ダンボール戦機 英雄の弟   作:ソーナ

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回想 イノベーター編 Ⅹ 大会(アルテミス)・決勝

 

〜レイside〜

 

アルテミス決勝戦が始まるまでの間、僕はせっかくなので会場内のブースを見て歩こうと通路を歩いていた。

その途中。

 

「ん?あれは・・・・・・」

 

隠れてコソコソしている人物を見つけた。

 

「海道ジン?何してるんだ?」

 

通路の物陰からなにか窺っているのが気になり様子を見る。

気配を消して静かに、物音を立てずに海道ジンの見ている方を様子見る。

その視線の先には神谷重工のロゴマークが書かれたダンボールを荷台に乗せて部屋の中に入っていく、灰原ユウヤチームのチームメイト二人の姿があった。

 

「神谷重工?なんでそんなのがここに・・・・・・」

 

もし普通の荷物とかなら、なんの不思議もない。だが、神谷重工のロゴマークの入ったダンボールを荷台に乗せて部屋の中に入る、あの謎のチーム灰原ユウヤチームのチームメイトがいるなら話は別だ。それに海道ジンの視線も気になる。

部屋の戸が閉められ通路に誰もいなくなり僕は海道ジンに話し掛ける。

 

「ねぇ、なんで神谷重工のダンボールがあの部屋に運ばれたわけ?」

 

「っ!?」

 

バッとこっちを振り向く海道ジン。

その様子は驚いた表情だ。

 

「海道ジン。貴方なら何か知ってるんじゃない?」

 

「わからない。僕自身、お爺様が何を考えているなんて・・・・・・」

 

僕の問いへの答えを言う海道ジンはまさか、といいたげな表情だ。

だが、あの部屋に神谷重工のダンボールが運び込まれたことから、灰原ユウヤチームはイノベーターと断定するべきだ。

 

「そう」

 

これ以上ここにいるのは意味が無い。

そう判断しその場から立ち去る。

 

「山野レイ。君は何処まで見えてる」

 

背後から問い掛けられる海道ジンの質問に僕は海道ジンを見て。

 

「さぁね」

 

顔を半分振り向いて意味深に告げる。

別に僕は見えてるわけじゃない。ただ、予測しているだけ。

その場を後にし、決勝戦が始まるまでブースを周り―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ついに始まったか」

 

第3回アルテミス決勝戦がついに始まった。

ステージは火山。そしてバトル形式バトルロワイヤル。自分以外は全て敵だ。

兄さんはアキレスの武装である《アキレスランス》から森上ケイタさんから受け取った《水月棍》を装備している。どうやらアキレスランスにヒビが入っていたらしい。そのため、森上ケイタさんから譲り受けた水月棍を装備している。

他は予選と同じく変わりない。

ただ一人、着ている物が違うプレイヤーがいるが。

 

「灰原ユウヤのアレがCCMなの?」

 

「さぁ・・・・・・?」

 

灰原ユウヤの着ているものは今までの黒い服とは違い、紫紺のライダースーツみたいな変な服だった。その服のようなスーツに会場中から困惑の声が上がる。

特に咎められてもいないらしくそのまま進んでいく。

やがて5人のLBXがフィールドに降り立ち、MCの開始合図とともに同時に動きだした。

 

「・・・・・・凄い・・・・・・!」

 

「うん・・・・・・」

 

一身攻防の絶え間ない闘い。

一対一で()っても横から攻撃される。

目の前だけでなく、フィールド全てを把握。戦況を瞬時に理解しなければすぐさまOUTだ。

兄さんが最初に相手したのは海道ジン。マスクドJ(父さん)は灰原ユウヤとユジンさん(オタレッド)

しかし、その交差も長くは続かずすぐさま次の相手へと変わる。

最初の攻撃(ファーストアタック)を受けたのは兄さんのアキレス。そして、与えたのはユジンさんのビビンバードX。

 

「これがバトルロワイヤル・・・・・・!」

 

驚きと興奮が昂る中、僕は灰原ユウヤに注目していた。

 

「あのスーツがCCM・・・・・・ダイレクトに指示を送っているのか」

 

灰原ユウヤのLBX[ジャッジ]の動きを見て呟く。

あの反応速度は普通のCCMでは考えられない。脳から直接(ダイレクト)に指示を与えてるとしか考えられない。

 

「あんな技術力があるなんて・・・・・・やはり、灰原ユウヤの後ろには・・・・・・」

 

僕はすぐさま拓也さんとLEXにメールを送信する。

内容は灰原ユウヤとその仲間のことだ。

今の技術力ではどんなに高性能のCCMでも、LBXが受信するのにタイムラグが存在する。

しかし、今灰原ユウヤが着ているスーツなら脳から直接なためそのラグがない。だから、彼のLBXはスムーズに滑らかに動いている。

そのまま戦況は拮抗。

1対4というバトルロワイヤルに変化がないまま進む。

しかし、その変化はすぐに終わった。

突然、灰原ユウヤの髪が黒から白に変わり、ジャッジを緑色のエフェクトが包み込んだのだ。それは僕のクロノスの【クロノスタシス】モードや兄さんのアキレスの【V】モードと同じ感じだった。

 

「「っ!?」」

 

「なにっ・・・!?」

 

特殊モードが発動しているようなジャッジの速度(スピード)(パワー)に僕らは。いや、観客全員驚愕している。

 

「ユジンさん・・・・・・!」

 

ユジンさんのLBX。ビビンバードXはジャッジの攻撃が掠っただけでもダメージが入っている。

 

「―――ん?」

 

ジャッジがビビンバードXを相手にしてる中、アキレスはマスカレードJと切り結んでいた。

 

「父さん?」

 

父さんが何故今アキレスと切り結んでいるのか分からないが、恐らくなにか理由があるはずだ。

その間にも、ジャッジは海道ジンのエンペラーM2とビビンバードXを相手に余裕でいた。

 

「海道ジンの攻撃を受け止めるなんて・・・・・!」

 

「しかも押してる・・・・・・!?」

 

海道ジンの操作はこの5人の中でも一二を争う。

なのに余裕で相手をしている。

ユジンさんもオタクロスの弟子達のリーダーとしてLBXの腕はトップクラスだ。その二人からの攻撃をギリギリとかならまだしも、余裕でいるなんてありえない。

 

「あの二人、灰原ユウヤに何をしたんだ・・・・・・!!?」

 

灰原ユウヤの後ろでパソコンで何か情報収集しているチームメイト二人を鋭い眼差しで視る。

灰原ユウヤのこの状態には彼らが関わっているはずだ。

そう思っていると、ジャッジから凄まじい一撃の光刃が放たれた。

光刃の射線上にいたビビンバードXはギリギリ躱したが、アキレスは反応が遅れその一撃を受けるところだった。だが、その攻撃をマスカレードJがアキレスを押し出し、身代わりで受けた。

 

「っ!!・・・父さん・・・・・っ!」

 

幸いアキレスにはダメージは無かったが、ジャッジの一撃を受けたマスカレードJは破壊はされなかったものの、青白い光を発しブレイクオーバーとなった。

 

「たったの一撃でブレイクオーバー・・・・・・」

 

驚嘆するメア。

それも無理はないだろう。

僕らが驚いている最中も試合は進み、これで5人から4人となり、兄さんは海道ジンとやり始める。

その途端、灰原ユウヤに異変が現れた。

 

「っ!?」

 

「な、なに・・・・・・!?」

 

灰原ユウヤが突然苦しそうに声を上げ始めたのだ。

だがそれはほんの少しして収まったらしい。だが―――

 

「れ、レーくん、彼ちょっと怖い」

 

「うん・・・・・・」

 

両隣から怯えたように告げるメアとキヨカ。

僕も何が何だか分からない。

あの灰原ユウヤの状態に。

壊れたように笑ってLBXを操作しているのだから。

それは兄さんたちも手が止まるほどで、灰原ユウヤのジャッジがユジンさんのビビンバードXに襲い掛かり、身体を鷲掴みし火山ステージの遺跡柱に叩き付け、頭部を剥ぎ取ったのだ。

しかもそれだけに飽きたら無いのか、胴体部にジャッジの剣を何度も何度も突き刺し始めた。

その光景は一種のホラー映画を見てるようで寒気が走る。

慌ててユジンさんが止めに入るが、灰原ユウヤは不気味な笑みを浮かべただけで止めない。ユジンさんは悲鳴を上げてその場から逃げるように去るが無理もない。この場にいる全員、今の灰原ユウヤの奇行に怯えている。

そしてジャッジの矛先は兄さんと海道ジンのアキレスとエンペラーM2に向いた。

 

「速さ。(パワー)。すべてがさっきまでと違う・・・・・!」

 

後ろのチームメイト二人は端末を操作している。

だが、それもすぐに辞め端末を閉じるとその場から灰原ユウヤを置いて去り始めた。

 

「っ!彼を置いていくつもり!?」

 

「なんてこと!」

 

「っ!逃がさない!!」

 

僕はその場から立ち上がり。

 

「メア、キヨカ!二人はここで兄さんたちの状況を観ていて!僕はあの二人を追う!」

 

そう言うとその場から走り、彼らが出た方向に先回りする。

観客席から出る時に観た最後の灰原ユウヤの姿は右肩をさらけ出しそこに傷跡があり、苦しみながら涙を流す姿があった。

それを見た僕は息が詰まった。

それが、まるでルナみたいで。少しルナの姿と被った気がした。

 

「イノベーターァァっ!!」

 

隠しきれないほどの怒気を漏らして僕はイノベーターの名を口にする。

幸いまわりには誰もいなく聞かれなかった。

僕は走りながらCCMを取り出し連絡を掛ける。

 

「もしもし。―――そう、彼らを捕まえる。―――僕はあの二人を先回りするから―――さんは後ろから挟み撃ち。―――ああ、お願いするよ」

 

僕はCCMの会場見取り図を展開。

 

「恐らくデータとかを持って帰るためあの部屋に戻るつもりだ」

 

僕はそう予測し決勝が始まる前に見た彼らの部屋を目指す。

三分ほどでたどり着き。

 

「―――チームメイトの灰原ユウヤを置いて何処に行くつもり?」

 

丁度部屋から出て来た灰原ユウヤのチームメイト二人に言う。

 

「っ!?」

 

「だ、誰だ!?」

 

「僕が誰かなんてどうだっていいでしょ?それより、灰原ユウヤのあの様子は何?おまえ達、彼に何をしたの」

 

「「っく・・・・・・!」」

 

逃げ出そうとする二人は反対側へ走り去ろうとする。しかし、彼らの前に一人の男が立ちはだかった。

 

「悪いけど、今のあの子について詳しく聞かせてもらうよ」

 

鋭い眼差しで二人を視る。

やがて観念したのか二人はその場で大人しくなった。

逃げ出さないように男がロープで軽く縛る。

僕はその間に彼らの端末から灰原ユウヤについて調べる。

 

「―――どうだいレイ君。なにか見つかった?」

 

「ええ。これを―――」

 

問い掛ける男に僕は表示された情報を見せる。

そこには今の灰原ユウヤについてと、今日このアルテミスで行われたことがチェック項目リストとして表示されていた。

 

「これは・・・・・・!」

 

PSYCHO(サイコ) SCANNING(スキャニング) MODE(モード)

通称、Pスキャニングモード。

これの発動前提として、CCMスーツが必須となる。

恐らくこのCCMスーツというのは灰原ユウヤが着用していた服だろう。

これは、CCMを使用せずに、神経パルスを変換して直感的にLBXを操作する機材である。このCCMスーツが受け取った神経波を増幅させ、LBXを強化するのがPスキャニングモードである。

2050年、現時点ではまだ技術が未成熟なためかPスキャニングモードで、灰原ユウヤは精神負荷を大きく受け、凶暴・情緒不安定化が発生。そのため被検体である灰原ユウヤを廃棄することを指示受けた。

簡単に説明するとこんな感じで書かれていた。

 

「不味いな」

 

「どうしたの?」

 

「このままだとあの子の命が危ない」

 

「え?」

 

「ここ、精神に負荷を大きく受けたと書いてある。つまり、あの子のあの暴走は精神に関係しているということだ。このままだと、灰原ユウヤは精神崩壊は免れない・・・・・・!」

 

「なっ・・・・・・!?」

 

―――さんに告げられ僕は息を呑む。

そしてキッ!と捕らえた二人を睨みつける。

 

「灰原ユウヤを止める方法は?」

 

兄さんたちにO☆HA☆NA☆SHIする時と同じ冷たい声で問い詰める。

 

「わ、分からないっ!」

 

捕らえた二人の内片方が悲鳴をあげるように返す。

 

「本当だ!俺らは指示を受けただけだ!!」

 

もう片方もそう必死に言う。

 

「―――さん、止める方法はある?」

 

「・・・・・・あるとすれば、彼のLBX。ジャッジを破壊することだろうな」

 

「・・・・・・なるほど。直接操作してるなら、その操作元を破壊すれば止まるか」

 

「恐らく。俺もそういう系には疎いからな」

 

「ふむ・・・・・・」

 

灰原ユウヤを助けるにはジャッジを破壊するしかない。

だが、決勝が行われてる今外部からの干渉。つまり、僕らが直接手を出すことが出来ない。

助けられる可能性があるとしたら、海道ジンと兄さんしかいない。

 

「多分大丈夫」

 

「その根拠は?」

 

「兄さんと海道ジンがいるから。あの二人なら灰原ユウヤを助けられるはず」

 

僕の予想通りなら海道ジンは灰原ユウヤを助ける。必ず。

そして兄さんもやるはずだ。

 

「彼らは俺の部下が連れていく。あぁ、安心してくれ。信頼出来る部下だから」

 

「ふっ。了解です。なにか分かったら連絡してください」

 

「わかった」

 

それと同時に会場に負傷者の介護のため決勝を一時止めるアナウンスが流れた。

 

「やったんだね兄さん」

 

恐らく兄さんと海道ジンが灰原ユウヤを止めたのだろう。

そう思うと安堵した。

アナウンスでは10分後に再開すると流れた。

 

「じゃあ僕は戻ります」

 

「ああ」

 

「では、また。・・・・・・紳羅(しんら)さん」

 

僕は男―――紳羅さんに言って観客席へと戻った。

 

紳羅さん。フルネームは紳羅雪斗(ゆきと)

所属は、警察庁警備局警備企画課。つまり、公安の警察だ。

彼は僕らと同じくイノベーターについて調べてる。

だが、相手が先進開発省大臣である海道義光のため深くには至ってない。

彼がイノベーターの刺客や組織のメンバーではないのはすでに調べてある。もっとも調べてくれたのはあの人だけど。ハックとかそういうのは超一流の人だからね。

彼との出会いは約一ヶ月ほど前。丁度アキバでランキングを上げていた頃になるが―――

その話はまたの機会に。

 

 

拓也さんとLEXにこの事をメールし僕はその場から立ち去る。

席に戻りメアとキヨカから、兄さんと海道ジンが灰原ユウヤを止めたことを聞く。

聞き終えると決勝が再開し、フィールドには兄さんのアキレスと海道ジンのエンペラーM2の2機が同時にぶつかった。

その二人の戦いは先の戦いであるアングラビシダスを超えたものだろう。

一進一退のどちらも譲らない攻防。

アキレスが攻めればエンペラーM2は防ぎ、エンペラーM2がミサイルを発射すればアキレスは必殺ファンクション【ライトニングランス】を利用して相殺する。

誰も魅入る激しい戦い。

息をするのすら忘れるほどだ。

やがて両者とも強力な必殺ファンクションを発動させた。

エンペラーM2は【インパクトカイザー】。アキレスは【超プラズマバースト】を。

先に発動したのは【インパクトカイザー】の方だった。アキレスに地の奔流が命中しそうになったところ、アキレスが高くジャンプし上空に溜めた高エネルギーの塊とともに一直線にエンペラーM2へと突き進んで行った。

その威力はとてつもなく、火山ジオラマにある遺跡がほとんど半壊する程だった。

誰しもがこの一撃で決着したと思うだろう。

だが、その予想は大きくひっくり返り―――

 

「なっ・・・・・・!!」

 

「うそ・・・・・・っ!?」

 

「あの一撃に耐えるか海道ジン・・・・・・!!」

 

エンペラーM2は瀕死一歩前とでも言うのか、すでにボロボロだ。

だが、武器が。機体が、ボロボロでもその瞳に宿る闘志の火はまったく堕ちていなかった。むしろ、その逆、更に燃え滾っているように見える。

一直線に突き進むエンペラーM2。

エンペラーM2の攻撃を避けるアキレス。だが、すぐさまエンペラーM2の追撃がアキレスを襲う。

殴り吹き飛ばされ、さらにミサイルがアキレスに迫る。

アキレスはギリギリのところで《アキレスシールド》で多段ミサイルを防ぐが、防ぎきると同時に懐に潜り込んできたエンペラーM2のハンマーにより《アキレスシールド》がアキレスの手から離れ、すぐ後ろを流れる溶岩の川へと墜ちた。

前にはエンペラーM2。後ろは溶岩の川。

今のアキレスはまさに絶体絶命だ。

誰もが絶体絶命のピンチだと感じる中、兄さんは全く動揺せず、冷静に。落ち着いてCCMを操作し、絶体絶命の窮地から脱出しエンペラーM2の背後を取った。

すぐさまエンペラーM2も後ろを向き、アキレスへミサイルを発射する。

アキレスはそのミサイルを恐れることなく突き進み、ミサイルが当たる直前、《水月棍》の先端を地面に突き立て遠心力を利用してミサイルを躱し、カウンターでエンペラーM2の胴体部に《水月棍》を突き刺した。

 

「「「・・・・・・・・・・」」」

 

エンペラーM2がブレイクオーバーの青白い光を発光させるのを視るが僕らは呆然としていた。

ハッ!と戻ったのはMCによってだ。

その声に僕は。いや、僕らは兄さんが優勝したことを理解した。

 

「や、やった・・・・・・!やったよレーくん!!バン兄が勝った!!優勝したよ!!」

 

「うん・・・・・・。夢じゃ、ないん・・・・・・だよね」

 

「ええ」

 

呆ける僕にキヨカがほっぺたを引っ張って夢じゃないことを証明してくれた。少し痛かったけど。

 

「優勝・・・・・・兄さんが・・・・・・!!やったぁーー!!!!」

 

まるで自分の事のように嬉しかった。

兄さんがあの海道ジンを制し、この世界大会アルテミスの頂きに槍を突き刺したこと。

 

「メア!キヨカ!兄さんがやったよ!!優勝したよ!!」

 

「うん!うんっ!!」

 

「ええ!!」

 

僕らは手を取り合って歳相応にはしゃいだ。

周囲の観客席からも歓声の声があちこちから上がった。

ステージにいる海道ジンは少し嬉しそうに。いや、驚きと放心を半々にしたような表情で兄さんたちを観ていた。

そのまま何事もなく終わるのかと誰もが思った。

だが、イノベーターは海道ジンすらも知らない計画を立てていた。

突然ブレイクオーバーしたエンペラーM2の瞳に赤い輝きが灯り、アキレスを抱き締めて拘束しアキレスを道連れに自爆した。

 

「「っ!!?」」

 

「な・・・・・っ!!?なにっ!!??」

 

爆発音でステージを観た僕らに映ったのは、完全に破壊されたアキレスとエンペラーM2の姿だった。

急な出来事に優勝の歓声からシンと静まり返った静寂の空気が会場を包んだ。

 

「い、一体何が・・・・・・!」

 

「なんで急に・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

突然の衝撃に声が出ない。

海道ジンも何故という表情をしている。

恐らく彼にも理解出来てないのだろう。

そしてさらに。

 

「なに!?」

 

「え!?」

 

「なんなの!?」

 

いきなり会場の照明が落ち、辺りを暗闇が包んだ。

辺りからも困惑と動揺が上がる。

 

「なんで急に照明が・・・・・・」

 

「なにかの演出?」

 

メアとキヨカは辺りを見渡すが、僕は頭を働かせ―――

 

「っ!!まさか、この現象は!」

 

僕は嫌な予感が働き、すぐさまステージへと駆けた。

 

「兄さん!アミ姉!カズ兄!」

 

ステージに上がり込み兄さんたちに声をかける。

それと同時に。

 

「無事かみんな!」

 

僕と同じく上がってきた拓也さんも兄さんたちに声をかける。

 

「レイ!拓也さん!」

 

「拓也さん、今イノベーターのLBXがジオラマ内から飛び出してきたんですけど・・・・・」

 

「なに!?」

 

「まさか!!?」

 

兄さんの言葉に僕と拓也さんはすぐさまジオラマ内を覗き込む。

アキレスの残骸に視線を凝らし―――

 

「拓也さん、まさか・・・・・・!!」

 

「ああ。・・・・・・やられた。イノベーターにプラチナカプセルを奪われた!」

 

「「「えっ!!?」」」

 

拓也さんの言葉に驚愕する兄さんたち。

 

「プラチナカプセルが・・・・・・奪われた・・・・・・」

 

「そうか、これが狙いだったのか・・・・・・!」

 

「バトル中による破壊ではデスロックシステムは作動しないから・・・・・・!」

 

「ああ・・・・・・。くそっ!」

 

僕の言葉に悪態を吐く拓也さん。

まさかイノベーターがこんな手段を取るとは思いもしなかった。

 

「ジン!こんな汚い手を使うなんて!!やっぱりお前もイノベーターの。海道の仲間ってことだ!!」

 

「そうよ!初めからそのつもりだったんでしょ!」

 

カズ兄とアミ姉が海道ジンに詰めよって言う。

海道ジンも困惑したようにカズ兄とアミ姉に言い返す。

 

「違う!僕はそんなの知らない!!」

 

「嘘つけ!」

 

「本当に何も知らないんだ!!」

 

海道ジンの言葉を信じようとしないカズ兄とアミ姉。

 

「カズ兄、アミ姉!海道ジンは何も知らないと思う!」

 

海道ジンを庇うように二人に告げる。

 

「レイ!?」

 

「どうしてそんなことが言えるんだよ!?」

 

「海道ジンがこんな汚い手を使うと思う!?もし汚い手を使うなら他のLBXに破壊させたり、灰原ユウヤを兄さんと協力して倒すわけないでしょ!!?」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

「そうだけどよ・・・・・・」

 

僕の言葉に二人とも落ち着いたのか、やや不機嫌に返す。

 

「僕はこの事を海道ジンが知っていたとは思えない。知っていたら兄さんたちに警告を発したりしないでしょ?」

 

「「うぐっ・・・・・・」」

 

僕の説得に二人は返す言葉がないようだ。

 

「山野レイ・・・・・・」

 

「別に庇ったわけじゃない。僕は貴方がこんな卑怯な手を使うわけないって思ったから言っただけ」

 

海道ジンにそう言い海道ジンの眼を見る。

 

「・・・・・・失礼する」

 

海道ジンはそう言うとステージから飛び降り、足速に去っていった。

その後僅かな照明が会場を照らしたが、続けて流れたアナウンスに会場内からはブーイングの声が溢れた。

照明機器のトラブルにより、閉会式を省略すると言ってるが恐らく何かあったはずだ。何かが―――

そこに僕のCCMに紳羅さんから連絡が来た。

 

「はい」

 

『レイ君、ヤツらやりやがったぞ!』

 

「え?」

 

『メタナスGXが強奪された!!しかも、その警護をしていた警備員まで・・・・・・!!』

 

「な・・・・・・ぁっ!!」

 

紳羅さんからの連絡に僕は目を見開いた。

ついに死傷者が出てしまった。

こんなの過去にも先にも今回が初めてだろう。

 

「紳羅さん、こっちもプラチナカプセルが強奪されました!!」

 

『なにっ!?』

 

その後、閉会式を省略され観客は係員の案内に従って速やかに会場から外に出た。

メアとキヨカは剛田さんたちに預け、僕は兄さんたちと共に控え室に移動した。

控え室の外では警備員が慌ただしく走り回っている音が響く。

 

「兄さん・・・・・・」

 

兄さんの手に持つ白い箱の中には破壊されたアキレスの残骸が納められている。

今の兄さんに僕は声を掛ける言葉が見つからなかった。

やがて拓也さんの携帯に連絡があり、拓也さんもメタナスGXが強奪された件を知った。

後にこの事はニュースで大々的に報道され、SNSなどで大きな話題となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在

 

 神威島

 

 

 

「―――なるほどね。そんな事があったの」

 

「お姉ちゃん・・・・・・」

 

第三回アルテミスまでの事をフランとルナに話し、フランは感慨深く。ルナは哀しそうに答えた。

 

「ルナ、里奈さんのことは里奈さんのせいじゃないから」

 

「わかってるよメア。でも、お姉ちゃんが私のためにレイや拓也さんたちを裏切ったんだなって聞いたらちょっと悲しくなって・・・・・・」

 

「仕方ないよ。僕らか大切な家族。どっちかを取れって言われたら誰でも家族を取るもん」

 

そう。あの時の里奈さんの決断は間違ってはいない。

僕らが里奈さんにその事を責めるのはお門違いだから。責めるなら原因を作った海道義光にだ。

その事を思い返していると。

 

「そうよ。悪いのは里奈さんじゃなくて海道義光。ルナが気にすることないわ」

 

後ろの方から一人の少女の声が聴こえてきた。

振り返って見ると、そこには紫のシャツにベージュのロングスカート、紺のカーディガンを羽織ったもう一人の仲間仙道キヨカの姿があった。

 

「ゴメンなさい。遅くなったわ」

 

「ううん。フランとルナにイノベーターのことを話していたから」

 

謝ってくるキヨカに僕は苦笑して返す。

キヨカはそのままルナの横に座り、僕らと同じくその場に寝っ転がる。

 

「それでその後イノベーターとの戦いはどうなったの?」

 

「うん。私も聞きたい」

 

「OK。でも、ここから先はあまり気分が良くないよ」

 

フランとルナの懇願に僕は起き上がり、空を見上げて言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この先のことは僕のトラウマ。

助けられなかった。目の前で亡くなった二人。

とても悲しく、切なく、悔しく、無力な自分を呪った戦い。

激しくさらなる強者との戦いに挑んだ。

そして、みんなで力を合わせて世界を救った物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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