ダンボール戦機 英雄の弟   作:ソーナ

33 / 120
回想 イノベーター編 ⅩⅧ 黒幕解明

 

~レイside〜

 

メアたちを救出し、イノベーターの最終目的がLEXからのメールで判明した。

イノベーターの最終目的、【フェアリーテイル計画】とは、世界の心臓と呼ばれるエネルギープラント【タイラントプレイス】を破壊し、エターナルサイクラーを利用して世界征服を企むものだった。

そして、【サターン】と呼ばれるミサイル要塞は既に発射準備とカウントダウンが始まっていた。

最終決戦に備え、僕らは各々準備を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【サターン】発射まで、残り10時間

 

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

僕は今ルナの眠る病室にいた。

 

「ルナ・・・・・・」

 

ルナの心電図は通常通り動いており、ルナが生きていることを表している。

傍にはメアとキヨカの二人もいる。

 

「あら。来ていたのね、みんな」

 

ドアがスライドし、そこからルナの姉の里奈さんが花を入れた花瓶を持って入ってきた。

 

「里奈さん」

 

「ええ。あと数時間で決戦なので」

 

「そう。ルナも喜んでいると思うわ。特に、レイ君が来てくれて」

 

「?」

 

里奈さんの最後の言葉の意味が判らずハテナを浮かべる。

 

「っ~〜〜!」

 

「メア。どうどう、よ」

 

なんかメアとキヨカがコントみたいな事してる。

そこに。

 

「ん?」

 

病院なので、携帯端末をマナーモードにしてるため、着信音ではなくバイブレーションの振動を感じ、端末を取り出す。

取り出すと、相手はオタクロスだった。

 

「ごめん、ちょっと電話」

 

病室から抜け出し、離れたところに移動し通話する。

 

「もしもし?」

 

『おー、ワシデヨ』

 

「知ってる。要件は?」

 

『相変わらず素っ気ないの~・・・・・・ユジンたちの準備は17時には完了するデヨ』

 

「了解。何人くらい?」

 

『ユジンらにヤマネコらハッカー軍団十数人と言ったところかの』

 

「わかった。助かる」

 

通信を切り、八神さんと拓也さんに連絡する。

窓から見える風景は昼下がりの太陽の輝きが僕を照らしていた。

あと数時間。

それで―――

 

「世界の命運を懸けた戦いの開始だ」

 

カツンっ、と靴音を鳴らしてルナの病室に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

時刻は午後17時。

サターン発射まで、残り3時間と迫っていた。

最終ブリーフィングを行うため、主要メンバーはタイニーオービット社の中にあるシーカー本部に集まっていた。

この場には、僕らを始めとして、ダイキさんも、郷田四天王たちもいる。

 

「―――サターンが発射される20時まで、あと3時間だ。これより、作戦の確認を行う」

 

拓也さんが言うと、中央の空間ウインドウにサターンの概要が表示される。

「これが、【フェアリーテイル計画】の要である、巨大ロケット【サターン】だ。サターンには、小型の超メガトン級爆弾【ドングリ】を搭載した、自律稼動型LBX【フェアリー】が、大量に積み込まれている。世界最大のエネルギープラント、【タイラントプレイス】を破壊するために」

 

まさに絶望の方舟だ。

続けて新たな画面が表示される。

 

「真野さんによるハッキングと、オタクロスからの情報によって得た情報によると、数多くの対空砲台に加え―――」

 

画面に、対空砲台となにかアンテナのようなものが表示される。

 

「―――対空迎撃システム、【フェンス】も装備されている。強力なビームフィールドを展開する、防御兵器だ。ビームの幕が近づくもの全てを破壊する」

 

「まさに、空飛ぶ要塞だね」

 

「サターンの発射予定時刻は20時。その30分前には、研究所各員は待避所に移動し、研究所は手薄になる。俺たちは、そこを狙ってサターンの発射を阻止する!」

 

新たに、画面がサターンからイノベーター研究所の上空映像へと切り替わる。

 

「俺と里奈。バン、アミ、カズ、ジン、レイ、メアは潜入班として、イノベーター研究所司令室を目指す!」

 

「残りの者は、私と共にエクリプスで待機だ!」

 

「エクリプスによる、潜入班のピックアップは20時15分だ。それまでに、作戦の全てを完了させなければならない。失敗は許されない。以上だ!!各自、それぞれ準備を始めてくれ!」

 

そう。失敗は絶対に許されない。

失敗は、この世界の絶望と同義だ。

必ず、阻止せねばならない。

右手を強く握って心の中で言っていると。

 

「・・・・・・メア」

 

メアが右手を両手で優しく包んだ。

 

「大丈夫だよレーくん。私たちなら絶対・・・・・・」

 

「そうよ。私たちならね」

 

「キヨカ・・・・・・」

 

二人に言われ冷静を取り戻す。

 

「ありがとう、二人とも」

 

僕らは支度を整えるため、本部から出て近くの部屋に行く。

部屋の中で、それぞれ愛機のLBXのメンテナンスをする。

メンテナンスに関しては、さすがタイニーオービット社。

超高性能な器具が揃っているため、メンテナンスしやすかった。

そして、時間になり僕とメアは拓也さんたちとともにイノベーター研究所へ。キヨカは八神さんたちとともに、エクリプスへ向かった。

タイニーオービット社からイノベーター研究所へは、車で向かう。

拓也さんの方には里奈さん、兄さん、ジン、アミ姉、カズ兄が。

僕とメアは―――

 

「―――ああ。それで頼む。俺は彼らと行動する」

 

紳羅さんの車で向かっていた。

運転しているのはもちろん紳羅さんだ。

紳羅さんは今運転しながら、通信で部下に指示を出している。

それは僕もで―――

 

「―――了解。各自調整に入って」

 

ユジンさんやヤマネコたちに指示を出す。

すでにユジンさんたちは八神さんたちと合流して、エクリプスで待機している。

それからしばらくして、僕らはイノベーター研究所へたどり着いた。

たどり着いたはたどり着いたのだが・・・・・・

 

「湖?」

 

目の前に広がるのは湖だった。

どう見ても入り口とか、研究所とか何も無い。

兄さんたちも首を捻っている。

誰がどう見ても、目の前にあるのは湖の水だ。

だが・・・・・・

 

「これ、水じゃないよね?」

 

「え?」

 

「ああ。これは全て、ホログラムだ」

 

「「「「えっ!!?」」」」

 

里奈さんの言葉に驚く兄さんたち。

ホログラム。つまりは、立体映像。

それをこんな広大に展開するなんて・・・・・・。

けど―――

 

「どうりで水の匂いがしないわけだ」

 

「立体映像で水面を創り、施設を隠しているからな」

 

水独特の湿った匂いが全くしなかったからわかった。

カズ兄が、恐る恐る立体映像の水に手をつけ。

 

「ホントだ。スッカスカだぜ!」

 

立体映像だと分かり驚嘆した。

 

「時間がない。行くぞ」

 

「ええ」

 

紳羅さんと拓也さんを先頭に、僕らは立体映像の張られた湖の中へと入っていく。

見る人によっては、まるで入水自殺しようとしてると思われるだろう。

ま、そんな見てる人なんていないけどね!

立体映像が張られた湖の中に入ると、驚くことに中は超高度な建物が建てられていた。

研究所というが、規模がデカい。

ホログラムから突き出ないよう高さは一定だが、この湖全体が研究所なのだろう。

歩いていると、施設のどこからか『サターン発射、30分前です。各職員は、至急待避所に移動してください』とアナウンスが流れた。

辺りを軽く見渡すが、人気が全く無い。

研究所入口に着き。

 

「オタクロス、頼む」

 

里奈さんが手に持つタブレット端末で開けようとするのを紳羅さんが止め、代わりに小型の端末を取り出し左耳につけていたイヤホンでオタクロスにお願いする。

 

『任せるデヨ』

 

僕の左耳にも同型のイヤホンが着いているため、オタクロスの声が聞こえてくる。

オタクロスが言うとわずか数秒で入口が開く。

 

「行くぞ」

 

開いた入口から紳羅さんが先頭になって入り、拓也さんと里奈さん。兄さんたちも続いて入り、殿に僕が入る。

研究所内部へ入って少しすると、左側のガラス張りから大きな巨大ロケットが見えた。

 

「あれがサターン・・・・・・」

 

【サターン】に思わず脚を止めてしまう。

それほどまでにデカく、巨大なロケットなのだ。

 

「アレを発射させるわけにはいかない・・・・・・」

 

「急ぐぞ!」

 

時間はもう残り20分足らず。時間が無い。

僕らは再び奥へと駆け出して行った。

それから、隠密行動を取って奥へ行き、エレベーターで司令室のある地下60階へと降りる。

エレベーターで下に降りる中、再びアラートのアナウンスが流れ警報音が鳴り響く。

エレベーターから降りた僕らは一気に司令室へ目指し走る。

途中でイノベーターの武装警備員を目撃したが、僕らに気づいた様子はなくどこかへ駆けていく。

 

「司令室はすぐそこよ!」

 

一本道を走り少し広い広間に出た。

どうやらその奥が目的地の司令室らしい。

そこに。

 

「!?」

 

何かの物音と機械音が耳に入った。

それと同時に、視界の隅に入った近くの床に何かの影が出ていた。

その影は一直線に兄さんへ向かう。

 

「兄さん止まれ!」

 

「っ!危ない!!」

 

僕の声とジンが兄さんの肩を掴み制止させギリギリの所でその何かに当たらずに済んだ。

 

「どうしたんだジン!?レイ!?」

 

「敵だ!!ゼノン、起動!!」

 

「疾くと舞え!カオス!!」

 

ジンのゼノンと同時にカオスを起動させる。

ゼノンはそのまま両手斧を影がある場所に振り下ろす。だが、その影は後ろに飛んで避ける。

僕らは四方の隅に避け、その何かを警戒する。

ゼノンと背中合わせに警戒をし。

やがて、その影の主がゼノンの前に姿を現した。

 

「「「「「「っ!!!?」」」」」」

 

その姿の主に僕らは息を呑んだ。

それは右手に銃系の武器を持った、ピンク色を基調としたLBXだった。

そしてそれは、僕らのよく知ってるLBXで―――

 

「フェアリー・・・・・・!!」

 

自律稼動型LBX[フェアリー]がそこにいた。

そしてそれはゼノンの前にだけではなく。

 

「っ!もう一機・・・・・・!!」

 

カオスの前にも同じく姿を現した。

こっちは武装は銃ではなく、《ゴライアス》で戦った[カイザ]と同じく片刃の反ったビーム刃の片手剣だった。

銃を持ったフェアリーをフェアリー(ワン)。剣を持ったフェアリーをフェアリー(ツー)と呼ぶ。

ゼノンとカオスがほぼ同時に動き、相対するそれぞれのフェアリーへと突進する。

それぞれのフェアリーはカオスとゼノンの攻撃を、軽やかに舞ってよける。

舞って避けたフェアリーは飛び上がり透明になって見えなくなった。

 

「逃げたのか?」

 

拓也さんが呟く。

 

「いや、まだ居る」

 

「ええ。何処かに・・・・・・」

 

僕らがそう言うのと同時に、カオスとゼノンの背後からフェアリーが姿を現し攻撃してきた。

ゼノンにはフェアリーⅠの銃弾が。カオスにはフェアリーⅡの刃が。

それぞれギリギリの所で避ける。

 

「これが、サターンに積み込まれてるフェアリー!」

 

「AX―00の完成系だ」

 

「学習して進化するLBX・・・・・・!」

 

正直厄介だ。

学習するということは、動きやパターンなど全てが読まれるからだ。

カイザーは特殊モードで勝てたが・・・・・・。

まぁ、それでも負ける気は無いね。

 

「行け、オーディーン!!」

 

「フェンリル!!」

 

「パンドラ!!」

 

「行くよ、アテナ!!」

 

兄さんたちもLBXを起動させる。

フェアリーⅠにオーディーン、ゼノン、パンドラ、フェンリルが。

フェアリーⅡにカオスとアテナが。

それぞれの武装を構えて相対する。

 

「メア、いける?」

 

「もちろん!」

 

フェアリーⅠを兄さんたちに任せ、フェアリーⅡへ集中する。

 

「カオス、GO!」

 

カオスの斬撃をフェアリーⅡは苦もなく受け止める。

 

「っ!メア!」

 

「任せて!」

 

アテナの細剣による刺突をフェアリーⅡは軽やかに舞って避ける。

 

「これが自律稼動型LBXフェアリーか・・・・・・AI搭載型というのは厄介だな」

 

紳羅さんが僕とメアの傍で言う。

兄さんたちも苦戦しているようだ。

姿を消す・・・・・・というより、透明化してくるというのが一番厄介だ。

何処から現れるのか分からない。

 

「っ!」

 

カオスの背後に現れたフェアリーⅡの刃をカオスの右の剣《フェンガーリ》が受け止める。

すぐさまメアのアテナがフェアリーⅡに攻撃するが、フェアリーⅡはバックステップで下がり、またも透明化になる。

 

「また!」

 

思わず悪態吐くメア。

 

「レイ!磁場爆弾を使う!一箇所に集めてくれ!」

 

「わかった!メア!」

 

「うん!」

 

カズ兄の声に返事をし、メアと共にフェアリーⅠの方へと接近させる。

絶え間なく連携で攻撃を繰り返し、フェアリーⅠとフェアリーⅡに互いに接近させ、あえて隙を作り。

 

「今だ!!食らえっ!!」

 

フェアリーが上に飛び上がった瞬間にフェンリルが磁場爆弾を放る。

磁場爆弾はフェアリーに当たり、フェアリーの透明化が解けた。

 

「よっしゃ!」

 

「今だ!!」

 

フェンリルがフェアリーⅠを。フェアリーⅡをカオスが、透明化が解除され見えるようになった両機を攻撃しようとする。

だが―――

 

「っ!?なにっ!?」

 

「磁場爆弾が効かない!?」

 

透明化が解除されたのは一瞬で、すぐに再び透明になった。

磁場爆弾の影響で透明になることは出来ないはずなのに!

まさかの事態に全員驚愕する。

その隙をつき、フェアリーⅠがフェンリルを強烈な一撃で壁際まで吹き飛ばし、フェンリルをブレイクオーバーにする。

 

「なっ!?一撃でフェンリルを!?」

 

「嘘だろ・・・・・・なんてヤツだ」

 

「っ!レーくん!」

 

「ハッ!」

 

カオスの真後ろにいたフェアリーⅡの斬撃を紙一重で受け止める。

 

「っく!」

 

「このっ!!」

 

アテナの刺突をまたしても避けて透明化するフェアリーⅡ。

 

「パンドラ!!」

 

「っ!?お姉ちゃん!」

 

兄さんの方を見ると、フェアリーⅠにパンドラが蹴り飛ばされフェンリルと同じくブレイクオーバーしていた。

 

「メアっ!」

 

「っ!」

 

フェアリーⅡの切り裂きがアテナを襲う。

ギリギリの所で受け止めるアテナ。

 

「くそっ!」

 

悪態を吐く僕。

隙が無さすぎる。

弱点でもあれば・・・・・・・

 

「弱点?・・・・・・っ!」

 

ハッ!と思い出しフェアリーⅡの動きを視る。

 

「メア!透明になる隙を与えるな!」

 

「わかった!」

 

カオスとアテナの連携でフェアリーを攻撃する。

絶えず攻撃をし、フェアリーⅡに攻撃をする隙間を無くす。

二刀と細剣による連携攻撃。

メアとの阿吽の呼吸で攻めていき、反撃の隙間を無くす。

 

「すげぇ」

 

「バンとジンもだけど、レイとメアの連携もさすがね」

 

カズ兄とアミ姉が感嘆の声を漏らす。

それと同時に、フェアリーの透明化の対処法を考える。

そしてフェアリーの透明化と解除後を思い出し―――

 

「っ!!」

 

AIにより、徐々に動きの良くなったフェアリーⅡは、バックステップで距離をとり透明になって消えた。

 

「分かったぞ、フェアリーの弱点!!」

 

「レイ?」

 

「兄さん!ジン!メア!影だ!!」

 

「影?」

 

「フェアリーは自身の姿は消せても、足元の影までは消せない(・・・・・・・・)んだ!!」

 

「っ!そういう事ね!」

 

僕の言葉にアミ姉が理解したようだ。

 

「影だと?」

 

「影・・・・・・っ!そういうこと!」

 

メアはすぐさま周囲を見渡し―――

 

「そこっ!!」

 

アテナを影が出ている場所に向かって突進した。

アテナの細剣が透明化していたフェアリーⅠにヒットし、フェアリーⅠの透明化が解除される。

 

「そこだっ!」

 

兄さんとジンもフェアリーⅡの透明化を解除し。

 

「必殺ファンクション!!【アタックファンクション!ストームソード!!】」

 

アテナの放った剣風の竜巻が二機のフェアリーを捕らえる。

 

「今だよ!」

 

「ああ!!」

 

「「「必殺ファンクション!!」」」

 

「【アタックファンクション!!ヴォーパル・ストライク!!】」

 

「【アタックファンクション!!グングニル!!】」

 

「【アタックファンクション!!ブレイクゲイザー!!】」

 

メアの作ってくれた好機を逃さず、カオス、オーディーン、ゼノンからそれぞれ必殺ファンクションが放たれる。

放たれた三つの必殺ファンクションは縺れているフェアリーに当たり、爆発を起こす。

 

「よし!」

 

「やったね!」

 

「やった!」

 

「ああ!」

 

メアと軽くハイタッチしフェアリー撃破の喜びを噛み締める。

 

「こんなLBXがサターンには大量に・・・・・・」

 

「しかも、超小型のメガトン爆弾を積んでいる・・・・・・」

 

「絶対に阻止しないと・・・・・・」

 

天井の光による影があったからなんとか撃破出来たが、もし影がなかったらここでやられていたかもしれない。

そう思いながら、目の前にある扉へと進む。

そこに再びアラートの警報音とアナウンスが響く。

扉の奥へ入り、司令室へと侵入する。

司令室には誰もいなく、奥のモニターにサターンの発射カウントが表示されていた。

時間は残り4分だった。

すぐさま紳羅さん、拓也さん、里奈さんがサターンのコントロールシステムに侵入しようとそれぞれ動き出す。

けど、僕は少し嫌な予感がした。

ここに潜入するまで、障害になったのはあのフェアリー二機のみ。

予想ではここもそれなりの防犯がされていると思ったけど、人っ子一人居ないどころか、警備LBXまでいない。

 

「レーくん?どうしたの?」

 

「いや・・・・・・なんか嫌な予感がするんだ・・・・・・」

 

なんていうか、勘だけど。

そう、感じていると―――

 

「っ!?なんだ!?」

 

突如、司令室の中を赤い光が染めあげた。

拓也さんたちが操作してる司令室内の全ての端末の画面には『SYSTEM LOCK』と表示されている。

 

「どういうことだ?!」

 

さらに入ってきた入口の扉までもロックされた。

 

「拓也さん、どういうこと!?」

 

「分からない!システムがロックされてる!!」

 

「ダメだ!全ての端末が受け付けない!」

 

「こっちもダメだ!ドアが開かない!」

 

「エクリプスにも、連絡がつかないわ!」

 

完全に閉じ込められた。

まさか―――

 

「まさか、罠!?」

 

拓也さんの意見と同じだ。

そう思っていると。

 

「っ!?LEX!?」

 

突然、奥の真ん中のスクリーンにLEXが映し出された。

 

『気に入ってもらえたか?』

 

「LEX!」

 

兄さんがLEXを見て嬉しそうに声を出す。

 

『これは、俺からのささやかなプレゼントだ。全てが終わるまで、その扉は開かない。特等席で、世界が変わるのを観ていろ』

 

「LEX、何言ってるの」

 

LEXの言葉の意味が理解出来ない。

兄さんも拓也さんもそんな顔だ。

その中僕はLEXの言葉の意味を考え、信じたくない結末を予想した。

 

『ふふ。まだ気づかないのか?いや、レイ。お前は薄々気づいてるんじゃないのか?』

 

「え?」

 

全員の視線が僕に向けられる。

 

「ねぇ、LEX」

 

『なんだ?』

 

「まさか・・・・・・だよね・・・・・・?」

 

『そのまさか、さ』

 

「ど、どういうことレーくん!?」

 

メアの問い掛けに僕は答えなかった。

いや、答えられなかった。

答えたのは―――

 

『お前たちは、俺のシナリオ通りに動いていただけだ』

 

「「「「「「っ!!?」」」」」」

 

LEXの答えに兄さんたちは驚愕する。

 

『俺はプラチナカプセルとメタナスGXを使って、シーカーとイノベーターを闘わせた。世界の命運とやらを巡って走り回るお前らの姿は、中々面白かったぜ』

 

「まさか!お爺様のアンドロイドを操っていたのは?!」

 

『ああ、俺だ。俺はアルテミスの後、海道のアンドロイドを動かし俺自ら、直接ヤツを殺した。自分と同じ顔をしたアンドロイドが目の前に現れた時のヤツの顔は滑稽だったな。まさか、こんな所で死ぬとは思ってなかったんだろうな・・・・・・ヤツの遺体は、今頃どっかの山の中だ。それからの事はお前らの知っている通りだ。ふはははは』

 

「お爺様・・・・・・」

 

「ジン・・・・・・」

 

海道義光は僕らにとって、絶対に許すべきではない。倒すべき敵だ。

けど、ジンにとって、海道義光はたった一人の家族であり、恩人でもあり、大切なお爺さんだったのだ。

声からジンの心中は悲嘆に包まれていた。

その間にもサターンのカウントダウンは刻一刻と進んでいき、残り時間30秒となっていた。

 

「檜山!何故こんなことを!?」

 

『見てみたかったのさ。こんな世界に、命を掛けるほどの価値があるのかどうかを』

 

「なんだと」

 

『しかし、やはりなかった。汚れ切ったこの世界に、価値などない・・・・・・』

 

「っく・・・・・・!」

 

『だから全てをやり直すしかない。そのきっかけを、俺が造ってやる』

 

「っ!LEX、今すぐサターンを止めて!!」

 

『・・・・・・・・・・』

 

僕の言葉にLEXは無言の返答を返す。

やがてカウントダウンが0になり、スクリーンに発射されたサターンが映し出された。それと同時に、司令室内の部屋の明かりが薄暗い碧に照らされた。

 

「なんてことだ・・・・・・」

 

『アレが世界を変える』

 

「檜山君!サターンは世界を滅ぼしかねない、悪魔の兵器なのよ!」

 

『ああ、知ってるさ』

 

「なら、何故こんなことを?!何故お前は、そこまでこの世界を憎む!!」

 

『ふっ。俺は今からアレに乗り込んで計画を仕上げる』

 

「まて檜山!本当にフェアリーテイル計画を実行する気か!?」

 

『イノベーターの計画などに興味はない。俺には俺の計画がある』

 

「っ!?」

 

「LEXの計画・・・・・・?」

 

LEXの言った、LEXの計画が分からなかった。

イノベーターはタイラントプレイスを破壊して、世界支配をする。

なら、LEXは一体何を?

ここまでイノベーターの計画を裏で進めて、それを全て無にして自分の計画を実行する。一体何をする気だ・・・・・・。

 

「檜山、一体何をする気なんだ!」

 

カズ兄は扉に体当たりして。アミ姉は傍の端末を操作して開けられないか試している。

 

『知ってどうするつもりだ?今のお前らは何もすることが出来ないだろう?』

 

「違う!そんなことない!!」

 

『バン。何が出来ると言うんだ?』

 

「俺は・・・・・・俺は最後まで諦めない!!」

 

「ああ。兄さんの言う通りだ!!僕らは最後の最後まで諦めない!絶対にっ!!」

 

『レイ。全て手遅れだ。諦めて、そこで大人しくしてろ』

 

「俺も諦めねぇぜ」

 

カズ兄が再び扉に体当たりしようとした瞬間。

 

「っ!?」

 

扉が開く音がした。

 

「父さん!」

 

「っ!?父さん!?」

 

振り向いて見ると、そこに白衣を羽織り険しい顔をした僕と兄さんの父さんがいた。

いや、え?

どうやって開けたの父さん?

一瞬そんな疑問が浮かぶが・・・・・・。

僕ら全員呆然としてる中、LEXだけは想定していようで。

 

『やはり現れましたか、山野博士』

 

と言っている。

父さんはそのまま兄さんとジンのいる台に行き。

 

「檜山くん、今からでも遅くない。こんな馬鹿なことは止めるんだ」

 

『ほぉ。その様子だと、気づいたようですね。俺の計画に』

 

「ハッキングした情報を解析し、サターンの弾道を計算した」

 

父さんに続いて、八神さんも入ってきた。

 

「八神先輩、サターンの目的地はタイラントプレイスじゃないのか!?」

 

「ああ。サターンの到着到着目標はタイラントプレイスでは無い。・・・・・・・Nシティだ」

 

「なにっ!?Nシティだと!?」

 

「Nシティ?」

 

紳羅さんは驚愕の表情を見せる。

サターンの目的地はタイラントプレイスではなく、A国のNシティ。

あれ、Nシティ?

Nシティについて、確か今日の朝のニュースでなにかやってたような・・・・・・・。

僕が物思いに耽ていると、父さんが答える。

 

「そうだ。Nシティでは現在、世界国家首脳会議が開催されている。そこにサターンを落とすことによって、世界中のリーダーを抹殺するつもりなのだ、彼は」

 

「「「「「!!??」」」」」

 

「やはりか!」

 

紳羅さん以外の僕ら全員父さんの言葉に耳を疑った。

LEXの目的は、首脳会議に集まっている世界中のリーダーの抹殺!?

 

『ご名答。さすが山野博士。ですが、手遅れですよ。全てはすでに動き始めてる』

 

「まさか君が、エターナルサイクラーの技術を破壊に使おうとするとは・・・・・・。かつて君にも教えたはずだ。新たなテクノロジーに携わるものほど―――」

 

『人間の良心を忘れてはならない・・・・・・ですか。懐かしいですね。ですが、俺にはもう人間の良心どころか、心すら残ってないんですよ。俺は人間の心を捨てて、モンスターになったんんです。18年前のあの日から』

 

18年前?

 

「?一体何があったんだよ、LEX!」

 

兄さんの問い掛けに、LEXは眼を閉じ語った。

 

『18年前、次世代エネルギー研究所の開発中に、大規模な爆発事故が起きた。それが、全ての始まりだった・・・・・・。多数の犠牲者を出したこの事故について、政府は建設会社の管理体制に重大なミスがあったと発表。そして、建設の指揮を取っていた担当者が全ての責任を負わされた。その担当者が、俺の親父【檜山武】だ。親父は最後まで、「私は間違ったことはしていない。信じてくれ」、そう言い続けてこの世を去った。そのあと、俺たちは世の中の非難に耐えられなくなり、離れ離れになるしか無かった。今家族がどこにいるのか、生きているのかすら分からない。俺は恨んだ、呪われた事故を。そして、長い時間を掛けて俺はようやく辿り着いた。あの事故に隠された秘密を』

 

「え」

 

「隠された秘密?」

 

『あの事故に隠されていた秘密・・・・・・親父を陥れた存在、それが―――』

 

「海道義光か」

 

父さんの言葉に全員父さんを見る。

LEXは父さんの言葉を肯定し。

 

『そういうことです。爆発事故の原因は、工事を無理に進めさせた政府。そして、海道義光にあった。奴は、次世代エネルギーによる事業を成功させ、政治権力を強化することを目論んでいたからな。だが、研究所建設中に事故が起こってしまった。真実を知られては困る海道は、全ての責任を親父に押し付けた。俺は誓った、人生の全てを賭けても、海道義光に復讐するとな』

 

「なら、もう復讐は終わったはずだろう!海道はお前が!」

 

『終わってなどいないっ!!』

 

拓也さんの言葉を遮り、初めてLEXが感情を露わにした。

 

「「「「「っ!!」」」」」

 

LEXの感情を顕にした言葉に全員息を呑む。

 

『終わってなどいないんだよ。今のままでは、同じことが繰り返される』

 

「どういうことだ?!」

 

「繰り返されるとはどう言う意味!」

 

『海道だけではない。海道の背後に、もっと巨大な悪が存在する。つまり、この世界は一部の権力者の掌の上で動かされているんだ。政治。経済。技術開発。そして、戦争すらも奴らが管理して動かしている。強大な権力を使い、私腹を肥やす者たち。海道はその中の一人に過ぎなかったんだ』

 

「バカな!」

 

「そんな奴らがいるはずがない!」

 

八神さんと拓也さんが声を荒らげて否定するが・・・・・・・

 

『貴方ならご存知のはずですよね、山野博士』

 

「ああ・・・・・・戦争を管理する者たち。そして、管理された戦争は確かに存在する」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

LEXの問いを肯定する父さんに今日一番の驚愕を出す。

戦争を管理なんて、そんなこと・・・・・・・!!

 

「そんなバカな!管理戦争など、俺は聞いたことない!確かに、海道の背後に更なる悪があることや、権力者が私腹を肥やしているのは知っているが・・・・・・!!」

 

「紳羅君、君が知らないのも無理はない」

 

「っ!?」

 

父さんと紳羅さんは面識が無いはずだけど・・・・・・

父さんは、ありえないと言う紳羅さんに冷静に告げる。

 

「この国の司法も一枚岩では無いことくらい、君なら知っているだろう」

 

「そ、それは・・・・・・!」

 

紳羅さんは警察庁の公安警察だ。

この中で一番司法関係に触れているのは紳羅さんだ。

それを知っているからなのか、父さんの言葉を紳羅さんは言い返さなかった。

 

『お前たちも経験したじゃないか。シーカーとイノベーターの戦い。アンドロイド海道を使った、俺の管理された戦争を』

 

確かに、LEXが言った通りだとすれば、僕らはLEXの掌の上。いや、盤上で踊らされ、管理された戦いをしていたのかもしれない。

 

『この世界では、常に同じことが行われている。支配者気取りの連中によって。海道一人がいなくなったところでこの歪んだ世界は、何も変わらないんだ。だから、俺がこの世界を壊す。世界国家首脳会議には支配者気取りのバカ共が沢山集まる。そこにサターンを落とせば、一人残らず、跡形もなく消し飛ばすことが出来る!』

 

「そんな事をしたらNシティはどうなる!?そこに暮らす多くの人々は!?」

 

サターンにはメガトン爆弾のドングリを搭載したフェアリーが大量に積み込まれている。

それに加えサターンは超弩級のロケットだ。

サターンだけでも被害が尋常じゃないのは目に見えている。そこにさらに、フェアリーのドングリまでも加えたとなると、被害は到底予測がつかない。

Nシティに暮らす人々は勿論のこと、その周辺の人々。さらに、A国のライフライン関係などにも大きな打撃を与える。

それに、何も知らないサターンに乗員しているイノベーターの奴らも犠牲になる。

最悪、A国の地図からNシティが消えてしまうはずだ。

そんなこと、まだ小学生の僕ですら簡単に予想が付く。

LEXもそんなこと分かっているはずなのに・・・・・・!!

 

『革命に犠牲は付き物だ、拓也。俺は考えて欲しいんだよ。この世界の人間達に』

 

「考える?」

 

『国のトップを失い、多くの犠牲を受けたこの世界の人間たちは、何れ再生に向かう。そうなれば、嫌でも考えるだろう。新たな世界の事。新たな秩序の事を。俺は、その瞬間にメッセージを送る』

 

「メッセージ?」

 

『このミッションが終われば、お前たちにも届くはずさ』

 

そう言い残すと、LEXは通信を切った。

僕らの前には、モザイク画面になった画面が映った。

 

「っ、檜山!」

 

「行こう拓也さん、LEXを止めなきゃ!」

 

「その通りだ」

 

「行くぞ!」

 

拓也さんの後に続いて、僕らは司令室からエクリプスへと急いで戻った。

戻りは全く人に会うことなく行きより速く戻れた。

エクリプスに乗り込み、僕らは八神さんに案内されてコックピット兼司令部へと入った。

エクリプスの司令部は広く、下にはコントロールポッドがあり、空中にはホロウインドウが幾つも展開され、シーカーのオペレーターや真野さんたちが座っていた。

近くには郷田たちシーカーのメンバーが。

 

「これでシーカー全員揃ったな!」

 

「うん」

 

さらに。

 

「ふっ。オレっちたちも、忘れてもらっちゃ困るぜ」

 

「そうですよ!悪を見過ごすことは出来ません!」

 

「ええっ!?」

 

「ハッカー軍団にオタレンジャー!?」

 

「なんでここに!?」

 

ヤマネコとユジンさんたちを見て、ええっ、と驚く兄さんたち。

 

「オタレンジャーとハッカー軍団には僕が協力をお願いしたんだ」

 

「え、レーくんが?」

 

「うん」

 

「《恐皇帝(シェキナー)》が直接オレっちたちに頭を下げて頼んだんだ。それに、もうオレっちたちも無関係ってな訳じゃねぇからな」

 

「ええ。例え、どんな事があろうと、アキハバラの平和を乱す者の存在は見逃せません!我らが師、オタクロスも言っています!」

 

「みんな・・・・・・」

 

これで、戦力は充分整った。

あとは―――

 

「発進準備出来てます」

 

「機関出力120%、エクリプス発進!」

 

八神さんの指示にエクリプスが静かに動き始めた。

エクリプスが動きだしてしばらくして、ニュースで丁度今世界国家首脳会議で、戦争根絶のため国家が所有する武器の廃棄を明記した【Nシティ協定】が各国首脳の間で締結された事が速報で流れた。

エクリプスから、Nシティへの避難要請を連絡しようとするが、サターンのジャミングにより通信全てが通じないらしい。

サターン目視圏内は63分後と真野さんが告げ、八神さんから最後のブリーフィングが行われた。

 

「―――これより我々は、サターンによるNシティ突入を総力を上げて阻止する。だが、サターンには無数の対空砲とフェンスと呼ばれる、強力な対空迎撃システムが搭載されている。そのため、エクリプスで直接接近するのは困難だ。そこで、LBX部隊による強襲降下作戦を行う。諸君は、エクリプス艦内のコントロールポッドを使って、フライトパックを装備したLBXを遠隔操作。サターンに降下させる。途中、対空砲撃とフェンスを突破し、サターンへ上陸。そして、制御室へ入り込み、システムをハッキング。対空砲撃とフェンスを停止させる」

 

「八神さん、対空砲撃はなんとかなるとしてもフェンスはどう突破するの?」

 

「そうね・・・・・・強力な迎撃システムなのでしょ?」

 

「確かにそうだね・・・・・・」

 

僕、キヨカ、メアが八神さんに尋ねる。

対空砲は運とかにもよるだろうがなんとかなる。だが、フェンスに関しては別だ。物理ではなくビーム兵器。しかも密度が高い。下手をしたら全員アウトだ。

 

「【アンブレラ】を使う」

 

「あ、【アンブレラ】?」

 

アンブレラって確か、傘って意味だけど・・・・・・・

疑問に思っていると里奈さんが。

 

「ビームガーターの技術を応用した、光学防御デバイスよ。ある程度フェンスを中和させることが出来るわ」

 

「ある程度ということは・・・・・・」

 

「ええ。完全ではないわ」

 

つまり、これも賭け。

突破出来るか、敗れるか。

50/50(フィフティーフィフティー)だ。

 

「サターンに着艦出来たLBXは、各々の判断で制御室を目指し、一刻も早くサターンの迎撃システムを停止させてくれ。迎撃システムが停止後、エクリプスでサターンに接近、イノベーターたちに真実を公表、サターンを放棄させる。諸君、これは世界の夜明けを賭けた戦いだ!」

 

世界の夜明けを賭けた戦い。

僕らの作戦が成功しなければ、この世界に・・・・・・新たなる夜明けは来ない。

 

「これより、本作戦を《オペレーション・デイブレイク》と呼称する!昇る太陽を希望に満ちたものにする為にも、総員の奮闘を期待する!!」

 

『『『『『おおぉ!!!』』』』』

 

八神さんの鼓舞に全員気合いの入った雄叫びを上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《オペレーション・デイブレイク》開始まで、残り60分

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。