~レイside〜
「・・・・・・・・・・」
悠介さんが霧島さんの身代わりとなって亡くなった2日後。
僕は一人で河川敷にいた。
何もせず、ただボーッと川を眺めてる。
そこに。
「レイ君」
「紳羅さん・・・・・・」
紳羅さんが歩いてやってきた。
「レイ君。その・・・・・・大丈夫・・・・・・か?」
「ええ」
川を見ながら返事を返す。
悠介さんの最後の言葉を思い出しながら。
2日前
イノベーターによるLBX2万5000機以上のタイニーオービット社襲撃を阻止し、これで一件落着かと思われた。
だが、結城さんが造ったエターナルサイクラーのサンプルユニットが霧島さんと呼ばれた男に強奪され、社外に持ち出された直後に僕と悠介さんで追い詰めた。だが、エターナルサイクラーはイノベーターの青の部隊の男に横取りされ、トラックに轢かれそうになった霧島さんを庇い、悠介さんが―――
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」
悠介さんが僕の目の前でトラックにぶつかったのを見て悲鳴をあげる。
悠介さんとぶつかったトラックはそのまま通り過ぎていく。
「悠介さんっ!!」
トラックが通り過ぎた後、僕は悠介さんに駆け寄り手当をしようとする。
悠介さんの状態はすでに瀕死だ。
あちこちから血が流れでている。
少しでも止血しようと、持っていたハンカチで血止めをしようとする。
「っく!」
周囲を見てすぐ近くに兄さんとジンがいるのを見て。
「兄さん!早く救急車を!!急いで!!」
兄さんに言うが兄さんは反応しない。
「ジン!!早く!!」
「わ、わかった!」
すぐにジンに言い、ジンはすぐに救急車を呼び始める。
「悠介さん!しっかりして!!悠介さん!!」
涙声で悠介さんに呼び掛ける。
その声に悠介さんは少しだけ反応し、目を薄く開けた。
「レイ・・・・・・君・・・・・・か・・・・・・?」
「はい!」
着ていた上着も使って圧迫止血するが、血の流れは止まらない。
「霧島さんは・・・・・・」
「あの人なら無事ですよ」
キッと霧島さんを睨みつけて言う。
当の本人たる霧島さんは意味が分からないと言った顔で立ち尽くしてる。
「そうか・・・・・・ごフッ・・・・・・!」
悠介さんの口からも血が流れ垂れる。
「喋らないで!すぐに救急車が来ますから!!」
今ここで悠介さんを死なせる訳にはいかない。
タイニーオービット社には悠介さんがいないとダメだから!
僕らには悠介さんがいないとならないから!
しかし、僕の願いを嘲笑うように悠介さんから流れる血は止まらない。
「っく!」
懸命に手で抑えたりして出血を止める。
僕の服が血塗れになるがそんなの知ったことか。悠介さんを助けるためなら!
「レイ君・・・・・・私は・・・・・・もう、助からない・・・・・・」
「いいから!黙ってて!!」
喋ると余計血が出る。
だから悠介さんにお願いするように言う。
「レイ君・・・・・・私の言葉を・・・・・・ごフッ・・・・・・拓也たちに伝えてくれ・・・・・・」
「そんなの後で!悠介さんが自分で言って!!お願いだから!!」
救急車はまだなのかもどかしい。
今は一分一秒だって無駄にしたくない。
「本当に・・・・・・優しい・・・・・・子だ・・・・・・」
悠介さんの声は徐々に覇気が無くなってきてる。
「っく!」
「レイ君・・・・・・彼を・・・・・・ゴホッ・・・・・・霧島さんを責めないで・・・・・・やってくれ・・・・・・」
「っ!」
悠介さんの視線は今も呆然と立ち尽くす霧島さんに向いてる。
「彼の行動は・・・・・・私のせいでも・・・・・・あるのでな・・・・・・」
「悠介さん・・・・・っ!」
僕の右手を残り少ない力で握りしめる悠介さん。
「頼む・・・・・・!」
「っ・・・・・・!わ、分かり・・・・・・ました・・・・・・っ!!」
「拓也には・・・・・・ゴホッ・・・・・・会社を・・・・・・頼む、と・・・・・」
「はい・・・・・・っ!!」
「雪斗には・・・・・・約束を守れず・・・・・・ゴホッ・・・・・・済まない、と」
「はい・・・・・・っ!!」
「霧野くんには・・・・・・これからは・・・・・・拓也を・・・・・・助けて欲しい、と」
「はい・・・・・・っ!!!」
「結城くんには・・・・・・何としても・・・・・・ごフッ・・・・・・エターナルサイクラーを・・・・・・もう一度・・・・・・造って拓也に・・・・・・渡してくれ、と」
「はい・・・・・・っ!!!」
「ゴホッ・・・・・それと・・・・・・レイ君・・・・・・」
「はい・・・・・・っ!!」
「さっきの・・・・・・言葉・・・・・・とても・・・・・・心に・・・・・・響いたよ・・・・・・君は・・・・・・がホッ!・・・・・・みんなの光・・・・・・だ・・・・・・」
「光・・・・・・?」
「・・・・・・君なら・・・・・・絶対に・・・・・・どんな・・・・・・困難も・・・・・・乗り越え・・・・・・・られる・・・・・・はず・・・・・・だ」
「悠介さん・・・・・・っ!」
「あとは・・・・・・・・・・・・任せたよ・・・・・・・・・山野レイ君・・・・・・・」
「・・・・・・
「・・・・・・・―――」
悠介さんは僕にそういうと静かに目を閉じた。
直感的に悠介さんの生命の灯火が燃え尽きたことを感じた。
悠介さんの亡骸に手を当てて溢れんばかりの涙を流す。
救急車と警察ではなく、紳羅さんの部下である公安の捜査官が来たのはそれからしばらくしての事だった。
今
悠介さんの最後の言葉を思い出し、僕は紳羅さんにエターナルサイクラーの行方を聞く。
紳羅さんの方も行方が分からないそうだ。
悠介さんに衝突したトラックは、自動で動くようハッキングされており仕掛けたのは状況的にイノベーターとの事だ。
「僕がもう少し早く気付いていれば・・・・・・!!」
トラックが来たことに気づいていたら結果は変わったのかもしれない。
もしくはあの時、霧島さんを見たその時に捕まえればエターナルサイクラーを奪われることもなかったのかもしれない。
「あまり自分を責めるな」
「紳羅さん・・・・・・」
「たらればを言っていたところで過去は変えられん」
「でも・・・・・・!」
「今は
紳羅さんは両手を強く握りしめ、血が滲んでいた。
「悠介の分の思いまで俺たちは受け継いでいかないとならん。それが、残された者の責務だ」
「・・・・・・はい・・・っ!」
瞳に力強い、眩い灯火を灯し返事をした。
~レイside out~
~メアside〜
「レーくん、大丈夫かな・・・・・・」
悠介さんが事故にあって亡くなった2日後、私はキヨカちゃんと私の部屋で二人きりで話していた。
「心配ね・・・・・・」
「バン兄も心配だけど、私はレーくんが一番心配」
私とキヨカちゃんの心中はレーくんの心配でいっぱいだった。
「学校にも来てなかったし、家に行っても朝早くから出かけていていないってお義母さん言ってたし」
今日は平日。
つまり学校がある日なのだが、同じクラスにいるはずのレーくんは休んでいた。
それは昨日もで、昨日は昨日でずっと自室に篭もって魘されながら眠っていたらしい。
「ルナちゃんの所にも顔出してないみたいだし」
私とキヨカちゃんの間の空気が重くなる。
「・・・・・・メア」
「なぁにキヨカちゃん?」
「メア、レイのこと好きなの?」
「ぶッ!ゲホッ!ケホッ!」
キヨカちゃんの唐突の質問に吹き出してしまった。
気管に水が入り詰まる。
「ケホッ、コホッ!な、なななな、いきなり何キヨカちゃん!?れ、レーくんのことす、すすすす、好きなんて・・・・・・///」
顔を真っ赤にしてキヨカに言う。
い、いきなり好きか聞かれるなんて・・・・・・!
「その反応で答えを言っているようなものでしょ?」
「き、キヨカちゃ〜ん!!」
呆れたように言うキヨカちゃんの肩をポカポカと叩く。
「そ、そういうキヨカちゃんはどうなの!?」
せめてものの反撃にキヨカちゃんに聞く。
「私?私はレイのこと好きよ?」
「ファっ!?」
何を当然のことを?とでも言いたげに返すキヨカちゃん。
あまりのその反応に変な声が出てしまう。
「え、えと、好きって・・・・・・」
「メアの想像している通りネ」
「――――――」
まさかの
「メア?」
「っは!」
「あ、戻ってきた」
「ま、まま、負けないよ!キヨカちゃん!」
何かわからないけど、キヨカちゃんにそう口走っていた。
絶対キヨカちゃん、将来クール美人になりそうだもん!
レーくんの好みのタイプがどんなのなのか分からないけど、絶対目を引くよ!
頭の中で少し幼い私が次々に言う。
「まあ、ルナもかもだけど」
「え?」
今ルナちゃんの名前が出たような・・・・・・。
んーーっ!!我が幼馴染みながら
レーくんに少し文句を浮かべた。
それからキヨカちゃんとレーくんのことやルナちゃんのこと。イノベーターの事など話し―――
〜メアside out~
〜レイside〜
翌日
「―――母さん。行ってくる」
「ええ。気をつけるのよ」
「うん。兄さんのこと、お願い」
「分かってるわ」
悠介さんが亡くなって既に3日が過ぎた。
何時までもこのままじゃダメだと。悠介さんの遺志を果たせないと思い、覚悟を決め行動に移しだした。
この間まで着ていた服から、新たな装い。
黒いズボンに、白のシャツの上に紺のブレザー。
悠介さんの意志を受け継いだ、僕の覚悟の装いだ。
着ていた服は母さんが血のシミ抜きをしてくれてクローゼットの中にある。
兄さんは今部屋で寝込んでる。
悠介さんの死を目撃し未だに立ち直れていないのだ。無理もないが。
僕は悠介さんの最後の言葉を聞いた以上、こんな所で立ち止まってはいられない。必ずイノベーターの野望をぶち壊す!
玄関の扉を開けて家を出て、タイニーオービット社に向かう。
拓也さんたちに悠介さんの最後の言葉を言うために。
そして、イノベーターの野望を止めるために。
その覚悟を胸に、僕は家を出て近くに停めてあった紳羅さんの車に乗り、紳羅さんとタイニーオービット社へ向かった。
そして、タイニーオービット社で拓也さんたちに悠介さんの最後の言葉を遅くなったが伝える。
もう、迷わない。
悠介さんの。悠介さんが託してくれた、あの言葉と[カオス]に搭載しているCPU『カオスレインW:EX』に誓って。
これ以上の悲劇と惨劇を繰り広げないために、僕は前に進み始めた。