~レイside~
「―――グラビティポンプ。エターナルサイクラーから生まれた、悪魔の機関だ」
「アレが、グラビティポンプ・・・・・・」
「LEX・・・・・・」
奥にある球体の正体を告げるLEX。
グラビティポンプ。つまり、超小型メガトン爆弾【ドングリ】を生み出す悪魔の兵器。
エターナルサイクラーの、人類の絶望を体現した機関。
LEXから感じる感覚は、今までの温かい感覚ではなく、冷たい。全てを憎み、怨み、妬み。負の感情が溢れていた。
いや、より正確に言うなら、以前から何処かLEXには隠されていたけど冷たい感覚があった。
けど、それが今になって解った。
それは―――
「・・・・・・」
ふと、僕の耳に誰かの足音が聴こえてきた。
封鎖され、閉ざされた扉の前でその足音の主が止まった。
「ジンか・・・・・・?」
小声で呟き、後ろをチラッと見る。
だが、扉は開く様子はない。
そして、さらにまた一人誰かの足音が小さく入ってきた。
ゴライアス以降、聴覚が敏感に反応しているような気がする。それと、気配に関しても―――
「っ!」
「電話?」
僕と兄さんのCCMから同時に着信音が響く。
「出るといい」
僕らに背を向け言うLEX。
僕と兄さんはCCMを取り出し、着信を繋げる。
「はい」
「もしもし」
同時に通話相手に問う。
『私だ、二人とも』
「っ!父さん」
「っ!」
通話相手は父さんだった。
『檜山君を止めるんだ。出来るな、バン?レイ?』
父さんの問い掛け。
その問いに僕と兄さんは迷いなく答えた。
「うん・・・・・・必ず止めてみせる!」
「必ず止める。明日のために」
この戦いは今でも未来でもない。
ただ、明日を望むための戦いだ。
通話を終え、CCMを仕舞う。
「ふふふっ。ふはははははっ!!」
「LEX、俺には分からない。こんなのは間違ってる!!」
高笑いをするLEXに兄さんが言うが、LEXはなんの変化もない。
やがて、高笑いを止めたLEXが。
「―――バン。こんな病んだ世界に、なんの価値があるって言うんだ?」
「それは違うよ!今の世界にだって、いい所はいっぱいある!だから―――!」
ダンっ!
「笑わせんな」
コンソールを両手で思いっきり叩くLEX。
LEXの声は底冷えする程に冷たかった。
「俺の家族はこの腐った世界の犠牲になったんだ。変わらなければならない、こんな世界。変えてやる、この俺の手で!!」
「っ!」
「LBX・・・・・・!」
LEXが取り出したLBXは見たことないものだ。
そのLBXは赤よりオレンジに近い、いや、炎の色をしたLBX。そして、大きさが普通のLBXよりも1.5倍ほど大きい。
姿はまるで竜を彷彿とさせる姿。型はブロウラーフレームだろうが、通常のブロウラーフレームよりもさらに一回り大きな体躯。LEXの心を表している燃え盛る炎を思わせるカラーリングだ。
「コイツは[イフリート]。最強の相棒だ」
「イフリート・・・・・・炎の精霊。いや、炎の魔人か・・・・・・」
「俺がどれだけこの世界を憎み、焼き尽くしたいと願っているか、思いしるがいい」
「LEX、やめてくれ!」
「バン。この世界に守る価値があるというのなら、イフリートに勝って、証明してみせろ」
イフリートを出して告げるLEX。
「・・・・・・"汝、望まば、他者の望みを炉にくべよ"か」
「レイ?」
怪訝な表情を浮かべる兄さん。
僕はLEXの眼を見て―――
「己が我を押し通す力こそすべて―――。そういう事だよねLEX」
「ああ。その通りだレイ。どうやら、お前はバンより理知深いようだな」
「これ以上言葉は不要・・・・・・なら、それぞれの望みのために。―――LEX、お前を止めるために、ここで・・・・・・お前を倒す!!」
懐から愛機のカオスを取り出し宣告する。
「疾くと舞え!!カオス!!」
イフリートと相対するように、向かい合ってカオスを出撃させる。
後は兄さんだ。
「・・・・・・わかった。やってやる!オーディーン!!」
兄さんも悔しそうに。覚悟を決めたように言いながらオーディーンを出撃させる。
西部の決闘のような静けさ。バトル開始の合図はない。
しばしの静寂の後―――
「っ!」
オーディーンがイフリートに向かって駆ける。
そのオーディーンをイフリートは右裏拳と左拳の殴りの二発で壁へと吹き飛ばした。
「なっ!?」
驚く兄さん。
僕も驚いている。
その驚きの隙を狙いイフリートがカオスを攻撃してきた。
「っ!カオス!!」
単純な殴りなのに、いままで食らった攻撃の中で一番重く、ダメージを受けた。
オーディーンとは反対側に殴り飛ばされ、壁にぶつかるカオス。
その間にイフリートはオーディーンに追撃する。
殴りつけ。 尻尾を使って叩きつける。
もうなんでもありで、テクニックも技量もなんもない。
ただの暴力。
その姿は、LEXの心象心理を現している。
LEX=イフリート。全てを焼き尽くしたい。
破壊したいのか、イフリートの今の攻撃で伝わってきた。
「どうしたバン!もっと攻めてこい!!」
「立て!立つんだオーディーン!」
地に倒れふすオーディーンを踏みつけるイフリート。
イフリートはそのままオーディーンの首を掴み、折るように力を込める。
「その手を離せ!」
オーディーンを掴む、イフリートの左腕に向かって右手の黒剣『フェンガーリ』で切りつける。
オーディーンを投げ、離したその左腕で『フェンガーリ』の一撃を受け止める。
「温い。温いぞレイ!お前の望みはその程度か!」
「そんなわけない!!」
『フェンガーリ』から左手の白剣『アステール』で突き距離を取り、一気にそのままイフリートへ肉薄する。
「カオス!!」
カオスの双剣とイフリートの拳がぶつかり合う。
ガンッ!ガンッ!と激しいぶつかり合いの音が響き渡る。
肉弾戦の末、ズサーっ!と後ろに吹き飛ばされ―――。
「必殺ファンクション」
「っ!」
LEXが淡々と告げる。
「【アタックファンクション!ヴァルゾダース!!】」
CCMからシステム音声が流れ、イフリートを灼熱の炎が覆った。炎を纏いながらイフリートはこっちに物凄い速度で接近してきた。
「させるか!」
「っ!オーディーン!」
カオスの前に『ビームガーター』を構えたオーディーンが割り込み、イフリートの必殺ファンクション【ヴァルゾダース】を受け止めた。
しかし、イフリートの灼熱の拳を受け止めた『ビームガーター』は中央部を起点に破壊され、カオス諸共オーディーンも下がる。
そしてイフリートはそのまま、カオスとオーディーンを灼熱の拳で撲りつけ吹き飛ばした。
壁に吹き飛ばされながらも―――
「「必殺ファンクション!」」
「【アタックファンクション!グングニル!!】」
「【アタックファンクション!バーチカル・スクエア!!】」
すぐさま反撃としてそれぞれ必殺ファンクションを放つ。
灼熱のエネルギーを纏った螺旋槍と四連撃の斬撃がイフリートに向かって放たれる。
だが―――
「そんな・・・・・・」
「くっ・・・・・・」
二つの必殺ファンクションをイフリートは軽く身を攀じるだけで避けた。
「イフリートは全てを焼き尽くす。さぁ、本当の絶望はこれからだ」
「本当の絶望・・・・・・?」
CCMをピッ、と操作するLEX。
次の瞬間、イフリートを磁気嵐のような黒い渦がスパークを放ちながらイフリートを包んだ。
「なんだ」
「っ!まさか!」
この現象に似たようなものをついさっき見たのを思い出し、まさかと声に出す。
「焼き尽くせイフリート!【インフェルノモード!!】」
LEXのCCMから低いシステム音声が響く。
「インフェルノモード!?」
「こいつはモンスター・・・・・・俺の中で沸き立つ、怒り、哀しみ、そして憎しみ・・・・・・つまり、俺そのものだ」
黒い渦の中にいるイフリートはまるでモンスターのような雄叫びを上げる。
苦しそうにも、絶叫を叫んでるようにも、すべての怨嗟を叫んでるようにも聞こえる。
やがて黒い渦が払われ、灼熱の輝きが放たれた。
イフリートの機体が炎に包まれ、まるでそれイフリート自体が炎と化したようだ。
【インフェルノモード】を発動させたイフリートは一瞬でオーディーンに掴みかかり、カオスも巻き込んで何度も床に叩きつける。
こんなの、もし普通のLBXだった一発で破壊されてるはずだ。
威力が高く、床は今ので拳大の窪みが出来てる。
イフリートはそのままオーディーンとカオスを掴み、掴んだまま上へと飛び上がって行き、天井をぶち抜いて外部へ出ていった。
「オーディーン!」
「っ!カオス!」
兄さんとCCMを見るが、画面にはサターンの外壁の内部がザザー、とノイズとともに映る。
少しして画面に外の景色が映りだす。
「外の映像!?」
再びクリアになった画面に映ったのは、イフリートが開けたと思わしきサターンの外壁の穴と、こちらに背を向けるイフリートの姿だった。
「さぁ。続けよう。バン。レイ」
「っく!」
「兄さん!」
「ああ!これならどうだ!」
CCMを操作し、必殺ファンクションを発動させる兄さん。
「【アタックファンクション!JETストライカー!!】」
飛行形態になったオーディーンが神速の速度でイフリートに突撃する。
オーディーンの突撃を受け止めるイフリート。
そこに―――
「必殺ファンクション!!【アタックファンクション!フラッシング・ペネトレイター!!】」
彗星を彷彿させる速度で駆け『フェンガーリ』を突き刺して突進するカオス。
オーディーンと入れ替わりに彗星の一撃をイフリートに突き刺す。
が、
「これもダメか!」
尻尾を使って【フラッシング・ペネトレイター】の一撃を受け止め、そのままオーディーンも巻き込んでカウンターで吹っ飛ばした。
「どうした二人とも?世界を救いたいんだろ?」
「っ!エクストリームモード!!【エクストリームモード!!】」
「更なる高みへ!カオス、エクシードモード!!【エクシードモード!!】」
同時に特殊モードを発動させ、オーディーンを金色のエフェクトが。カオスを黒金のエフェクトが覆った。
それぞれのCCMが変形し、ホロウインドウが表示される。
「行くよ、兄さん!」
「ああ!」
オーディーンと連携してイフリートを攻めていく。
だが、その連携すらもイフリートの拳には敵わない。
スペックもだが、巨体を生かした肉弾戦が強い。
「それだけか?もっとだ。もっと打ってこい!!」
「うおおぉぉっ!!」
「はあぁぁぁあっ!!」
特殊モードによって機体性能が上がったカオスとオーディーン。
撹乱するように高速で動いていき、全力でイフリートとぶつかる。
イフリートも殴り、蹴りと言った物理技でカオスとオーディーンを攻める。
イフリートを攻めていく中で、カオスと一体化しているような感覚を感じた。
次々と、一手一手が勝敗を分ける行動。
単純な暴力を兄さんと捌く。
オーディーンが投げた槍『リタリエイター』を弾いたイフリートに双剣の斬撃を叩き込む。
イフリートの視界を塞ぎ、クルクルと頭上を回る『リタリエイター』を掴んだオーディーンとともにイフリートの胴体部に一撃を叩き込む。
そのままお返しとばかりにイフリートをサターン艦内へ押し込み、サターンのとある通路に出る。
「必殺ファンクション!!【アタックファンクション!プロミネンスレイド!!】」
LEXのCCMからシステム音声が響き、空中へ飛び上がったイフリートから太陽コロナを想像させる高熱の熱線がイフリートの全身から放たれた。
放たれた熱線を避け、『アステール』で貫いて突破し空中に飛び上がったイフリート向けて向かった。
同じくオーディーンも『リタエイター』で【プロミネンスレイド】を突破し、同時にイフリートの胸部へ剣と槍を突き刺した。
「よしっ!」
「やった!」
「っ!?」
胸部からスパークを発しながらサターンの床に落下するイフリート。
カオスとオーディーンはイフリートから少し離れた場所に着地した。
やがてそのスパークも収まり、イフリートの機能が停止したことを現した。
それと同時にLEXのCCMから出てた【インフェルノモード】のホロウインドウもCCM内に収まり消えた。
降り立った状態から楽な状態になるカオスとオーディーン。
「オーディーンとカオスの勝ちだ。もう止めてくれ!」
「勝負は決した!僕らの勝ちだLEX!」
兄さんとLEXに向かって言うが。
「くそっ!」
CCMのボタンを押すLEX。
だが、CCMからエラー音のビー!ビー!という音が鳴るばかりだった。
「バカな・・・・・・イフリートが負けるだと・・・・・・?・・・・・・ふざけるなぁ!!」
「「っ!!」」
「お前の力はそんなものではない!イフリート、その身を焦がすほど、絶望の炎を滾らせろ!!」
LEXから放たれる言葉に怒りと憎しみにビクッとするほどの覇気を感じた。
それほどまでにLEXの高ぶる怒りの気持ちが強いのか感じ取れる。
「LEX、もう―――」
LEXに向かって言葉を投げようとしたその時。
「っ!?」
とてつもない悪寒が僕を襲った。
なにか来る。今まで感じたことない悪意の寒気が直感で感じた。
それを証明するように、次の瞬間―――
「っ!?」
「なにっ!?」
右壁の一部が破壊され、爆発と高温が僕らを襲った。
そして、そこから傷だらけのカオスとオーディーンが出てきた。
しかも、カオスの【エクシードモード】とオーディーンの【エクストリームモード】が解除された。
何事かと爆発の方向を見て、そこにいた物に目を見開いた。
何故ならそこにいたのは―――
「イフ、リート・・・・・・?」
【インフェルノモード】の灼熱の赤ではなく、憎悪を滾らせた紫炎。
紫炎を纏った、機能停止したはずのイフリートがいたのだ。
イフリートから響くケモノのような雄叫びに身を竦めた。
本能で感じた。
アレはイフリートであって、イフリートではないと。
破壊された場所は、まるで高熱で溶けたような状態で、イフリートから熱波が放たれる。
LEXもどういう事なのか、というような表情を浮かべてる。
「ぁぁ・・・・・・」
兄さんも驚きと恐怖で声が霞んでる。
そんな中、LEXは何かわかったようで。
「・・・・・・そうか。そういう事か。ふははははは!あははははははっ!!バン!レイ!これはイフリートの意思だ!」
笑いながらそう告げた。
「え?」
「意思・・・・・・」
「CPUが俺の感情を完全に理解した!俺の憎しみが、イフリートに完全に宿ったんだ!!」
「なっ!?CPUが自我を持ったというの!?」
イフリートのCPUにLEXの憎しみが宿ったということは、考えたくないがCPUが自我を持ったという事だ。
だが、CPUが自我を持ったという事なんて聞いたことない!
「そんな・・・・・・」
兄さんも驚きを隠せずにいる。
僕も兄さんと同じだ。
だが、LEXの言葉を肯定するようにイフリートが黒炎の火炎弾を僕らに向けて放ってきた。
そしてそれはLEXにも襲い掛かり。
「グハッ!」
イフリートの火炎弾を受け、近くのコンソールにぶつかって力なく台に寄りかかって倒れるLEX。
「っ!LEX!」
今ので頭を打ったみたいでLEXは左手で頭を抑える。
「見ろ二人とも。アレこそが、本物のモンスターだ!」
モンスター。
今のイフリートはモンスターと言っても過言ではない。
それほどまでに凶悪で凶暴なのだ。
「・・・・・・止めてみせる!俺たちが!!」
「ああ。絶対に止める!!」
LEXにそう告げると同時に兄さんとイフリートを止めるためにオーディーンとカオスを動かす。
だが―――
「ぐっ!カオス!!」
イフリートからしたら、赤子の手をひねるようなものなのか、オーディーンとカオスの攻撃を簡単に避け、カオスをグラビティポンプの方へと殴り飛ばした。
カオスはグラビティポンプの内部に殴り飛ばされ、オーディーンもイフリートに鷲掴みにされ同じようにグラビティポンプの内部へと侵入した。
「無駄だ。もうイフリートは誰にも止められん」
「止めてみせる。そうじゃなきゃ、これまでの俺たちの戦いが・・・・・・!悠介さんの命も全て無駄になる!!」
「悠介さんだけじゃない!Nシティにいる人を助けることも。これまで色んな人たちに助けられてきて、いろんな人たちに託されて、僕らがここにいる意味も全部!!意味が無くなる!!」
今ここであのイフリートを止めなければ―――
「僕らの明日が来ない!!」
「レイ!」
「ああ!!」
オーディーンと連携して、憎しみに身を任せんと暴れるイフリートを攻めていく。
イフリートから繰り出される拳や火炎弾といった攻撃を耐えるカオスとオーディーン。
二機とも今の僕と兄さんを体現している。
だが、暴れるイフリートは今までのイフリートよりも強く、オーディーンとカオスを追い詰めていく。
もはや暴風のようだ。
二体掛りなのに、全く好機がない。
寧ろ、こっちが追い詰められている。
「止めるんだ!!」
「この世界を守るために!!」
オーディーンとカオスが攻められていくなか、僕と兄さんはそれぞれを信じている。
絶対にイフリートを止められると。
「オーディーン!!」
「カオス!!」
そして、その答えはちゃんと返ってきた。
僕らに答えるように、イフリートの一撃を止めカウンターで同時に攻撃してイフリートが距離をとる。
その隙を逃さず。
「今だ!必殺ファンクション!!【アタックファンクション!ライトニングランス!!】」
オーディーンの『リタリエイター』から一筋の蒼の光槍が放たれた。
そして同時に―――
「必殺ファンクション!!【アタックファンクション!ヴォーパル・ストライク―改!!】」
カオスの『フェンガーリ』から、深紅に染った一条の光槍がイフリートに向かって穿たれる。
LEXから伝授してもらい、いろんな場所で助けてくれた必殺ファンクションの一つ【ヴォーパル・ストライク】。
その進化した【ヴォーパル・ストライク―改】が、オーディーンから放たれた【ライトニングランス】と合わさり、純白になった光槍がイフリートに向かって突き進んでいく。
純白の光槍をイフリートは受け止めるが、カオスはそのままオーディーンとともにイフリートの胸部を『リタリエイター』と『アステール』で貫いた。
イフリートからモンスターのような、絶叫が上がる。
「超プラズマバースト!!【アタックファンクション!!超プラズマバースト!!!!】」
兄さんとCCMから声が上がり、オーディーンの頭上にプラズマのエネルギーが発生する。
そして―――
「LEX!これは、僕が、LEXに教えて貰った技だ!!必殺ファンクション!!【アタックファンクション!!】」
CCMを操作し最後の。
LEXから伝授してもらった、二つ目の必殺ファンクションを発動させる。
カオスの双剣。『フェンガーリ』と『アステール』を蒼銀のエフェクトが覆う。
一気にイフリートへと肉薄したカオスは双剣を振るい。
「【スターバースト・ストリーム!!!!!】」
僕の声とCCMのシステム音声が共鳴する。
一撃、二撃と星屑溢れる銀河の煌めきを彷彿させる、流星の嵐のような剣戟がイフリートを襲う。
イフリートも火炎弾を放ってくるが、それすらも切り裂き―――
「うおおぉぉっ!!!」
「ぜぇりゃあぁぁぁっ!!!」
兄さんと僕の覇気に呼応するように、オーディーンの【超プラズマバースト】の雷槍と、カオスの【スターバースト・ストリーム】十六連撃最後の一撃が、同時にイフリートを穿いた。
イフリートの胴体部に大きな穴を開け、カオスとオーディーンはイフリートの背後に降り立つ。
モンスターの鳴き声を上げ、イフリートは爆散した。
グラビティポンプからイフリートが爆散した黒煙が立ち上る。
「ぁ・・・・・・ぁぁ・・・・・・っ!」
左手を側頭部に添え、縋るように右手をグラビティポンプの方へと伸ばすLEX。
「バカな・・・・・・」
放心してコンソールに寄りかかるLEX。
「LEX。【超プラズマバースト】。LEXに教えて貰った技だよ」
オーディーンを右肩に乗せ言う兄さん。
「【ヴォーパル・ストライク】と【スターバースト・ストリーム】。僕もLEXに教えて貰った技だよ」
左肩にカオスを乗せてLEXと同じ目線。しゃがんで告げる。
「俺の・・・・・・負けだ。ふっ・・・・・・完全に、燃え尽きた・・・・・・」
痛みに顔を顰めて言うLEX。
「早く、ここに来た目的を果たせ」
「兄さん」
「ああ」
コンソールに駆け寄る兄さん。
僕はLEXを見て話す。
「LEX・・・・・・」
「レイ・・・・・・まさか、【ヴォーパル・ストライク】を進化させるとはな・・・・・・。【スターバースト・ストリーム】も俺以上に使いこなせてた」
「・・・・・・・・・・」
「俺が到達できなかった技の進化を、まさかお前がとはな・・・・・・」
「LEX。LEXには、この手段しかなかったの?」
LEXへ僕はずっと思っていた事を聞いた。
他にも手段があったのではないかと思うからだ。
「お前も知ってるだろ。この世界は一部の権力者によって支配されてる。俺が言ったところで揉み消され、握り潰されるのがオチだ」
「確かにそうかもしれない。けど、全員が全員って訳じゃないでしょ?」
「ああ。だが、俺は、世界を変えるためにこれしか無かった」
「なんで・・・・・・!」
「・・・・・・レイ。お前は、俺の妹に似ている」
「LEXの妹?」
「ああ」
思い返すように天井を見上げて僕に言った。
「俺は父子家庭だった。母親は俺が幼い頃に亡くなり、以降は親父が俺たちを育ててくれた。親父は、仕事で忙しかったが、それでも俺や妹との時間は作ってくれた・・・・・・。俺も妹も、親父が好きだった。親父は責任感が強く、仲間にも慕われていた。そんな親父は、俺や妹にとって希望だった。だが・・・・・・!」
「あの事故が起こった」
「ああ。俺も妹も、親父の部下たちも親父は違うと分かっていた。だが、この世はどうせ多勢に無勢。親父の部下の意見は潰され、結局親父は失意の中この世を去った。・・・・・・俺は悔しかった。世間が憎かった。親父を殺したのは世間だ。・・・・・・それ以降のことはあの時話した通りだ」
「LEX・・・・・・」
「妹は優しく、常に笑顔でいた。お前とはじめて会った時、俺は、一瞬妹の面影を見た」
「え」
「だからかもな。俺はお前を失うわけにはいかず、あの必殺技を伝授した。お前の力になれればいいと思ってな」
優しく僕の頭に手を乗せるLEX。
「LEX。LEXの妹の名前って・・・・・・」
「真実・・・・・・檜山真実だ」
「檜山真実・・・・・・。LEX。悠介さんの事もLEXが関係してるの?」
「いや・・・・・・拓也の兄貴のことに関しては想定外だった。これに関しては甘く見てた」
LEXの反応から、悠介さんの死に関しては本当に予想外だったみたいだ。
「LEX。帰ったら、たっぷり、O☆HA☆NA☆SHI、するからね」
「それは・・・・・勘弁願いたいな・・・・・・・・・・」
苦笑して言うLEX。
「全てを希望に変えるんだ」
コンソールを操作する兄さんの声。
全てを希望に。絶望から希望へと。
兄さんがコンソールのエンターキーを押すと。
コンソールの画面に流れる羅列が赤に染まり、艦内への明かりが真っ赤に染り、警報アラートが鳴り響いた。
「これは・・・・・・」
「自爆システムを作動させたんだ」
「自爆システム?」
「ああ」
兄さんはそのまましゃがみこみ。
「動けるだろ、立ってくれ!」
「俺を・・・・・・助けるのか・・・・・・?」
「当たり前だろ!!レイ!」
「分かった!」
兄さんは左を。僕は右のLEXの肩を支える。
けど―――
「LEX!!」
「俺はいい。置いていけ・・・・・・お前たち二人で行け」
「嫌だ!」
「レイ・・・・・・」
「LEX、僕らと一緒に帰ろう!!」
「レイの言う通りだ!帰るんだ、一緒に!!」
「・・・・・・・・・・」
兄さんと一緒にLEXの肩を掴み、立つサポートをしてその場から移動してエクリプスに通じる緊急連絡通路ハープーンへと向かう。
兄さんと協力して、ゆっくり。一歩ずつLEXとともに三人で歩く。
「LEX。世界の人向けて送ろうとしていたメッセージって、なんだったの?」
「ふっ・・・・・・アレか・・・・・・」
サターンのあちこちで起きてる小さな爆発の影響で通路が揺れながら、僕と兄さんはLEXが世界に向けて発しようとしたメッセージを聞いた。
「人は獣にあらず。人は神にあらず。人が人である為に、今一度考えるのだ。人とは何かを・・・・・・何をするべきかを・・・・・・」
「人は何をするべきかを?」
「そうだ・・・・・・」
「それって・・・・・・」
「賢くなり過ぎた人間は、この世の全てを管理し支配しようとする。まるで神であるかの様に。大きな力を手に入れた人間は弱者を喰らい、どんな残酷な行いも厭わない。まるで獣であるかの様に」
エクリプスへ通じるハープーンが目前に見えた。
LEXのメッセージを聴きながら、兄さんとLEXと一緒に連絡路を登る。
「進歩し過ぎた人は、人である事を、いつの間にか忘れてしまったんだ。俺は世界の人々に考えさせたかった。人はどうあるべきか、人が人である為の真実の姿を・・・・・・」
「・・・・・・人は変われるさ」
「ああ・・・・・・新しい世界はきっと創れる。新しい世界は僕と兄さんが創れる」
「俺たちなら創れる。LEXが望んだ世界を・・・・・・必ず・・・・・・!」
「うん・・・・・・!」
「お前たち・・・・・・」
LEXは僕と兄さんの宣言に満足そうに笑みを浮かべた。
あと少しでハープーンの接続部に着こうとしたその時。
「え・・・・・・」
「うわっ!」
いきなりLEXが僕と兄さんをハープーンの奥へ押し込んだ。
足がもつれながら、文句を言おうと振り返る。
「拓也、乗ったぞ!全員無事だ!」
「え・・・・・・」
訳が分からず声を漏らした瞬間。
「レイ!」
「LEX?うわっ!」
LEXが僕に向かって自身のCCMを投げ渡してきた。
「LEX!」
LEXのCCMを掴み、どういう意味なのかLEXに聞こうとした瞬間。
「っ!」
ハープーンの接続部がサターンと切り離された。
慌てて傍の手摺りに掴む。
「なんでだよ!!」
手を伸ばして兄さんの問い掛けが響く。
「ゲームオーバーだ」
それがLEXから聞いた、最後の言葉だった。
エクリプスはそのままサターンから離れて上昇し、サターンは雲の下へと潜っていき、LEXの姿が小さくなっていく。
「だ、ダメぇ!LEXッ!!!!」
喉が掠れそうになるほどの声で叫ぶ。
やがて、サターンの姿が雲の下へと隠れていき―――
大きな爆発音と、赤く染まった雲を僕らの視覚と聴覚が捉えた。
その光景はすぐに収まり、元の星空と雲に戻った。
「「LEXーッ!!!!!!!」」
僕と兄さんのLEXを呼ぶ悲鳴が木霊して響いた。
その時、僕はLEXの声が聴こえた気がした。
『お前たち二人なら創れるかもな。新しい世界を』
の声が。
その後、僕と兄さんは二人でエクリプス艦内へ入り、みんなのいる司令室へと朧気な歩みで向かい、全部話した。
LEXとの戦いを。
LEXの世界へ向けたメッセージを。
そして、LEXの最後を―――
「バン。レイ。良くやってくれた」
父さんの労いの言葉を聴くも頭に入らなかった。
「レーくん」
「レイ」
メアとキヨカが僕の手を優しく握る。
「メア・・・・・・キヨカ・・・・・・」
二人の手を優しく握り返す。
そこに、夜明けが僕らを照らした。
みんな、一生懸命光に向かって羽ばたいているはずなのに・・・・・・。
いつの間にか、小さなボタンのかけ違いが次第に大きなシワとなって・・・・・・・
人の心に影を落として行く。
けれど、僕は信じている。
LEXが望んだ世界は、あの空の向こうにあるってことに
そして、その世界は僕と兄さんが創ってみせる。
世界の命運を賭けた戦いから数日後、世間を奮わせるニュースが日本。いや、世界中を駆け巡った。
まず、紳羅さんたち警察庁と警視庁、そして政府によりイノベーターが完全に摘発。所員や研究員の全てを逮捕。イノベーターが解散した。
さらに、一部の政治家やイノベーターと癒着のあった関係者全員の逮捕。
神谷重工会長はイノベーターの解散に伴い失脚し、神谷重工LBX開発部門は海外のLBXメーカークリスターイングラムに吸収。
そして、海道義光の死とこれまでの悪事が発覚した。
海道義光がこれまで行った悪事によって、海道義光の名は完全に地に落ち、海道義光が止めていたオプティマも程なくして認可されるようになった。
そんな世間を震わせる事件は大々的に報道されるが、僕らの事は表に出ることはなかった。
けど、それでいい。
この半年で起きた事は、僕らの中に閉まっておこう。
何事もない、平和な世界が、僕らの望みだから。
LEXが望んだ世界。
そして、僕の見た未来―――
「行くよ、兄さん!!」
「ああ!レイ!」
「疾くと舞え!カオス!!」
「オーディーン!!」
今日も僕らは仲間とLBXとともに生きていく。
未来は、この手の中に―――!
現在
神威島
「―――これが、イノベーター事件の全部だよ」
ルナとフランにイノベーター事件の事を話し終えたのは、既に日が傾き夕陽が照らす頃だった。
途中メアとキヨカも話し、ルナとフランは静かに聞いていた。
「僕にとってあの事件が全ての原点なんだ」
今でも鮮明に覚えてる。
はじめて、最初の相棒[クロノス]を手にした時。
海道義光と相対し、対決した時。
クロノスが【クロノスタシスモード】を発動した瞬間。
父さんと出会った時。
海道ジンと会った時。
オタクロスやユジンさんたち。
紳羅さんと会った時。
兄さんがアルテミスで優勝した瞬間。
LEXから、新たな必殺ファンクションを教えて貰った時。
悠介さんと結城さんが創ってくれた新たな相棒[カオス]を手にした時。
兄さんたちと戦った瞬間。
悠介さんから、CPU『カオスレインW:EX』を渡された時。
イノベーターとシーカーのタイニーオービット社地下でのエターナルサイクラー防衛戦。
神谷重工でカオスが【エクシードモード】を発動した時。
神谷コウスケと戦った時。
イノベーター研究所に侵入し、LEXから全てを聞いた時。
エクリプスから急襲作戦でサターンにLBXで乗り込んだ時。
そして、LEXとの最後の決戦を兄さんと一緒に戦った時。
「もちろん、辛い別れもあった」
悠介さんとLEXの死。
今も僕のトラウマだ。
悠介さんも。LEXも助けられなかった。
「けど、その全てがあるからこそ、今僕がここに居るんだと思う」
起き上がって、星と月が出てる空を見上げる。
「イノベーター事件が終わったあと、レイはどうしたの?」
「ん?僕?」
「ええ」
フランの問いかけにクスッと笑いながら。
「特に変わらないよ。学校に行って、メアやキヨカ。兄さんたちとLBXバトルしたり、大会に出たり。あ、いや。一つだけ。父さんが家に帰ってきたかな」
イノベーター事件が終わったあと、半年ほどだが父さんと一緒に過ごした。
父さんがいなかった五年の間を少しでも埋める日々だった。
家族で旅行に行ったり、父さんからLBXの事を兄さんと一緒に聞いたりした。
まぁ、半年後父さんはやる事があるって、海外に行っちゃったけどね。
そして僕も―――
「レーくんもあの事件が始まる少し前から出掛けてたしね」
「そう言えばそうだったわね」
「うん。一人で」
「そうなの?」
「うん。世界を見に回ったんだよ」
思い返すように言う。
「さてと!」
よっ、と息を吐いて立ち上がる。
「そろそろ帰ろうか」
もう夕陽は沈み、月夜の明かりが僕らを照らしていた。
「そうね」
「うん」
「ええ」
「そうだね」
メアたちも立ち上がり、それぞれ軽く伸びをする。
「これからまた忙しくなりそうだ」
ふふっ。と不敵な笑みを浮かべて呟く。
「ほーら。レーくん、行こっ!」
「レイ、行こう」
「行くよ、レイ!」
「レイ、行くわよ」
僕を呼ぶメアたちを見つめ、
「今行くよ!」
僕はメアたちとともにこの島での今の家。
ダック荘へと帰った。
心の中で、LEXに『これからも、LEXの望んだ世界を創る』と誓って。