ダンボール戦機 英雄の弟   作:ソーナ

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回想 イノベーター編 Ⅸ 大会(アルテミス)・予選

 

~レイside〜

 

第三回LBX世界大会アルテミスがついに開幕した。

兄さんたちやLEXに郷田さん。海道ジン。ダイキさんにユジンさんと。高レベルのプレイヤーが出場している。

開会式が終わり、ついに予選Aブロックの試合が始まる。

ブロックはそれぞれ1ブロック16組の5つにランダムで分けられ、最終ステージのバトルロワイヤルに進めるのは各ブロックからただ1組だけ。つまり、今大会に出場しているチームは全90組。その中からたったの5組だけが行ける決勝。なかなか厳しい戦いだ。

 

「予選AブロックはLEXたちと海道ジンか。当たるのは順当に行けば準決勝・・・・・・」

 

LEXのLBXの操作テクがどのくらいなのかは未知数だが、恐らくこの大会の中でもトップに位置するはずだ。

郷田さんもだが、海道ジンに関してはアングラビシダスよりもさらに強くなっているだろう。

 

「―――LEXのLBXはサラマンダー(タイプ)か」

 

「LEXの雰囲気によく似合ってるね」

 

「ええ。武器は・・・・・・ナックル型。格闘戦のLBXのようね」

 

一緒に観ているメアとキヨカも僕の後に続けて言う。

サラマンダーが(ベース)のため、LEXのLBX、[Gーレックス]の機体種はブロウラーフレーム。速度はあまり速くないが、その分耐久性や攻撃力が高い。しかもLEXがカスタムしたLBXだ。他のLBXとは違うこと間違いないはずだ。

 

 

『―――それでは、バトルスタート!!』

 

 

MCの合図により、予選Aブロック第一試合が始まった。

試合は四試合同時に行われる。

それぞれ東西南北にステージがある。

 

「郷田さんから仕掛けた!」

 

LEXと郷田さんの戦いを観る僕ら。

Gーレックスは動かず、郷田さんのLBX[ハカイオー]が攻撃を仕掛ける。

相手の[ウォーリアー]と[ズール]は誘い込むように、コンビナートステージのタンクの影に隠れる。

そこにハカイオーの必殺ファンクション【我王砲(ガオーキャノン)】が放たれた。放たれた我王砲はタンクに直撃し爆発を起こす。しかし、相手のウォーリアーとズールは一つ後ろのタンクに飛んで、また隠れる。

 

「なるほどね」

 

相手の読みが分かり小さくつぶやく。

けど、その作戦はある意味良い。

まぁ、その作戦が上手くいくとは限らないけどね。

そうこうしているうちに―――

 

「―――やはり最初の通過者は海道ジンか。LEXと郷田さんも無事二回戦に進出したね」

 

Aブロック第一試合が終わり、一回戦第二試合が始まりそれぞれの勝者も決まった。

そしてAブロックの試合も順調に進み、準決勝でLEXと郷田さんはやはり海道ジンとぶつかった。

試合はLEXがいるからか海道ジンも苦戦していた。

特に凄かったのは海道ジンのLBX[エンペラーM2]の必殺ファンクションであるインパクトカイザーを、必殺ファンクションではなく、ただの拳を地面にぶつけその反動でインパクトカイザーの威力を相殺したことだろう。LEXにしかできない芸当だ。あの必殺ファンクションの威力はアングラビシダスを見ていた者ならわかるのだが、LEXはその必殺の一撃を必殺ファンクションではなく、ただの拳で相殺したのだ。それだけで、LEXの操るGーレックスが高スペックなのがわかる。

さすがにLEXと郷田さんが勝つのかと思われたこの試合。勝者はまさかの海道ジンだった。

郷田さん相手なら苦戦はせずブレイクオーバーさせた海道ジン。だが、不意を突かれた一瞬の隙にGーレックスが接近しエンペラーM2に攻撃しようとしたが、何故かGーレックスはその拳を命中する目前で止めその場から後ろに飛び、すかさずエンペラーM2からの多段ミサイル攻撃でブレイクオーバーしたのだ。

 

「―――」

 

その行動に僕は呼吸をするのも忘れるほど呆然とした。

メアたちの眼には普通の戦闘に映っていただろう。しかし、僕の眼はそれを逃さなかった。それは恐らく海道ジンもだろう。

結局この試合でAブロック決勝にまで進んだ海道ジンは、決勝相手に特に苦戦することなく決勝トーナメントへ駒を進めた。

続いて始まったBブロック。

優勝候補の一人と言われてる北部エリアチャンピオンの神崎ショウチームがいるが、特に注目するような事でもない。

ただ一人、開会式からずっと気になっている()を除いて・・・・・・。

 

「マスクドJ・・・・・・なんか気になる」

 

「開会式から気になっていたわね?」

 

「うん」

 

「なんでそんなに気になるの?確かにあの格好は気になるけど・・・・・・」

 

「経歴も特に注目することはないわよ?まぁ、何も書かれてないけど」

 

両端に座るメアとキヨカから不思議がられる。

メアのCCMにはマスクドJのプロフィールなどが記入されたアルテミスの出場選手情報が出されてるが、その欄には何も書かれてなく名前以外全てが空白だった。

 

「いや、あの人どこかで見たことあるような気がするんだ・・・・・・。しかもつい最近」

 

分からないけど、あの人は知っている気がする。

勘もあるが、本能が告げている。

 

「「え・・・・・・」」

 

困惑してこっちを見る二人。

そうしている間にも試合は進んでいき、Bブロック決勝になった。

対戦カードは北部エリアチャンピオンである神崎ショウチームとマスクドJの二組だ。

神崎ショウのLBXはブロウラーフレームの[グラディエーター]。武器は片手剣に盾。対するマスクドJのLBXはメーカーも不明。見たことない、恐らくハンドメイドのストライダーフレームの[マスカレードJ]。武器は細剣だ。

 

「速度重視と攻撃耐久重視か・・・・・・」

 

始まったBブロック決勝を観て呟く。

最初から攻撃していく神崎ショウに対してマスクドJは防戦だ。

けど―――

 

「っ!もしかして・・・・・・」

 

マスクドJがもし僕と同じことを考えているとしたら・・・・・・。

防戦一方な今の状況にも意味が付く。

そしてその予想は―――

 

「「っ!!」」

 

トドメの一撃を喰らわせようとしたグラディエーターの攻撃を舞うようにして避けたマスカレードJ。

 

「やっぱり!」

 

その展開に僕は目を見開いた。

そこからはグラディエーターの攻撃をマスカレードJは蝶のように舞い、まるで一人仮面舞踏会をしてるような感じになった。

神崎ショウも焦りと動揺が生まれている。

 

「この短時間で相手の動きを完全に見切るなんて・・・・・・!」

 

「見切るだけじゃないわ・・・・・・!攻撃も速度も凄い。動きが見えないわ」

 

メアとキヨカも驚いている。

こんなLBXがあるなんて・・・・・・

 

「蝶のように舞い、蜂のように刺す。まさに攻防一体」

 

その言葉を表すように動きが滑らかで、グラディエーターを神速の一撃で攻撃するマスカレードJ。

しかも威力も高く、グラディエーターの片手剣を自身の細長い細剣で絡めとるように奪い、グラディエーターを背後の岸壁に突き飛ばす。

そして最後、必殺ファンクション【ストームソード】でグラディエーターをブレイクオーバーさせる。

逆転勝利。というより、恐らくはマスクドJの掌の上だったはずだ。

そこで僕はマスクドJの正体が誰なのかわかった気がした。

ステージで観客に向けて手を振り挨拶をするマスクドJ。それを見ながら僕はその場に立ち上がった。

 

「レーくん?」

 

「レイ?どうしたの?」

 

メアとキヨカが首をかしげて聞いてくる。

 

「ま、まさか、あの人は―――」

 

けど、そんなことより僕はまさかの予想に口を震わせた。

ありえない。何故ここにいるのか。どうやってアルテミス出場権を手に入れたのか。その格好は一体何なのか、と疑問が尽きないが。

 

「父さん・・・・・・なの・・・・・・?」

 

僕は震えながらゆっくりと座り呟く。

マスクドJのJは恐らく、《山野淳一郎》のJだ。

僕は退場するマスクドJの背中を追う。

けど―――

 

「あの格好としゃべり方は一体何・・・・・・っ!?」

 

僕はもうなんて言うか、その疑問が一番に出た。

 

「はっちゃけすぎてない!?」

 

小さな呟きだが、息子として父親のあの格好はなんとも言えない。イノベーターに捕らわれていた5年間から解放されて気分オープンになってるのだろうか?

 

「そう言えば母さんが、父さんは昔からノリがいいって言っていたっけ」

 

はぁー。とため息を吐き、

 

「二人とも、僕ちょっと行くところ出来たから少し離れるね」

 

とメアとキヨカに言う。

 

「え?あ、うん。わかった」

 

「わかったわ」

 

「私たちはお姉ちゃんのところに行ってるね」

 

「了解」

 

メアとキヨカは(ハテナ)を頭上に浮かばせて答えた。

僕はそのまま席を立ち、マスクドJを捜す。

少しして一際目立つ存在のマスクドJの姿を発見した。

僕はそのままゆっくりと近づき。

 

「こんにちは、マスクドJ」

 

と挨拶をした。

 

「・・・・・・おや?どうかしたのかね少年。私になにか用かな?」

 

対するマスクドJは少し驚いたように返した。

 

「い〜え。決勝トーナメント進出おめでとうございます」

 

「ふふ。ありがとう」

 

「マスカレードJ。いいLBXですね」

 

「そうだろう?私のハンドメイドLBXなんだ」

 

「そうなんですか〜」

 

そうにこやかに返し―――。

 

「―――ここで何してるの。―――父さん」

 

表情を消して無表情でマスクドJ。いや、父さんに問う。

 

「父さん?何を言っているのかね。私は少年の父親では・・・・・・」

 

「しらばっくれないで」

 

マスクドJに僕は真剣な顔で言う。

 

「・・・・・・・・・・」

 

僕の顔を視てマスクドJはしばしの沈黙の後。

 

「・・・・・・なぜ分かった?」

 

と聞いてきた。

 

「最初見た時からマスクドJのことは気になっていたから」

 

僕は父さんの隣に座り言う。

 

「父さんの顔を思い出して、そこにマスクドJの仮装を重ねたのもある。そして、決勝で見せたあの操作テクは余程のプレイヤーでないと出来ない。でも、父さんはLBX開発の第一人者。だからね。それに、声も何となく似てたし」

 

「そうか・・・・・・」

 

父さんは視線を逸らさず、ステージの方に向けたまま会話する。

 

「レイ」

 

「なに?」

 

「レイの他に私に気づいたのはいないのか?バンは?」

 

「多分、僕だけだと思う。兄さんも気づいてはいないと思うし」

 

兄さんも気になってはいるだろう、が。

 

「そうか・・・・・・」

 

父さんは安心したように返す。

 

「・・・・・・・・・・」

 

何故だろう。

父さんに言いたいこととかいっぱい。たくさんあるのに声に出ない。喉までに出かかっているのに、そこから声に出して発声できない。

そんな様子の僕に気づいたのか、父さんはゆっくりと右腕を持ち上げ僕の頭に置いた。

 

「本当、大きく・・・・・・なったな、レイ」

 

「父さん・・・・・・」

 

「バンももう13歳か。・・・・・・すまなかった」

 

「ぇ?」

 

「お前たちを守るためだったなんて言い訳に過ぎないが、長い間本当にすまなかった」

 

父さんは周りに聞こえないよう、僕にだけ聞こえる声で告げる。

その言葉は心の底からすまなかったと言っていた。

父さんも辛かったはずだ。ずっと、僕や兄さん、母さんのことを心配してたはずだから。

 

「ぅうん。父さんは悪くないよ。悪いのは海道義光たちイノベーターなんだから」

 

そう。僕らのこの5年間という時間を奪ったのは海道義光だ。己の野望のために父さんを縛り付ける。そして、それはルナや里奈さんも。

 

「それに、父さんが僕のために創ってくれたこのクロノスもいるから」

 

兄さんはアキレス。僕はクロノス。どっちもこの世に二つとない、父さんからの贈り物だ。

それはとても誇りに思う。

 

「・・・・・・だが、クロノスだけじゃいつまでも通用しない」

 

と父さんは言った。

それは分かっていたことだ。

海道義光の月光丸と戦った時そう実感した。確かにクロノスのスペックは他のLBXより遥かに高い。だが、月光丸はそれよりはるか上だった。特殊モード【クロノスタシスモード】発動で互角に渡り合えたが、最後の最後で負けた。

 

「これからさらに強い敵が現れるはずだ。レイ、CCMを出してくれないか?」

 

「え?あ、うん」

 

自身の黒銀のCCMを取り出す。

父さんもCCMを取り出し、なにか操作をする。ほんの数秒で、僕のCCMにメッセージが届いた。

 

「これは・・・・・・」

 

届いたメッセージはプログラムコードだった。

複数の数字の羅列が並び、それは幾多にもある。

 

「これをタイニーオービット社の宇崎悠介氏に見せるんだ」

 

「え?」

 

「彼ならやってくれるはずだ」

 

父さんの言葉に意味がわからない。

それにタイニーオービット社と宇崎悠介さんって・・・・・・。

 

「さぁ、そろそろCブロックが始まるぞ。バンたちの戦いを見に行かなくていいのかな?」

 

「・・・・・・うん」

 

もう少し一緒にいたい。

もっと、父さんと話していたい。

そう思うのはダメなのだろうか。

10歳にもなっていない、まだまだ子供の僕がそう願うのは。

けど、わかってる。何時までも今は一緒に居られない。

父さんにも迷惑になるし、イノベーターから父さんが見つかる可能性も捨て切れない。

僕はその場から立ちメアとキヨカのところに戻ろうとする。

 

「レイ。バンとお前は、私と真理絵・・・・・・母さんの大切な、自慢の息子だ。しっかりするんだ」

 

僕の背中に父さんからの励ましの言葉が掛かる。

僕はその言葉を聞き。

 

「うん・・・・・・!」

 

一言そう返して立ち去った。

その一言には嬉しさと誇りが詰まっていた。

僕はその思いを胸に抱きながらメアたちの元へと戻った。

メアたちの元へ戻ると、ちょうど二人も戻ってきていて僕を見つけると手を振っていた。

そして、兄さんたちの予選。Cブロック予選が始まった。

兄さんたちの初戦の相手はジョン&ポール。北米エリアチャンピオンだ。

初戦はLBXそれぞれ二機ずつによる二対二だ。

兄さんの方は兄さんとカズ兄のアキレスとハンター。対するジョン&ポールは[タイタン]と[オルテガ]だ。

 

「あ、やっぱりお姉ちゃんは出ないんだ」

 

「へ?」

 

メアの呟きに目が点になる。

やっぱりって・・・・・・一体どう言うこと?

 

「まあ、アミさんの気持ち分かるわ。あんな軽薄チームとやりたくないもの」

 

さらに続けて言うキヨカの発言に疑問符が浮かびまくる。

二人の様子から、さっき兄さんたちのところに行った時になにかあったみたいだけど・・・・・・。

 

「え、えっと・・・・・・何があったの?」

 

恐る恐る二人に聞くと。

 

「「ナンパされた」」

 

「は?」

 

「「そしてさらに色々バカにされた」」

 

「は?」

 

二人の怒気が入った返しに寒気が走る。

え、一体何があったって言うの!?

メアとキヨカから控え室で起こったことを全て。一部始終逃さずに聞き、聞き終えた僕は呆れ半分怒り半分な気持ちだった。

アミ姉が少〜し喧嘩っパヤイのは知っているけど・・・・・・。

 

「はぁ。北米エリアチャンピオンがあんなだなんて・・・・・・たかがしれてるよ」

 

今行われている試合を観ながらそう口走る。

実際、北米エリアチャンピオンなだけあって、連携も操作技術もなかなかなものだ。

アキレスの一槍をタイタンは武器腕で弾き、ハンターの援護射撃をオルテガが(サイス)系のハンマーで回転して防ぐ。

立て続けの連携技でアキレスとハンターがダメージを負う。

 

「けど、それなりの実力を持っているわ」

 

「うん。タイタンはパンツァー系のブロウラーフレーム。オルテガはワイルドフレーム」

 

「耐久に機動力。さらに攻撃力も兼ね備えてるね」

 

それぞれの長所と短所を補っている。

それに連携力も高い。

だが―――

 

「兄さんたちの連携程じゃない」

 

「ええ」

 

「そうね」

 

僕のほくそ笑みにメアとキヨカも同じように浮かべる。

現にジョン&ポールは兄さんたちの策に嵌ってる。

 

「兄さんたちにはアミ姉っていう作戦立案者がいるんだから」

 

彼らの最大の弱点。それは―――

 

「兄さん達を侮りすぎたね。北米エリアチャンピオン」

 

他者を蔑み、自分たちの実力を過信しすぎることだ。

そしてそれは試合結果にも現れ、タイタンはアキレスが。オルテガはハンターが仕留め、見事兄さん達はCブロック予選初戦を勝ち抜いた。

兄さんが前衛。カズ兄が後衛。そしてアミ姉が参謀。これは三人で掴み取った勝利だ。

そのまま兄さんたちは順調に勝ち進んで行き、ついにCブロック決勝にまで行った。

対戦相手は、優勝候補である昨年のアジアエリアチャンピオンの森上ケイタ率いるチームだ。

森上ケイタは【ウォーリアーのエキスパート】の異名を持つ[ウォーリアー]使いだ。

メンバーは中林レイナと木下コウジ。それぞれ[アマゾネス]と[ブルド]を使う。Lマガにも何度か特集で書かれてる、まさに優勝候補の一角。

 

「なんかバン兄と森上さんって似てるよね」

 

「え、そう?」

 

「うん。武器が槍ってのもそうだけど、二人とも純粋」

 

確かにメアの言う通りかも。

今まさに試合開始目前で、それぞれのLBXをスタンバイさせる6人。ハンターとブルドはどちらも遠距離武器。アマゾネスは小型の盾有りの槍。クノイチは短剣。そしてアキレスとウォーリアーはどちらも大きな円型盾有りの槍。両チームとも似たような。まさに鏡のような感じだ。

 

「面白い戦いになりそう・・・・・・!!」

 

そして、ついにCブロック決勝がの火蓋が切って落とされた。

 

「一対一で最初は戦うか」

 

アキレス対ウォーリアー。クノイチ対アマゾネス。ハンター対ブルド。見事に分かれ接戦した戦いが繰り広げられている。

 

「分断させて連携を取らせない作戦か」

 

「でも相手はアジアエリアチャンピオン。そう上手くいくかしら」

 

連携を取らせないようそれぞれ引き離して戦う兄さんたち。

けど―――

 

「―――!引き寄せられてる!?」

 

さすがアジアエリアチャンピオン。兄さんたちの作戦を上手く利用して、逆に兄さんたちをおびき寄せた。

いつの間にか引き離していた三機が合流し一箇所に集まっていたのだ。バトルフィールドであるコンビナートを上手く使ってる。

そして相手の罠にハンターが引っかかり、ウォーリアーとアマゾネスがハンターの身動きを取れないように両側から拘束する。そして、その直線には両手銃を構えたブルドが。今のハンターは絶好のマトだ。

 

「っ!これが狙いだったの!?」

 

「厄介な狙撃手から落とす・・・・・・セオリーと言えばセオリーだけど凄いわ」

 

戦力としては両者互角。

だが、兄さん達より相手が勝っているのが一つだけある。それは、『チームとしての連携に関しては一日の長がある』という事だ。兄さんたちも、もちろん連携力は高い。だが、こういうアルテミスのような大会での連携ではまだまだ連携不足だ。

兄さんたちは実践。対して森上ケイタチームは大会での経験。

実践と大会では全く違う。

しかし、どちらも共通しているのは『連携』。一人では無理でも二人なら。二人で無理なら三人で。

ブルドの構える両手銃から放たれた必殺の弾丸に当たるハンターのピンチをクノイチとアキレスが助けに入った。

けど、その代償は大きいものになった。

 

「な、なんて威力なの・・・・・・」

 

「クノイチの左腕を切断して、アキレスの右脚に致命的なダメージなんて」

 

もし今の一撃がハンターに直撃していたら確実にブレイクオーバーしていた。今ここでハンターを失うのは不味い。

しかも―――

 

「この一撃で戦力差が傾いた・・・・・・!!」

 

前衛のアキレスとクノイチの動きを阻害させられたのは兄さんたちにとって大きな痛手だ。

対して相手の三機は特にこれと言って大きなダメージはない。

 

「さぁ。どう逆転する兄さん・・・・・・!!」

 

ここからどうやるのか兄さんたちの力量が試される。

 

「すごく楽しそうだねレーくん?」

 

「まあね。あんな戦いを見せて魅せられたら楽しくならないわけないよ」

 

今の僕の気分は高揚している。

やっぱり僕も兄さんと同じで、LBXバカなのかもしれないね。いや、父さんと母さんの遺伝を持ってるからそうかな。

 

「防戦一方ね」

 

ステージで繰り広げられる戦いは、さっきから一転。森上ケイタチームが兄さんたちを追い詰めていた。

 

「コンビナートステージは遮蔽物が多い。逆に広場のような開けた場所は限られてる。これが勝負のカギを握るね」

 

脚にダメージを受け思うように動けないアキレスのピンチをハンターが救い、ウォーリアーに必殺ファンクション【スティンガーミサイル】がヒットする。

この間に兄さんたちはコンビナートの遮蔽物に隠れ、森上ケイタチームも一旦合流する。

 

「これで一度体勢を整えられるね」

 

「ああ。けど―――」

 

「腕と脚にハンデを負っているから気をつけないと」

 

ウォーリアーにスティンガーミサイルでダメージを与えたとはいえ、兄さんたちが不利なのは変わりない。

せめて、この不利な状況をひっくり返すことでもしないと。

 

「レイ、貴方ならこの状況をどうひっくり返す?」

 

キヨカからの質問に僕は目を瞑って試行錯誤する。

現在の状況。

ステージ。

相手の機体状況。

こちらの損傷。

全てを考え、今できる逆転の秘策は―――。

 

「・・・・・・囮作戦」

 

「「囮?」」

 

「ああ。いや、正確には、このコンビナートステージの地形を利用して囮で誘き寄せる、だね」

 

「地形を利用・・・・・・っ!そういうことね!」

 

「・・・・・・なるほどね。そういう事」

 

メアとキヨカも分かったようで視線をステージに向ける。

このコンビナートステージの特徴は遮蔽物が多数あることだ。

それを利用し相手の裏を描く。

今アキレスは満足に動けない状況だ。

相手はハンターとクノイチが撹乱すれば、アキレスから引き離す作戦だと考える。そして、それを看破したとアキレスの方へ向かうだろう。

もしその向かった先に、アキレスの持つ盾があったらどうする?

隠れきれてないと判断して油断するだろう。

そしてそれは―――。

 

「やった!ブルドを倒した!」

 

兄さんたちの作戦が成功したことになり、不意打ちの一撃を浴びることになる。

 

「これで三対二。しかも、遠距離武器を潰したから援護される心配はない!」

 

残ってるのは近接武器を持つウォーリアーとアマゾネス。

ウォーリアーをアキレスとクノイチが。アマゾネスをハンターが相手する。

 

「二対一でも攻めきれない。さすがアジアエリアチャンピオン」

 

脚にダメージを負い満足に動けないアキレスと、左腕がないクノイチの攻撃をなんとか対処していくウォーリアー。

アマゾネスは遮蔽物を利用してハンターに接近する。

しかし、トドメを刺そうと空いたボディにハンターが蹴りを食らわせアマゾネスを吹き飛ばし、そこにスティンガーミサイルが浴びせられアマゾネスはブレイクオーバーした。

 

「これで三対一!形勢逆転だね!」

 

「いえ、まだ分からないわ」

 

「槍の必殺ファンクションには確かあれがある。アレを使われたら―――!!」

 

アマゾネスをブレイクオーバーさせ、一気に攻める兄さんたち。

アマゾネスの持っていた槍を持ちハンターも接近戦をする。

しかし、その攻撃は届くことが無かった。

何故なら―――

 

「っ!一撃でクノイチとハンターをブレイクオーバー・・・・・・!?」

 

「やっぱり使ってきたか。必殺ファンクション【トライデント】を」

 

槍系の必殺ファンクションの一つ、三方向に光条の槍を放つ技【トライデント】。それを放ち、クノイチとハンターを一撃でブレイクオーバーさせた。アキレスはギリギリ盾でトライデントをガードし生き残ってはいるが。

 

「アキレスは満足に動けない・・・・・・。ウォーリアーの速度に追い付いては・・・・・・・・・・ん?」

 

兄さんの何かを決めた顔を見て僕は言葉を途切れさせた。

なにか一撃必殺の手段でもあるのだろうか?

そう言えばLEXからなにを教えて貰ったのか聞いてもないし・・・・・・もしかして―――

 

「アキレスが仕掛けた!」

 

「でも脚のダメージがひびいてる」

 

「攻めきれないね」

 

アキレスの攻撃を防ぎ、躱し、盾で受け止め、槍でぶつかり合うウォーリアー。

幾重にもアキレスの攻撃を守るウォーリアー。

だが、ついにアキレスの右脚が膝を着いた。

その隙を逃さず、ウォーリアーが突撃槍(チャージ)して来た。

 

「兄さん・・・・・・!」

 

万事休すかと思われたその時。

 

「っ!そうか!誘ったのか兄さん!!」

 

ウォーリアーの一撃を後方に飛んで避けたアキレスを見て察した。

そしてアキレスから膨大なエネルギーが溢れ、それは雷を纏りアキレスの突き出した槍どともに一直線にウォーリアーへと襲いかかった。

 

「あれがLEXから教えて貰った必殺ファンクション・・・・・・!」

 

とてつもない、必殺の一撃に僕は心が震えた。

恐らく駆動系と制御系のエネルギーを一手に集めて放出する必殺ファンクション。発動条件は少し厳しそうだが、その威力は絶大。

 

「【超プラズマバースト】か・・・・・・」

 

アキレスから放たれた必殺ファンクション【超プラズマバースト】を食らったウォーリアーは一撃でブレイクオーバー。

これで兄さんたちの決勝戦進出が決まった。

 

「やった!やったぁ!お姉ちゃんたち勝った!」

 

「ええ!勝ったわ!」

 

手を取り合って喜び合うメアとキヨカ。

僕は視線を兄さんたちに向けたまま。

 

「おめでとう、兄さん」

 

決勝戦進出へのお祝いの言葉を発したのだった。

その後行われたDブロックの勝者はユジンさん。Dブロック決勝でダイキさんと当たったが、ダイキさんの味方を犠牲にした攻撃に『正義の使者』(オタクロスの弟子)の何かが目覚めたのか反撃の許さない攻撃の末、銃系必殺ファンクションの【レインバレット】でフィニッシュを決めた。

まぁ、その際ダイキさんに対してキヨカが怒髪天を着くほどのお怒りをしていたのだが・・・・・・。ダイキさんには後でじっくり、たっぷりO☆HA☆NA☆SHIするといい笑顔で言っていたのが怖かった。うん。

そしてEブロック勝者は謎に包まれたチーム。灰原ユウヤチームだった。Eブロック決勝で灰原ユウヤチームと当たったのはハンニバル・ハーン選手と優勝候補の一人だったのだが、彼のLBX[カブト]の攻撃を全く受けつけず、運がいいと言うより、狙ってやったのか片手銃たったの5発でカブトをブレイクオーバーさせた。しかも全部駆動系部に当てて。

そんなありえない操作に僕は目が飛び出る程だった。チームメイトらしき二人はなにか計測らしきものをしていたが・・・・・・。

こうして第3回アルテミス決勝戦進出の5人が決まった。

 

Aブロック、海道ジン

 

Bブロック、マスクドJ(父さん)

 

Cブロック、兄さん

 

Dブロック、ユジンさん(オタクロスの弟子)

 

Eブロック、灰原ユウヤ

 

 

波乱の決勝戦がついに、始まる。

 

 

 

 

 

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