ダンボール戦機 英雄の弟   作:ソーナ

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日常珍事と予兆

 

〜レイside〜

 

「はぁ〜・・・・・・」

 

昨日の朝の事を思い出し溜め息を吐く。

 

「どうかなさいましたか?」

 

「あ、すみません綾部さん」

 

怪訝そうに尋ねてきた綾部さん。

ダック荘のキッチンに、僕は綾部さんと二人でいた。

綾部さんに丁度紅茶の美味しい入れ方を伝授して貰っていたのだ。

一段落付き、片付けていた時に思い出して溜め息を吐いちゃったのだ。

 

「目元に隈が出来ております。もしや、よく眠れてないのでは?」

 

「あははは。実はそうなんです」

 

「もし、宜しければ老骨ながら私めに話してみてはいかがでしょう?」

 

「え。いや、でも・・・・・・」

 

「もちろん、ここで見聞きしたことは口外しないと誓います」

 

「あー、えと、それ、なら・・・・・・」

 

少しいい淀みつつ、メアたちのことを少し話した。

あ、名前は伏せて、親友が、にした。

少し綾部さんに話し、綾部さんから年の功ながらのアドバイスを貰った。

 

「そう言えば、綾部さんは何時からゲンドウの執事をしているんですか?」

 

ふと気になった事を聞いてみた。

 

「私は若旦那様がお産まれになった頃から、若旦那様にお仕えしております」

 

「へぇ・・・・・・って事は小さい頃のゲンドウを綾部さんは見てきたんですね」

 

「左様です」

 

「小さい頃のゲンドウってどんなんだったんですか?」

 

「若旦那様の幼少の頃で御座いますか・・・・・・秘密で御座います」

 

予想通りの綾部さんの回答にクスッと笑みが出る。

 

「ゴメンなさい。綾部さんは本当にゲンドウの事を大切に思ってるですね」

 

「・・・・・・そうで、御座いますね」

 

一瞬綾部さんに曇が過ぎったような気がした。

どこか躊躇っているような、哀しんでいるような。

綾部さんがゲンドウのことを大切に思っているのは、いつもの事から分かるけど・・・・・・。

気のせいかもしれないと思い、特に聞くことも無く僕は綾部さんと軽く談笑して自室に戻った。

自室に戻り、机の上の端末を起動させる。

起動させると、丁度一件緊急メールが来ていた。

メールを開き中を見る。

内容は―――

 

「―――ヒロが行方不明?」

 

かつて共に世界を救い、親友でもある大空ヒロが数日前から行方不明だという事だ。

数日前に行われた、A国のBCエクストラズに知り合い・・・・・・って言うか、四年前に組んだ女性、シャーリーさんと出る予定だったのだが、時間になっても顕れず、連絡がつかないそうだ。

その大会には灰原ユウヤと、こちらも同じくユウヤが四年前に色々あって組んだ女性、アリスさんと参加する予定だったらしい。

だが、ヒロと連絡がつかないため三人は現在行方を探しているらしい。

数日経っても連絡がつかないため、関係各所に連絡しているとの事だ。

メールを閉じ端末の電源を落とす。

椅子に座り、司令官としての仕事をする。

パソコンを起動させ、目の前のパソコンにレポートを記入しながら思考を回す。

どうにも嫌な予感がする。

ヒロは僕と系種は違うが、同じくアレを持っている。

まぁ、ここに来てからずっと会ってないから分かんないけど。

研究機関とかからしたら喉から手が出るほど欲しいサンプルだ。

しかし、ヒロがアレを持っているのは僕らしか知らないことだ。

とはいえ、何時どこで漏れるかわからないけど。

そのまましばらく月夜に照らされながら作業をして行き―――

 

「ジェノックはエルダーシティを攻略中・・・・・・っていうか、作戦立案中かな」

 

『エルダーシティ』に配置された、ロシウスの【エルドバンド】というものは、かつて僕らが制圧した『ニーズシティ』に配置されていた【ヒドラ】と同じ、LD(ラージドロイド)だった。

しかも要塞戦車。

大口径ビーム砲にシールド有りと一発くらったら即アウトな物だ。

 

「要塞戦車の弱点は上だけど、【エルドバンド】は機動力もだが、攻撃、防御とどれも一筋縄では行かない代物。今のジェノックの戦力では対処出来るかわかんないけど」

 

けど、アラタのことだ。

絶対誰もが驚くような、面白いことをやってのけるに違いない。

それに―――

 

「アレの弱点、もう分かったし」

 

もっとも、それを実行するには高度な技術がいる。

そして―――

 

「アレしかないよね」

 

ジェノックの資料ファイルを閉じ。

 

「んんっーー。・・・・・・もう0時か」

 

部屋に戻ってきたのが22時辺り。

そこから作業していたから、もう2時間位過ぎようとしていた。

固まった身体を伸びをして解す。

 

「やっぱりこれ、子供にやらせる量とかじゃないよね」

 

自虐気味に苦笑しながら呟く。

真夜中も真夜中。

まぁ、三徹ぐらいなら多分いけるだろうけど。

 

「明日もしばらくは哨戒任務だし、楽できそうかも」

 

布団にダイブし、枕に顔を埋めて言う。

僕はそのまま意識を手放し―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――レ・・・・・・イ。起き・・・・・朝・・・・・・よ」

 

「んん・・・・・・」

 

なんか耳元から声が聞こえて来た。

 

「あと・・・・・・三年・・・・・・」

 

「いや、三分とかならともかく、三年はさすがに寝過ぎじゃないかな!?」

 

驚いた声を出す誰か。

意識が未覚醒なまま左手を伸ばす。

 

「ひゃっ!!」

 

「???」

 

なんか柔らかいものが左手にある。

 

「ん・・・・・・れ、レイ、それは・・・・・・!!ひゃうっ!///」

 

慌てたような声と悲鳴が聴こえるが・・・・・・

てか、これはなんだろう。

柔らかくて、もちもちしてるような感覚が―――

 

「んぁ??」

 

眠気を何とか片隅に押し込みながら、意識の半分が未だに未覚醒のまま眼を開ける。

眼を開けると、顔を茹でダコのように真っ赤にしたルナがいた。

 

「んぇ・・・・・・あれぇ・・・・・・ルナ〜?」

 

ルナが何故いるのかハッキリ意識の思考が覚醒しないままいると。

 

「ルナちゃん、レーくん起き・・・・・た・・・・・・?」

 

「どうしたのメア?ルナ、レイは起きた・・・・・・かし・・・・・・ら・・・・・・」

 

部屋の扉が開き、そこからメアとフランが入ってきた。

入ってくるなり二人ともなんか驚いた顔をしているけど。

 

「ほぇ・・・・・・あれ、今何時・・・・・?」

 

「え、っと、7時過ぎだけど・・・・・・」

 

「ん〜〜??フゥあ〜・・・・・・」

 

身体を起こして欠伸をする。

正直まだ眠いのだが・・・・・・

 

「れ、レイ。そ、その、そろそろ手を・・・・・・」

 

「ェ?手〜?」

 

ルナに言われ左手に視線を向ける。

左手は、何故かルナのハーネスの制服の中に突っ込むような形で入っており、それはルナの胸を触っていて―――

 

「へ・・・・・・?」

 

眼が点になる。

 

「んッ///」

 

もにゅっと、柔らかい感触が掌から伝わって来て―――

 

「!!?!?!?!?!?」

 

声にならないほどの声を上げて左手をルナの服の中から慌てて引き抜く。

 

「へっ!?え!?えっ!?」

 

一気に眠気が覚め、意識が覚醒する。

いや、ていうかなんで手が服の中に入るの!?!?

 

「〜〜///////」

 

わけわかめの僕と赤面するルナ。

うん、これは―――

 

「な、なんかゴメンなさい!!」

 

僕は瞬時に土下座に移行した。

いや、今までラキスケハプニングはあったけど、今回のは初めてだ!

てか、今までのはメアたちが原因ってのもあるけど、今回は全面的に僕が悪い!

 

「う、ううん。だ、大丈夫だから///」

 

赤面しながら言うルナ。

そこに。

 

「む〜〜っ!!レーくん!ルナちゃんの触るなら私のも!!」

 

「メアっ!?」

 

何をトチ狂ったのか、ずいっと自身の豊かな胸を突き出してくるメア。

 

「フラン、メアを止めて!?」

 

「あははは・・・・・・」

 

フランに止めてもらおうとしたけど、フランはフランで苦笑を浮かべており、止める様子は全くなかった。

そんなさらに一悶着あって―――

 

「・・・・・・///」

 

「はぁ・・・・・・寝惚けてたとはいえ朝からあれは疲れた」

 

朝食を食べ、メアたちとともに学園に向かう道中、僕は思いっきり疲れた。窶れた表情をしていた。

朝からルナはともかく、メアの暴走もあり、止めるのに苦労した。

なんとか、メアには勘弁してもらったけど、さっきのアレは忘れたくても忘れられないかも・・・・・・。

それはもとかく、ホント神威島に来てから色んなことが有りすぎた。

特にメアたちで。

 

「レイ、昨日何時に寝たの?」

 

道中フランが聞いてきた。

 

「えーと、確か今日の1時くらい?」

 

「1・・・・・・!?」

 

「な、何をしていたの・・・・・・かな?」

 

ギョッとした顔で見るフランに、引きながらまだ少し顔を赤くして聞くルナ。

 

「今日のウォータイムの作戦立案に、資料作成。各班の出動記録報告書。それと、レポートに調査報告書作成かな」

 

「それ、日暮先生の仕事入ってないかしら?」

 

フランが言うのも当然である。

一部、日暮先生がやるはずのものまで入っているのだから。

 

「あの人には今度たっぷりお返しするから大丈夫」

 

ニヤリと笑って言う。

 

「ほ、程々にね」

 

「うわぁ・・・・・・レイの悪い顔」

 

「何考えているのか何となくわかったわね」

 

失敬だなぁ〜

軽ーく、O☆HA☆NA☆SHI☆、するだけだよ〜

 

「あ」

 

前を見るとアラタとユノが二人で登校する姿があった。

 

「ほー」

 

なんか感嘆の声を漏らすメア。

 

「青春だねぇー」

 

なんか年寄り臭い事を言うのルナ。

 

「いや、私たちも周りから見たら十分青春謳歌真っ最中なのだけど・・・・・・」

 

呆れたように肩を竦めながらフランが言う。

 

「あははは・・・・・・」

 

何度目か分からない苦笑を浮かべる。

 

 

 ガッシャーンッ!!!!

 

 

「っ!?」

 

突然大きな音が響いた。

 

 

「コラぁー!!十分気をつけろと言っただろう!!」

 

「す、すみません!!」

 

 

すぐ側の工事現場の鉄骨が倒れた音だったらしい。

 

「あー、ビックリした〜」

 

「凄い音だったね」

 

「ええ」

 

あまりの大きな落下音に驚いた。

ちょっと心臓に悪いと思ってると。

 

 

「これだ!!」

 

 

「っ!?」

 

突然アラタが何かを閃いたような声を出した。

 

 

「これだァ!!」

 

「え!?ちょっ!アラタ!?」

 

 

全速力で学園に向かって駆けていくアラタを追って、ユノも走る。

突然のことにポカンとするが・・・・・・

 

「も、もしかしてアレの攻略法でも思いついたんじゃないかな」

 

「あ、ああ・・・・・・なる・・・ほど・・・・・・??」

 

「あ、相変わらず突発的な、奇抜なこと思い浮かぶなぁアラタは」

 

呆然としながらアラタとユノの後ろ姿を見る。

 

「多分、なんか大きなものを落とす。でも考えたんじゃないかな」

 

まさかそんな事を実行しようなどとはこの時は思わなかった。

―――のだが・・・・・・・

 

「ま、マジですか」

 

放課後行われたウォータイムで、司令室からジェノックの『エルダーシティ』攻略作戦のリアルタイムを観た僕は、思わずそう口走ってしまった。

いや、だって―――

 

「給水塔をエルドバンドの上に落として押し潰すとか・・・・・・よく考えたなぁ」

 

である。

鉄骨から閃いたんだろうけど、間一髪なのは間違いない。

 

「協力したのはゲンドウたち第二小隊か・・・・・・彼らしい」

 

まぁ、彼らがどうしようが、それはジェノックの問題。

僕には関係ない。

もっとも―――

 

「これで補給路は用意出来た。かな・・・・・・ジン?」

 

『ああ。そうだな』

 

僕の問いかけにすぐ側に空間ウインドウが開き、遠距離通信でいるジンが映った。

 

「となると、そろそろかな?」

 

『ああ』

 

僕らの計画はすでに滞りなく進んでる。

ま、アラタが居たからこそ進んでるのかな。

 

『それにしても、瀬名アラタか・・・・・・。奇抜な発想といい、どこかキミに似ているな』

 

「どこがよ?」

 

ジンの言葉に、ぇぇーと声を漏らす。

 

「僕とアラタは全然似てないでしょ」

 

『だが、今のジェノックは瀬名アラタが来たからこそ進んでる。違うか?』

 

「それは・・・・・・まぁ、確かに」

 

『ふっ。それはそれとして・・・・・・送られてきた連絡は見たか?』

 

「ええ」

 

連絡とは、恐らく昨日の夜に来たメールの事だろう。

 

「嫌な予感がする」

 

『っ!!・・・・・・レイのその予感は外れた事が無いからな・・・・・・何も無いといいが』

 

「ええ・・・・・・」

 

僕とジンは、他の誰もいない司令官で不吉な予感の空気に苛まれていた。

せめて、その予感が外れる事を願って。

 

 

 

 

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