〜レイside〜
「―――ジェノックは『ブラックウィンドキャンプ』を攻略中、ね」
「ええ。でも、油断してピンチよ」
ダック荘の僕の部屋で、僕はキヨカと話をしていた。
「バカね。敵が六機だけだからって、油断した結果がコレよ」
「あはは。同じクラスなのに評価が酷いね」
キヨカの遠慮のない酷評に苦笑する。
「なんかダイキさんに似てきたよ、キヨカ」
「兄妹だもの。当然よ」
同年代の中でメアと並ぶほどの豊かな胸を揺らして誇らしげに言う。
少々目のやり場に困るが、何故かメアたちも僕だけの時に見させてくるんだよね。
一応僕も年頃の男の子だってこと忘れないで欲しいんだけどなぁ。
「にしても、よりにもよって相手がロシウスのあの第十三小隊【デスワルズブラザーズ】とはねぇ」
【デスワルズブラザーズ】の悪評は各仮想国で知れ渡ってる。
何せ、ブレイクオーバーしたLBXを盾にしたり、ペイント弾を使ったり、と卑劣な手を使ってくるのだ。
そして何より、彼らは実力もそれなりにある。
彼らの必殺技。フォーメーションアタックの【デスグリフォン】は強力な攻撃だ。
フォーメーションアタックは三機のLBXによる合体攻撃。
三機による合体攻撃ゆえ、使いこなせるのは難しい。
そもそも必殺ファンクションは基本単騎による発動だ。
だが、フォーメーションアタックや合体技は複数のLBXによる連携攻撃となる。それ故に、習得には困難を極め、簡単に実戦投入は出来ない。
余程の連携が無いと無理なのだ。
ちなみに、僕らもフォーメーションアタックは持ってる。
セカンドワールドでは一度も使ってないけどね。
伊達に修羅場潜って来てないからね。僕らの絆と連携を舐めてもらっちゃ困るよ(エッヘン)
心の中で自慢げに言うが閑話休題。
「レイたちなら問題ないのでしょうけど、ね」
「まぁね〜」
ジェノックの現在の戦力と、デスワルズブラザーズ略してデスワルズの戦力。そしてフォーメーション。
それらを全て考えて僕らと置換える。
もしも僕らだったら―――
「敢えて、フォーメーションアタックを撃ち込ませて、反撃するかな?もしくは、フォーメーションアタックを撃ち込む隙すら与えずに速攻」
「なら、アラタたちだったら?」
「・・・・・・・・・・わかんない」
「え、分かんない?」
僕の言葉にキヨカが、え?と顔を浮かべる。
「だって、アラタ予測がつかないんだもん」
「あー・・・・・・」
足を組んで腕を組む。
「たぶん、今でもどんな打開策をするから考えてるんじゃない?フォーメーションアタックにフォーメーションアタック、とかさ」
半分冗談で言ったつもりだったのだが、翌日お昼休みの時まさかそれが当たっているとは、思いもしなかった。
翌日のお昼休み
「えー」
ジェノックの第一小隊とユノが、デスワルズとなんか言い争ってるのを見た。
近くで聴いてみると―――
「―――お前らには100年早いぜフォーメーションアタックは!」
「デスワルズブラザーズ!」
「全く、哀れな奴らだぜ。負けると分かってる戦いを今日もやらないとならないんだからなぁ」
「なんだと!」
「ロストしたら退学。頑張ってエスケープスタンスとりなよ」
「もっと、その前にぶっ壊してやるから、やっぱり退学だけどなぁ!あははははっ」
なんて会話をしてた。
「五月蝿いよデスワルズ」
「「「っ!!?」」」
飽きれながら見てられなく会話に割り込む。
僕の声に全員がこっちを見る。
「て、テメェ・・・・・・!」
「お前・・・・・・」
「―――山野レイ・・・・・・!」
確かエリックだっけ?
デスワルズのリーダーが忌々しげにこっちを見てくる。
「さっきから五月蝿い。フォーメーションアタックが君たちデスワルズだけの特権だと思ったら大間違いだよ」
「なに?」
「それに、哀れか・・・・・・やってもいないことに勝手に決めつけるのは良くないね。結果がどうなるのか、誰もわからないでしょ?」
アラタたちを少し庇うようにしてデスワルズに言う。
「テメェ・・・・・・さっきから何様のつもりだ?!」
「別に。君たちこそ、忘れたわけじゃないよね?以前、僕に負けたことを、さ」
「「「っ!!」」」
そう。デスワルズは随分前、僕が叩き潰した相手だ。
なんか因縁吹っ掛けてきたから直接相手してあげた。
で、結果はご覧の通り。
フォーメーションアタックを撃ち込ませる隙すら与えずに、全員ブレイクオーバーさせた。
「それとも・・・・・・また叩き潰されたい?」
軽く殺気を放ってデスワルズの三人に問い掛ける。
「ガーディ。アーノルド。行くぞ。これ以上は分が悪い」
「チッ」
「わかった」
エリックに言われデスワルズの三人はこの場から立ち去った。
「すまない。助かった」
デスワルズが立ち去ると、出雲ハルキから礼を言われた。
「別に、彼らが五月蝿かったから言っただけだしね」
別に礼を言われることじゃない。たまたま通りかかっただけだし。
「それは、昨日のウォータイム終了時の位置?」
チラッとテーブルの上に広げられた地図と置物を見て訪ねる。
「あ、ああ」
「ふうん。なるほどねぇ・・・・・・」
それらを見てすぐさま頭に展開する。
「まぁ、他国の僕が介入する訳にもいかないけどさ・・・・・・やれるだけのことはやりなよ」
「ああ!」
「そのつもりだ」
僕の言葉にアラタと星原ヒカルが返す。
「れ、レイ。何かアドバイスとかあるかな」
「アドバイス?」
ユノが僕にそんなことを聞いてきた。
「そう。彼らを打倒するための」
「うーん・・・・・・」
ユノに聞かれて少し迷う。
少し考えて―――
「仲間を信じろ、かな」
「仲間?」
「そう。どの戦いも、結局は"己が我を押し通す力こそすべて"、だからね。それに、今回の戦闘で学んだんじゃない?油断大敵だって、ね」
含みをした笑みを浮かべてその場を立ち去り、メアたちの所に行く。
ここに来た目的は購買で飲み物を買うためだしね。
ジェノックの彼らに期待しながらその場を去った。
〜レイside out〜
〜アラタside〜
「山野レイ・・・・・・相変わらず、底がしれないな」
レイが立ち去って、ハルキが少し怯えた声で言った。
「うん。学園最強のプレイヤーって言われてるからね。それに―――」
「英雄」
「ヒカル、それを彼に以前言ってどうなったか分かってるだろ。むやみやたらに言うな。もうジェノックに次はないんだ」
「そうね・・・・・・。また今度ジェノックの誰かがレイの逆鱗に触れることがあったら、その時は終わりよ」
「うん。二度目はないからね」
ユノたちの言葉に、俺は以前ヒカルとともにジェノックを危うく壊滅させてしまうかもしれなかった時のことを思い出す。
「なぁ、レイってどんなプレイヤーなんだ?」
そこで俺はふと疑問に思ったことを聞いた。
「レイは、ハーネス所属のプレイヤー」
「ハーネスはジェノックと同様小国だけど、所属しているプレイヤー一人一人の技量が高いの。そして、その中でも逸脱しているのがレイたち」
「プレイヤーは山野レイ。石森ルナ。フラン・フルーリア。メカニックの川村メアの四人だ」
「噂だと、ハーネスの快進撃の立役者はレイだと言うわ。けど―――」
「けど?」
「レイは最近滅多なことでは出撃してないみたいなの」
「どういうことだ?」
「さぁ。ハーネスの切り札だからか、ハーネスになにか事情があるのか・・・・・・」
「つまり、全てが謎ということか?」
「うん。あ、でも、レイの使うLBXは黒銀の色をしてるの」
「そして付けられた二つ名が、『黒衣の剣士』」
「『黒衣の剣士』・・・・・・」
ユノたちの言葉に俺はさらに知りたくなった。
山野レイと言う、この学園最強のプレイヤーが。
「にしても、レイが言った意味ってどういう意味だろう?」
「仲間を信じろ・・・・・・か」
「レイ、どこまで見てるんだろう・・・・・・」
レイの意味深なアドバイスに悩まされながら、俺たちは昼休みを終えた。
〜アラタside out〜
〜レイside〜
「アラタたちにアドバイスしたの?」
食堂から出ると、壁に寄りかかったキヨカからすれ違いざまに聞かれた。
「まぁね。簡単なアドバイスを」
「そう」
「さてと。今日のウォータイムで、彼らがどうデスワルズを攻略するのか・・・・・・楽しみだね」
「ええ」
キヨカと逆の方向に向かってメアたちのいる場所に向かう。
放課後―――
「―――もう一回だ!!」
「ん?」
司令室に向かおうとしている途中、すぐ側の雑木林からアラタの声が響いてきた。
気になり見てみると―――
「アレは・・・・・・へぇ・・・・・・」
アラタ、ヒカル、ハルキの三人が、ユノとサクヤの持つサンドバック相手になにかしていたのが目に入った。
それを見た僕はすぐさま何をしてるのか分かった。
「フォーメーションアタックの練習かしら?」
「フラン」
いつの間にか隣にいたフランがそう呟く。
「なるほど。実際に身体で憶えるって事ね」
「ああ」
何度もトライする三人を見て口角が上がる。
「懐かしいわね」
「うん」
あの三人の諦めない心に僕は懐かしさを覚えた。
「けど、ね」
フランの視線の先には、ジェノック第五小隊隊長の風陣カイトが。
そして、その離れたところには第二小隊隊長の磯谷ゲンドウとその執事の綾部さんがいた。
「風陣カイトはすでに呆れか。ゲンドウは・・・・・・」
ゲンドウは相変わらずだが、なにか関心を持っていた。
風陣カイトはそのまま立ち去り。
「面白いね、第一小隊」
「レイ・・・・・・」
ゲンドウに声を掛けた。
「御元気そうでなによりでございますレイ様」
「綾部さんも元気そうだね」
「ありがとうございます」
ゲンドウと綾部さんとは、ここに来る前からの知り合いだ。
ゲンドウは磯谷財閥の御曹司であり、その執事である綾部さんはよく社交界とかに出席していた。
僕も拓也さんとかに、連れられ?誘われ?あー、まぁ、色々あってゲンドウと綾部さんとは交流がある。
一応、LBXの大会でも当たったことあるし。
「レイ、お前がアラタたちに何か助言したのか?」
「さぁネ」
肩を竦めて返す。
「ゲンドウ。君は彼らの頑張りをどう観る?」
「・・・・・・ハルキとヒカルはともかく、アラタは実戦を甘く見てる」
「ふふ。それは確かにね。でも・・・・・・」
僕らの視線の先には何度も何度も諦めずに、果敢に挑戦する三人が。その先頭を切るアラタがいた。
「僕はアラタに期待しているんだよ」
「期待だと?」
「そう。彼は何れ台風の目になると思う。ジェノックのね」
「お前は相変わらず未来予知みたいな言い方をするな」
「だって、僕が今ここでズバッと言っちゃったら意味無いでしょ?それに何より、僕はハーネス所属なんだから」
「そうか・・・・・・」
「それじゃあ、またね。あ、綾部さん、今度また美味しい紅茶の入れ方教えてくれますか?」
「ええ。勿論、喜んで」
「ありがとうございます綾部さん」
綾部さんの入れる紅茶は美味しいからね。
よく、個人的に習ってる。
綾部さんは、僕の紅茶の入れ方の師匠みたいな人だ。
ゲンドウと綾部さんと分かれ、僕はフランとともに司令室へと向かう。
「さぁて。今回のジェノックはどう出るかな」
楽しそうに笑みを浮かべて行く。
そして―――
「Congratulations」
司令室でジェノックの『ブラックウィンドキャンプ』制圧完了とデスワルズの殲滅を見て拍手をする。
「楽しそうだなレイ」
「ジン」
珍しく司令室にいるジンが聞いてくる。
さん付けはジンさん曰くやっぱりムズ痒いらしく、昔とおなじ呼び捨てにすることにした。
「ええ。―――さて、これでジェノックはロシウスの拠点を『イーストエンドブリッジ』に続き今回の『ブラックウィンドキャンプ』も落とした」
「ああ。ハーネスと同じく小国のジェノックが大国のロシウス相手に良くやっていると言うべきだろう」
「となると、次の占領ポイントは・・・・・・ここしかないね」
「ああ」
床のモニターに映し出された地図の一点が赤く染まる。
その場所は―――
「エルダーシティ」
ロシウス領内南部に位置する重要拠点、『エルダーシティ』。
『エルダーシティ』には最近【エルドバンド】とかいうのが配置されたらしいけど・・・・・・
「ジン、僕らも次の段階に進むべきかな?」
「そうだな」
エルダーシティ周辺の地図から、アラビスタ北部の地図を映す。
「僕らの次の目的は―――」
「ロシウスとアラビスタの領域境界線付近」
同じく床のモニターに映し出された地図の一点が赤く染まる。
その場所は―――
「―――『フェンレス雪原』」