~レイside~
「・・・・・・・・・・」
八神さんによる、最後のブリーフィングを終え僕はエクリプス内の休憩室で横になっていた。
最後の戦いに備えて、体力を回復させていたのだ。
「レーくん、大丈夫?」
「ああ、うん。大丈夫」
横になっていた僕をメアが心配気に聞いてくる。
室内にはキヨカとダイキさんもいる。
「ったく、無茶すんなレイ」
「あははは・・・・・・」
呆れたように言うダイキさんに空笑いをする。
けど、少し横になったお陰で回復した。
「ほら。フライトパックとアンブレラ、それと大まかな整備は俺がしといた」
「ありがとうダイキさん」
ダイキさんからカオスを受け取る。
「にしても、まさかお前たちがこんな戦いに身を投じてたとはな」
「うっ・・・・・・ゴメンなさいお兄ちゃん」
「別に怒ってねぇよ。だが、まぁ・・・・・・あまり心配掛けさせんな」
「うん」
そっぽを向いてキヨカの頭を撫でるダイキさん。
ダイキさん=ツンデレ+シスコンだからね。
ダイキさんのツンデレに僕とメアは苦笑する。
そこに。
「レイ、いるか?」
「父さん?」
父さんが室内に入ってきた。
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫。問題なくいけるよ」
「そうか・・・・・・」
父さんが少し安堵したように答える。
少し心配を掛けちゃったかもね。
「あー、俺らは外に出てるからな」
そう言うとダイキさんは外に出て、示し合わせたようにメアとキヨカも同じように外に出た。
「すまない。気を使わせてしまったかな」
「あははは」
申し訳なさそうに言う父さん。
「それで、どうしたの?兄さんとは話せたの?」
僕はアルテミスの会場で父さんと会話してカオスの設計データを直接受け取った。けど、兄さんは父さんと満足に会話も出来ずに。それどころか、マスクドJが父さんだって気づいてなかったみたいだし。
ま、まぁ、僕もあの時の父さんには頭が痛かった・・・・・・。
「バンとはここに来る前に話した」
「そっか」
「ホント、成長したな・・・・・・」
「え?」
頭を撫でながら言う父さんに怪訝そうに聞く。
「アルテミスからまだ半年も経っていないのに、お前は大きく成長した。まさか、自力でオタクロスやハッカー軍団に協力を仰ぐとはな。しかも、公安の者とも知り合っているとは予想だにしなかった」
「あー、まぁ、紳羅さんはオタクロスから紹介されたから」
苦笑しつつ父さんに返す。
ホント、紳羅さんと出会ったのはアルテミス前だけど、オタクロスが紹介してくれたからなぁ。
オタクロスに紹介されなかったら紳羅さんとは知り合えなかっだろうし。
人生、何があるか分からないねぇー。
なんか年寄り臭いような気がするが、それは置いといて。
「にしても、父さん紳羅さんのこと知ってたんだ」
「ああ。八神君について調べた時にな」
「八神さんを?」
「彼は以前からイノベーターの・・・・・・海道義光に疑念を持っていたからな。彼は部隊の中でもかなりの者に慕われていた。イノベーター脱出の際、結構のオペレーターがついて行ったらしいからな」
「へぇ」
紳羅さんから、八神さんは昔から上司や部下だけでなく、色んな人に慕われていたと聞いていた。
それはイノベーターでも同じだったみたいだ。
だから、紳羅さん曰く八神さんがイノベーターに下った時はショックだったらしい。
「カオスは・・・・・・行けそうか?」
「うん。大丈夫」
ダイキさんが僕の代わりに調整してくれたカオスを見て言う。
カオスには、これまでの僕の戦闘経験が詰め込まれてる。
そして、悠介さんの思いも。
「父さん」
「ん?」
「僕、LEXが何でこんなことしたのか少し・・・・・・わかる気がするんだ」
「っ!?」
「勿論、LEXのやり方が間違ってるのは分かる。けど、結局の大元はイノベーターと海道義光にあるんだよね。そして、歪んだ一部の権力者たち」
もし、自分の立場がLEXと同じだったらどうするだろうか。
―――答えはまだ分からない。けど、憎しみや怒り、哀しみといった負の感情が心を支配するのは間違いないと思う。
「だから、この戦いが終わったら世界を見て周りたいと思う」
「世界を?」
「うん。いろんな事を見てまわりたい」
僕はまだ小学生だ。
母さんや父さん。色んな人に助けてもらわないと生きていけない。
けど、色んなことを見てまわって見聞を深めていきたい。
たぶん、それが僕が自分を知るための一つだと思う。
けど、僕はまだ子供も子供だから―――
「父さんと母さんに迷惑掛けるかもしれないけど、出来たら自分の目で見てみたいんだ」
「そうか」
父さんは優しく微笑んで答えた。
「レイ。お前は、お前の道を進め。私の後でも、バンの道でもない。お前の人生は、お前自身が決めるんだ。お前の物語は、これから始まるのだからな」
「・・・・・・うん!」
父さんの言う通りだ。
僕の物語はまだ始まったばかり。序章に過ぎない。
これから始まるんだ。
そして、その一歩を掴むために―――
「レーくん、山野博士。そろそろ・・・・・・」
「ああ」
「うん」
意識を切りかえ。
「絶対、LEXを止めてみせる」
LEXを止めることを決意する。
「行こう、メア」
「うん!」
メアの手を握り、僕はメアとともにエクリプス艦内のコントロールポッドのある場所に行った。
コントロールポッドのある場所には既に、兄さんを始め、この決戦に挑む人たちが揃っていた。
「希望に満ちた明日を掴むため・・・・・・行こうみんな!!」
『『『『『『おうっ!!!』』』』』
掛け声を合わせ、それぞれコントロールポッドに乗り込む。
「コントロールポッド、起動!」
『『『『『『コントロールポッド、起動!!』』』』』』
兄さんたちもコントロールポッドに乗り込んで起動させる。
『サターン、目視にて確認!』
オペレーターの通信が入る。
『相対速度を合わせ、接近開始!』
『みんな、準備いい?』
里奈さんの問いに全員返事を返す。
みんな、準備万端だ。
やがて、エクリプスに接近し―――
『オペレーション・デイブレイク、発動!!』
『LBX部隊、降下開始!全LBX、パージ!!』
八神さんの号令の元、作戦が開始される。
「いくよ、カオス!」
両端のハンドルを握り締め、一気に前に押し出しカオスを発進させる。
続けてメアやキヨカ。兄さんたちのLBXも続々と飛び出してくる。
飛び出し、降下して15秒後、サターンの防衛エリアに入ったのか、装備されている対空砲から砲撃の弾幕が張られた。
対空砲の弾幕に次々とLBXが破壊され堕ちていく。
「っ!なんて威力!」
一撃当たっただけでアウトだ。
既に周りにいた幾つかのシーカーのプレイヤーのLBXが破壊されていく。
躱したくても、空中では上手く避けられない。
その間にも続々とLBXが堕ちる。
『LBX四番隊、二号機被弾!』
『五番機、隊長機大破!』
『七番隊、全滅しました!』
『ハッカー軍団、10機大破!』
続々とエクリプスのオペレーターによる戦況報告が入る。
すでに全LBXの3割近くが大破している。
この状況に、くっ!と口を噛み締める。
『サターン着艦まで、残り140』
『っ!サターン外周部に、高エネルギー反応!』
『フェンス、来るぞ!!』
『みんな、アンブレラを!』
『よしっ!』
『アンブレラ、展開!!』
「アンブレラ、展開!!」
『『アンブレラ、展開!!』』
フェンスの発動に合わせて、アンブレラをみんな展開させる。
フェンスはサターンの360度、全方位に張り巡らされた。薄桃色のビームが眩い輝きを放ち襲いかかって来る。
『っ!攻撃の密度が対空砲の比じゃない!』
『でも、ここを乗り越えないと!』
キヨカとメアの声が耳に入る。
LBXの撃墜はさっきの対空砲の比じゃないほどに次々と堕とされていく。
『っ!そんな!』
『くそ!ここまでかよ!』
「っ!ユジンさん!ヤマネコ!」
ユジンさんとヤマネコまでフェンスによって堕とされた。
他にも三影さんや大口寺さんも。郷田四天王もやられた。
『オタレンジャー、ハッカー軍団、全滅!』
『一番隊、及び八番隊、同じく全滅!!』
『LBX、残り30!いえ、・・・・・・25!』
『三番隊と九番隊も全滅です!!』
『サターン着艦まで、50・・・・・・・・・40・・・・・・・30・・・・・・・20・・・・・・・10・・・・・・・・・・!』
やがて、サターンの迎撃システムを潜り抜けサターンに着艦した。
着地すると同時に、フライトパックを放り捨て双剣の『フェンガーリ』と『アステール』を構える。
『LBX降下部隊、第一陣サターン着艦成功!!』
『オーディーン。ゼノン。ハカイオー絶斗。パンドラ。フェンリル。ナイトメア。アテナ。メティス。そしてカオス。―――全9機です!!』
『総員制御室を制圧せよ!』
「『『『『了解!!』』』』」
八神さんの指示に返事を返しつつ、サターン内部へと潜入する。
やがて―――
「っ!これは・・・・・・!」
目の前に数十近くのLBXの大群が待ち構えていた。
どうやら、それは僕のところだけでなく兄さんやメアたちの所もみたいだ。
「まぁ、そう簡単に行かせさせはしないよね・・・・・・じゃあ―――」
一旦深呼吸して目を閉じ。
「突破させてもらう!!」
カッ!と目を開け、一気に目の前にいるLBXの大群の殲滅を始める。
『フェンガーリ』で切り裂き、『アステール』で貫く。
数は多いが、今の僕にとって大した脅威ではない。
瞬く間にその場にいた、ダクト内の敵LBXを倒し前に進む。
すぐさま次の敵LBXと
「邪魔っ!」
瞬時に瞬殺する。
「やけに多いな・・・・・・」
何故か僕の方に結構来てる気がする。
けどまぁ―――
「数が多けりゃいいってもんじゃないしね!」
次々と敵LBXを撃破し、
「彼処か」
ダクトから、目的地の制御室を確認して扉を開けて中に入る。
中に入ると、すでに兄さんとジンのオーディーンとゼノンが、何故かここにいる神谷コウスケのルシファーと戦っていた。
「兄さん!ジン!加勢するよ!」
『っ!レイ!』
『助かる!』
『山野レイ。キミも来たか。まぁ、いい。あの時の決着をつけようか!!』
「ああ!!」
言うや否や、早速神谷コウスケのルシファーと僕のカオスがぶつかる。
互いの剣がぶつかり合う音が響く。
兄さんのオーディーンとジンのゼノンも食らいついてこようとする。
だが。
「相変わらず強いっ!」
機体のスペックもだが、操作スキルが高い。
オーディーンとゼノンの連携は尽く避けられ、カウンターを食らう。そしてその隙間を僕のカオスが補ってる。
3対1の状況なのに、全く隙がない。
「兄さん!ジン!全力で行くよ!」
『ああ!』
『分かった!』
「カオス、エクシードモード発動!!【エクシードモード!!】」
『ゼノン、オルタナティブモード!!【オルタナティブモード!!】』
『オーディーン、エクストリームモード!!【エクストリームモード!!】』
それぞれ特殊モードを発動させる。
兄さんから、オーディーンに新たな特殊モードが目覚めたと聞いてはいたが、実際に見るのは初めてだ。オーディーンとゼノンの特殊モードは初めて見た。
ゼノンは蒼銀の、オーディーンは金色のエフェクトを纏ってる。
「一気に決めるよ!」
言い放つと同時にカオスが動く。
『っ!!』
神谷コウスケの表情が初めて強ばる。
余裕のない表情を浮かべ。
『っ!!神の前に跪くがいい!!【アタックファンクション!デビルソード!!】』
「『『っ!』』」
やけくそ気味に、初めて放たれたルシファーの必殺ファンクション。
右のビーム刃から黒紫のエフェクトが溢れ、ルシファーは黒紫に染まったエネルギー刃を360度回転して攻撃してきた。
それぞれギリギリのところで交わすが、もし喰らったらひとたまりもないのは間違いない。
だが、特殊モードで性能が上がった今なら―――
『っ!?バカな!』
躱すことは容易い。
そして、神谷コウスケはミスをした。
僕と兄さん、ジンの三人を前に冷静を失ったことだ。
必殺ファンクションは発動後に僅かな隙が生じる。故に必殺ファンクションはタイミングを見なければ逆転される。
そして、それは神谷コウスケのルシファーも例外ではなく―――
『うおおおおっ!!』
『はああああっ!!』
オーディーンとゼノンの槍と戦鎚がルシファーを攻撃し。
『なっ!?』
「これで終わりっ!!」
カオスの双剣による斬撃をくらい、ルシファーは後退と同時に倒れるようにふらついて爆発した。
『ルシファー!!』
神谷コウスケの絶叫が響くが、それを無視して最優先事項をする。
「兄さん、ジン!システムの停止を!」
『ああ!』
『わかった!』
これでシステムを停めれば―――
『ああ・・・・・・。綺麗だ』
「っ!?」
神谷コウスケが惚けるように爆発して煙の上がる場所。
ルシファーを見て呟く。
それと同時に、破壊したと思うルシファーから紫の禍々しい光が溢れ出た。
それはルシファーを守る繭のようでもあり―――
『これが・・・・・・これこそが、ルシファーのあるべき姿だったのか!!』
繭のような光から出てきたルシファーは、さっきと全く違っていた。
左は神々しい姿なのに、右半分は禍々しい、まるで悪魔のような風貌に変わっていた。
正しく、悪魔の王ルシファーだ。
ルシファーは【明けの明星】を指すラテン語であり、別名【光を掲げる者】という意味をもつ悪魔にして堕天使だ。
今目の前にいるルシファーはそれに相応しい姿だ。
『なんだ、あれは・・・・・・』
『まるで・・・・・・悪魔だ・・・・・・』
ジンと兄さんも半壊し変わり果てたルシファーの姿に萎縮してる。
『悪魔?この、美しさが分からないとはねぇ・・・・・・ルシファー!その美しい姿を、新たなる世界に見せつけろ!!』
右眼の眼帯を外して宣告する神谷コウスケ。
神谷コウスケの右眼は赤紫色だった。恐らくオッドアイなのだろう。
さらに神谷コウスケのCCMから。
『【セラフィックモード!!】』
システム音声が響いた。
それと同時に、ルシファーを神々しい、眩い光が包み、白金色のエフェクトがルシファーを覆った。
アレは僕らのカオスらと同じ、特殊モードだ。
ただでさえ、ルシファーの機体性能は高いのにそこに特殊モードまで加わったとなると、実力は計り知れない、未知数だ。
「っ!来るぞ!」
予備動作無しで一瞬で間合いを詰められ、オーディーンとゼノンがルシファーの一撃で吹き飛ばされる。
ギリギリのところでバックステップで避けるが、剣風がカオスを襲う。
「なっ!?振りかぶっただけでこの威力・・・・・・!」
吹き飛ばされたオーディーンとゼノンは、よろけながらも立ち上がる。
「くっ!」
続けてルシファーがカオスに刃を向ける。
ギリギリで剣を捉えるが、さっきまでとステータスが段違いだ。
僕も意識を集中させてルシファーの剣を捌く。
『遅い。遅すぎるよ、山野レイ!』
「っの!」
カウンターで袈裟斬りを仕掛けるが、さっきまでと違い常時宙に浮いてるため、スルッと躱されてしまう。
「っく!!」
真横からの刺突を咄嗟に『フェンガーリ』の腹で受け止めるが、威力が高く突き飛ばされる。
ズサァー、と後ずざりしてルシファーの追撃に備える。
『キミたちには感謝しているよ。ルシファーの本当の美しさを引き出してくれて。これが・・・・・・これこそが、神の力!世界の絶対のルールなのさ!!』
「舐めるなっ!!」
誇らしげに強者を主張する神谷コウスケに強い口調で言い返す。
それと同時に、カオスが一瞬でルシファーとの間合いを詰めやられた分をやり返す。
『っに!?』
「僕を舐めるなよ、神谷コウスケ!!【アタックファンクション!バーチカル・スクエア!!】」
垂直斬り四連の斬撃がルシファーに当たりルシファーが大きくぶれる。
『バカなっ!』
「お前の弱点はその慢心だ!兄さん!ジン!行けるね!!?」
『ああ!』
『無論だ!』
復帰した兄さんのオーディーンと、ジンのゼノンがカオスの両脇に並ぶ。
『こっのっ・・・・・・!!虫けらの分際で!!必殺ファンクション!!【アタックファンクション!セラフィックウイング!!】』
宙を舞うルシファーの、肥大化したビームウイングから無数の黄金の光線が放たれた。
放たれた光線は屈折し、上から雨のようにカオスらに降り注いだ。
『ああ・・・・・・美しい光だ』
死角なしの断罪の雨に、絶体絶命かと思うだろう。
だが―――
『なにっ!?』
カオスとゼノンはオーディーンの左手に装備した盾『ビームガーダー』に護られたのだ。
光学系などに特攻耐性のあるビームガーダーにより無傷で護られた。
その姿に神谷コウスケは有り得ないとでも言うような顔を出す。
『みんなに託された思いは打ち砕けない!!』
『ば、バカなっ!ルシファーに破壊できないものなんてないはず・・・・・・!』
『哀れだな!LBXバトルはスペックが全てではない!』
「言ったはずだ。お前の弱点は、その慢心だと!!確かにルシファーのスペックは高い。だが、僕らがみんなに託された思いの方が上だ!!」
『そんなもの、力無き者の戯言だ!!薙ぎ払え、ルシファー!!』
憤怒の形相でCCMを操作しルシファーを嗾ける。
「兄さん!ジン!」
『『ああ!』』
攻めてきたルシファーを兄さんとジンの連携で攻め、
『レイ!』
「ああ!」
ジンのゼノンの戦鎚で、バランスを崩したルシファーをカオスの一撃がルシファーの特殊モードを解除する。
「『『必殺ファンクション!!』』」
『【アタックファンクション!グングニル!!】』
『【アタックファンクション!ブレイクゲイザー!!】』
「【アタックファンクション!ヴォーパル・ストライク!!】』
オーディーンから、槍に溜めた巨大なエネルギーが。
ゼノンから、青い灼熱のエネルギーの奔流が。
カオスから、深紅に染った一筋の光条が、同時に地に倒れふすルシファーへ迫り直撃する。
『ば、バカなっ!!?うわぁぁぁぁぁっ!!』
ルシファーが破壊された爆発に巻き込まれ、神谷コウスケが爆風で吹き飛ばされ階下に落下した。
「だ、大丈夫かな・・・・・・?」
敵ながら心配してしまうが・・・・・・
『停止プログラム、注入!!』
特殊モードの切れたオーディーンから、防衛システムを停めるプログラムが注入される。
少ししてシステムが停止したのを、エクリプスのオペレーターから確認した。
これで、後は艦内に居るイノベーターの投降説得と、LEXをどうにかすればいいんだけど―――
「っ!?な、なんだ!?」
突然コントロールポットが停止し、LBXとの通信が出来なくなった。
どうやら、兄さんたちの方も同様のことがおきてるみたいだ。
里奈さんから、サターンからの高密度のジャミングにより、スパークブロード通信が遮断されたことを知った。
その後、八神さんがサターン艦内にいるイノベーターに投降と事態について説明するが、裏切り者の言葉などと一蹴され通信も切られたそうだ。
打つ手なしの状況なのだが―――
『突撃用連絡通路、【ハープーン】射出!!』
僕らはコントロールポットからの遠距離ではなく、直接サターンに乗り込むことに決めた。
八神さんを先頭に、僕や兄さんたち。そして父さんと真野さん、矢壁さんがサターンに直接乗り込み、進路を変更する。
残りはエクリプス内で待機だ。
エクリプスに備え付けられている、突撃用連絡通路ハープーンによって、物理的にサターンとの連絡路が出来、サターンへ乗り込む。
サターンへ乗り込むと、すぐさまイノベーターのLBXと交戦員が現れる。
その対処とハープーンの防衛に八神さんが単騎で防衛に当たることになった。
父さんに真野さん、矢壁さんは司令室に向かいサターンの進路を変更出来ないかするそうだ。
僕らは、自分のLBXを回収後それぞれコックピットへ向かう。
途中で三方向に分かれ、それぞれ僕、兄さん、ジン。アミ姉、カズ兄、メア。ダイキさん、郷田、キヨカの三班だ。
わかれた後、父さんから行先の変更が出来るのはLEXのいると思われるコックピットだけと聞かされ、真野さんのハッキングで進路上の扉のロックを解除してもらい、コックピットへ向かう。
制御室に着き、それぞれのLBXを回収すると、アミ姉たちが追い付いてやって来た。
「レーくん!!」
「メア!」
駆け寄ってきたメアと軽くハイタッチする。
小さな頃からメアとハイタッチしていたため、つい癖が出てしまった。
「そっちはLBX回収出来た?」
「うん。レーくんたちは?」
「僕らも回収したよ」
神谷コウスケのことも放って置く訳にもいかず、どうしようか悩んでいるところに、僕の耳に聞きなれた音が入った。
「っ!全員構えろ!」
「「「「「っ!!」」」」」
「敵だ!」
僕が言うと同時に入ってきた扉から多数のLBXが入ってきた。
「っ!レーくんたちは先に行って!お姉ちゃん!カズ兄!」
「ええ!パンドラ!」
「おうっ!フェンリル!」
「行くよ、アテナ!」
敵LBXと相対するようにメアたちが自身のLBXを出して戦闘を始める。
「わかった。三人とも、ここは任せた!」
「行こう、バンくん!レイ!」
「・・・・・・わかった」
先に行く兄さんたち。
その後を追おうする―――
「レーくん、気をつけてね」
「メアもね」
「うん!」
パチンっ!と僕とメアだけの、意思疎通のハイタッチをしてその場を後にする。
制御室を出てしばらくすると、ブゥンと奇怪な音が響く部屋に入った。
部屋の中央には幾つもの巨大なパラボラアンテナや機械がある。
「この部屋は・・・・・・」
「なんだ、一体」
「・・・・・・どうやら、ここからスパークブロード通信を妨害するジャミングが放たれているようだ」
「ってことは、これを止めれば」
「ああ。止めよう」
部屋の中央にある機械へ駆け寄る。
「これ、コントロールパネル?」
「恐らくな」
ジンがすぐに目の前のパネルに触れ操作する。
ジンの操作の邪魔をしないように、辺りを警戒する。
「バンくん」
「ん?」
「君はLEXに会ったらどうするつもりだ?」
「・・・・・・説得する。こんなことは許されないって、解ってもらうんだ」
「僕はLEXを前にしたら、お爺様の仇を取ろうとしてしまうかもしれない」
「っ!ジン・・・・・・!」
「解っている。それじゃLEXと同じだということは」
やっぱり、ジンにとって海道義光は育ての親にして、たった一人の家族。お爺様なのだ。
ジンの気持ちは解る。解るけど、それじゃあ復讐のサイクルだ。
「ジン。僕は、ジンの気持ちが解る。解るけど、僕は海道義光がまだ許せない気持ちがある」
「・・・・・・」
「レイ・・・・・・」
「僕と兄さん、母さん。僕ら家族から父さんを奪い、ルナやいろんな人を傷つけ、自分の利益のために他者を陥れる・・・・・・そんな海道義光を僕は、今後も許さないと思う」
海道義光によって人生を狂わされた人は僕らだけじゃない。
数十。数百人にも及ぶかもしれない。
「けど、ジンにとって海道義光はたった一人の家族でお爺様なんでしょ?」
「ああ。どんな事があっても、海道義光は僕をここまで育ててくれた、大切なお爺様だ」
「なら、その気持ちを忘れちゃダメだ。復讐なんて、負のサイクルに過ぎないんだから」
復讐なんて、終わりの見えないメビウスの輪みたいなものだ。
一度始まったら最後、永遠に抜け出せない。
例え、ジンがLEXを手に掛けたとしても、そのジンをまた誰かが手に掛ける。そして、その誰かをまた誰かが手に掛ける。
ジンに、そう言い終わると同時に部屋の中に響く奇怪な音が静かになる。
「よし、止められた」
「ああ」
「っ!」
そこに奥の階段からカツン、カツンと靴音が聴こえた。
それと同時に、すぐ側にDキューブが展開される。
「っ!Dキューブ!?」
「っ・・・・・・!?」
靴音が響いた方向を見ると、そこには―――
「海道義光・・・・・・」
愛機の[月光丸]を左肩に乗せ、CCMを手にした海道義光がいた。
だが、この海道義光は本人ではなく―――
「ここで終わりだ」
僕らの前に立ち塞がる海道義光。
「ジン・・・・・・」
「バンくん、レイ。先に行け」
「え!?」
「コイツは僕が倒す・・・・・・!」
「ジン・・・・・・わかった」
「任せたよ」
海道義光を前に覚悟を決めた瞳をしたジンが僕と兄さんに言い、僕と兄さんはジンにその場を任せ、先に進んだ。
この先にあるのはあとはコックピットだけだ。
コックピットへ向けて兄さんと走る中、僕はLEXとした会話を脳裏に思い出した。
あの時のLEXの言葉の意味。
その意味の分水嶺は今ここだ。
LEXの野望が勝つか、僕らの思いが勝つか。
それによってもたらされる光は全く違う。
破滅か希望。
どっちか一つだ。
やがてサターンの最奥部にたどり着き、IVの文字が描かれた大きな扉を前にした。
「この先がコックピット・・・・・・」
周囲の窓から見える景色は雲と星空。
まさに、天空決戦。
「行こう、兄さん。LEXを止めに」
「ああ!」
扉が音を立てて開き、僕と兄さんは中に入る。
中に入り、通路の先にある部屋。コックピットにたどり着き、最初に目にしたものは、部屋の奥にある大きな球体だった。
勘から、その球体は良くないものだと感じた。
それと同時に扉が閉じロックされた。
そして―――
「来たな、二人とも」
椅子から立ち上がり、僕らを見るLEXの姿がそこにあった。
「LEX・・・・・・」
「・・・・・・」
今、すべての戦いの、最後の決戦が始まろうとしていた。