼女にはどうしても必要なものがあるのだよ」
「必要なもの?」
「そう。神谷重工・・・・・・いや、我々イノベーターの持つオプティマの技術がね」
「オプティマ?」
「オプティマ・・・・・・?それって確か・・・・・・」
海道義光の言った、オプティマという単語を思い出す。
「(確かオプティマは神谷重工がアンドロイド用に作った技術のはず。そしてオプティマは医療現場でも活躍出来ると言われてるらしいけど未だにその認可はされてないって以前調べたな)」
オプティマに関してはそのくらいだ。
だけど、何故今その単語が・・・・・・。
「っ!そうか、そういう事か!」
海道義光の言葉に拓也さんは察したみたいだけど・・・・・・。
「オプティマが必要だったのか、君の
「妹?」
拓也さんの言葉に僕は一瞬思考が止まる。
兄さんたちも理解出来てないようだ。
「どういうこと?」
「聞いたことはないか?オプティマという臓器技術のことを。神谷重工が、アンドロイド用に研究し得た技術、オプティマは応用すれば難病に苦しむ多くの人の命を救える夢の技術だ。・・・・・・だが、未だ医療現場で使われたことは無い。金の成る木を独占するため海道が、政府の認可を止めているからだ!」
「そんな!」
「ひでぇじゃねぇか!」
「里奈さん、それで・・・・・・!」
「私は、妹を助けたかった。あの子はずっと苦しんでいたから。どんなに苦しくても、私を心配させまいと明るく振舞って・・・・・・。オプティマを使えば妹は・・・・・・ルナは助かる!!ルナにはオプティマが必要なのよ!」
「「「なっ!!!!?」」」
里奈さんの今言った言葉に僕、メア、キヨカは目を見開いた。
「里奈さん、今妹をルナって言った・・・・・・?」
「ええ」
里奈さんの苗字は【石森】。そしてルナの苗字も同じ【石森】だ。
最初聞いた時単なる偶然かなって思った。少しルナと雰囲気が似ていたけど、気の所為だと思ってたけど今僕の考えがひとつに繋がった。それはメアとキヨカもで―――
「まさか・・・・・・」
「ルナちゃんのお姉ちゃんって里奈さんのことなの・・・・・・?」
「(そう言えば兄さんがアタッシュケースを受け取った数日後、ルナのお見舞いに行った時、ルナからお姉さんが来たって言ってた。その事を繋げると・・・・・・)」
僕は思考が止まりかける。
「里奈さんの妹のルナって、もしかして青髪で三つ編みで月のヘアピンを着けてない?」
「!何でそのことを!?」
ようやく全てが繋がった。
「僕とメア、キヨカは、ルナの・・・・・・クラスメイトで、大切な友達だ・・・・・・!!」
里奈さんがどういう覚悟で裏切ったのか分かってしまった僕は言葉を途切れ途切れに話す。
「っ!!まさかルナが言っていた友達って・・・・・・!」
「海道義光・・・・・・!貴様!」
許せなかった。
ルナを助ける技術がすぐ目の前にあるのに、それを止めている存在に。オプティマ。それを使えばルナは元気になるのに!
その気持ちは僕だけじゃなく、メアとキヨカもだ。二人とも泣きそうで、憤怒の表情を出してる。
「貴方のせいで、ルナちゃんは・・・・・・!!」
「許せない・・・・・・!絶対に・・・・・・!!」
二人とも今にも飛び掛りそうな感じだ。
僕ももしナイフが手元にあったら、すぐに海道義光を刺していただろう。それほどまでに怒っていた。けど―――
「わかったかね?彼女は君たちではなく、妹を取ったのだ」
僕らよりもゆるせないのは里奈さんに決まってる。
そんな、二者択一の天秤に、唯一の肉親にして自分の妹を取らない姉がいるわけない!
それが分かってしまうから、僕は。いや、僕らはこれ以上里奈さんを糾弾することが出来ない。出来るはずがない。すべては、海道義光が原因なのだから。
「海道・・・・・・!」
「汚ねえぞ!人の弱みに付け込みやがって!」
「命を救う技術を、お金のために独り占めするなんて許せない!」
「そんな選択されたら、誰でも家族を優先するに決まってる!」
僕らの仲間は全員、海道義光に対して怒っていた。
その時、入ってきた大扉が少し開いていて、その隙間から海道ジンの姿が見えた。
海道ジンの表情は驚きと悲しみ。そんな雰囲気を感じさせた。自分の祖父がそんなことをしていたのが言葉に出ないのだろう。
「わかったかね?無駄な抵抗は諦めたまえ」
「っ・・・・・・くっ」
僕は里奈さんの背後から離れ、光学刃を下ろし海道義光から離れた拓也さんとともにLEXたちの元に向かう。
この状況では僕も拓也さんも従うしかない。
LEXたちの元に戻ると。
「―――?」
拓也さんの胸ポケットに入れている端末からバイブレーション音が鳴る。
「出ないのかね?出たまえ」
「・・・・・・・・・・」
海道義光に促され電話に出る拓也さん。
そして、その通話の内容に僕らは驚愕する。何故なら、シーカー本部がイノベーターに制圧されたと速報が齎されたから。
幸いにもシーカーのメンバーは事前に警告らしきものを受け取ったため、全員無事らしい。だが、シーカーの機能は喪われた。
さらに、イノベーターの内部に潜入していたシーカーの仲間も排除されたらしい。排除ということは、つまり―――。
「山野博士、これで貴方の希望は潰えたわけだ。貴方にはゆっくりと。絶望を味わいながら死んでもらう」
「父さん!!」
「父さん・・・・・・!!」
兄さんと僕は父さんに呼び掛ける。
「ふっ。それはどうかな?」
「ん?今更何を強がる」
不敵な笑みを作り浮べた父さん。
海道義光は理解不能とでも言うような感じだ。
「残念だが、お前の欲しがっているエターナルサイクラーの設計図は、アキレスを奪っただけでは手に入らない」
「なんだと?」
「どういうことですか、博士」
「設計図を開くには、データを解読するためのコードが必要なんだ」
「解読するためのコード・・・・・・?」
「解読コードのないプラチナカプセルなど、鍵を失くした金庫と同じ」
「んっ!?」
言われてみればそうだった。
父さんの言葉に僕らは重要なことを見落としていた。
エターナルサイクラーという超がいくつも付くだろうデータにロックがされていないわけない。寧ろ、デスロックシステムなんてものがあるのだ。普通と同じで、解読プログラムがなければ意味が無い。
そのことを僕らは見落としていた。
「なるほど、そういう事か。で、その解読コードはどこにある」
「・・・・・・・・・・」
「答えてもらおう!息子たちがどうなっても構わないのかね?」
「うわぁっ!」
「兄さん!くっ、このっ・・・・・・!!」
身動きが取れないよう黒服に掴まれる僕と兄さん。
足掻いて抜け出そうとするが、大人と子供では体格に違いがありすぎて上手く抜け出せない。
「さあ」
「・・・・・・解読コードは、世界で最も安全な場所にある」
「なにっ!?」
「世界で最も安全な場所。LBX世界大会【アルテミス】だ」
『『『『『っ!!!?』』』』』
「あ、アルテミス・・・・・・?」
父さんの告げた場所にその場に衝撃が走る。
誰も予想していなかった場所に解読コードがあるのだ。 むしろ何故アルテミスに解読コードがあるのか疑問も浮かぶ。
「解読コードがアルテミスにあるだと?どういうことだ!?」
「メタナスGXは知っているか?」
「メタナス・・・GX?」
父さんの質問に対する回答はカズ兄がした。
「LBXの世界トップメーカー。クリスターイングラム社が開発した、超高性能CPUのことだ」
「ほう。よく知っているな。さすがは檜山くんたちが見込んだだけのことはある」
「そのメタナスGXが解読コードとなんの関係がある!」
確かに。メタナスGXと解読コード。なんの関係もないように見えるけど・・・・・・
僕らの疑問に父さんはゆっくりと歩きながら語る。
「ふっ。クリスターイングラム社が開発した、メタナスGXはゼタフロップス級の高速演算子をコプロセッサ化し、超並列演算を可能にした夢のCPUだ。しかも、製造される数が極端に少ない事から希少価値も高く、価格を付ければ一つ数億クレジットはすると言われている。そんなLBXプレイヤー垂涎の的。LBXをやる者なら誰もが欲しがる新型AI回路、メタナスGXが今年のアルテミスの優勝賞品になっているんだ」
「アルテミスの優勝賞品に・・・・・・!」
「まさか!解読コードは!」
「その通り。解読コードは、アルテミスの優勝賞品。メタナスGXの中にある!」
「えっ!!」
「ぬっ!!」
父さんの発言に僕らだけでなく海道義光も驚愕する。
まさかそんな所に解読コードがあろうとは。
「そして、そのメタナスGXはLBXの管理組織であるアルテミスの主催団体であるオメガダインにより厳重に管理され、どこに保管されているのかさえ、全く公表されていない。つまり、世界で最も安全な場所。海道義光、いくらお前でも手が出せないというわけだ」
「ふんっ!そんな話が信じられるかっ!そもそもどうすれば解読コードをメタナスGXに入れられるというのだ!」
それに関してはごもっともである。
というか、一体どうやったの父さん?
父さんの語りに耳を貸す黒服からの拘束から抜け出しそう思う。
「製造過程でAI回路にプリントされるよう仕組んだんだよ。クリスターイングラム社のネットワークに侵入してね」
「っ!!」
父さんの、なんとでもない。とでも言いたげな発言に僕は、は?となる。
いや、クリスターイングラム社のネットワークに侵入って・・・・・・。しかも、製造過程でAI回路に解読コードをプリントさせるよう仕込むとか・・・・・・父さんチートスペック過ぎませんか?
思わずそうツッコミを入れてしまうのは間違ってないと思う。声には出さないけど!
「つまり、解読コードを手に入れるにはアルテミスで優勝するしかないってことか!」
「ふざけた真似を。だが、それさえ分かれば十分だ。我々の力をもってすれば、アルテミスの優勝など容易いこと。そして、君たちにはここで死んでもらう。これ以上、小細工が出来ないようにな!」
『『『『っ!!』』』』
「・・・・・・ふっ」
海道義光の言葉に再び身構える僕ら。対して父さんは小さくほくそ笑み、掛けていた眼鏡を外し左の外ぶちをなにか弄り始めた。
「ん?」
「???」
「父さん?」
父さんのその行動に困惑する僕ら。
「なにをしている!?」
「―――こうするのさ!」
父さんが眼鏡から何かしたと同時に天井が爆発し、天井の一部が崩れ落ちて海道義光と近くにいた里奈さんを襲った。
「ぬおっ!?」
「海道先生!!」
「うおっ!!」
その爆発はそれだけでなく、立て続けに数回おき。僕らに被害は出さずに、黒服たちを襲った。
爆発により照明が落ち暗くなる。煙が立ち込めるなか様子を見ると、海道義光や黒服は重体って程ではないが、ダメージは大きそうだ。
「何が起こったんだ・・・・・・?」
「ば、爆発?」
「みんな大丈夫か!」
「っ!兄さん!アキレスを!」
「―――!アキレス!」
僕らは急いでそれぞれのLBXを回収する。
CCMも回収しようとするが。
「っ!海道ジン・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
部屋の中に入ってきた海道ジンが僕らのCCMを投げ渡してきた。
「早く行け」
僕らはその場から逃げ始めた。
「っ!里奈ぁっ!!」
「っ!?里奈さん!!」
拓也さんの声がした方を見ると、里奈さんが僕らとは反対側の方へと走っていくのが見えた。
「メア!キヨカ!先に行って!!」
「う、うん!」
「わかったわ!」
メアとキヨカを郷田さんたちとともに先に行かせ。
「父さん!」
「父さんも一緒に逃げよう!!早く!!」
僕と兄さんは落ちてきた岩を挟んで父さんと話す。
「二人とも、私のことは心配するな。バン、アルテミスでは必ず優勝しろ。いいな」
「・・・・・・ああ!」
「レイ、バンを頼むぞ」
「と、父さん・・・・・・!」
そう言うと背を向けて走る父さん。
「ま、待って!父さん!!」
まだ話したいことがたくさん。山ほどあるのに!
僕は父さんの後を追いかけようとする。
けど。
「バン!レイ!」
「逃げるぞ!二人とも!!」
「レイ!!」
兄さんたちに呼び止められ、歩みを止めた。
ほんの数秒、父さんの跡を見て。
「っ!!行こう!!」
僕はLEXたちとともに海道邸から脱出した。
こうして僕は5年ぶりに父さんと再会を果たした。
言葉を交わしたのはほんの少しだけだったけど。
けど、父さんが生きていて、元気なのが確認できて良かった。
イノベーターと戦う理由が父さんを助けるための他に、ルナを。大切な友達を救うためにも出来たことを胸に秘めて―――