〜レイside〜
「―――必殺ファンクション!【アタックファンクション!《バーチカル・スクエア》!!】
「なにィっ!?」
クロノスの放った四連撃の斬撃が相手のLBX、[ズール]にヒットしズールをブレイクオーバーさせる。
「つ、強ぇ・・・・・・!」
「おいおい。これで10連勝だぜアイツ」
「何者だよ・・・・・・」
今の戦いを観ていた観客の声を聴きながら対戦相手と握手を交わす。
「ありがとうございました」
「こちらこそ。強いねキミのLBX」
「そちらこそ。強かったです」
「ありがとう。また機会があれば対戦しよう」
「ええ」
機会があればまた再戦することを誓い、僕はそこから離れる。
「まだだ。まだ、もっと、強くならないと・・・・・・!」
人並みの喧騒に包まれながら、僕は小さく呟いた。
僕は手元の端末を操作し―――
「あっちか」
次の目的地へと向かって行った。
今僕がいるのはアキハバラ。
そして、ここにいる目的は強くなるため。今以上に。
時は海道邸潜入作戦に失敗し、父さんと別れたその夜。
僕と兄さんは家で夕飯の支度をして待っていた母さんに父さんと会ったことを話した。けど、母さんの反応は驚きというより、心配という感じだった。母さんはすでに父さんが生きていることを知っていたのだ。
五年前のあの事件からしばらくして母さんに父さんから連絡が来たらしい。その時告げられたそうだ。僕たち家族を巻き込んでしまうかもしれないと。だから、兄さんがAX―00を受け取りリビングがあの惨状になった時何も言わなかったのだ。ついにその時が来たと分かったから、と。
母さんから話を聞いた僕と兄さんはイノベーターと戦うことを母さんに告げた。父さんと、みんなと一緒に戦うことを。
僕は、個人的にもイノベーターと戦うつもりだ。―――ルナを助けるために。
自分の胸に新たにその誓いを刻み、次の日。
普段通り僕らは学校に行き、放課後は特訓に明け暮れた。兄さんたちは自分たちの中学校の郷田さんたちのアジトやキタジマで。
LEXはイノベーターの情報を集めるため錯綜し、拓也さんはシーカーを立て直すために奔走している。
それぞれ、みんな今自分の出来ることを精一杯やっている。
そして、それは僕らも―――
「ルナ・・・・・・」
「ルナちゃん・・・・・・」
「ルナ・・・・・・」
学校終わりに直接、ルナの入院している病院にお見舞に来たのだが。
「・・・・・・・・・・」
今ルナは静かに眠っていた。
胸は動いてるし息はしてる。だからルナはまだ生きてる。
ルナが眠る姿を見ながら、僕らは持ってきたお花や授業のノートとかを近くの台に置いて外に出る。廊下を歩きながら―――
「メア」
「うん」
「キヨカ」
「ええ」
「やろう。ルナを・・・・・・僕たちの大切な友達を助けるために」
「「もちろん・・・・・・!」」
固い誓いを胸に秘めて、僕たちもそれぞれの役目を果たすため病院を後にした。
世界大会アルテミスまで残り1ヶ月近く。
それまでやれることをやる。
そして今
「まだだ。もっと強くならないと・・・・・・」
アキハバラの路上で僕は次の対戦相手を探していた。
「次の場所は―――彼処か」
目の前に聳え立つ建物。アキハバラタワーへと足を向ける。
休みの日は特訓に明け暮れ、あちこちを駆け回ってる。端末の画面にはあるページが表示されている。
「今は―――ランキング第90位」
自分の今のランキングを確認して時間を見る。
「後二、三時間くらいかな」
帰る時間も含めるとそのくらいしかない。
「アルテミス前までには30位くらいまでには着けるか?」
最速最短でランキング100位圏内に入り込んでいるため、次々とバトルを申し込まれるが、その全てを返り討ちにしている。
アルテミスまで残り半月。
「みんな、それぞれやれる事をしてる。僕も、もっと強くならないと・・・・・・」
その呟きは虚空に流れ、誰の耳にも入らない。
その瞳にはただ強さを求める意思が深く込められていた。
そして―――
「―――兄さん。明日はアルテミス当日。準備は出来てるよね?」
自宅のリビングで、アキレスのメンテをしている兄さんに問う。
「もちろん!LEXから必殺技を伝授してもらったからな」
「LEXから?どんな必殺技なの?」
「それは秘密だよ。明日までの」
「むーー・・・・・・」
兄さんの言葉に少しむくれるが、すぐに直し。
「兄さん、大会前の特訓やるよ」
「ああ!」
Dキューブを展開して自分のLBX、クロノスを取り出し準備をする。
「互いに全力でやるよ!」
「おう!」
それぞれ準備を終え―――
「行け!アキレス!!」
「疾く在れ!クロノス!!」
僕と兄さんは時間の許す限りLBXバトルに準じた。
最後には互いに特殊モード。アキレスのVモードと、クロノスのクロノスタシスモードを発動させた。
そうして時間は進み―――
「―――兄さんたち、大丈夫?」
世界大会アルテミス当日。
会場であるお台場エリアで、満員電車に呑み込まれた兄さんたちを労っていた。
僕とメアはこうなることを予想していたので早めに来ていたけど・・・・・・。
「お姉ちゃん、こうなると思うから早めに来たほうがいいって言ったよね」
「そ、それはそうなんだけどねメア・・・・・・」
「・・・・・・兄さん、まさか寝坊したの?」
「ギクッ!」
そう言えば僕が家を出る時、まだ兄さんは寝ていたような気がする。
まさかと思い聞いてみたが、案の定だった。
「アミ姉、カズ兄。後でなんか奢るよ。いつもゴメン、ウチの兄が」
「グハッ!」
兄さんに1000ダメージ!弟からの精神攻撃により効果は抜群だ!
「バンを見ていると、レイがどうしてこうなったのかわかった気がするぜ」
「カズ!?」
「そうねぇ。バンが良い反面教師になったのね」
「アミまで!?」
親友二人にまで言われ兄さんのライフはゼロに近い。
「お、お姉ちゃんたち!いくら本当のことだからって言い過ぎだよぉ〜!!」
「――――――」
メアのクリティカル口撃で兄さんはその場に崩れ落ちた。
「メアのでトドメ刺しちゃったわね」
「お、おう・・・・・・」
引き攣り笑いを浮かべるアミ姉とカズ兄。
兄さんはその場に蹲り、床にのの字を描いていた。
「兄さん・・・・・・」
兄さんのその光景に僕は何も言えなかった。
けど、何時までもそうしてる訳にはいかないので―――
「受付登録しないと出られないよ兄さん?」
と言う。
まだ受付終了までは時間があるが、早いに越したことはない。
「ぁ、そうだな」
僕の言葉に兄さんは気を取り直し、アミ姉たちとともにアルテミス会場まで向かった。
アルテミスが行われる会場の正式名称は、【お台場ビッグスタジアム】である。
会場には、【ARTEMIS 2050】と表示されてるホロウインドウがあちこちにあり、会場の雰囲気をより一層盛り上げてる。
会場に着くと、あちこちに今大会の優勝候補や各地の大会で有名なLBXプレイヤーが多数いる。
そこに。
「ん?」
グレーの車が来て、そこから三人の少年が降りた。
一番前の黒髪の少年は雰囲気が暗く、瞳にも光がないような感じだ。なんて言うか、感情がない人形みたいな・・・・・・。
後ろの二人はその少年の従者というか介添人みたいな感じだ。
一番前の少年の視線が兄さんと僕に向けられる。
「?レーくん知り合い?」
「ううん。知らないと思う。兄さんも知らないと思うけど・・・・・・」
なんかミステリアスな感じの少年。
そこに。
「え?」
上からの突風が吹き荒れた。
視線を上に向けると、そこには―――
「は?」
「え!?」
「「せ、戦闘機ぃぃぃ!?!?」」
一基の戦闘機が滞空し、その戦闘機からひとつの人影が降りてきた。いや、正確には飛び降りてきた。
「は?え?か、海道ジン?!」
飛び降りてきた影は、海道ジンだった。
まさかの登場に僕とメアは目が点になる。ていうか戦闘機登場とか・・・・・・。
てか、なんで兄さんたちは驚いてないの!?
僕でさえ驚いているのに、兄さんたちが驚いてないのに不思議がる。
アミ姉にワケを聞くと―――
「―――前、学校に登校してきたときに戦闘機でやってきたのよ」
らしい。
いや、待って。戦闘機登校ってなに・・・・・・!?
僕とメアはアミ姉の言葉に思考が停止した。
うーん・・・・・・お金持ちの感性はわからへん。
兄さんたちが無事受付登録完了し、僕とメアは兄さんたちと分かれて早速スタジアムの中を見て回ることにした。
物販とかが売られてるコーナーでは、各LBXメーカーの出張支店があり、タイニーオービットはもちろんの事、サイバーランスやプロメテウス。クリスターイングラムに竜元などの各メーカーがある。
試合が行われる会場は広く、円形の観客席に中央部にフィールドがある。観客席は総勢五万人近く入りそうだ。
「広ーい!」
「うん!」
「ここでお姉ちゃんたちは戦うんだね・・・・・・!」
「ああ。僕らもいつかはこの舞台で・・・・・・!」
アルテミスは全てのLBXプレイヤー憧れの世界大会だ。それ故に出場条件も大変。兄さんたちは運良く手に入れられたけど、基本は世界各地の地区別選手権ないし、それらと同等の権威(今回はアングラビシダスが該当)を持つ他のLBX大会で優勝した者。もしくはチーム。またスポンサー枠公式宣伝チームになった者―――といった条件で選抜されるらしい。
アルテミスのバトルルールは、主に公式大会で使用される【ゼネラルレギュレーション】が使用される。ゼネラルレギュレーションは、LBXの破壊は基本的には無しではあるが、故意で無ければ破壊可能だ。
大会の出場者は出場権を持つプレイヤー1人に、最大2名までのサポートメンバー。但し、実際に出撃できる人数は試合のレギュレーションによって異なるので注意が必要だ。
メンバーが3人でシングルバトルの場合は3人の中から1人を選出し、その1人が代表で戦う。ダブルの場合は2人だ。
「ねぇ、レーくん!」
「ん?」
「もしここに出場する機会があったら、私とパーティーを組んでくれる?」
メアの言葉に僕は虚をつかれた。
だってそれは―――
「やれやれ。メアに先に言われるなんてね」
「え?」
「僕が先に言おうと思ってたのに」
僕がメアに提案しようとしていた言葉と、全くそっくりだったのだ。
「メア、もしその時があったら僕とパーティーを組んでくれるかい?」
「っ!うん!!もちろんだよ!!」
その場で飛び上がる程の(飛んではないが)喜びを出すメア。
「レーくん、約束だよ!」
「もちろん。約束だ」
互いの小指を合わせ―――
「ゆーびきりげんまん、嘘ついたら針千本飲〜ます!ゆ〜び切った!!」」
と誓いを立てる。
そしてその誓いに―――
「二人ともラブラブなのはいいけど、少し恥ずかしいわよ?」
「ひゃっ!?」
「うわっ!?」
真横から聞き慣れた声が入った。
驚きに甲高い声を上げ慌てて真横を見る。そこには。
「き、キヨカ!?」
「キヨカちゃん!?」
クラスメイトにして親友たる仙道キヨカがいた。
「き、キヨカちゃんどうしてここに?」
「どうしてって・・・・・・私もシーカーの一員なのよ?世界の命運を掛けたアルテミスぐらい見に来るわ。まあ、それとは別に、個人的に応援しに来たってのもあるけど」
「へ?」
「・・・・・・・・・・あ!」
キヨカの視線の先を追うと、そこには兄さんたちと、キヨカの兄たるダイキさんがチームメンバーらしき人たちとともにいた。
「え、ダイキさんもアルテミスでるの!?」
「うん」
まさかのダイキさんの参戦に驚く僕。
あのアングラビシダスから1ヶ月近く経っているとはいえ、まさか出場権を入手していようとは。
というか、それを言ったら海道ジンもか。
そういや、LEXもあの後アルテミス出場権入手していたっけ?今回、LEXは郷田さんと出場するみたいだし。
うーん。これなら僕も出場権獲得しとけばよかったかなぁ〜。
そんな物思いに耽ていると―――
「ん?」
兄さんたちのところが騒がしくなったのが見えた。
見ると、なんか大口寺さんが兄さんたちの名前が入った、応援旗のようなものを広げているのが観えた。
「あれ手作りかな・・・・・・」
メアとキヨカも気づいたようで兄さんたちの方を見て言う。
メアの言う通り、アレ多分手作りだと思う。誰が作ったのかは分からないけど、何故かアミ姉の名前だけ大文字なことからおそらく大口寺さんが作ったと思う。アミ姉のことを大口寺さんは好いてるみたいだから。まぁ、当の本人たるアミ姉はスルーしてるけど。
なんかアレを見てると―――
「―――仲間っていいね」
「うん」
「そうね」
そんな感じになる。
そこに、背中には誰かの視線を感じチラッと左後ろを見る。そこには海道ジンが壁に寄りかかって兄さんたちを眺めてる姿があった。
「あ、キヨカ。どうせだから僕らと一緒に観ない?」
「ええ、いいわよ」
「やった!それじゃあ私とキヨカちゃん席とってくるね!行こっ!キヨカちゃん!!」
「め、メア!?」
「ええ」
キヨカを引き連れて席を取りに行くメア。
その姿に苦笑を浮かべながらも、二人の飲み物とか買おうと売店へ向かう。
だが、その前に―――。
「―――久しぶりだね、海道ジン。いや、僕とは初対面だったかな?」
せっかくだから、海道ジンに挨拶をしておこう。
「山野レイ・・・・・・」
「あぁ、僕のこと知ってるんだ」
「まあ」
「そう―――ん?」
ふと、視線を感じ視線を感じた階下を視る。そこにはスタジアムの入り口で見た黒髪の少年がこっちを見ていた。
海道ジンも気づいたようでその少年を見る。
「?知り合い?」
「いや・・・・・・」
海道ジンの知り合いかと思い尋ねてみたが、どうやら海道ジンも知らないらしい。
そこに。
「ここにいたのか。探したぞ灰原ユウヤ」
「勝手に出歩くな」
「さぁ、部屋に戻るんだ」
その少年の付き人みたいな二人の少年が慌ててやってきて、灰原ユウヤと呼ばれた少年を連れていった。
「灰原ユウヤ?」
「あの少年の名前かな・・・・・・」
ミステリアスな少年に不思議がる僕。
『まもなく、開会式が始まります。出場選手のみなさんは、会場にお集まりください』
そこに会場のアナウンスがながれた。
「そろそろ始まるみたいだね」
「ああ」
「それじゃ、僕は行くよ。・・・・・・・・・あ、そうだ」
「?」
「あの時はありがとね」
海道邸でのことに対してのありがとうを言う。
あの時海道ジンが僕らのCCMを投げ渡さなかったら危うかったからね。
「君個人には悪感情は無いけど、僕はイノベーターを許す訳にはいかない。もし、海道ジン。君がイノベーターとして僕らに仇なすなら、僕は本気で君を倒す」
僕はシーカーの一員。海道ジンはイノベーターとして敵対してる。けど、僕の見た感じでは、海道ジンはそこまでイノベーターとして悪い人には見えない。だから、僕は海道ジンに宣戦布告をする。
そう言うと、僕は階段を降りて行く。その背中に。
「山野レイ。いつか君とも戦ってみたい。お爺様と互角に渡り合えた君の腕。山野バンにはないものだ」
海道ジンがそう告げてきた。
僕はその言葉に返事をすることなく立ち去り、売店へと早足で行き三人分の飲み物を買いメアとキヨカと合流した。
その後、アルテミスの開会式と今回の優勝賞品【メタナスGX】のお披露目が行われ、早速Aブロック予選が始まった。
けど、まさか賞品であるメタナスGXを人間そっくりなアンドロイドに搭載しているとは思わなかった。ていうか、メタナスGXだけでアンドロイドを動かせるとか超高性能すぎでしょ?
あー、これなら僕も出場すれば良かったと度々思う。
「兄さんたちはCブロックか」
「初戦の相手はジョン&ポールか」
「最初から強敵ね」
ジョン&ポールは北米エリアチャンピオンだ。今大会の優勝候補でもあり、初戦から強敵だ。
「海道ジンはAブロック。LEXと郷田さんも同じか」
「お兄ちゃんたちはDブロック」
次々と表示される予選の組み合わせ表。
やはり、アルテミスなだけあってLマガや関連書誌に出てるプレイヤーが多数いる。
「灰原ユウヤはEブロックか・・・・・・」
呟くような声で言う。
あの少年たちは少し。いや、かなり気になる。カン・・・・・・だけど。
「ん?あれはユジンさん?」
そんな中僕は一人、スーツ姿でオドオドしてる大人を見つけた。
「ユジンさんも出てたんだ。えーと、ブロックは・・・・・・うわぁ・・・・・・」
ユジンさんの名前が(但し登録されてる名前はあっちの方)あるブロックを見つけ引き攣り笑いが出た。
「Dブロックかぁ・・・・・・」
なかなか面白い組み合わせかもしれない。
あとは―――
「???」
「どうしたのレーくん」
「レイ?どうかした?」
「いや、ちょっとあの如何にも舞踏会出場者みたいな格好の人が気になって」
黒い格好で舞踏会のような服を着ている男に僕は何故か気になった。
「なんだろう・・・・・・なんか気になる」
わからないけど、何故か気になって仕方ない。
こうして、第3回世界大会アルテミスが開催されると共に、世界の命運を掛けた戦いが始まった。